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Taipei Game Show 2012レポート

【Taipei Game Show 2012】SCE Asiaプレジデント安田哲彦氏インタビュー
“規制”から“支援”へ変わりつつある中国市場と、ホットな東南アジア市場について聞いた


2月2日〜6日開催

会場:南港展覧館

入場料:大人200元、子供100元


 Taipei Game Show 2012が2月6日閉幕した。ショウの主役を担ったのは、SCEのアジア部門SCE Asiaの管轄となるSCETである。ブースの規模、出展タイトル数、ステージイベント、どれをとっても圧倒的で、台湾メディアも口々に「Taipei Game Showはもう“SCE Game Show”ですよ」と言う。そこには台湾のゲームショウなのに、さっぱり台湾のゲームメーカーが目立たない現状を揶揄する響きが混じっている。

 そうした一強状態を危惧しているのは何よりもSCE Asia自身だ。台湾政府と交渉してハードを売りやすい環境を整備したり、新しいプラットフォームを展開する際にキラーコンテンツとなる中文版(中国語ローカライズ版)を1本でも多くサードパーティーにリリースして貰えるように、コピー対策にも力を入れる。

 その上で、台湾をコンシューマーゲームの市場として成立させるだけでなく、台湾そのものをコンシューマーゲームの新たな発信拠点とすべく、ゲームクリエイターの育成プログラムやデベロッパーの企業支援、そして業務提携によるコンテンツ制作支援にも特段の力を注いでいる。その実態についてはTaipei Game Show 2012レポートを通じてお伝えしてきたとおりだ。

 「手裏剣みたいにコピーソフトを配る」時代から台湾市場をウォッチしてきているメディアのひとりとしては、台湾産のオリジナルPS3タイトルが続々と生まれつつある現状は、まさに隔絶の感がある。残念ながら2010年までにアジアが日本を追い抜くことはできなかったが、その夢に向けて邁進し続けている組織を取材するのは非常にエキサイティングなことだ。Taipei Game Showレポートの締めくくりとして、今回もSCE Asiaのボスである安田哲彦氏に話を伺った。



■ 日本に次いでPS VitaをローンチしたSCE Asia。今後は3G版のリリースも

SCE Asiaプレジデント安田哲彦氏
SCETのオープニングセレモニーで、アイドルの安心亜さんと共にPS Vitaを掲げる安田氏

編集部: 先日、平井一夫さんがソニーの社長となる人事が発表されましたが、元SME、元SCEの平井さんがソニーのトップになることによってSCEおよびSCE Asiaにどのような影響があると考えていますか。

安田哲彦氏: 40歳からゲームの仕事を始めて、最初は日本、そしてアジアと、常に自分の責任範囲のビジネスを成長させる事に集中して来ました。やる事は明確なので、あまりトップ人事がどうこう、という影響はこれまでありませんでした。平井さんはSCEグループの出身ですから、普通に考えて、悪い影響はないですよね。

編集部: SCE Asiaに関して何か影響はありますか。

安田氏: 平井さん自身も、ここに至るまで、そしてこれから大変だと思います。もちろん、色々なサポートはして頂けると思うのですが、我々は、我々のやるべき事を、引き続き一生懸命やって行く事が必要だと思っています。私のグループは、特色として、人事異動で移ってきた人が少なく、私が一本釣りで連れてきた人が多いので、結束力は保証できますよ。

編集部: 短期的には影響は無いと。

安田氏: 影響があっては困るでしょう。やるべき事は明確ですし、そこがブレる事はないと思っているので、心配していません。私としてはあくまでゼロからスタートしたSCE Asiaをどこまで成長させていくかに尽きます。著作権の保護やいろいろな仕込があってこんにちまでやってきたのです。誰かが変わってやろうとしたら、そっくり人がいなくなってしまうと思う。……と思っているのは俺だけだったりしてね。俺が辞めても全員ガッチリ残って、「あれ?」みたいな(笑)。

 ただ、私は今年でもう60歳なんですよ。ですから何らかの会社との話し合いがない限りは今年で定年という話になると思います。ただ、私は今までみんなを引き連れてやってきた以上は、ある程度先が見えるまでやってみたいです。それには後3年から5年はかかる。

編集部: 65歳までやると?

