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SCEJ、ソフトウェア開発者向け「PlayStation Vita Game Conference 2012」Part2
PS Vitaローンチでオープンワールドを実現した「GRAVITY DAZE」、
フレンド100人できるかな? がコンセプトの「みんなといっしょ」


3月28日 開催

会場:ソニー・コンピュータエンタテインメント
   SSJ品川ビル



 3月28日にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEJ)にて開催された、ソフトウェア開発者向けにPS Vita発売タイトルの開発事例を講演「PlayStation Vita Game Conference 2012」の模様をお伝えしよう。

 Part1の記事に続いて、このPart2では「『GRAVITY DAZE』制作秘話」、「Friend network『みんなといっしょ』」の2つの講演内容を収録。どちらもPS Vitaならではと言っていい特徴的なタイトルであり、講演では特別な話がたくさん伺えた。ぜひご覧頂きたい。




■ 「GRAVITY DAZE」―― ローンチ時期にオープンワールドのゲームを制作!
  アート、プログラム、制作チーム運営の面から語られる「GRAVITY DAZE」制作秘話

●講演名
 “PlayStation Vita”「GRAVITY DAZE」の制作秘話

●講演者
 Sony Computer Entertainment
 Worldwide Studios JAPANスタジオ
  プロデューサー: 五十峯 誠
  アートディレクター :山口 由晃
  ゲームデザイナー: 後藤 浩之
  リードプログラマー :横川 裕

この日、最も濃密なセッションとなった「GRAVITY DAZE」。左からリードプログラマー 横川 裕氏、アートディレクター山口 由晃氏、ゲームデザイナー後藤 浩之氏、プロデューサー五十峯 誠氏が講演した

 “PlayStation Vita”「GRAVITY DAZE」の制作秘話では、「コンセプト紹介」、「ビジュアルスタイル& ディレクション」、「プログラム」、「制作チームのコミュニケーション方針」という4つのパートにわけて本作の開発事例について講演した。

 コンセプト紹介とプロジェクトの経緯はプロデューサーの五十峯氏から、ビジュアルディレクションはアートディレクターの山口氏から、プログラマ目線からの技術解説はリードプログラマーの横川氏から、最後に「GRAVITY DAZE」チームの運営スタイルについて五十峯氏が講演。ゲームデザイナーの後藤氏は講演後の質疑応答や補足などで参加している。

 まずは開発経緯から紹介された。「GRAVITY DAZE」のプロジェクトは2008年にPS3用タイトルとして制作を開始した。だが、2009年にプラットフォームをPS Vitaに変更という大きな転換期があったものの、2012年2月に日本・アジアで無事に発売。今後は2012年6月には北米・欧州で発売予定となっている。

 2009年にPS Vita向けに変更されているが、2009年時点ではPS Vitaという名称はなく、“次のポータブルゲーム機”という概念があったのみだったそうだ。当然、開発環境はおろか詳細なスペックもまだ固まっていなかったため、1度制作チームのメンバーをグッと絞って基礎研究段階から進めることになった。このあたりの紆余曲折をいかに乗り越え、ローンチ時期からオープンワールドの独特なゲームを制作したのか? このあたりが本講演のポイントとなる。


◆ 2つのコンセプトが際立つようにゲームを構成。開発最初期から重力のコンセプトは明確

 ・コンセプト紹介
  1.フレンチコミックのエッセンス +日本のキャラクター性 +アメコミのヒロイズム
  2.重力方向を自由に定義できるアクション

2008年10月に制作された最初期のテストムービーより。「SIREN」のヒロインキャラが重力が変化する世界を動き、飛び回るというものになっていた

 まずは本作のコンセプトについて。企画当初から本作には“絶対的な指針”となるコンセプトが2つあったという。ひとつは「フレンチコミックのアートスタイルやエッセンスを軸にする」というもので、そこに日本のアニメーションに代表されるキャラクター性やアメコミのヒーロー性をブレンドし、オリジナリティの高いものを目指したという。もうひとつはゲームスタイルのコンセプトで、「重力方向を自由に定義できる」というシンプルなものを絶対のものとした。

 ゲーム全体でこの2つのコンセプトが際立つように構成しており、このコンセプトを阻害するような要素は、それが例え優れていたとしても、排除する方針だったという。方針にブレを出さずに制作したからこそ、プラットフォーム変更からのローンチ時期タイトル制作が完了できたのかもしれない。

 続いて、制作経緯を紹介するVTRが上映された。映像は開発の最初期から、発売直前の最終版までの映像がまとめられた貴重なもの。右の画像以外には映像をお見せできないものの、どんな内容だったかを紹介しよう。

 最初は2008年9月のプレコンセプト映像で、ここでは「SIREN」のヒロインキャラクターモデルが街を歩いていた。そこに重力方向が変わってビルを垂直に登っていったり、落ちていったり。離れたビルの間を空を飛ぶように落ちているところも収められていた。それらの動きは荒削りながらも、本作の製品版に見られるものに近い。「重力方向を自由に定義できる」というコンセプトによる動きの完成形がこの頃から見えていたのだろう。

 続いて2008年10月制作のコンセプトムービーを作るためのテストムービー(この時点ではまだテクスチャがなく「SIREN」のヒロインキャラ)、さらに先日に公開された2008年末制作のコンセプトムービーと上映されていく。このムービーの時点でキャラクターはキトゥンのデザインになり、テクスチャもついて、製品版の映像にほぼ近いものになっている。だが、この時点ではPS3用タイトルとしてそのスペックを前提に制作している時期だ。次はPS Vita用の企画になってからの2010年1月のウォークスルー&イメージボード映像で、これはWindows環境で制作。そこから1年後の2011年1月にPS Vita版のプレイアブル、2011年9月のTGS2011用に制作された最終版と続いた。

