東京ゲームショウ2010レポート

「ファントム・ブレイブ オンライン」開発決定! ガマニアと日本一の両社長にインタビュー
オンライン版は原作の世界観や面白さを活かしたブラウザゲームに


9月16日~19日 開催(16日、17日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


ビジネスデー初日のブースイベントで「ファントム・ブレイズ」のオンラインゲーム化が発表された

 株式会社ガマニアデジタルエンターテインメントは「TGS2010」のビジネスデーにあったプレスカンファレンスで、日本一ソフトウェアと提携をした新作オンラインゲーム「ファントム・ブレイブ」の開発を発表した。

 「ファントム・ブレイブ」は日本一ソフトウェアが2004年にプレイステーション 2用ソフトとして発売したシミュレーションRPG。可愛いキャラクターと自由度の高いゲーム性が好評で、コミックやアニメへマルチメディア展開された。10月28日にはPSP用「ファントム・ブレイブ PORTABLE」が発売する。

 16日のステージイベント終了後に、ガマニアデジタルエンターテインメントの代表取締役 浅井清氏と、日本一ソフトウェアの代表取締役 新川宗平氏にインタビューをすることができた。今回の提携の理由や、ゲームの開発状況など気になる部分を聞いてきた。




■ 「ファントム・ブレイブ オンライン(仮)」はブラウザゲーム

ガマニアデジタルエンターテインメントの代表取締役 浅井清氏
日本一ソフトウェアの代表取締役 新川宗平氏

編: 発表おめでとうございます。「ファントム・ブレイブ・オンライン」はブラウザ型のオンラインゲームになるということですが、どうしてブラウザゲームという形を選んだのですか?

浅井氏: できるだけ多くのお客さんに「ファントム・ブレイブ」に触っていただくにはどうすればいいかを考えて、開発の期間などを含めて一番最初に触っていただくのはブラウザゲームがいいのではと思いました。ただ企画を練っている最中ですから、できあがってみたらサーバークライアント型だったという可能性もあります。

編: まだ確定ではないのですか?

浅井氏: ある程度動いてはいるのですが、もうすこし具体的な情報が出せるようになってからお話ししたいと思っています。今は「ファントム・ブレイブ」という素材をどう料理していくのかを日本一さんと煮詰めているところです。

編: 開発の進行状況はいかがですか?

新川宗平氏: まだ企画段階で、開発はこれからというところですね。

浅井清氏: 現時点ではいくつか企画のプランが挙がっていて、今はそれを詰めている段階です。どういうところをどういう形にするかは、ほぼ固まってきています。サーバークライアント型のものも検討はしていますが、まずはブラウザゲームでやってみようと思っています。まずはブラウザゲームとしてやろうかなと。その中でどの企画をやるか詰めている段階です。

編: どういうゲームになるのですか?

浅井氏: 「ファントム・ブレイブ」という素材を使わせていただいて、それを料理していくので、もちろんコンソールのゲームと全く同じにはなりません。意外な形になるのではないかと考えています。今詰めている最中なので、今後、発表させていただく予定です。古いユーザーさんにも「ああ、ここは『ファントム・ブレイブ』だよね」とわかっていただけるような部分をしっかり作りつつ、新しい部分も作っていきたいです。「ファントム・ブレイブ」というゲームは世界観などのクオリティがとても高いので、ライトなユーザーさんにそういった世界に触ってもらいたいと思っています。

編: ジャンルはシミュレーションRPGになるのですか?

浅井氏: おそらくRPGという枠には捕らわれないものになっていくと思います。

編: ターゲットはコンソール版のユーザーではなく、新規のユーザーなのですか?

浅井氏: 目的はそこだと言ってもいいですね。

新川氏: 日本国内だけではなく、アジアや世界の方に「ファントム・ブレイブ」という世界を知っていただきたいと思っています。「ファントム・ブレイブ」というタイトルのコンセプトになっている部分はしっかり押さえつつ、そこを実現できればいいなと思います。

浅井氏: 新川さんと4年くらい前に初めてお会いした時に、うちはオンラインをずっとやっていて新川さんのところはコンソールだから、どこかで一緒に何かをやれたいいねと話をしていたのです。日本一さんのようにしっかりとゲームを作りこんでいる会社は、今どき少ないと思います。今は作りこんでも、それでゲームがどんどん売れるわけではないですよね。

 もちろんオンライン化するとゲーム性は変わってくると思いますが、ガマニアと日本一ソフトウェアが組むことで、よりライトな層や海外など新しいユーザーに発信していくことができます。もちろん既存のユーザーさんも大事にしていきたいですが、シリーズが長く続いていくとどうしてもどんどんん広がっていくという形にはなりにくいので、オンラインでグローバルに展開していけるという部分が今回提携する一番のポイントだと思います。

編: 海外にもサービスを提供していくのですか?

