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Taipei Game Show 2011レポート

SCE Asiaプレジデント安田哲彦氏インタビュー
NGPや中国展開、コピー対策から“PS4”までホットな話題が満載のアジアビジネス



2月18日収録

会場:晶華酒店


 今年のTaipei Game ShowではSCEグループの台湾法人SCETの一強状態だった。それを統括するのがSCEのアジア部門SCE Asiaである。SCE Asiaの本拠地がある香港のゲームショウAsia Game Showでは実質的にはすでにSCEH(Hong Kong)のゲームショウとなっており、台湾でもまた同じような光景が繰り広げられつつある。地場のメーカーをも凌ぐその圧倒的な浸透力は、“安田組”ことSCE Asiaのパワーの源泉と言っていいかもしれない。

 そのSCE Asiaを率いるのがご存じ安田哲彦氏である。奔放な発言でたびたびSCEグループを騒然とさせるばかりか、社内批判を平気で行ない、他のリージョンとのケンカも厭わない。自他に厳しく、二言目には浪花節が飛び出す。そのわかりやすいキャラクター性がためにSCEグループ内でも密かなファンが多く、SCE Asiaのスタッフは「ウチのオヤジは」とどこか誇らしげで、多国籍組織でありながら無類の結束力を誇っている。実在してるのが信じられないような不思議な組織である。

 その安田氏に今年もインタビューする機会に恵まれた。話題の次世代機NGPや中国展開、PS3のコピー対策等、アジアに限らずグローバルの話題をじっくりと話を聞いてきたので、是非お楽しみ頂きたい。



■ NGPについて。アジアは世界最速発売を狙う

SCE Asiaプレジデント安田哲彦氏
SCE Asiaが担当するビジネス領域、分野は非常に広い。このため、毎回多くの担当者に出席していただいている
SCEが1月27日に正式発表した次世代携帯型エンタテインメントシステム「NGP(コードネーム)」

編: このタイミングでNGPを持ってきていたのは驚きました。この新しいゲームプラットフォームに関してコメントをお願いします。

安田氏: この数年間、SCEはハードウェアマーケティングのような発表が続いていた気がします。今回は白と黒と間のグレーみたいな雰囲気ではなくて、はっきりちゃんとゲーム機を発売しますというメッセージが伝えられたと思います。ですから、ソフトウェアメーカーさんも「大丈夫かな?」という迷いも薄れたのではないかと思います。もちろん、我々としてもゲーム市場向けの商品がきちっと出せると思います。PSPも良い商品でしたが、NGPは解像度が4倍くらいになりましたというレベルのもの凄いハードですから、これによってゲームをやる人たちがさらに増えると思います。

編: 先ほど記者発表会でNGPについて「PSPの時よりも何倍も楽しみ」だとおっしゃっていました。

安田氏: ハードというよりはソフトメーカーさんがモノを作り始めてきてくれるというのが何より楽しみだと思うのです。面白いソフトが少ない中、みんながこぞって作れるようになれば、最初の初代PSの時のようにみんなが作ってくれた時と近い状況ができるのではないかと考えています。

編: まだすべてのスペックが判明したわけではありませんが、アジアの方々が好みそうなハードウェアになっていますよね。

安田氏: アジア向けのものとそうでないものと2つに分かれてしまうのだけど、アジア向けは価格なども安いのではないかと思います。

編: というと、アジアではWi-Fi版のみの販売になったりするということですか?

安田氏: いや、3GもWi-Fiも両方出すつもりなのだけど、全部いっぺんに出すというのは中々難しいのです。当然、日米欧という市場もありますから、各地域で調整しながら1番早いところに合わせて出せれば、と思っています。

編: アジアでは3GモデルとWi-Fiモデルではどちらが親和性が高いのでしょうか。

安田氏: アジアの各国というのはどこも状況が異なるため、ハッキリとは言い切れないのですが、Wi-Fiモデルの方がたくさん出ると思います。

編: 台湾メディアの方も気になっていましたが、価格と発売時期についてはどのようにお考えですか。

安田氏: 発売時期は先ほども申し上げたように、各地域の1番早いところに合わせて出せればと思っています。価格については、いくらというのはまだ言えないのです。

編: そういえば、PS3についてまだ高いと言われていた時期に、「29,800円でないとね」と最初におっしゃっていたのが安田さんでしたよね。

安田氏: 私がいくらといってしまうと社内的に物議を醸しますので(笑)。アジアはまだ所得が低いわけです。そこで売るにはあまり高い金額というのは受け容れられないと思います。でも数が少なくて仕方ないのにわざわざ安い金額で売るのもどうかということで、現在社内で検討しています。

編: PSPに関してはコピーが蔓延したという苦い経験があります。ポータブルデバイスではコピー対策が重要ではないかと思います。

安田氏: そこらへんはきちっと守れるように高いハードルからスタートしなさいと言っています。絶対に破れないという風にやっていかないと、破れるといううわさが1度広まると買い控えが起きてしまう。PS3みたいに色々やってみたけどだめなんだということになると、かなりの期間正規品を買うしかないということで、正規品が売れていくわけです。それと同じような方向性を考えています。