安田氏: やりたいとは思っているのですが、こういうものはお願いするものではありませんからね。

編集部: 2011年は多くの輸出主体の日本企業にとって大変な年になりましたが、SCE Asiaはいかがでしたか。

安田氏: 倉本さんというゴルファーがいて、すごく荒れたコースで大会をやったときに、「荒れて大変ですね」とインタビューされた際に、彼が一言「みなさん条件は一緒ですからね」と返された。うちだけが大変というわけではなくみんな大変だったわけだから、なるべく言い訳にせず前進してきたというのが正直なところです。

編集部: 2011年の末にPS Vitaがアジアでも発売されましたが、欧米より先行発売したのは驚きました。

安田氏: しつこくお願いしました。もちろんWi-Fi版だけでなく3G版も台湾で2月17日に出すのですが、色々とお話を十分にさせていただいた上で進めているので少し時間がかかっているだけです。

編集部: 先行発売にこだわったのは並行品対策ですか?

安田氏: そういうことですね。先に出しておかないと信用してもらえない。ユーザーの方々が、もし早く他が出てしまうと買ってしまう可能性がある。彼らが悪いわけではなく、時間差ができること自体が悪いのです。そういった商品には修理の問題やいろいろなことがあって、並行品は当然プレミアがついて不当な金額がつくことがあるので、この地域は弱い地域なので出してくださいということをひたすらお願いして、なんとか入れてもらえました。

編集部: 今アジアで売っているのは台湾と香港の2カ所ですか。

安田氏: 台湾、香港と、2月11日に韓国、2月22日にシンガポールでも発売されます。まずは、Wi-Fi版の発売となります。

編集部: 台湾、香港は発売して1カ月余りが経過しましたが、売れ行きはいかがですか。

安田氏: 良いですよ。ものすごく良い。うちの場合、台湾なら台湾で、1軒1軒の店とのパイプがあるので、あなたのところで何台、あなたのところで何台と足し算で積み上げていくわけです。ですから数がたまたまたくさん売れたとか売れなかったというのがあまりないのです。ですからだいたい予定通り。今回は良いという評価を頂いていましたので比較的に積極的にやっていただいた結果、順調です。

編集部: PS3の時と比べて滑り出しはいかがでしょうか。

安田氏: 良いですね。価格は日本とそんなに変わらなかったと思いますので、割高感はなかったと思いますよ。

編集部: アジア版のPS VitaはSIMフリー版だと伺っているのですが、SIMフリーにした理由はなんでしょうか。

安田氏: いかにユーザーに喜んでもらえる商品、サービスを提供していくか、アジアのマーケットにおいてはSIMをロックしてしまうよりも、フリーにしたうえでキャリアとパートナーシップを組むことがよいという結論になりました。パートナーキャリア様からはPS VITA専用の非常に魅力的なデータプランを設計して頂けています。ですから、3G/Wifiモデルを購入頂き、「いつでもどこでも繋がる」というPS Vitaの商品コンセプトを楽める環境が準備できていると自信を持っておすすめできます。

 

編集部: ビジネスモデルは?

安田氏: 基本的に日本と同じです。

編集部: ゲームソフトの中文化についてはいかがでしょうか。

安田氏: 東京のほうにローカライズスタッフが10人くらいでやっています。台湾でも9人でやっています。日本と台湾両方でやっています。人件費だけの問題ではなくて色々なコストを見ると全部東京でやってしまうと高めになってしまうので、我々としてもまだ膨大な数が売れるテリトリーではないので、初期はコストダウンを考えなければならない。

編集部: PS Vitaのソフトは現状何タイトルくらい中文化されているのでしょうか。

藤井卓氏: 弊社内製の「アンチャーテッド」がローカライズされて出ています。「みんなのゴルフ6」もこれから中文化されます。Taipei Game Show 2012でステージイベントがございますが、スパイクさんが「忍道2」のローカライズ版を作成中で、今回のステージでその発表ができると思います。PS3はローンチから我慢しながらいろいろやってきたので、パブリッシャーさんからだいぶ売れるようになってきたという評価につながり、ローカライズ版をご用意いただくということになりました。実はこちらからお願いしなくてもやっていただけるようになったのは大きな変化になりました。今後ローカライズタイトルはもっと増えていくと思います。