 この制作経緯の映像をみると、紆余曲折は経ているものの企画コンセプトは最初期の段階でほぼまとまっており、そこからプラットフォームや環境が移り変わりながらも、当初PS3用として見越していたクオリティをPS Vitaで実現していることの凄さが感じられる。


◆ 「ビジュアルスタイル&ディレクション」―「バンド・デシネ」から“感覚的リアル”を模索

 ・ビジュアルスタイル&ディレクション
  -フレンチコミックと重力
  -トゥーンシェーディング
  -CGとの親和性
  -Living Background

アートディレクターの山口氏はビジュアルスタイルとディレクションについて講演。山口氏が本作のビジュアルに込めたのは「感覚的リアル」というもので、バンド・デシネに日本のキャラクター性を掛け合わせて新しい価値を模索していった
感覚的にリアルと感じられるようなデフォルメした絵作りをするにあたり、アニメ調のトゥーンシェーディングはやりやすかったという

 アートディレクターの山口氏より、デザインにおいての方向性や思考について解説された。本作のアートの軸になったのはフレンチコミックの「バンド・デシネ」だ。バンド・デシネは日本のコミックと違って少し哲学的でアーティスティックになっているのが特徴。ただ、その独特さをそのままに踏襲すると敷居の高いニッチなテイストになってしまうので、日本のジャパニメーション的なスタイルを組み合わせ、新しい価値を模索していったそうだ。

 そうしたアートを本作ではトゥーンシェーディングで描いている。このトゥーンシェーディングに対して山口氏は「なぜラインを入れるのか? 」、「なぜアニメ調なのか? 」、「なぜ支持されるのか? 」と探っていく。

 山口氏は、昨今のゲームにおけるリアルなグラフィックスがこれ以上にリアルになったとして、ユーザーさんがどこまで着いてきてくれるのか? どこまでわかってもらえるのか? そこに懸念を抱いていたという。そこで「GRAVITY DAZE」の絵作りではその懸念に自分なりの答えを探していったそうだ。

 リアルな絵に対して、トゥーンシェーディングは言うなれば「リアルと絵の中間」であり「絵画的表現」とする山口氏。そうした描き方だからこそゲームとの相性が良く、CGとの親和性が高いという。なぜゲームと相性がいいのかは、「バンド・デシネ」というキーワードからわかってくる。バンド・デシネとはそもそも“デッサンをまとめた(デッサンをバンドしている)”という意味があるという。リアルな絵に対して、標識やマーク・記号のような簡略化された絵があり、バンドデシネの著名な作者であるメビウス氏いわく「バンド・デシネはその中間にあるもの」と話していたそうだ。

 リアルだけの絵だと情報量が多くなりすぎて、ユーザーがどこを見ていいかわからなくなってしまう。そして、作り手側が主張したいものが入ってこなくなってしまう。それに対して標識やマークといったものは主張が誇張されていて、ダイレクトに入ってくる。「バンド・デシネ」はその両方の良さを持ち、リアルな要素を入れつつ意図を伝えやすいという面白い表現であると山口氏は考えている。

 ではどれぐらいリアルな絵から誇張(デフォルメ)するといいバランスになるのか? それは「感覚的リアル」という言葉が握っている。感覚的リアルとは、“リアルな絵”と“リアルに感じられる絵”は違うという意味を込めた言葉だ。

 例えば、アニメキャラ的に手や目を実際よりも大きくデフォルメして描けば、それはリアルとは言えない。だが、手や目といった箇所は「人間が他の人物を見る時に重要な知覚情報」であり、それを上手く誇張していれば、その人物の特徴がわかりやすくなる。それは「感覚的リアル」という言葉にマッチしていて違和感は少ないし、キャラクター性も際立つというわけだ。こうした感覚的リアルにマッチする絵作りは、アニメ調なトゥーンシェーディングが描きやすかったということだ。


山口氏は背景も兼任しており、背景が生きている「Living Background」という考え方を大事にしている。今作では背景も世界として楽しめるオープンワールドを推し進めた

 キャラクターだけでなく世界のアートも重要になる。アートデザインでは、先ほどあった「絵画的特徴を持ち、知覚的にリアルにする」というところに加え、階層的な世界による物量感、圧倒感を出し、それをオープンワールドで実現したことが大きなポイントになっている。

 アートについて山口氏が考えたのは、「絵だけを考えていてもプレイした人が感動しない。」というもの。ゲームデザインと共にトータル的に考えていってこそ、プレイした時に感動してもらえる。山口氏はこれについてゲームアートを単なる“絵”とは捉えず「その場所に実在する」感覚を注ぎ込み、ゲームでしかできないインタラクション性を入れていくべきと考え、こういった考えを「Living Background」という言葉に集約した。

 「Living Background」、つまり背景が生きているというのは具体的にどういうことか。山口氏はゲームにおいては特にインタラクション性が重要で、背景についても、プレーヤーが「背景はただの絵だ」と感じてしまった瞬間から、背景を見なくなると考えているという。そうした状態を山口氏は「背景が死ぬ」と表現するそうだ。

 そうならないようにするのが「Living Background」。絵を単なる背景として入れるのではなく、情報もリアルに入れ込んで「背景」と「感覚的リアル」をリンクさせ、世界全部を感じながらゲームプレイができるようにしたい。そうした考えから、山口氏は「GRAVITY DAZE」の世界をオープンワールドにしたいと強く推したという。

 このほかにも、「重力の方向を自由に定義できる」というゲームデザインコンセプトと、バンド・デシネを軸にしたデフォルメした表現の組み合わせを最大限に楽しんでもらうなら、オープンワールドが最適と考えたわけだ。

 オープンワールドで作ったことで遠くの背景も実在していて「見えるところに行ける」ようになり、重力コントロールによって「至るところに立てる」ようになった。背景に情報が常に入っているというわけだ。さらに、オブジェクトを破壊できるなどの「存在するものに干渉できる」という点では、壊れないものはあまり置きたくないと主張するぐらいにこだわったということだ。これも、ただの背景ではなく使えるものにしたいという考えが基本にある。

