Unity、「Unity アジア・ブートキャンプ・ツアー:東京」を開催
「三国志コンクエスト」や「GREE」の事例から学ぶ開発のコツ
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社は4月12日、ゲームエンジン「Unity」開発者を対象とした大規模ワークショップ「Unity アジア・ブートキャンプ・ツアー:東京」をベルサール神田で開催した。
「Unity アジア・ブートキャンプ・ツアー:東京」は「Unity」を使った開発に関する最新の情報と実践的なセッションからなる大規模ワークショップで、開発事例などの技術的な詳細についてのセッションが行われるため、会場には多くの開発者が詰めかけていた。
この記事ではユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社の伊藤周氏による「中規模Unityゲーム開発のポストモーテム ~三国志コンクエスト SEGAの事例~」のセッションと、グリー株式会社の坂本一樹氏による「Unity」を使ったGREE向けゲームの開発事例セッションについて記載する。
■ 「三國志コンクエスト」プロジェクトで学んだUnityでの中規模開発のノウハウ
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社の伊藤周氏 |
「中規模Unityゲーム開発のポストモーテム ~三国志コンクエスト SEGAの事例~」のセッションでは2012年2月まで株式会社セガでプログラマーを務めていた伊藤周氏が「三国志コンクエスト」の開発を振り返りながら「Unity」を使って開発していく上でのノウハウを紹介した。
「三国志コンクエスト」は2月16日にApp Storeで配信が開始されたiOS向けのオンラインRPGで、大きく資源を蓄えたり領地を拡大する「シミュレーションパート」と、ザコ敵やボスと戦う「アクションパート」の2つのパートに分かれているのが特徴のゲームだ。
開発期間は2011年6月から2012年1月の約7カ月で、開発人数は十数名。7カ月というのは「Unity」を使ったプロジェクトの中では少し長めかもしれないが、コンシューマーゲームやアーケードゲーム向けの開発が多いセガとしては短めの期間だと感じていたようだ。
伊藤氏はプロジェクトを振り返りながら「Unity」を使ってよかった点として「描画エンジンが最初からあること」、「トライアンドエラーが簡単にできること」、「アーティストやプランナーなど、プログラマー以外のメンバーにも使ってもらいやすかったこと」をあげた。
使用するエンジンによっては、まず描画エンジンを作るところから始めなければいけないものもあり、その様なエンジンに比べると初めから描画エンジンが用意されている「Unity」を使えば開発初期にかかるコストを軽減できる。また実際のプレイ画面と同じものを見ながら調整ができるので、試行錯誤が簡単になり、周りとのコミュニケーションの面でもスムーズに開発が進んだということだった。
苦労した点については、「開発当時は情報が少なかったこと」、「GUIの実装」、「ルールの厳格化」をあげていた。 特にGUIについて「EZ GUI」というライブラリを使っているが、このライブラリはチームで作業することを想定していないらしく、複数のシーンにまたがるプレハブ(ゲームオブジェクトやスクリプトをひとまとめにしたもの)があるとき、それらのシーンを編集してしまうと、管理システムに入れ込んだ時にバッティングが起きて、作業の手戻りなどが発生してしまったそうだ。
伊藤氏はこの様な点から「『Unity』を使ったからといって簡単にゲームが作れるわけではありません。しかし1度『Unity』を使って開発するとノウハウが蓄積され、その次以降はスムーズに開発が進められると思います」と話した。
「EZ GUI」を複数人で使うときの問題点。作業をする前に特徴を理解して適切な対処を行ないたい |
■ 意外と相性がいい? 「Unity」と「ソーシャルゲーム」
グリー株式会社の坂本一樹氏 |
グリー株式会社の坂本一樹氏は「Unity at GREE」というタイトルのセッションで、GREEで「Unity」を使ったタイトルの事例紹介などを行なった。
坂本氏はグリーで提供されている「オーバーターンサーガ」、「リアルスキージャンプバトル」などのソーシャルゲームの事例を紹介しながら、「Unity」を使ってよかった点などを紹介した。
「オーバーターン」はスタジオ斬が開発した戦闘シーンが3Dのカードバトルゲームで、ロボットのカスタマイズをして他のユーザーと戦うソーシャルゲームだ。開発期間は5カ月弱だという。「オーバーターン」はiPhone版とAndroid版の両方が出ているが、坂本氏はモデルや表示などのコンバートをすべて「Unity」に任せられた点、そして「Unity」が多くのプラットフォームに対応しているため1つのプロジェクトでAndroid版とiOS版が同時に開発できた点が大きなメリットだったと語った。
「リアルスキージャンプバトル」は、プロペが開発したスキージャンプを体験できる3Dのゲームで、アバターアイテムを装備して他のユーザーとバトルをするもの。このタイトルの開発期間は6カ月。このタイトルではメリットとしてモーションなどの3Dモデルが簡単に扱える点や、バランス調整などを実機に転送せずにPC上で行なえる点を上げていた。iOS/Androidを同時に開発できるのも利点だが、プラットフォームを変更する際のリソースコンバート(そのプラットフォーム用にデータを変換すること)に数十分程度かかるのは改善してほしいとしていた。
坂本氏は最後に、「この様に、『Unity』とソーシャルゲームは非常に相性がいいです。『Unity』からGREEのソーシャルグラフを利用するための「GREE Platform SDK for Unity」というSDKと「Unity」のプロライセンスをパートナー向けに公開しているので、ぜひ私たちと一緒に一緒にソーシャルゲームを作りましょう」と話した。
「オーバーターンサーガ」の事例紹介。一見コンシューマタイトルにも見える3Dの戦闘シーンだ | ||
「リアルスキージャンプバトル」の事例紹介。こちらも3Dをメインに使っている |
Copyright (C) 2012 Unity Technologies
(2012年 4月 13日)