編: アジア向けのプレゼンテーションは始めているのですか。

安田氏: 日本からソフトメーカーさんにアプローチしています。別にアジアだけというソフトメーカーさんはいませんので、それを聞いてソフトメーカーのアジアの担当者も考え始めているということではないですか。

編: どのくらいの売れ行きを期待していますか。

安田氏: それはもう初代PSの時のような爆発的な状況にしたいです。売る側も熟練してきています。我々も出荷しているだけではなくて、お店にきちっと展示していただいて、ユーザーに対してもきちっと説明できる。なおかつプロモーションも何カ月も前から始めて、満を持して出すという状況を作ります。チョロチョロ売れていますというのではない状況が必ずできると思います。



■ SCE Asiaの2010年の状況について。「中文版の流れはずっと続く」

SCET総経理の本間和彦氏には台湾事情について語っていただいた
今回スクウェア・エニックスは、「FF XIII」に続いて、「DISSIDIA 012[duodecim] FINAL FANTASY」の中文版を発表。アジアのコンシューマーゲームビジネスは活況を呈し始めている

編: 2010年もSCE Asiaは元気な1年になりましたね。

安田氏: やることは全部やって、実績も上がってはいたのですが、為替相場の影響で数字は8掛けになっていたのです。そういうところでのもどかしさはありました。

編: 「ファイナルファンタジー XIII」の中文版がリリースされ、その後も色々なタイトルの中文版がアナウンスされましたね。

安田氏: この流れはずっと続きますよ。ただ、個人的に思うのは、かたや巷のダウンロードコンテンツだとこの金額、かたやパッケージで買うとこの金額と乖離が大きくなってきました。ソフトメーカーさんにも私が時々申し上げるのは、今までの5,800円だとか6,800円だとかいうのはキツイのではないのとお伝えしています。

編: それはそろそろアジア向けのプライスを設定して欲しいということですか?

安田氏: いえ、アジアに限った話ではありません。日本でも状況は同じです。アジアはコピーで正規ソフトが売れないし、日本も中古で正規ソフトがやっぱり売れない。日本のPS3も中古市場にやられてしまっている。中古が無ければもっと売れていると思います。

編: 「FF XIII」の中文版をはじめ、大作が色々出始めたことでアジアだけで20万本というヒットが生まれつつあります。これはコピーが減ったということに加えて、パイが拡大した、市場が拡大したと考えていいのですか?

安田氏: 我々は広告代理店に丸投げするようなプロモーションではなく、自分達でプロモーションをしていますよね。媒体に乗せるのにも一生懸命ご説明して載せていただくし、モールでのイベントも効果的にやっていますし、店頭イベントも効果的です。そういった効果の積み重ねだと思います。こうしたことは広告代理店にはできないし、ソフトウェアメーカーさんにもできないです。他社さんにもできづらいような宣伝活動ができていると思います。引き続き力を入れてやっていきたいです。

編: 即売コーナーも盛況でしたね。台湾の消費意欲の旺盛さは毎回来るたびに驚かされます。

安田氏: 日本だと家賃と人件費のために働いているようになってしまうのです。しかしこちらはそこまでひどい状況ではないのです。逆に適正だからこそ消費に回せるということではないでしょうか。

本間和彦氏: 1人あたりのGDPは1万7,000USドルで、韓国で2万を超えています。2万以下のところで先進国に近い市場は意外にやりやすいと思います。2万を超えると逆に厳しいと思います。

編: 会場ではPS3はガンガン売れていますし、Xbox 360のKinect同梱版も完売でした。嬉しそうに重そうに会場を練り歩いていたのが印象的でした。特別に安いというわけでもないのに、なんでわざわざ会場で買うんだろうなあと(笑)。

安田氏: 香港のゲームショーでも洗いざらい売ってしまった感じでした。

本間氏: 正月は天気が良すぎてみんな外に出ていたのです。Taipei Game Showで安く手に入るという情報が回って少し買い控えられていたようです。今になって一気に発散されているような気がします。

安田氏: ありがたいことですよね。景気が乱高下してみたり、色々なものとの比較や競合があるかもしれませんが、私がPSを売り始めた頃は景気なんてぜんぜん関係ないと思っていました。コンシューマはやっぱり買ってくれるのだなという気持ちを当初は持っていました。その後、色々な製品が登場するようになって、意外とそこらへんのペースが弱まりましたが。

編: 次に、SCE Asiaさんが力を入れている、台湾での開発支援の取り組みですが、ブースでも成果映像を流していましたけど、少しずつ形が見えてきましたね。

安田氏: やっと出始めたという段階です。まだまだ最終形ではなくて、もっと力を入れてやっていきます。

編: 今回はXPECさんのマージャンゲーム「東方雀神」と、FUNFIAさん、KEYSTONEさんの3社からPSNタイトルが発表されましたが、そのほかにも準備は進んでいるのですか?

安田氏: もっとやりたい気持ちはあるのだけど、こればかりはソフトメーカーさん単独でできるわけではないし、日本のソフトメーカーさんとタイアップをやるにしてもお互いのコミュニケーションがきちっと取れるまで非常に苦労するのです。販売会社のSCE Taiwanの範疇を超えてしまうところまでサポートはしているのですが、中々追いつかないのです。

編: 教育する人材が追いつかないということですか?