 最も広い背景と言えば「空」があるわけだが、本作ではここにあえて独特な色を入れている。これはバンド・デシネ的なアーティスティックさを感じさせる試みだ。だが、初期にただ色をつけただけの状態だと作り物な嘘っぽいものになってしまったそうで、大気シミュレーションや絵画的な技法を取り入れたという。また、詳しくはプログラムサイドからも語られるが、建造物と距離が離れるとテクスチャが消えてラインだけ残るようにするなど、ここにもプレーヤーが知覚的に情報を認識できるよう工夫している。


【重力をデザイン】
重力方向を自由に定義できるアクションということで、世界を様々な角度と距離で見る事ができる。さらにオープンワールドなのでそれが全て実在している
【“見える”ところに全て“行ける”そして“立てる”】
見える場所の全てに行けることもオープンワールドならでは。背景がただの絵ではなく、実際に行ける場所という情報の集合体になっている。また、重力方向を変えられるので、あらゆる場所に立って様々な角度で見る事もできる
【存在するものには干渉できる】
オープンワールドな世界の中に、壊れるものをたくさん置きたいと考えた山口氏。ただ存在するのではなく、干渉できるオブジェクトになっていることで、より世界観の密度を増している。また、それらオブジェクトを戦いに活用することも可能だ
【空に色を入れる】
空を独特な色にすることで、バンド・デシネ的なアーティスティックなデフォルメ感をプラス。ただ色をつけただけでなく、大気シミュレーションや絵画的な技法を取り入れたということだ

 山口氏からは最後に、オープンワールドによるゲームデザインの効果が語られた。制作者の意図によってガチガチに固められたレベルデザインでは、プレーヤーは開発者の想像の範囲の中にある遊びしかできなくなってしまう。それはあまり面白くないという事で、枠のない自由に楽しんでもらえる場所を作り、その中でうまくコントロールしていくというのが上手いやり方ではないかと語った。それこそオープンワールドの魅力というわけだ。

 このようにアートディレクターである山口氏にはゲームデザインに対しての意識の高さがあり、提案も多くされていたことがわかるが、これは本講演の最後に解説されている制作チームの独特なスタイルからきている。アート、ゲームデザイン、プログラムなど、そういった担当分野を越えて話し合えるようにチームでは壁が生まれる要因を取り払い、例えばプログラマーの横にデザイナーの席を置いたりしていたそうだ。そうしたチームなので自由な発想と高い意識レベルで「GRAVITY DAZE」を制作できたというわけだ。

◆ 「プログラム」―PS3からPS Vitaへ。たくさんの課題をファーストパーティースタジオとして乗り越えていくというワークに

 ・「GRAVITY DAZE」のプログラム
  -PS3からPS Vita へ
  -Windowsによる開発

プログラマ視点からの解説には、リードプログラマである横川氏が登壇。PS3からPS Vitaへプラットフォームが変わり、性能が未知のポータブル機でオープンワールドを実現するため、様々な工夫を凝らしていったという
PS3からPS Vitaに変わったことで操作の幅に変化が。タッチ機能、ジャイロ機能など、最終段階まで調整を繰り返したそうだ

 本作のプログラムについての解説ではリードプログラマである横川氏が登壇。プログラマ視点から、本作の開発事例を紹介した。

 本作は前述のように当初PS3用として開発されていたわけだが、プロジェクトがスタートした2008年頃はというと、PS3用タイトルの開発は技術もこなれてきた頃。横川氏は「アンチャーテッド」シリーズを代表とする海外スタジオの開発事例から学べたこともあり、高速なSPUを活用したい、レンダリングには当時流行し始めていたデファードを使いたいなど、色々と構想していたそうだ。

 この時のプログラムの課題は明確で、オープンワールドの世界をどのように実装するか? オープンワールドのボリュームをどのように扱っていくか? オープンワールドの世界の中にどうゲームを作っていくか? だいたいこの3つだったという。レンダリングの面ではポストエフェクトをたくさん出したいなど、チーム内で色々なアイディアが出されていたそうだ。

 PS3向けのプロトタイプもできあがってきて順調に進んでいたが、ある日「『GRAVITY DAZE』はPS Vitaがいいのでは? 」という話が持ち上がり、プラットフォームはPS3からPS Vitaへ変更となる。だが、この頃のPS Vitaは前述のようにまだ名称も決まっていない新規ハードであり、何もわからないし、すぐに進められるこもあまりない。チームは体勢を立て直す事になり1度縮小。プログラマは横川氏ともう1人の2人だけになったそうだ。

 そうした状況にはなったが、新ハードであるPS Vitaにソフトを作るというのはチームに特別な意味を持たせるところがある。ファーストパーティーのスタジオであるチームが新プラットフォームに新規作品を作るというのは「新プラットフォームがどのようなハードになっていくのかを定義するようなゲームを作る」という仕事になるというわけだ。未知のところに先陣を切って開発をしていくのがチームの使命。PS3向けに進めていた時とはまた異なるモチベーションが加わったわけだ。

 PS Vitaで開発することになって大きく変わるのは操作ということで、まず操作に着手したという。PS Vitaにはデュアルアナログスティックがあり、フロントタッチと背面タッチ、ジャイロ機能、カメラ。これらの操作を研究し、どのように使えるかを考えていく。この操作面については、開発当初から最終段階まで微調整を含めて触り続けることになったそうだ。

 次の課題は、PS3の開発技術をどうPS Vitaに落とし込んでいくのかというもの。この頃はまだまだわからないことばかりで、なにより制作のスペック的な見積もりが立てられないことに苦労したそうだ。