■ PS3の装着率は1:5まで上昇。今後はエマージング向けの新しいビジネスモデルも

「PS2時代は装着率が1を割り込んでいた」と告白する安田氏。本体だけ購入して、あとはコピーというユーザーがいかに多かったかを示している
参考までにインドネシアのゲームショップの風景。PS3以外のゲームソフトはすべてコピー。20,000ルピアは180円前後

編集部: PS Vitaで懸念されるのは海賊版です。まだハックされたという話はありませんが、現在どのような状況なのでしょうか。

安田氏: とにかく、ハッキングされないように、そして、ハッキングされたとしたら素早い対応をする、これに尽きます。PS3は、Blu-rayを採用した事、そしてハッキングに対して素早い対応を積み重ねてきた事で、正規版がきちんと売れる市場がアジアでもできあがりました。ハード1台に対して累積で売れたソフトの枚数は5枚を超えつつあります。それが証拠に、並行輸入業者の方々が取り扱うゲームソフトは、ほとんどPS3のみになってきているらしいです。つまり、PS3でないと、商売にならない、という事ですね。Vitaも同じような位置づけになって行くと思います。

編集部: コピーまみれだったPS2やPSPの時代から、今後PS3やPS Vitaの割合が高まるにつれてSCE Asiaの利益率はどんどん高まっていくと?

安田氏: 上がってきますよ。こないと困る。

編集部: PS3では装着率が現在1対5ということですが、PS2の時代はもっともっと低かったということですか。

安田氏: PS2時代は1を割り込んでましたよね(笑)。装着率が下がるというのはエマージング(エマージングマーケット:新興市場)に流れている証拠なのです。まだはっきりとお話し合いをしたことはありませんが、ソフトメーカーさんにはたとえば5年なら5年の期間しっかり売っていただいて、その後はエマージングのほうで安い値段で売ってもいいのではと思ってますよ。

 私がベトナムに行って思ったのは、価格設定の重要性です。ソニーの販売会社の大学出の初任給が100ドルだというのです。今のレートで7,500円です。そういう彼らに対して5〜6,000円のソフトを買い続けろというのは酷な話なのです。にも関わらずそこらへんをあまり厳しくするとゲームの芽を摘んでしまいかねない。ある意味ではある芽は見てみぬふりをしながら商売をできるところではしていくことを時間をかけてやっていくしかないのかなと思います。そこで目くじらを立てて海賊版対策をしてもやられるほうも困るだろうし、こちらも実情を知っているから力が入らないですよね。

編集部: なるほど。それはつまり、ゲームソフトの正規価格に時効を設け、それを過ぎたタイトルは、現地の実情に合った価格でソフトを売ってもいいのではないかということですか?

安田氏: そういうことですね。

編集部: でしたら、まずはファーストパーティータイトルから試してみても良さそうですね。

安田氏: それはもう考えています。しかし商品とは不思議なもので安くしたところで逆流という論理も万一には考えられるので、簡単にはいかない状況です。

編集部: ここ数年でオンライン配信が急成長していますが、ここで話題にされているのはパッケージを安くするという話ですよね?

安田氏: オンラインはオンラインであると思うのですが地域によってはインフラの問題があります。ダウンロードよりも、単純に安いものが好まれますし、そういう地域はやはりパッとディスクを入れて電源入れて遊べるというほうが好まれますよね。

編集部: 昨年インドネシアに何度か行く機会があったのですが、凄まじいコピー天国ですね。

安田氏: インドネシアも正式に展開している地域のひとつですが、まったく手が足りていません。あそこは2億人以上の人口がいますから、これから伸ばしたら面白いマーケットなのです。しかし法規制がなかなかやっかいで、たとえば法律があっても施行されないとか色々難しいところがあるのです。日本やシンガポールと同じような状況にはまだならないですよね。

編集部: 都心の風景はどこもあまり大差ないですが、車で1時間も走ると、原始的な風景が広がる。そういう所にもネットカフェならぬFacebookカフェがオープンしていて、お客さんが集まって1時間何十円というビジネスでカチカチとやっている。どの国の人もゲームを遊びたいのは一緒なのだなと感じましたね。

安田氏: その芽を大人のロジックで摘んでしまうとゲームは育たないので、そういうところは時間をかけて所得が上がるのを待つほかないかもしれない。

編集部: 今、何らかの手を打つのではなく待つと。

安田氏: やるならしっかりやらないと、コピーが当たり前になってしまって、香港、台湾、シンガポールでは、コピーがゼロとは言わないまでも、少なくとコピーは悪いことだという認識はできましたが、それと同じようなところまでも行かないということになってしまいますからね。



■ 緩和へ向かいつつある中国市場。SCE Asiaは今年本格進出を果たす!?