安田氏: というよりも感覚的に日本のテンポと台湾のテンポと少し隔たりがあると思います。後は暖かい国だと若干集中力が違うのかなとも思うのですが(笑)、レイバーコストの問題もあります。倍の工期がかかると日本と同じになってしまいますから。そうおいそれとすぐに理想的な形で出てくるというわけではないですね。

編: ただ、SCE Asiaという括りでみると、台湾が1番形が見えてきてますよね。

安田氏: そうですね。台湾が今良いのではないですか。お勉強という点ではシンガポールも優秀です。

編: シンガポールでも成果が出ているのですか。

安田氏: 出始めていますよ。まだゲームというところまではいかないのですが、早くそういったものを作りたいです。

藤井卓氏: シンガポールでもローカルのデベロッパーが徐々に出てきています。複数のタイトルが進行していますが、まずは最初の1本からという段階です。

編: その他の有望な地域はどのあたりですか。

安田氏: 台湾、シンガポールが有望で、あとは中国でしょうか。ネットゲームのソフトメーカーさんがPS向けのソフトを作りたいということになれば、その人たちに教えたら意外と早くできてくるかもしれない。そのことにも期待しています。

編: ちなみにSCE Asiaの拠点がある香港でそうした開発のムーブメントが生まれないのはなぜでしょうか?

安田氏: 全体的に現地の会社での人事異動が早い。たとえば日系企業の海外販売会社の人事異動と一緒ですよ。販売会社の社長になっても2〜3年で異動です。2〜3年でできることなんて何も無いじゃない? それと同じペースで香港は動いている気がします。だから中々まとまったものができにくいかもしれないです。業界によっては10年やらないとわからないことは結構あるのです。目利きが必要な中古車業界などもそのように言われることがありますよね。やはりプロはそうやって育っていくものだから。香港はどちらかというと不動産と金融と観光が主要な産業だと思うのですが、一旗揚げてやろうと思う人は、それらの産業から入るのではないでしょうか。

 後は香港とシンガポールはゲートウェイというか、そういう風に見ているところがありますので、発表会などをやれば情報がアジア全体に流れていくという部分もあるので大事にしています。一方、税金を見ても台湾はだんだん有利になり始めています。ですからこちらに本部を移す可能性も無きにしも非ずなのですが、ただ今は引越しなんてしている暇はないので、このまましばらくやっていきたいと思っています。

編: ちなみに今インドの状況はいかがですか。

安田氏: 前も話したと思うのですが、現在はヨーロッパの管轄です。ヨーロッパからアジアや中東を見るのは大変だと思うのだけど、他社さんやソニー本社でもインドや中東はアジアの範疇として捉えるのが一般的なので、そういった現実に即した体制であるべきなのではないかと個人的には考えています。ただ、まず直近では、中国というところを走り始めさせないといけないのです。それからインドに取りかかるチャンスがあればいいですね。



■ ついに中国でビジネスをスタートか!? 今年広州で人材協力事業を開始

安田氏はこれまで中国市場を語る際は、一方的な拒絶から険しい表情で語ることが多かったが、今回は相当の手応えを感じている様子だった
China JoyのSCE Asiaブース。SCE Asiaは2008年の出展を最後にChina Joyへの出展を取りやめている

編: その中国に関してですが、1月11日に中国広州で発表を行ないましたよね。その内容と意味を教えてください。

安田氏: 一緒にソフトウェア開発をするための人材教育を行ないましょうという協力の覚え書きを締結しました。

編: しかし、中国は法律でゲーム機の販売が禁止されていますよね。人材だけ育てても作品を売る場が無ければ意味がないのではないでしょうか。

安田氏: そこは当然販売できる環境へと繋げていきたいです。まずは、地域限定でも販売許可の獲得を目指したいですね。

編: 素人考えですが、中国の中央政府がダメだといってるのに、地域限定で売るというようなことが本当にできるのですか?

安田氏: 簡単な話ではありませんが、慎重にお話しさせていただいています。私は今まで喧嘩は負けたことが無くて、勝つ見透しをもって喧嘩していますから(笑)。

編: 中国全土ではなく地域限定で販売することの意味、メリットはなんですか?

安田氏: 地域限定でも小規模でもきちっとした形で始めておけば、拡大したときに速やかに拡大ができますよね。開放しますとなってからどうしましょうという動きでやり始めるとまた時間がかかるわけです。その前から国の許可を得ている範囲で徐々に動いています。

編: 今回の広州市との契約は、中央政府の許可は得ているのですか?