 例えば、「どれぐらいのスペックのアートを用意したらいいの? 」や「キャラクターには何ポリゴンぐらい使えますか? 」といったように各部からスペック面の指針を聞かれても横川氏にも答えようがなく、「できるとは思うけど、どれぐらいできるのかはわからない」といった曖昧な話になりがちだったそうだ。

 だがこの頃から山口氏の話にもあった「オープンワールドで、壊れるものをたくさん置きたい」といったような要望は出ており、横川氏はGPUコアであるPowerVRのサイトを見てコア数からスペックを逆算し想像して、要望を実装できるかどうか答えていたそうだ。こうした話はローンチ時期ならではのものだろう。

 このようにまだおおまかなスペックしか出ていない時期だったため、専用の開発環境もまだ整っていなかった。そのためWindows環境にンパチで動くリファレンス環境を構築。それまでPS3用として作っていたデータをインポートし、制作を開始した。ある程度、組み込む予定のものをテストをするためにも必須だったという。

 そうして進めている中、PS Vitaの開発機がついに到着することになる。だが、実際に開発機で動かしてみたところ、初代プレイステーションのレベルまでグラフィックスのクオリティを1度落とさないと動作しないほどで、描画については1から作り直すことになったという。この時期から、こうした状況から製品版のクオリティまで高めていくという仕事が加わることになる。

 当初PS3用として作っていたデータを移してきたという意味でも、「GRAVITY DAZE」チームのこの状況は、セガの「パワースマッシュ4」の状況に似ている。どちらも処理の高速化と最適化をCPU・GPU両面から進めて、製品でのクオリティを実現していった。

 開発機が届いてからはチームへの課題がより明確となった。まず、ファーストパーティーのスタジオとして「他の開発者向けにたくさんのレビューとデモ」をしなくてはいけないし、同時に「PS Vitaならではの直感的な操作の開発」も求められる。

 その一方で横川氏の胸中には、「そもそもオープンワールドをどうやって実現するのか?」という大きな課題もあったそうだ。当時はゲーム内の物量の多さもあってフレームレートが出ず、ロード速度も遅いという状況だったという。そうした状況なので常々「フリーローミングのゲームとして開発を続けていいのだろうか?」と考えていたそうだ。


キャラクターのモデリングひとつを見ても、スペックから計算したたくさんの設計が必要になるが、PS Vita向け開発スタート時期には、この見積もりが立てづらかった事が難題だったという 開発機がまだない時期から制作していたため、その時期にはWindows環境で開発。この時のWindows環境は今でも充分に開発に使えるということだ
ついに開発機が到着! だが、それまで作っていたものを入れ込んでみたところ、画像のようなPS1レベルのグラフィックスでしか動かせなかったという。ここから、高速化と最適化の日々が始まった ゲーム内の物量の多さが横川氏の大きな懸念に。このままフリーローミングのゲームとして続けていいものかと悩んだこともあったそうだ

◆ 「プログラム」―プロファイリングとチューニングを繰り返し、オープンワールドの物量をPS Vitaで実現

 ・「GRAVITY DAZE」のプログラム
  -最適化とシステム

 この状況に対してどのようにアプローチしていったのか。とにもかくにも、オープンワールドの物量に対策しなければ動作は速くならない。そこで、

 - ポリゴンのリダクション(ポリゴン数を減らす技術)
 - LOD(レベルオブディテール。距離に応じてモデルを簡略表示する)
 - 動的なカリング(見える範囲のみ描画する処理)

 を開発。さらに、開発中から常にプロファイリングし、レビューを反映してユーザーテストとチューニングを繰り返していったそうだ。なお、ロード時間の対策には、ロードはできる限りバックグラウンドに持っていくようにしている。チューニングを徹底していたためか、バグも多く見つかり、「なぜか『GRAVITY DAZE』のチームだけバグ報告が多い」と言われたこともあったほどだったという。だがそれも、プラットフォームの完成度を高めるためと考えてサポートし続けたそうだ。

 

 こうした最適化と工夫の積み重ねによって、当初のコンセプト通りフリーローミングのゲームとして最後まで制作を完了することができたということだ。

◆ 「プログラム」―プロダクション後期に行なった成功事例の紹介と課題

 ・「GRAVITY DAZE」のプログラム
  -成功事例と課題

ビルドシステムを自動化し、3時間ごとに最新ビルドを使うというルールに。自動化にはバッチファイルとJenkinsを使用している

 プロダクション後期を振り返って「やって良かった」と思える成功事例や、その中で生まれた課題について紹介された。

 成功事例では、まず「ビルドシステムを自動化」したことが挙げられた。チームでは毎日3時間おきにビルドを走らせていたという。ビルドアップのタイミングを自動にし「3時間おきに最新のビルドを使う」というルールを全体が持つ事で、データ構成が整理され、チームのスケジュールも規則的になったということだ。

 次に「システムの各種APIが最適化された」ことにより、ゲーム全体がかなり高速化されていったことや、「プロファイリングとチューニングを常に行なっていた」ことによりボトルネックになっていた箇所を1つ1つ解消できたことも挙げられた。シェーダーについては、各所からの協力を受け開発終盤に一気に最適化できたのだそうだ。

 さらに、“ローンチ時期の開発”という点でうまく完了できた大きな理由として、Windows上に開発環境を作ったことも大きかったとのこと。

 これについては、PCで作ったものはPCで確認するのが1番手っ取り早いし、そのスピードを上げることでイテレーションが上がって、結果的にいい製品の完成へ近づけるということだ。特に開発機の割り当てが少ないローンチのような時期に特に有効な手段であり、システムが不安定なローンチ時期としては、バグが出た時にソフトのせいなのかシステムのせいなのかの峻別できるのも開発効率を良くしてくれたそうだ。