新川氏: そうですね。それを前提に考えていきたいです。

編: 配信はどういったかたちになるのですか?

浅井氏: 基本的にはコンテンツ単体で配信できる形を想定しています。従来ガマニアが行なってきているほかのタイトルと同じです。もちろん将来的にどこかのSNSさんと提携していく可能性は十分あるわけですが、まずはコンテンツ単体でユーザーさんがしっかりと遊んでいただけるものを目指していきます。




■ ガマニアと日本一のノウハウを融合した新しいものを

開発はガマニアが行ない、日本一は監修と言う形で進められる

編: ガマニアさんはブラウザゲームをサービスしていますが、今回はソーシャルゲームとしての展開も考えているのですか?

浅井氏: どちらかと言えば、コンテンツ単体としてしっかりと動くものになると思います。

編:10月にPSP版の「ファントム・ブレイブ PORTABLE」が出ますが、オンライン版となにか関連はありますか?

新川氏: この企画のスタートと、PSP版の発売を決定したタイミングは少しずれているので、関連性は特にありません。でもコンソールのタイトルは今後も展開していきますので、どこかでオンライン版と合流して、いい形の相乗効果を出す面白い展開がしていけるのではないかと期待しています。

編: オンライン版も原田たけひとさんのイラストなのですか?

新川氏: イラストは変えずにいく方針ですよね?

浅井氏: 「ファントム・ブレイブ」といえば原田さんの絵だろうということで、その方向で進んでいます。ただライトなユーザーさんの新しい客層を開拓していくという意味では、あえてそこを思いきって変えてみるのもアリじゃないかという話も出たことはあります。

編: コンソール版のキャラクターはオンライン版にも登場するのですか?

新川氏: どのキャラクターがどこまでという詳細はまだ決めていませんが、使っていきます。コンソール版にも日本一ソフトウェアの別タイトルのキャラクターがゲストで登場したりといったこともしています。オンラインで同じことをするのは、既存のファンに対するサービスになると思いますし、そういう形で世界が広がっていくのではないでしょうか。

編: 開発の分担はどうなるのですか?

浅井氏: 開発は基本的にガマニアが担当することになっています。もちろんゲーム内容に関しては監修していただいて、配信の部分もガマニアで行なう予定です。

編: 絶対にここは変えて欲しくないというところはありますか?

新川氏: 絶対にというところは、実はあまりありません。我々は誰かと組んでやる時には先方にお任せするというスタンスを取ることが多いのです。例えばアニメや、ドラマCD化の時にも好きに作ってくださいと。それぞれその道のプロフェッショナルの方がいるのですから、その方たちに料理してもらうのが、コンテンツにとっても一番プラスに働くと思っています。その上で希望するのは、「ファントム・ブレイブ」だからできる部分、日本一ソフトウェアと組んだからできたという部分が欲しいということです。どこと組んでも同じというのが、うちの社風として嫌いなのです。人と同じではなくて、なにか我々と一緒にやったからこそできたという部分をゲームの中で実現していきたいと考えています。

編: ハードルが高いですね

浅井氏: 日本一さんのそういうこだわりは、ブランドの基になっていると思います。単純に絵が可愛いとか世界観がどうという話だけではなくて、ゲームに対する思い入れを我々も勉強させていただきながらオープンマインドでやっていきましょうという話をさせていただいています。単にブランド名を借りるだけではなく、お互いのノウハウと考え方を上手くミックスしてやっていけるということで、我々としても日本一さんとやる意味があると思っています。

 ユーザーさんもメディアさんもどんなゲームになるのというところが一番気になる部分だろうと思うのですが、我々としてはまず間口を広げていきたい。そしてグローバル展開ということですね。

編: ユーザーさんも日本一さんのタイトルということで期待している部分があると思いますが

新川氏: 独自性の高いものを作りたいという気持ちが強いのです。それが会社の文化であったり、タイトルの中身にも現れているのだと思います。

編: 自社でのオンライン化は考えなかったのですか?

新川氏: とっくの昔に諦めた感じですね(笑)。特に大型のMMOに関してはもう10年近く乗り遅れたと思っていますので、いまさら手を出しても勝てるわけがないので手を出しません。我々は小さな会社なので、何をやるかしっかり取捨選択をしなければ散漫になってしまいますので、ここぞと決めたらとことんやるけれどそれ1つだけを追求すると。だから今回PC版のオンライン化はすべてガマニアさんにお任せしようというわけです。

編: 監修と言う形で製作にはタッチしないのですか?