安田氏: もちろん、ソフトウェア産業を育成するという協力内容ですので、中央政府からも支持を頂いていると聞いています。人を育てても売る場が無ければ、育てた人材が困ってしまいますよ、という点についても地方政府の皆様からご理解を頂いております。販売の可能性についても、地方政府を通じて中央政府との間でお話をしていただいているとのことです。

編: 待望の開放ということになりますね。

安田氏: そういうセンセーショナルなノリではありませんよ。まずは1歩1歩確認しながらやっています。目立って足を引っ張られても困りますので、匍匐前進です。この前の1月11日も最低限の記事は出てしまったのだけど、媒体記事の取材は一切受け付けませんでした。一言も話していないのです。それくらいに目立たないようにやったのです。

編: 販売形態としてはかつてソニー本体が中国で行なったPlayStation Companyのような形ですか。

安田氏: まったく異なります。以前はSCEもソニーも状況認識が十分ではないままプロジェクトを推し進めてしまったわけです。私はその後始末をしただけです。私が後始末をしながら感じたことはこういう失敗は2度と繰り返したくないということです。社員さんがいたのを辞めてもらったわけです。彼らは悪いことをしていないのに辞めさせられたわけだから。そんなことは2度としないようにやっていきたい。

編: 中国におけるコンシューマゲーム市場はどうお考えですか。

安田氏: ざっくりと言って日本と同じだけの市場があると思います。13億といったからって、我々はカップラーメンを売るわけではないので、13億のうちの1割くらいがターゲットになるのかなと感じています。ただ、1箇所に集まっているわけではなく、あの大きな器の中に1億3,000万人が散らばっている中国です。日本の小ささとはわけが違う。1つの都市をとっても所得のうんと高い人とうんと低い人が存在するということです。ゲームが好きな人がすべて所得が高いとは限らない。そう考えていくと売れるといっても最初から飛ぶように売れるということは期待していないです。しかしゲームを手にして喜んで遊んでいる人を見て、俺も是非ほしいという人をどんどん増やしていく作業です。時間がかかりますよ。

編: 中国市場での展開開始時期はいつごろを目指していますか。

安田氏: なるべく早くできるといいですね。まずはテストで少量の商品を販売してみるところからでしょう。ソフトが売れなければ、この商売はどこの国に行っても成立しません。なので、きちんとソフトを売っていきたい。そのためには、ホールセールマーケット等ではなく、ちゃんとした百貨店さん、いわゆる輸入をして税金を払った証明がなければ店頭に置きませんよというところに、いくつかコーナーを作ってもらって販売を始めたいと思います。

 たまたまハードもソフトも両方あって、ソフトから入って、ソフトからハードがついていくという状況を作りたいのだけど、コピーが当たり前という状況がそれを邪魔しています。コピーは当たり前の国だとか所得が追いつかない国ではハードだけが買われて、ソフトはコピーということにはしたくないですし、そのような状況が長く続くとは思えないのです。

編: なるほど、中国においてもハードだけでなく、ソフトも売れる状況まで持って行く。中古や並行品に頼らずにビジネスをしていくということですね。

安田氏: 並行品に関しては日米欧から流入しているのはマーケットを見れば火を見るより明らかです。そんなことをされるとその価格と比較されたら売れるわけがない。中国の皆様にはそうした並行輸入品はボーダーで止めるようにお願いしています。

編: 気になる価格はいくらになるのでしょうか。

安田氏: ハードは台湾くらいの価格を考えています。

編: というと関税も台湾と同水準の優遇措置が得られるということですか?

安田氏: このあたりは難しいところなので、数字的なものは先方と詰めているところです。利益を削ってでもできるだけ安く販売したいです。ソフトに関してはやはり今の新発売される日本の価格と同じ価格というのは不可能ですから。まずはベスト版からスタートしようかと考えています。いまはベスト版も数が増えて、ローカライズされているものも増えているわけです。その中から販売枚数の多かったものから徐々に売っていきたいです。

編: 法人名としてはSCE Chinaになるのでしょうか?

安田氏: 多分ね。それも最終的には決まっていないです。相手さんとの交渉や実行に移す拠点は作っています。

編: ブランチはどこに設置するのでしょうか。

安田氏: 北京のブランチは元々あったのですが、そこに続く広州ブランチを作ったのです。広州の中心部、ちょうど昨年のアジア大会の会場である天河アリーナの向かい側に事務所を作りました。また、本間さんの方で手続きをしてもらって、北京事務所も拡大させています。なぜなら北京はロビー活動の拠点だったのが、今後は安全規格を取ってみたり、我々が直接やることばかりではないのですが、許認可系の事務処理や交渉が出てきますので、彼らが作業できるような事務所が必要になったからです。広州から北京といっても4時間かかりますので、やはり事務所がないと難しいです。

編: その広州での教育プログラムはどういった内容を予定していますか?

安田氏: 当初は学生向けにスタートしようと思っていたのですが、リサーチしていくうちに学生はまだ辛いかなと思いました。一方、向こうにもソフトウェアメーカーさんはたくさんあるのです。ネットゲームをやったり色々なゲームを作っている。そういった会社の従業員さんで、プレイステーションのゲーム開発をやってみたいという会社があれば、それ向けにやってみれば面白いなと思います。

編: 中国展開はどのあたりを目標に設定していますか。

安田氏: まだです。皆さんにお願いしているのは匍匐前進です。外国で商売をやらせてもらうわけですから、法律にのっとってやっていきます。

編: 中国最大規模のゲームショウであるChina Joyへの出展は復活されるのでしょうか。

安田氏: China Joyには中国全土で売れるようになったら再検討すると思いますが、販売が禁止されている以上、展示する意義を見いだすのは困難です。

編: 中国市場ではどのくらいのセールスを見込んでいるのでしょうか。

安田氏: そういうことをいうと色んな所から怒られます(笑)。

本間氏: たとえば、広東省だけで人口は1億人を超えています。これがひとつの目安になるかもしれません。

安田氏: ただね、中国のマーケットを見ると世界中からモノが流れ込んできているような気がしているのです。まずはそれを止めてもらわないとね。我々が正式に進出すればアメリカやヨーロッパや日本からの並行品は要らないわけですよ。そういう意味でその分も我々が売れればある程度の数が行くと思います。