中国展開に関しては、様々なアプローチで質問を重ねてみたが、具体的な話は引き出すことができなかった
ゲームビジネス最大の市場として注目を集める中国。ついに今年は解禁されるか?(写真は上海のもの)

編集部: 今回お話を伺いたかったのは中国市場です。昨年2月から様々な外的状況が変わって来ていて、いよいよ潮が満ちてきたのかなという印象を持っていますが。

安田氏: たっぷりと話をしたいのだけど、もう少しだけ待って下さい。相手がある事なので、不用意に話した事が相手のご迷惑になってしまう事もあるので。とにかく今は、慎重に事を進めていますので、お話しできるタイミングが来たら、必ずお話しします。すみませんね、せっかく取材に来て頂いて、しかもそちらが1番お聞きになりたい事なのにね。ひとつだけお話しできる事があるとしたら、現在広州にある駐在員事務所は拡張します、という事ですね。

編集部: 昨年1月に広州市とゲーム産業育成に関する覚書を交わして以来、表立った発表はありませんでしたが、その後も、台湾と中国の間でECFA(両岸経済協力枠組協議(Economic Cooperation Framework Agreement)が締結されたり、共産党大会でゲーム産業の育成が議決されたことなど、外的な要因はいろいろ変わっていますよね?

安田氏: つまり、水面下での動きをきっかけに外的な要因が変わっています。中国での報道量は10倍〜20倍になりましたね。とりわけ、党から対外的に発表する中国国内におけるゲーム産業を今後どうするかという発表に対する報道は同じ時期の20倍に達しています。これまでのようにゲームの販売は認めませんよということではなくて柔軟性を持って考えていきましょうということになっている。国の施策が規制から支援に変わっています。

編集部: 共産党大会の決議は、共産党がゲームビジネスを認めたということですか?

安田氏: デジタルコンテンツを、全体的に振興して行くべき、という方向性が出たという認識をしています。

編集部: ちなみに、中国においてゲームビジネスを展開する上で障害となっている「44号文書」との整合性はどうなるのですか?

安田氏: 個別の法律に関しては、どうなって行くかは今後の動静を見守りたいと思います。

編集部: ゲームは例外にするということですか。

安田氏: 具体的にどうこう、というのは現時点では判断できませんし、我々が勝手な解釈をしてはいけないと思っています。ただ、現実問題として中国には並行品などがかなり入っている状況ですから、それであれば、むしろ国として、産業として振興しようと思われても不思議ではないような気がします。

編集部: 中国に入る並行品は香港からのものですか?

安田氏: 香港からのものもあると思いますが、実際に市場で見てみると、世界中から入っていますね。ですので、かなりのユーザーがプレイステーションのみならず、家庭用ゲームを現状でも遊ばれているのは事実だと思います。

編集部: ちなみに中国展開する場合、ハードは何を投入されるつもりですか?

安田氏: きちんとソフトが売れるように、PS3、そしてPS Vitaもユーザーにお届けできるようになると嬉しいですよね。PSPにも可能性があると思いますし。

編集部: モノは売れるようになっても、オンラインサービスはまた別の規制がありますよね。PlayStation Networkはどうするのですか?

安田氏: まずはハードとソフトが提供できるようになるのが先ですが、PlayStation Network(現:Sony Entertainment Network)も、もちろん是非提供できるようにしたいですよね。

 

編集部: なるほど、香港や台湾のPSNに繋いでくださいというのではなく、中国は中国で正規のPSNのサービスが受けられるというわけですね。

安田氏: とにかく、もしサービスが提供できるようになったとしても、まずは、「ユーザーが何を望んでいるのか?」を、きちんと把握して、それから色々と考えなくてはいけないと思っています。

編集部: 話を変えて、広州市で実施が予定されているクリエイターの育成支援プログラムについてですが、これは現在はどのような状況ですか?

安田氏: 順調に進んでいて、育成を行なう施設もできあがってきているところです。

編集部: SCE Asiaの役割は?