 ただし、Windows環境を使う時には注意も必要。最終ターゲットがPS Vitaであることを忘れないようするのが重要で、チームでも実際のところ、Windowsでしか動かないようなものを組み込んでしまうこともあったそうだ。環境の違いによるタイミング依存のバグにも注意を払わなければならない。また、マルチタッチ操作の再現など、PS VitaとWindows環境では埋められない違いもあるので、PS Vita用の開発環境とをうまく使い分けていくことが大事ということだ。

 一方、思いがけないところからマスターアップまで長く続いた悩みと、改善したい課題が生まれたという。それは日本は「GRAVITY DAZE」、海外では「GRAVITY RUSH」というようにタイトルが変わったため、様々なアセットが2重に生まれたことだ。リージョンと言語の組み合わせによりデバッグが大変だったということで、制作チームではここについてワンマスターが理想とし、日本版を開発する時に「日英中韓」を言語対応を同時進行にできればいいのではという意見が出されているということだ。

◆ 「プログラム」―こうして完成した「GRAVITY DAZE」より、ゲーム内に使われている各種技術を紹介

「動かして楽しい」こと、「操作の上達を感じられる」ことを目標に作られたキャラクター制御。約20関節のFKを細かく制御し、挙動のブレンドに乱数を使って複雑なアニメーションを作っている

 こうした様々な積み重ねによって完成した「GRAVITY DAZE」。PS Vitaでオープンワールドのフリーローミングを実現した技術や、重力を操るというデザインにより従来のゲームにはない動きを見せたり、それらを写すために特殊なカメラ制御技術が使われている。それら独特な技術についても解説された。

 キャラクター制御については、「動かして楽しい」、「操作の上達を感じられる」ことを目標としており、誇張とリアルを適度に混ぜ、動きの面白さとレスポンスを追求したとのこと。PS Vitaということで、メインキャラクターとカメラの挙動はジャイロ操作ありを前提に設計している。

 キャラクターの姿勢制御はアニメーションと揺れ物(髪など)を組み合わせている。約20関節のFKを細かく制御し、ゆらめくような動きを実現。揺れ物は物理挙動。それらに対して最後に、手付けのアニメーションをブレンドしている。さらに、ブレンドの比率を乱数にして動的に変化させ、複雑な挙動を作っている。乱数を混ぜているので、同じようなアニメーションの挙動が生まれづらいというわけだ。

 カメラの制御について。本作では地上に降りている時は普通の3人称カメラだが、空中にいる時は球面を動く独自のカメラを使用。球面の最短経路を通るように制御されていれ、カメラ操作の面では右アナログスティックの動きに加え、ジャイロ制御も乗算している。

 ゲーム中のステージデザインについて。ステージは全てMAYAで作られているそうだが、ここに多数のオブジェクトを高速にプレビューできる独自設計のリファレンスノードを用意したという。従来のMAYAのリファレンスノードよりも遥かに高速で、これにより階層的なデザインを実現できたということだ。

 シェーディングでも、MAYAのハードウェアシェーダープラグインを独自に作成。MAYA内で作った物を即座に確認できるようになっていて、アーティストの手間を削減している。


【空中での休憩カメラ、プラットフォーム依存のない形式で作ったデータ】
重力制御により空中に浮かぶ本作なので、カメラは球面を動くような制御のものに。カメラは球面の線形補完によって最短経路を通って動くようになっている。データ構築には、プラットフォームに依存しない形式を使ってSDKの仕様変更に耐えられるように。再出力の2度手間をなくしている
【独自にMayaのリファレンスノードとシェーダプラグインを作成】
多数のオブジェクトを高速にプレビューできる独自ノードを作成し、階層的なレベルデザインを実現。ハードウェアシェーダプラグインも作成し、アートの作業効率を高めた

◆ 「プログラム」―ゲーム中の描画は全て動的処理、2種類のライティングモデルをブレンドし、ポストエフェクトも豪華

 ゲーム中の描画について。実は本作のゲーム内では、キャラクターはトゥーンシェーディング、背景はHDRというように2種類のライティングモデルが共存しているのだという。この異なるライティングがうまくなじんで見えるように、ポストエフェクトの段階でブレンドしているそうだ。

 動的処理の多さも本作の描画を見る上で欠かせない。本作ではゲーム内にプリレンダでできているものが存在せず、全て動的処理されている。オープンワールドなので限定されたシーンというものがないので必然的にそうなったということだが、シャドウの処理も全て動的に作られており、PS Vita上でスケールの大きなオープンワールドが全てリアルタイムに動作しているという、脅威的な作品となっている。これに対してはビューポートカリングやGPU遮蔽カリングを併用して実現している。

 ポストエフェクトの豪華さや、フォグによる独特な空の作り方も見逃せない。「線描」、「ブルーム」、「フォグ」、「露光調整」、「トーンマッピング」と、PS3でも使われているようなリッチなエフェクトの多くを使用。ポストエフェクトに全描画時間中の25%が使われているということだ。また特徴的な空は全て「フォグ」の集合体で描いており、空の色が変わる境界でも自然な処理を実現している。


【2種類のライティングモデルが共存】
キャラクターはトゥーン、背景はHDRと、2種類のライティングモデルがゲーム内に共存している。また、ゲーム内にはプリレンダが一切存在せず、カリング処理で高速に処理しているということだ
【カリング処理のON/OFF】
左がカリング処理OFF、右がONの状態。片方の面を描画しないカリングの処理をすることで視界に入らない場所を描画しないようにし、処理を軽減している
【ポストエフェクト】
ポストエフェクト処理は「線描」、「ブルーム」、「フォグ」、「露光調整」、「トーンマッピング」と豪華で、描画時間の25%を割いているという。色のついた空は実は「フォグ」の集合体でできている。空の描画とフォグを区別しておらず、近景の空フォグと遠景の空フォグをハイブリッドにブレンドした作りだ。こうすることで空の色が変化する境界の処理もうまくできたということだ