編: 販売できるようになってもゴールではなくて、新たなスタートということですね。

安田氏: そうですよ。私も年を取ったから途中でバトンタッチしますよ(笑)。



■ 新規開拓エリアの状況について。将来的には「アジア全土に販売網を」

「パンツ一丁買うのに30分かかる国」。安田氏は常にユニークな表現でアジア各地の状況を表現してくれる
SCE Asiaアジア事業統括部部長兼SCEKプレジデントの川内史郎氏。韓国の内需の低迷は想像以上だったという

編: 中国やインド以外の新規開拓エリアについてはどのような状況ですか。

安田氏: 去年はベトナムに展開しましたが、ベトナムだってソニーの販売会社の大学出の若い人の初任給が100ドルですからね。8,000円ですよ。それでもハードロックカフェができたり、新たな市場が生まれつつあります。人口の半分が25歳以下ということは5年経ったら、10年経ったらということを考慮すると勢いはあります。

編: ここ1、2年でフィリピンやマレーシアにもエリアを開拓していますが、それらの地域の状況はいかがですか。

安田氏: 良いですね。おもしろいですよ。フィリピンにはシュウマートというショッピングモールがいたるところにあるのです。その中にデータブリッジという店があります。10畳ぐらいの広さの店です。それが全国に25〜6箇所あるのですが、そこに並んでいるのはすべて正規版です。お店の中に買おうと思って入っていくと、5、6人並んでソフトを買うのを待っている。

 向こうは買うのが大変なのです。日本のようにレジで済ますのではなくて、1個の商品を売るのに3倍くらい時間がかかるのです。なんでなのだろう。日本人の感覚だと「こんなに待たせるのなら買わないぞこのやろう」というくらい遅いのです(笑)。ひとつには経営者も自分がそこにいないときに不正をされないように色々な書類を作らせるみたいなのですが、あれがネックです。パンツ一丁買うのに30分くらいかかる国です。

編: それはもうPSP1台買うのも大変そうですね。

安田氏: 大変。そういうところでコンスタントに売れていくのが今後の流れだと思うのです。アジアはまだまだゲーム市場は成長できると思います。タイのチャイナタウンの外れにゲームマーケットがあるのですが、まぁ元気元気。色々なものが売っていますよ。ゲームでも全世界のモノが集まっている。

編: 将来的には中国・インドを含め、アジア全土に販売網を広げるつもりですか?

安田氏: 広げていきたいですね。人口が多いというのは裾野が広くて切磋琢磨して良いのが出てくるよねというのは中国のオリンピックを見て思ったことです。クリエイターもそういう土壌から芽が出ると思いますので、期待しています。

編: 新たな地域でも教育プログラムはやっていくのですか。

安田氏: 我々が行なっていくつもりです。今、具体的にやろうとしているのは中国です。

編: 昨年、台湾高雄に完成したインキュベーションセンターはすでに活動を開始していると伺いました。

本間氏: 今40名の方が入居されていて、それぞれが企画書を作っています。各チームだいたい5〜6名でやっていまして、だいたい5チームくらいです。

編: 肩書きは学生なのですか。

安田氏: いえ、皆さん学校を卒業されて、自分達で資本金を10万円くらいずつ出して法人を作っています。みんなそうなのですが、夢と現実ってありますよね。やりたいなというのが夢であり、現実でこの商売を選ぶのではなくて、夢を見てやってみていろいろなことがわかってくる。大変だから辞めるという人も出てくると思いますし、奥が深いからもっとやろうと思う人も出てくるだろうし。そうした時期だと思います。我々も結論をあまり急いでしまうとやる意味がなくなってしまうので、その人たちが自分達が腹を決めてやれるように時間をかけています。

編: 高雄の成果はいつごろになると考えていますか。

安田氏: 来年、再来年ぐらいに出ればいいなと思います。

編: 最終的に具体的な成果を出すことが目標ですか。

安田氏: それはもちろんですよ。これも先ほどの目立たないようにということに通じるのですが、メディアの報道がすごく露骨なのです。出したらまずいことまで出してしまう。すると焦点がボケるのです。報道に影響を受けて目的を失わせてしまうのではなく、長い目で見て上げて欲しいですね。彼らも彼らなりに頑張っていますが、俺達から見るとまだ空回りが多くて、良い言葉で言えば試行錯誤の時間だね。後は親の金で何かやってもうまくいかないのと同じで、自分の力で資財をなげうってという気持ちでやらないとうまくいくことは少ないです。他のビジネスでもそうですが、このビジネスでもそれくらいの覚悟が決まるまで少し時間がかかるんだなと思って見ています。

編: ここ数年停滞している韓国市場については、川内さんが本腰を入れて建て直しをされていますが、最近はいかがですか。

安田氏: 韓国はサムスンさん、LGさんが台頭していますが、その影に隠れて一般的なマーケットは決して楽ではないのです。ゲームどころではないという状況だと思うのです。その点で心配しています。

編: 不景気ということですか。

安田氏: そうですね。タクシーの運転手さんなんかで仕事が無いよりはマシくらいの勢いで安く仕事を請けるような人を見かけてから4、5年経つかな。今でも表は派手だから勘違いしてしまう。韓国料理も頼むとすぐテーブルがいっぱいになってしまうけどほとんど食わないじゃないですか。こういった浪費の部分を見てもちょっと実態とそぐわないのかなと思います。

編: 売り上げが伸び悩む原因は、韓国人の消費傾向が影響しているということですか?