新川氏: ガマニアさんが立てた企画に対して、「ファントム・ブレイブ」であればこういう要素を入れるといいのではないでしょうかとか、こういう遊ばせ方をすると更に展開ができるのではないですかといった提案をさせていただく形になっていくのではないかと思います。我々にはオンラインゲームでの遊ばせ方についてのノウハウはありませんが、それを弱点と考えるよりも素人考えだからこそ新しいことができる可能性もあると思いますから、そこは堂々とそしらぬ顔で素人意見を言っちゃおうかなと思ってます(笑)。

浅井氏: 逆に我々にはオンラインのノウハウはありますが、そればかりになって硬くなっている部分があるのではないかと思うのです。だからずっとコンソールでやってこられた日本一さんと一緒にやることで、我々も勉強をしてそこから新しい発想が出てくるといいなあと楽しみにしています。

 開発現場の方はコンテンツに対する思い入れもありますし、オンライン化する上で相いれない部分が出てきてバトルがあったりもするかもしれませんが、それは必要なことだと思うのです。そういうフェイズを経ることで、より良い形のオンラインの「ファントム・ブレイブ」を作っていければと考えています。オンラインゲームは開発して終わりではありませんから。サービスを続けていく上でも、お互いが思ったことを言い合ってユーザーさんの意見も取り入れながらみんながよりいいものを目指していけるのが理想形だと思っています。日本一さんとはそれができると期待しています。




■ 将来はiPadでも遊べるようにしたい

「ファンの期待を裏切らないものにします」と浅井氏

編: サービススケジュールはどうなりますか?

浅井氏: 現在のところ、来年の後半に何らかの形で皆さんに触っていただける形になるだろうというところで進んでいます。

編: ビジネスモデルは?

浅井氏: 基本的には無料でユーザーさんに遊んでいただける形にするつもりです。

編:プラットフォームは基本的にはPCのみなのですか?

浅井氏: 基本はそうですが、ブラウザゲームですのでPCに限定されているとは考えていません。ブラウザが立ちあがるものなら遊べてもいいですよね。

編: このゲームはFlashベースになるのですか?

浅井氏: そこに関しては色々なやり方を考えているところです。

編: Flashを使わず、iPhoneやiPad等で遊べるようなゲームになるということですか?

浅井氏: iPadでも遊べるようになるといいですねえ。いまはどうやって実現するかを考えています。

編: 将来はマルチプラットフォームでの展開になる可能性があるわけですね

浅井氏: ブラウザゲームにはプラットフォームの垣根はないと思います。ブラウザが開けばどこでも遊べるという形が本来で、それを目指していくべきだと思っています。

編: 日本初のタイトルには、コンソールのタイトルとのコラボレーションが多いですが、どういう戦略なのですか?

浅井氏: 私自身が日本のゲーム業界でずっと働いてきて、少し大げさな言い方をすると、日本のゲーム業界はグローバルの流れに取り残されていると感じているところがあるのです。日本がオンラインゲームやソーシャルで二の足を踏んでいる隙に、アメリカなり中国はものすごい勢いで変化していますよね。その中で我々は日本のコンテンツなりIPを、ガマニアを通じてグローバル展開することで広めていきたい。過去の資産にはたくさんいいものがありますから、それをガマニアを通じて再生していきたいと思っています。

 ですからビジネス的な展望と言うよりは、僕の思い入れですね。ガマニアという会社はもちろん台湾の会社ですが、私は日本人でずっと日本のゲーム業界でやってきた人間なので、ガマニアを通じて日本のゲーム業界を活性化させていきたいと思います。何かオンラインゲーム化したいものがありましたら、どんどんお話しをいただければ(笑)。

編: 最後にメッセージをお願いします

新川氏: 「ファントム・ブレイブ オンライン(仮)」の開発が決まりました。まだまだ企画段階ではありますが、これまでのお客様も含めて全世界のお客様に、ここでしか体験できない何かをご提供できればいいなと思っております。開発はガマニアさんですが、我々としても全力でサポートやアイデア出しをやっていきたいと考えております。ぜひ楽しみに期待して待っていて頂ければ嬉しいです。

浅井氏: 「ファントム・ブレイブ」は日本のゲームの中でも完成度が高いものの1つです。そのオンライン化をやらせていただくということで、非常にプレッシャーを感じています。うちのスタッフは前向きに楽しんで開発にあたっています。日本一さんの方でも「オンラインならこういうことができるのではないか」と提案してくれたりと、非常に前向きなプロジェクトになりそうです。まだ出せる情報がほとんどないのですが、必ず期待に添えるような情報をお知らせできると思います。

編: ありがとうございました!


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(2010年 9月 21日)

[Reported by 石井聡]