◆ プログラム視点からのまとめ。最終的にPS3レベルのデザインを実現できたPS Vita。まだまだ発展の余地もある

  -まとめ
   -PS Vita ではPS3なみの開発ができる
   -レンダリングもオープンワールドもPSPでは実現は難しかった
   -Windows開発は「GRAVITY DAZE」の開発で有用だった
    -いまのPS Vita の開発環境はとても充実しています!
   -リアクティブに開発する、あきらめない、クリエイター魂

 横川氏からの開発を終えてのまとめ。PS Vitaは「PS3レベルのゲームが作れる」といった声もあるが、横川氏としては正確には「PS3の開発技術を実戦できるハード」だと表現。ポータブル機としてのスペックリミットが当然あるのでそこに違いがあるが、いろいろな面においてPS3に近いハードと言えるとのこと。

 また、PS Vitaでの描画についてはまだまだ発展の余地があるとのこと。さらなる最適化により、描画解像度の向上、ロード高速化、ボリュームのアップが見込めるという。PS Vitaのスペックは現代的なPCの縮小版のようなアーキテクチャになっており、SPUを活用する必要がなく、メモリーに余裕がある。現代的な開発ができるのではとのことだ。

 Windows開発の有用さも再度語られた。今ではPS Vitaぼ開発環境は充実しているので今後はどうかわからないものの、Windows環境の短いパイプラインで作業できるのは開発にとって有利に違いないということだ。

 PS3からPS Vitaにプラットフォームが変わり、ローンチ時期にポータブル機でオープンワールドゲームを作ったという驚きの紆余曲折を経ているわけだが、横川氏は最後に、「どんな状況でも開発チーム一丸となってコミュニケーションを取り、あきらめなければ、いいものができる」と締めくくった。

◆ 「GRAVITY DAZE」チームが目指したのはサッカーチーム。壁を取り払ったニューロン型人間関係によるコミュニケーションで、新たな作品を作り上げていく

 ・「GRAVITY DAZE」チームとは、
  豊富なタレントを生かすためのチーム作り
   ・スタッフの個性と能動性を尊重する
   ・ドキュメントではなく、コミュニケーションを重視する
   ・局面ごとの結果に対して、臨機応変に対応する
    →ヒエラルキーではない「ニューロン型の人間関係」

  目指したのは「サッカーチーム」
   責任範囲の分散
   「オーダー」 と 「要望」
   チームが得たのはシステムではなく「文化」

「GRAVITY DAZE」チームが目指したのは「サッカーチーム」と語る五十峯氏。上下関係や担当の壁がなく、様々な意見を出し合ってブラッシュアップしていけたということだ

 講演のラストは、「GRAVITY DAZE」チームについて五十峯氏より紹介された。「GRAVITY DAZE」チームではスタッフの個性と能動性を尊重し、局面ごとの結果に対して臨機応変に対応するという、ヒエラルキーではない「ニューロン型の人間関係」を作れたことが成功の秘訣となったそうだ。

 わかりやすく言うと、チームのイメージにあったのはサッカーチームのようなスタイルで、選手1人1人がしっかりと判断をし、それぞれ役割分担こそあれど、上下関係は作らない。キャプテンは上司ではなくリーダーであるという意識で進めていったということだ。

 また、クオリティに対する責任範囲を分散したという話もあった。ある意味割り切った考え方だが、責任の範囲を区分して、チームの誰もが作品のクオリティを担っていると感じられるようにしたという。それだけに日々のコミュニケーションの濃度が高まったそうだ。

 こうすることで、チーム内には「オーダー」と「要望」という2種類のコミュニケーションが生まれていったという。「オーダー」は自身の責任範囲と他のパートの責任範囲との間で利害調整が必要な場合に話し合うという一般的なものだが、それに対して「要望」は、担当パートや利害調整とは無関係に「もっと良くするためにどうすればいいか」を提案しあうという独特なもの。この「要望」が本作を調整する時の指針となり、ブラッシュアップの精度が大幅に高まったということだ。

 こうした運営体制によって、各パートの誰もが萎縮することなくポテンシャルを引き出し合える、当初誰もが想像しなかったほどにチームワークがいい状態で開発ができたそうだ。五十峯氏は「個性豊かなメンバーが集まったチームであり、そこから生まれるものこそ、まさにゲームである」と締めくくった。




■ 「みんなといっしょ」―― 「みんいつ」誕生秘話から最新Ver2.00での新たな試み

●講演名  Friend network 「みんなといっしょ」
 〜「フレンド100万組」達成への道のり〜

●講演者
 Sony Computer Entertainment
 Worldwide Studios JAPANスタジオ
 プロデューサー:伴 哲(ばん さとし)


◆ PS Vitaでコミュニケーションを楽しむ新たなソフトを作ろう!
 ……だが、そもそもフレンドがいないという問題に直面

 ・2012年1月16日 “フレンド100万組”成立!!

 ・日本市場の問題点:
  "PlayStation Network"フレンドが、ほとんど活用されていない
  PS Vitaが普及する前に解決しなければ!