安田氏: 異常に海外に行く人が多いではないですか。マニラなどに行くとパスポートでどの国かわかります。彼らは向こうに移住しているのだよね。異常ですよ。それをよく読んでおかないと。1人が言っているとホラだけど、100人が言っているとホラではなくなりますよね。その状態だと思います。

編: となると、SCEKはV字回復というわけにはいかなそうですね。

川内氏: 回復というか身の丈のことをきっちりやっていくということですね。安田が言うように韓国はサムスンやLGといった輸出企業が強く、それだけがハイライトされているような感じがあります。道を歩いていてもPCオンラインゲームは活況を呈している。しかし、昔あったゲーム店が並んでいるところには昔のように人が来ていない。ゲーム業界だけではなくて全般的にそういった感じがします。つまり内需を掻き立てる何かが足りていないのです。何か1つのきっかけがあれば、皆さん割とざーっと行く性質があると思うので、何かあればずっと良くなっていくと思うのです。決して今が悪いというわけではないのですが、良くなる可能性がありますね。

安田氏: あとは為替の差があるので、韓国経由でアジアに流通しているケースが増えています。

編: 韓国経由が1番お得ということですか。

安田氏: そうですね。韓国ウォンが安すぎたところがありましたので、実力以上のものを輸出産業の外需に頼りすぎているところがありました。貿易は為替1つでよくも悪くもなってしまうから、その部分で色々な部分がコツコツつみあがっていかないと、派手だけれども潰れる時も派手だと思いますよ。



■ 台湾市場でのNGP、3D立体視の期待について「我々はNGPの仕様に大変自信を持っています」

SCE Asiaサービス&コンテンツ企画部部長 藤井卓氏。藤井氏にはコンテンツ系の解説をしていただいた
SCETオープニングセレモニーの後、台湾メディア向けの囲み取材でNGPを披露した安田氏

編: 台湾市場について聞かせてください。昨年はPS Moveが発売され、街でもレイニー・ヤンさんの広告が目立っていますね。売れ行きはいかがですか?

安田氏: 売るためにはいわゆる我々がいつもやっている説明販売が大事ですね。小さなイベントで、こうやって遊べるのとかいうのが無いと、説明だけでは難しいと思います。新聞の全面広告など打っても誰も買わない。ただ、良いものであることが分かれば、後は街で歩いていて人を引っ張りこんでやってみてよといって面白いと思わせることができます。逆に言うとそうした売り方に向いた商品だからアジアでは比較的良いのではないかと思います。

編: 一時的にモノが枯渇した時期があったと伺いました。

安田氏: 少し落ち着いてきて、引き合いはおかげさまで強いですから、かなり長いリードタイムで発注をかけて用意しておかないと中々難しい。バンドルなんかしてしまうとその分がさっとなくなってしまう。ですからそういう意味で自由自在というところまではまだ時間がかかると思います。評判は良いですので、このまま売っていきたいです。

編: ゲームコントローラーに慣れていないビギナーにはPS MoveやマイクロソフトさんのKinectといった体感型のデバイスは、非常に取っつきやすいデバイスですよね。

安田氏: 特に暖かい国のゲーマーの方ってとりわけ面倒くさがり屋ではないですか。「面倒くさいから後で」というのがネックなのですが、PS Moveはそれほど面倒ではない(笑)。

川内氏: PS Moveについては、宮崎の技術デモで、ゲームではない見せ方というのが結構面白かったと思うのです。こういったゲームイベントであまりやらないのですが、彼が面白おかしく生真面目な感じでやるわけです。プロデューサーというとラフな格好が多いですが、彼はいつでもネクタイにスーツで生真面目な感じでプレイするのですが、それが非常に面白いと。ゲームではまだできないのですが、PS Moveでできることと言いますか、底力を長い間研究してきてそういう見せ方をすると、一般の方に見せると反応がすごく面白い。

編: それだけ反応が良いならアジア発のPS Moveコンテンツが生まれても良さそうですね。

安田氏: おっしゃっている意味はわかります。ただ、アジア、アジアといってスタートするのではなくて、アジアで一生懸命やってきたら他の地域にはない見せ方をし始めてきて、結果すごくあっていたねという順番にしないと。スローガンありきって1番がっかりなのですよね。アジアモデルや中国モデルというのは必要であれば用意しますが、あまりそちらから入るのではなくて、色々な商品を各々一生懸命に販売して、芽が出たものを一生懸命育てて、大きく育ったら正しかったねという結論にしたいのが考え方です。