安田氏: ソフトを作るご指導をさせていただきます。うちが開発機材を貸し出して、使い方を教えて差し上げて、向こうの学生さんないしはソフトメーカーさんに学んでいただきます。

編集部: 施設の運営は?

安田氏: 先方がお持ちになるところもあるし、うちが負担するところもあります。多くは向こうが負担されると思います。

編集部: いつからスタートするのでしょうか。

安田氏: まもなくです。ですから、いろいろなことを一時にお話できることがあると思うのです。長い付き合いですのでそのときには真っ先にお話します。

編集部: SCE Asiaのスタッフが中国各地を回っていると伺っていますが、今後に向けた布石ということでしょうか。

安田氏: もちろんです。具体的な人事異動も含めて考えています。事務所が広州にあるわけですが、そこの人員だってちゃんとしたやる気のある方が集まってきていますし、ここにいる人たちもいつまで日本の飯が食えるかわかりませんよ(笑)。



■ 台湾市場はオンライン接続率が上昇。「E-1000」のアジア投入予定はなし

前SCET総経理で、現在中国事業推進&新規事業開発室室長の本間和彦氏
本間氏と片腕として中国を飛び回る日々を送る中国事業推進&新規事業開発室 新規事業開発課課長の大和田健人氏

編集部: 台湾に関しては総統選挙がありまして馬英九さんの続投が決まりました。これについていかがですか。

安田氏: どちらの党が勝っても今進めている話は何も変わらないと思います。どんどん良くなっていくと思いますよ。

編集部: 中国と台湾は経済面では蜜月関係ですね。それは台湾に来る度に感じます。

本間和彦氏: そうですね。台湾南部の農村の方々が中国に農産物を買ってもらったりとか、養殖している魚を買ってもらったりとか、南部は非常に民進党寄りだったのですが実際自分たちが生産しているものを買ってもらえるのがありがたいというコメントを聞きました。

安田氏: 南の方でお米を食べるとうまいのですよ。新幹線乗っていただくとわかりますが、一面の田んぼになってきて、日本みたいです。獲れたお米も日本みたいなのです。八田さんという昔の日本の方が水灌漑を導入してできた米なのでうまいですよ。接待の席で、最初に太巻きが出てきたのを「何だよ」と思って口にしたらうまくて、3つくらい食べてしまったら後から山のように出てきて何も食べられなくなりました(笑)。食べ物は何でもおいしいですよ。老後を過ごすのに良いかなと。

編集部: 開放路線の継続というのはSCE Asiaにとっては追い風ですよね。

安田氏: ある意味ではですね。ゲームというのは娯楽だから、雰囲気が暗いとやっていきにくい。最初は反対していたけどいざその場になってみたらデメリットばかりではないなということがわかると、人間ウキウキになってくる。レジャーを提供したらみんな喜んで遊んでくれるという状況にはなってくる。

編集部: 台北についてはコンシューマーゲームの浸透ぶりはもう日本と変わらないほどですが、台湾の中部南部はどのような状況なのですか?

安田氏: コピーが無いとは言い切れませんが、だいぶ良い状況にはなってきています。

本間氏: 台北で6割、そのほかの中南部で4割をやっている感じです。台湾では今後1番期待したいのは社員の育成です。その人たちが中国で立ち上げのときにマネージャー的な仕事ができれば、1から中国の人に伝えなくて済みますからね。

編集部: 高雄にインキュベーションセンターがありますがこちらの事業は継続されるのですか。

安田氏: 今のところは継続するつもりですが必要があれば手を加えるつもりです。必要とされる間はやりたい。

本間氏: 今回開幕の際に安田が申したメイドイン台湾のゲームがあり、3タイトル+ビデオ出品があります。これ以外に準備中のものがあります。売れるものが出てくるのは非常にうれしいことでして、麻雀ゲームと「台湾高鉄」を見て、それに刺激されてインキュベーションセンターの方々もあれを目指そうと。手近に目標がないとなかなかうまくいきません。すごく良い目標が最近できあがってきている感じです。

編集部: インキュベーションセンター発のタイトルはいつ出てきますか。

本間氏: もう少し時間がかかると思います。柔軟なサポートをしようと東京も考えておりまして、実力があって開発機材さえあればという方には開発機材を渡して自力でやっていただくし、その前の修行をしないといけない方には教育の機会を提供できるように考えていきたい。考え方よりも国によって状況が違うので、そこに合わせたローカライズをしていくべきかと考えています。

編集部: 世界のゲーム界発の趨勢を見ますと、グローバルではUnityの勢いが圧倒的です。アジアではUnityはどうなのでしょうか。

本間氏: 多いですよ。台湾のゲーム開発会社の多くもUnityを使っています。インキュベーションセンターの何チームかはUnityを選んでいます。

編集部: PSファミリーとUnityの相性はどうなのですか?