プロデューサーである伴 哲氏が登壇し、「みんなといっしょ」に込めた独特な発想を披露してくれた。コンセプトは“フレンドを作らないと進まないゲーム”という斬新なものだ

 Friend network 「みんなといっしょ」〜「フレンド100万組」達成への道のり〜の講演では、プロデューサーである伴 哲氏が登壇。技術面の講演ではなく、タイトルプロデュース面の講演だ。2012年1月16日で“フレンド100万組成立”を達成したという本作。そのコンセプトやシステムに込めた“フレンドを増やすゲーム”とはいかなるものなのかが紹介された。

 まずは本作の誕生秘話から。企画がスタートしたのは2011年4月頃で、「PS Vitaローンチに日本市場を活性化するコンテンツが欲しい」という提案があったことから、スタートしてということだ。当初は「週刊トロステーション」のPS Vita版を作るということも考えたそうだが、そうではなくPS Vitaにマッチする全く新しい“トロを使ったコンテンツ”を作ろうと考えを改めたという。

 新しいコンテンツを作ると決めてからまず最初に考えたのは、「PS Vitaならばこんな事ができるんですよ」と伝えるためにはどんなものを作るのが良いのか? というもの。PS Vitaの機能をおさらいして、伴氏はPSPには無かったネットワーク機能の豊富さに注目した。フレンド機能やメッセージ機能、3G/Wifiの接続機能などがあり、機能は充分。そこで「ネットワークコミュニケーションのソフトを作ろう」と考えたということだ。

 だが、コミュニケーションを楽しむにあたって、そもそも大前提として“フレンドがいないと話にならない”。かくいう伴氏もPSNのフレンドは2人のみ。PS Vitaはネットワーク機能が豊富なことから、今後フレンドと楽しむスタイルのソフトも増えていくに違いないと伴氏は考えたものの、そういうソフトが出てきてもフレンドがいない人は満足に楽しめない。「普及する前にこの問題を解決しなければ! 」こうした考えから、本作のコンセプトは“フレンド100人できるかな? ”というものになっていった。

◆ そもそもなぜ「フレンドが少ないのか? 」フレンドを作る心理的な敷居の高さを考察

 ・Concept『フレンド100人できるかな? 』

 ・どうしたら、フレンドが増えるのか?
  - 登録の仕方をわかりやすく
  - 登録しないとゲームが進まない
  - 敷居が低い

 コンセプトが決まったところで次に伴氏は、「今は2人しかフレンドがいない僕がフレンドを100人に増やすにはどうすればいいだろうか? 」と考えたという(100人というのは1アカウントあたりの最大フレンド登録数)。

 その方法を考えるにあたり、「どうしたらフレンドが増えるのか? 」、「なぜ僕は2人しかフレンドがいないのか? 」という根本を伴氏は探っていった。周囲の人間にも同様に聞いてみたところ、

「フレンド登録の仕方がわからない(友人のアカウントIDを知らない)」
「登録しなくても不都合がない」

 という声があったという。それを聞いて伴氏は、言われてみると確かにフレンドが必須なゲームというのはなく、フレンドを増やしていくのに積極的になる理由を提示できていなかったのではないかと思い返す事になったそうだ。

 伴氏はそこから“フレンドを作る”ということの敷居の高さを考えていった。知らない人は怖いという心理。逆に会社や学校など現実で会っている人であっても、ネットでも積極的に交流するというのはあまりしないかもしれないなど、そういった心理的な敷居の高さだ。

◆ “フレンドを増やすことをゲーム性の軸”に。キャラクターや名刺で敷居を取りさる

 「知ってる人からフレンドにしていこう」
 「PSNアカウント名を知らなくても問題ない方法で=検索なんかいらない」
 「フレンドを活用するゲーム的な要素を中心に=増えれば便利、ではなく」
  →ゲームデザインの根幹に据える

“人間味が感じられるキャラクター”でユーザーを表示することで、フレンド登録の心理的な敷居を下げている
従来のゲームはフレンドと一緒に遊ぶための補助的なフォローをするまでになっていたが、「みんなといっしょ」では純粋にフレンドの数を評価するという内容に。フレンド数が増えることでゲームが進展していく

 問題点がわかったので、新コンテンツではその逆を行けばいいということになっていく。フレンド登録の仕方を簡単に、アカウントIDがわからなくても登録できるようにする。フレンド登録をしないと進まないゲームにしよう。増えれば便利ではなく、増えないと進まないというゲーム性にしよう。こうしたゲームデザインが根幹になっていった。

 まずは登録の仕方をわかりやすくした方法。従来のフレンド一覧はリストにならんでいるだけのものだったが、「みんなといっしょ」では“人間味が感じられるキャラクター”で表現した。また、登録はこれまでだと検索したり一緒に遊んだアカウント一覧の中からフレンド申請するといったものだったが、ここも「相手キャラクターの顔を見て、面白そうだなと思った人に申請する」というフローを作っていった。

 また、フレンド申請では事務的な登録処理ではなく「名刺を交換する」というキャラクター同士の行動の中でフレンド申請も行なえるようにした。

 次に「フレンド登録をしないと進まないゲームにする」というものだが、従来のゲームだとフレンドと協力してゲームをプレイするなど、フレンドの存在はあくまで補助的なプラスアルファに留めているが、「みんなといっしょ」では純粋にフレンドの数を評価するというものにしている。とにかく本作をプレイしたらフレンドが増えてもらわなければならないからこその作りで、フレンドの数が増えると場所が増えたり、いろんなことが有利になるというデザインになっている。

 一方、リアルタイム性は排除している。一般的なオンラインゲームでは同じ時間に一緒にプレイすることが基本で、リアルタイムにコミュニケーションを取る。また毎日ログインしないと置いていかれてしまうのではといったような感覚も沸くケースがあり、初心者には敷居が高い。そこを「みんなといっしょ」ではソーシャル感覚に、リアルタイム性は関係なくフレンドを利用できるという作りにまとめている。

 続いて「フレンド登録の敷居を下げる」というもの。ここについて伴氏は、「手っ取り早いのはユーザーの方が使っているSNSでのフレンド関係をゲームに持って来られれば1番いい」と考え、昨今浸透しているSNSサービスの中から「Twitter」と連携。設定をすると、相互フォローしている人で「みんなといっしょ」を遊んでいる人が、ゲーム内の「Twitterロビー」に登場するという仕組みになっている。Twitterでよく見ているアイコンがその人のキャラクターの顔として表示されるので、心理的な敷居も下がるというわけだ。またTwitterで使用しているアイコンが画面を華やかにしてくれて、フレンドをより増やそうという意欲にも繋がるという効果もある。

◆ 1カ月の運営でユーザーのフレンド数は急上昇! フレンド成立100万組も達成!!