編: 時間がかかりますね。

安田氏: かかりますよ。3歩進んで2歩さがるの繰り返しです。「早くしないと定年になってしまうぞ!」と言っています。

編: そう言えば、数年前まで多かったアジアオリジナルモデルみたいなものは最近はあまり出てこないですね。

川内氏: アジア限定でのモデルということですか。昔は赤がアジア発というのがありました。いろいろな色は企画や地域から出てきているのですが、我々もガチャガチャやっているのですが、色を作るときにそれなりに手間がかかるのです。

安田氏: 5種類色があったとしたら在庫は5倍になるのです。そういう意味からみてもよく考えてやらないと、売り切り商品みたいな感覚だといけないのです。ハードの方はカラーバリエーションというのをやるのですが、ハードの感覚だとカラバリが出るとその商品は終わりに近いのねという見方をされてしまう。我々はそういうつもりでやっているわけではない。販売もそれほどお金持ちのところがやっているわけではないのです。2種類くらいなら展示していても良いかもしれませんが、5種類10種類ということになると在庫を持ちきれないのです。

編: 今回も280インチの3D立体視のモニターをメインステージに用意するなど、3D立体視に力を入れていますね。

安田氏: 力は入れていますが、特別扱いではなく、他と同じように力をいれているだけです。3D、3D(立体視)というのは各社売りにしていますが、それだけではいけないような気がしているのです。

編: 3D立体視の機能をNGPに標準搭載しなかったことについてどのようにお考えですか。

安田氏: 私は良かったと思いますよ。ポータブルゲーム機で一生懸命遊んでいただく上で、NGPが3Dではなく高い解像度を選択したのは皆様に喜んでいただけるのではないでしょうか。アイキャッチで3Dというのは確かにわかりやすいと思いますが、現時点では我々はNGPの仕様に大変自信を持っています。

編: NGPに3D立体視の機能を後付けする可能性はありますか?

安田氏: それは分からない。モノを買うときにいろいろ考えるのです。車を買うときには3年周期で乗るから1日あたりいくらという考え方ができます。洋服も同様です。ゲームも同じで、ゲームを好きな人がゲームを買うことを考えた時にそれほど高いものではないと思うのです。ソフトでもエンディングまで行くと、色々と楽しいとかびっくりしたとかありますよね。小説を読むのと同じだけのボリュームがあるわけです。将来的なことについて今の時点で言えることは少ないですが、まずはユーザーさんの反応を見たいですね。

編: アジアで3D立体視に対する反応はいかがですか。

安田氏: 3D立体視だから売れるということは無いと思います。もちろん、特に据え置きゲーム機にとっては魅力的な機能ではあるので、数年前から台北ゲームショウでも展示を続けてきていますが、3Dで無ければ売れないということはありませんでした。各社とも3Dとでも言っておかないと目立たないということで言っていたらみんな同じになってしまっただけだと思います(笑)。

編: ちなみにSCETブースの隣でSony EricssonさんがXperia PLAYを出展していましたが、あれは両社で歩調を合わせたものなのですか?

安田氏: 台湾の本間総経理がXperiaのファンだからです(笑)。それは冗談ですが、たまたま隣に構えたというだけですね。特に一緒に何かというわけではなかったのです。たまたま発表後のタイミングでTaipei Game Showがありましたから、タイミングが合ったのだと思います。先々週のコミックフェアで59万人ですので、Taipei Game Showで多分40万人超えるはずですのでそこでの発表は意味があると考えたのではないでしょうか。

藤井氏: 現時点では唯一のPlayStation Certifiedの機器ですので、他の携帯メーカー様の機種とも差別化しやすいという事で大きく露出されたのではないでしょうか。

編: Xperia PLAYは、PSソフトが動くというのがひとつのウリになっていますが、両社の間で現場レベルでやりとりは何かありますか?

藤井氏: 供給するソフトの準備は歩調を合わせないといけませんし、一緒にやらなければならないことは結構ありますので、そういったところで一緒に協力しています。ただ、お互いに販売チャネルは異なりますし、販売の流儀もまったく違いますので、そこは別立て、ということになりますね。

安田氏: テトリスやるのには携帯で良いのだろうけど、ゲーマーはそれでは満足しないですよね。そのためにXperia PLAYやNGPがあると思うのです。そういうお客さんはまだまだいると思いますよ。

編: PS Certifiedのアジアでの管理はSCE Asiaさんの方でやられていくのですか。今後、台湾やアジア各地のメーカーさんがやりたいという動きになるかもしれませんよね。

藤井氏: 我々はもちろんサポートさせていただきますが、最終的には本社の承認が必要になります。

編: XperiaはPSソフトが遊べるということで非常にアジア向きのプラットフォームだと思いました。アジアの人でも購入できる価格でゲームが遊べますから。

安田氏: それはありますね。Xperia PLAYはPS1のソフトが遊べて、電話もついていてカジュアルに楽しんでいただく。一方、SCEは既にPS2、PS3、モバイル端末ではPSPの次にNGPという世代を迎えつつあります。NGPの3Gモデルは通話機能が無いのはご存知だと思うのですが、我々の考えるすべての機能はゲームのためにという観点でデザインされています。この意味でSony Ericssonさんとは立ち位置は大分異なります。ですが、Xperia PLAYでPS1のコンテンツを遊び、そこから本格的にPS体験のデビューをしていただき、NGPなどをお買い求めいただく、といった新しい流れが生まれてくることを期待しています。



■ 2011年の事業計画について、PS3ハック対策はどうなる!?