大和田健人氏: プロトタイピングをする点ではPCベースで作ったものをすぐにPS3にするというところで早く作ったものに触れてみたいということが多いのでそういう際には良いと思います。当然ミドルウェアというものに技術的な限界があるにしても、前の段階で使われていますので非常に良い技術だと思います。所得の問題もあり先進国と同じライセンス料というと限界があると思うのです。ツールメーカーの方にもご理解を頂いて、もう少しエントリーしやすいライセンス価格でご提供いただくという話を今後できていったら良いですね。

編集部: 台湾市場についてもう少し話を伺いたいのですが、新たなトレンドとしてどういった動きがありますか?

本間氏: ローカライズタイトルが増えてきて、PSNが本格的に離陸できつつあります。

編集部: というと、今までは離陸していなかったのでしょうか。

本間氏: 離陸していたとはいえ、パッケージメディアのほうが売れるのです。今も圧倒的にパッケージメディアなのですが、PS VitaからはPSNから買っていただける人たちがあきらかに多くなりつつある兆しが出てきています。ただインフラの問題がありますので何GBという容量を気軽にダウンロードできる環境は限られていますので、そこは現実に即したカーブだと思います。後は、お正月前後の4週間を見るとPSPがPS Vitaを上回っていることがありました。PS Vitaに関しては3Gモデルがこれから出るため、多少の買い控えはあったにせよ、PSPはまだ力がありますね。

編集部: そうなると、今後PSPに関してアジアオリジナルの展開はありえますか?

安田氏: 検討はしています。ただ、オリジナルのハードを作るというのは、非常に難易度が高いです。数が少ないと、どうしてもコスト高になってしまいますし、ソフトメーカーの皆様のご支持も頂かなくてはいけないし。ただでさえ、所得水準は高くない地域なので、ここにコスト高なものはそぐわないですしね。

編集部: 欧米ではE-1000と呼ばれるPSPの廉価モデルが存在します。Wi-Fi機能はありませんが、安いという点ではアジアに向いているのかなと思ったのですが。

安田氏: アジアでの展開ももちろん検討しましたが、現時点では投入の予定はありません。

編集部: それはやはりアジアではオンラインに繋げないハードは成立しないということでしょうか。オンラインへの接続率は、かつてアジアはそんなに高くないと伺っていましたが現在はどうなのでしょう?

藤井氏: PS3は先進国並みに繋がっているといっても過言ではありません。PSPはかなり落ちてしまいますが、PS Vitaもかなり高いです。ただ、PlayStation Storeでソフトを買うというより、ネットに繋いで遊んだり、コミュニケーションを取ったりするという使い方が多いようです。

編集部: アジアでは、PSPはまだ勢いがあるとのことですが、今後もPS Vitaと併売を続けていくのでしょうか?

本間氏: たとえば中国という国を見たときに、北京、上海、広州といった1級都市での比率と、2級の都市ではまた異なることもあるかもしれません。台北はやがてPS Vitaが上回ると思っていますが、中南部では数が同じくらいになるかもしれない。それぞれの都市の所得水準や労働人口の水準の分析をしながらやっていきたいです。

安田氏: 何も考えないでやれば簡単なのですが、現場を回っていくとわかってしまいます。中国と一言で言っても細かい都市の集まりなのです。1級都市から3級都市まであって、それぞれの品揃えは全く違ってしまう。所得の問題もあるし情報の問題もあるし諸々です。また難易度という観点もあります。「(初代)プレイステーションは無いのか?」といったことも時々あるぐらいです。そんなに最新鋭が求められていないし、まずは遊びを提供することが大事ですよね。

【PSP E-1000】
個人的には確度の高い質問として用意していたPSP E-1000の販売予定は、意外にもないという。アジアでは従来通りPS VitaとPSP(PSP-3000)の2ラインナップで攻めるつもりのようだ