 ・フレンド数推移
  プレイ開始直後は、70%以上のユーザーが、フレンド“0人”
  1カ月後には、50%以上のユーザーがフレンド20人以上!!
   →フレンド”100万組“成立!!

フレンド数推移のグラフ。レイ開始直後は70%以上のユーザーがフレンド0人だったのだが、1カ月後には50%以上のユーザーがフレンド20人以上となった。また、1割未満ではあるがフレンド数100人に達したユーザーも誕生
フレンド成立数のグラフ。2012年1月16日で“フレンド100万組成立”を達成、Twitter連携登録数も4割を越えている

 こうして開発されPS Vitaローンチでリリースされた「みんなといっしょ」。ここからはリリースから1カ月後までのプレーヤー全体のデータが公開された。

 まずはユーザーの男女比。8割が男性ということで、伴氏は「もっと女性にも遊んでもらいたい」と語っていた。なお、データ中に性別が不明というものがあるが、これはゲーム内での設定項目に不明があるため。

 次に「ゲーム滞在時間分布」。要するに「ゲーム起動後から平均的に何分ぐらいプレイしているのか」というグラフだ。70%のユーザーが1回あたりのプレイ時間が20分以内と短めになっているが、これは本作が「フレンドにお仕事を発注して、時間経過後に結果を見る」という作りなので、短いスパンで起動から終了を何度か行なうというスタイルになる。こうしたユーザーの方々は1日のうちに何回かプレイしているということだ。

 アクセスが集中するのは深夜0時前後。これは、本作の肝である「名刺交換」の名刺の枚数が0時を越えると補充されるためで、フレンドを増やすために0時過ぎにゲームをプレイし、一通り名刺を配るという遊び方が多くされているためということだ。

 「日別起動数」では、さすがにリリースから1カ月の間に起動されている数自体は右肩下がりになっているものの、ユニークユーザー数自体には変化があまりなくて横ばい。プレイ継続率が高く、新規のユーザーが順当に増えていることがわかる。

 「フレンド数推移」のグラフ。こちらは「みんなといっしょ」がどれぐらいのフレンド増加効果をもたらしたかがわかりやすい。プレイ開始直後は70%以上のユーザーがフレンド0人だったのだが、1カ月後には50%以上のユーザーがフレンド20人以上となったということだ。また、全体の割合だと1割以下ではあるが、フレンドが100人に達したユーザーもいるという。1カ月でフレンド成立数は100万組を達成。この100万組という数字は1組あたり1件という数え方なので、200万回のフレンド登録申請が「みんなといっしょ」によって生まれたという計算だ。

 こうして100万組も達成した「みんなといっしょ」。次は「フレンドと他のゲームも遊んでほしい」というステップへと進んでいく。それが「みんなといっしょ」ver2.00だ。

◆ Ver2.00では“フレンドと一緒に遊ぶ”、「量より質」という次の段階へ

 ・祝・100万組達成!フレンドと他のゲームも遊んでほしい

  ・「みんなといっしょ」ver2.00
  ・Concept
   ・集めたフレンドと、どう遊ぶか?
   ・どのフレンドと一緒に遊びたいか?
   ・自分に足りないフレンドはどんなユーザーか?
    →これらに対する回答

 



バージョン2.00では「Facebookロビー」が追加。SNSとの連携を高め、さらにフレンドを増やしやすくしている

 3月29日に配信された「みんなといっしょ」ver2.00。コンセプトは「量より質」という、これまでとまた逆を行くものになっている。そこには「集めたフレンドと、どう遊ぶか? 」、「どのフレンドと一緒に遊びたいか? 」、「自分に足りないフレンドはどんなユーザーか? 」を考えてもらうというテーマが込められているということだ。

 既存要素の追加では、「Facebookロビー」が登場。Twitterと同様にFacebookアカウントと連携することで、「Facebookロビー」に友人のキャラクターが出現する。また、名刺の新デザインやラメ加工という要素も追加。服なども増えている。

 目玉の新要素は「フレンドダンジョン」というもの。お庭に出現した地下への階段から進めるコンテンツで、フレンドとパーティーを組み、ダンジョン内で戦闘をするという内容だ。ダンジョンに出現する敵は、なんと「まだフレンドになっていないフレンド候補のユーザー」となっている。戦闘は「名刺バトル」という敵と名刺をぶつけあうターン制バトル。デコレーションした名刺の方がより強くなる。

 戦闘に勝利すると戦闘中に使用できるアイテムや名刺のデザインといった報酬がもらえるほか、倒したフレンド候補にフレンド申請を申し込めるようになっている。ここでもフレンドを増やすという基本が活かされているというわけだ。そうしてフレンドになれば、敵として戦ったフレンドを次のダンジョン探索で仲間として連れて行くこともできる。凝った名刺のデザインやフレンド数によるレベルなどがゲーム性に組み込まれていて、フレンドと遊ぶという方向に掘り下げられたものだ。

 最後に伴氏は、これからも「みんなといっしょ」ではバージョンアップを続け、フレンドを増やす、そしてフレンドとどうやって遊ぶのかを考えて行きたい。フレンドと他のタイトルも一緒に遊んでもらって、PS Vitaを盛り上げて欲しいとして、講演を締めくくった。


フレンドとパーティーを組んでダンジョンに挑む「フレンドダンジョン」。フレンド数の多さによるレベルや、名刺やコスチュームがキャラクターのステータスに反映され、敵にはフレンド候補のユーザーが登場。戦闘後にフレンド申請ができるという徹底ぶりだ。フレンドと共に遊び、さらにフレンドを増やしていくという、一歩進んだ内容になっている

(C)2012 Sony Computer Entertainment Inc.

(2012年 4月 11日)

[Reported by 山村智美]