安田氏のライフワークとなっている中古&コピー問題。今回もかなりの時間を割いてその悪影響を解いてくれた。解決するにはデジタル流通への完全移行しかないが、NGPがどのような回答を出すのかが注目されるところだ

編: 若干シリアスな話もさせてください。先日SCEさんからプレスリリースが出ましたが、ついにPS3がハックされました。それによってインターネット上にコピーが出回り、それを利用したユーザーはネットワークから遮断しますよという内容でした。これに関してSCE Asiaはどのように対応されていきますか。

安田氏: まさにその通りに対応していきます。PS3はこれまで大きくやってきて、ソフトメーカーさんの信頼も厚いのでしっかり措置をとらねばならないと思います。一方、エマージングマーケットでは、先ほどもお話ししたように、所得が低い国がまだ多く、ハードも買って、正規版ソフトを買い続けることができる層は限られているのが現状です。ですので、その層に行き渡るタイミングを見誤らないように世代を移行していく必要があると思っています。

編: それはつまりプレイステーション 4ということですか?

安田氏: さあ、どうでしょうか(笑)。

編: 穴をふさぐ努力をするよりは新型機を投入すべきとお考えですか?

安田氏: ふさぐ努力はこれからもずっと全力でしていきます。ただ、それと同時に次の事も考えなければならないと思いますよ。

編: 新型機の発売時期はいつごろになりそうですか。

安田氏: 模範解答は「我々はPS3を発売した次の日から次の機械について計画をしています」(笑)。先ほどのPS Moveではないですが、PS3には、まだまだ多くの魅力があります。我々は全力でPS3の魅力をお客様にお伝えしていくことで、買っていただける人もまだまだおられるのではないかなと思います。アジアの市場をご覧 になるとわかると思いますが、流通されているソフトってPS3がほとんどですよ。PS3 はコピーに強いという証拠、他はコピーの影響が大きいです。並行業者でも一生懸命運ん でいるのはPS3のソフトですよね。他にないんだもの。

編: 2011年の事業計画を教えてください。

安田氏: これまで手探りで全部新しいことを一生懸命やっていたのですが、今年もさらにそれが倍の難易度とスピードを要求されながらやらなければならない状況です。また1年忙しい状況が続くと思います。これをやることでアジアのゲーム業界において誰も真似ができないようなビジネス構築ができてくると思います。皆さんも真似しようとしても中々難しいのではないかな。それを今までみんなで作ってきたのでそれを強固なものにしていきたいと思っています。

編: 実情を知れば知るほど、SCE Asiaは他社さんの5年先、10年先を行っている感がありますね。

安田氏: 我々がパートナーショップの皆様に提供させていただいている販売管理システムがあるのですが、これによって各店舗の売り上げや在庫状況の把握が可能になりました。このシステムを使うことで、商品の流れがわかりやすくなるだけでなく、お店にとっても過剰在庫を減らすという意味合いもあるのです。

 我々が日本でこの商売を始めたときに競合他社さんがどういうことをやっているのというのを研究したことがあったのです。とても乱暴なやり方をおやりになっていました。このソフトがいっぱいほしいなら売れもしない商品を取れよという、抱き合わせ商法が幅をきかせた時代がありました。売れもしない商品を取らされてみたりして苦しんでいるのを見ながら我々はCDのフォーマットにして注文いただければすぐに届けるからというシステムでやってきているのです。アジアでも販売店を圧迫する状況を避けるためにも、こうしたシステムを有効活用していきたいです。

編: アジアの売り上げ目標を教えてください。

安田氏: 前から言っているのは1,000億円です。1,000億円売っても為替のせいで800億円になってしまうのです。現時点ではまだ超えられていないのです。でも十分見通せています。

編: 中国市場が開放されていけばそんなものではとどまらないでしょうね。

安田氏: 日本と同じくらいのマーケットはあると思います。そこをどこまで追求していけるかなと思います。

編: 取らぬ狸の皮算用ではありませんが、インドも開放されたらさらに倍みたいな可能性はありますね。

安田氏: 人数的にはそういう期待はありますが、日本と同じだけの市場が中国にあったとしても、広範囲に分散しているのです。広告をしても到達するにはかなり頑張らなければならないし、運ぶにしても遠いのです。売り上げのグロスよりも利益率を考えなければなりませんので、あまり広く手を出していくという感覚よりも1つ1つ確実にやっていくという方針を取ります。

編: アジアのユーザーに一言メッセージをお願いします。

安田氏: 毎回のことで申し訳ないのですが、著作権の保護を考えていただきたい。これはスローガンではなくて、サプライヤーがいなくなってしまうということなのです。中古を買っている人やコピーを買っている人や違法ダウンロードをしている人はソフトメーカーが潰れてしまうということをよくわかった上でゲームを楽しんでもらいたい。特に先進各国の消費者の皆様は正規品の購入と正規のダウンロードをお願いしたい。私たちだけでなく、クリエイターの唯一の飯の種ですから。これが最大の課題です。

編: ありがとうございました。


(2011年 2月 25日)

[Reported by 中村聖司]