■ 2012年は中国と東南アジア。SCE Asiaのメインターゲットはコアユーザー

日本からアジア市場を支援するサービス&コンテンツ企画部部長 藤井卓
安田氏は常に直裁的な物言いを好むため、同席のスタッフからたびたび“ストップ”が掛かる。その発言の多くは誤解を招きすぎるためインタビューには掲載できていないが、そうした部分も含めて魅力的なリーダーだ

編集部: 2012年はどのような年になるでしょうか。

安田氏: 今までアジアを一生懸命耕してきたのだけど、そこに新しい地域が加わったり、今までダメと言われていたところが少しずつ受け入れ態勢が出来てきたところを見て、アジア地域の他の国も刺激を受けるのではないかと考えています。そうするとビジネスのお話をしやすくなりますよね。

 

編集部: SCE Asiaはここ数年でアジアのほとんどの地域をカバーしてしまった印象がありますが、アジアで未踏の地域とはどういったところですか?

安田氏: いやいや、まだまだですよ。インドネシアとかは、かなり広い国ですからね。周辺地域と複雑に絡み合った経済圏が作られていたりするので、きちんと実情を理解した上で、最適な方法で商品を導入する必要があるな、と思っています。

 フィリピンは、統計データ等ではとても推し量る事ができない実情があります。想像以上に、海外で稼いだ外貨が流入していて、その結果、実際の消費活動はかなり旺盛だったりします。現場を見てみると、正規品のゲームソフトがかなり売れていたりして、驚かされます。もちろん、地域差は非常に大きいですが。いずれにしても、変化のスピードが激しいので、常に最新のマーケット状況を把握して行動を起こさないといけないと痛感しています。並行品が入ってしまうのは、関税が高かったりすると、ある程度はしょうがないと思うのですが、コピーや侵害品に関しては、前述のように、芽を摘み取り過ぎない範囲で、というのはありますが、ソフトメーカーの皆様の権利を守るためにも、地道な啓蒙活動と、毅然とした行動をうまくブレンドしながら、柔軟に対処して行きたいですね。

藤井氏: 実はフィリピンではPSNも正式な稼働できていません。税率やいろいろな問題があります。ですが、やる余地はたくさんあります。

安田氏: タイにしてもインドネシアにしてもマレーシアにしてもまだまだ営業活動という点ではやることは残っていますので、しっかりやることによって何割かのアップは果たせると思います。

編集部: 具体的に新たなブランチをつくる計画はあるのでしょうか?

安田氏: もしかしたらシンガポールに作る可能性がありますが、法人にするかはわからない。というのも、周りは高関税の国ばかりなので、正式にやっても売れる台数が少ないのです。1台納品すると10台は並行で入ってきてしまうような地域なので、成立しないのです。かといってシンガポールは人口が400万人くらいですから、そこの地元で売ろうと思っても大して売れないのです。

編集部: 東南アジアの広がりを見て、アジアのハブとしてシンガポールオフィスを再興させる計画ですか。

安田氏: そういうことですね。駐在員事務所や活動拠点にする感じです。この前事務所を借りました。十畳くらいの事務所ですが、開発機材を置いておいて、出張者はそこで鍵を開けて仕事をすることができるようにしています。それを拡大するかどうかはこれからです。

編集部: 今後も東南アジア地域に対しても力を注ぐと。

安田氏: 中国が伸びると同時に、東南アジア地域も伸びます。おろそかにはできません。今まで良かったところがダメになってくることも当然あると思いますし、その逆もあるでしょう。例えば香港でも税率などの面で商売をやる条件が台湾に近くなってきたとかですね。そこが今後10年後どうなるかを研究しなければならない。考えているうちに60歳になってしまった(笑)。今、プライオリティナンバーワンは中国です。ちゃんとした形でスタートを切りたいですね。

編集部: 一方、韓国市場はSCE Asia直轄になってからも依然苦戦していますね。

安田氏: ご存じのように韓国はPCネットワークゲームの勢いが強く、うちだけではなく、コンシューマーゲームビジネスに携わる方々は楽ではない状況が続いています。最近ネットワークに関する規制も厳しくなってきています。営業的に、やはり重要なのは、ユーザーの方々、そしてユーザーの方々にゲームを販売する販売店の方々とのコミュニケーションだと思っています。地道な店舗訪問活動などを通して、大分販売店の方々の「顔」が見えるようになってきています。手間もかかりますし、大変な仕事ですが、こういった基本から再度組み上げる必要があると思っています。

 余談ですが、東京の私のオフィスには、発売されたソフトが並んでいるのですが、部屋に来る人達が、「これ、頂いてもいいですか?」と良く聞かれるので、どんどんあげちゃうんですよ。で、その結果として、今、私のオフィスの棚に残っているものは、やはり市場での動きも活発ではないソフトなんですよね。もし店頭のソフトの陳列がそんな状況になってしまっていたら、ユーザーは寄りつかないですよね? そういったわかり易い例えをしながら、販売店の皆様と、より売れる店頭、よりユーザーにとって魅力的に見える店頭を造っていかなくてはいけないと思っています。

編集部: グローバルのゲームビジネスのトレンドのひとつにFree to Playがあります。これはアジアでも同様の状況となっていますが、SCE Asiaは今後そういったビジネスをやるつもりはありますか?

安田氏: いくらだったら買うという話で、タダならみんな買ってくれる。ただ、これをやり出すときりがないし、我々はボロ儲けしているわけではなくて適正利潤を上げながらコストダウンをしながら売っているわけです。ソフトメーカーさんもそうだと思うのです。ですからあまりそういった策を弄しすぎると行き詰まってしまっているのではないかと思っています。もちろん、SCEとしてそれで儲かる道が見えていたらやりますよ。わからないでやりたくない。なんとなく当てずっぽにやってあたったからといってずっと続かなかったらどうするのですかと。もとには戻れないではないですか。もう少しそういうところも考えながらやりたいです。

編集部: ゲームユーザーの多様化について伺います。ゲームは、私たちのような中年男性ばかりでなく、若い人や女性や主婦といったいろいろな人がゲームに関心を持ってやるようになりました。そうした中でSCE Asiaではそうした新しい層のユーザーさんに対してどのようなサービスを提供していきますか。

安田氏: 同じように多様化していっているとは思うけれどもそんなにアジアは選択肢がいっぱいあるわけではない。レジャーという点でですね。まだまだ我々がターゲットと思っている人たちは取り切れていないと思っています。もちろんその周辺には携帯ゲームや新しい人たちはいると思いますが、日本で夢中になってゲームに明け暮れているような人たちはまだまだこれからも出てくると思います。そういった方々に愛想つかされないように頑張ってやっていきたいです。

編集部: つまり、SCE Asiaは今後もコアユーザーさんをターゲットにしていくと?

安田氏: 私はそのつもりです。もちろんライトユーザーさんも大事ですが、ゲームをたくさんお買いになっていただけるのはコアユーザーの方ですからね。PS3の問題点は、思ったより売れていないことだけです。モノとしてはPS3は良い機械だと思うし、他社さんのハードなんかと比較しないでもらいたいくらい良い商品です。値段を高く設定してBlu-Rayにしてコピー対策を厳重にしているので、普及スピードが想定よりも遅いだけです。

 他社さんのハードは最初からエマージングマーケットにもどんどん出荷されていきました。ですからハードの数はあちらの方が多いですが、ソフトの装着率となると、我々は1対5くらいですが、他社さんはひどい状態です。これは誇れる数字だと思いますし、現にソフトメーカーの皆様からもご支持を頂いています。その証拠が、ローカライズ作品の近年の充実ですよね。

編集部: アジアに関してはPS3の1強状態ですよね。

安田氏: おかげさまでソフトが売れるプラットフォームが最終的に支持されているという事は大変嬉しいですね。我々はまだアジアで勝ったと思ってませんし、これからまだまだ広げていきますよ。

編集部: 安田さんにとって勝ちとはなんですか?

安田氏: ビジネスとして継続できることだと思います。

編集部: アジアのゲームファンにメッセージをお願いします。

安田氏: とにかく全力で継続していきます。近々、新しいゲーム仲間が増えるかも知れません(笑)。我々はハードを売るだけでなく、ソフトが売れることを重視しながら仕事を進めていきます。ソフトというのはユーザーの皆さんの欲しがるソフトのことで、アジアの皆さんの期待に答えられるように進めていきます。引き続きクオリティの高い商品をご提供していきますのでどうぞご期待ください。

(2012年 2月 9日)

[Reported by 中村聖司]