Game Developers Conference(GDC) 2010現地レポート

Game Developers Choice Awards 2010が開催
「アンチャーテッド 2」がGame Of The Yearを含む5部門を受賞、Best New Social/Online Gameは「FarmVille」が獲得


3月9~13日 開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Center


BGMと映像でショーアップされた舞台は、見飽きることがない。さすがはショービズの国

 Game Developers Conference(GDC)2010の3日目にあたる、現地時間の3月11日のセッション終了後に、GDC恒例イベント「Game Developers Choice Awards」が開催された。このAwardsはIGDA(国際ゲーム開発者協会)メンバーのゲーム開発者達の投票によって、昨年発売されたゲームを表彰するもの。プロのゲーム開発者によって選ばれる賞ということで、数あるGame Of The Year(GOTY)の中でももっとも権威のある賞の1つだ。

 広い会場にはVIP用の丸テーブルの席と、一般客用の席が用意され数千人の来場者が発表を見守った。ショーアップされた舞台の華やかな雰囲気は、ちょうど同じ時期に発表されるアカデミー賞を彷彿とさせる。

 今年からは、昨今のソーシャルゲームブームに合わせて、Best New Social/Online Gameという賞が新設された。オンライン配信されたインディーズゲームにも非常にクオリティの高いものがそろっており、もはやゲームは高機能、高画質だけを競い合う時代ではなくなったという印象を強くした。

 この記事ではBest New Social/Online Gameの栄えある第1回の受賞作品や、Game Of The Year、その他の受賞作品を紹介する。




2部門にノミネートされた「デモンズソウル」。残念ながら受賞は逃したが、日本でも発売したばかりのベスト版が品薄になるなど、じわじわとファンが増えている
日本でも評価の高い「アラド戦記」の北米版がBest New Social/Online Gameにノミネートされた
今年も恒例の「mega64」による爆笑ムービーが登場した。今年のネタは「The Beatles Rock Band」と「Flower」

 昨年のAwardsでは日本からの入賞作品が0という結果に、日本のゲーム業界のパワーダウンを痛感したが、残念ながら今年もその事態がいっそう明確な形となった。日本からノミネートされていたのはフロム・ソフトウェアが開発した「デモンズ・ソウル」と、「ゼルダの伝説 大地の汽笛」(任天堂)、京都にあるデベロッパーが作った「PIXELJUNK SHOOTER」(Q Games)の3作品だけだ。アジアでは他にNEXONの「Dungeon Fighter Online(邦題「アラド戦記」)」がノミネートされていたが、残りはすべて北米勢が占めた。

 ノミネートの段階から特に目立っていたのがNaughty Dogの「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団(以下、『アンチャーテッド 2』)」だ。「アンチャーテッド 2」は、財宝ハンター、ネイト・ドレイクを操り、ヒマラヤの奥深くに隠された秘宝を探すTPSゲーム。ガンシューティング、謎解き、アクションの3つの要素が絶妙に配置してあり、ぐいぐいと物語に引き込まれていく。

 映画を意識したカット割りや、演出がムービーではなく、プレイ中にインタラクティブに挿入されるので、ゲームを終えた後は映画を見終わったような気持ちになる。プレイステーション 3の独占販売ということもあり、現在世界で300万本とそれほど突出して売れているわけではない。だが発売以来、順調に本数を伸ばし続けている。

 「Game Developers Choice Awards」のノミネートは「Best Audio」、「Best Game Design」、「Best Writing」、「Best Technology」、「Best Visual Arts」、「Innovation Award」、「Game Of The Year」の7部門に及んだ。昨年から発表された各種のGOTYを総なめにしてメタスコアでも圧倒的な強さを誇っている作品だけに、順当な大本命といったところだ。

 対抗馬にも「コール・オブ・デューティー 4 モダン・ウォーフェア 2」(Infinity Ward)、「バットマン・アーカム・アサイラム」(Rocksteady Studios)、「デモンズソウル」、「アサシンクリード 2」(Ubisoft Montreal)、「DRAGON AGE: ORIGINS」(Bioware)など強力なタイトルが揃っていたが、結果的には並み居るライバルを突き放し「アンチャーテッド 2」が5部門を獲得するという独占状態になった。受賞台に上ったEvan Wells氏は、感極まったのか、言葉少なに謝辞だけを述べて受賞の盾を受け取っていた。

 もう1つの目玉である「Best New Social/Online Game」には、「Restaurant City」(Playfish)、「FarmVille」(Zynga)、「Dungeon Fighter Online」、「Free Realms」(SOE San Diego)、「BEJEWELED BLITZ」(POPCAP)がノミネートされた。

 結果はこちらも大方の予想通り「FarmVille」が受賞した。「FarmVille」は現在のソーシャルゲームブームの先駆けとなったゲームで、今もFacebook上で3,000万人が遊んでいる。受賞式では、2年の間に会社が巨大な企業になったことを思い出深く述べ、Facebookやそのユーザーに謝意を顕した。そして「ZyngaはFacebook上でたくさんのゲームを展開しているので、ぜひ参加してください」と締めくくった。

 他の受賞作品は以下に紹介する。


【Game Developers Choice Awards受賞一覧】
Game Of The YearUNCHARTED 2NAUGHTY DOG
Innovation AwardUNCHARTED 2NAUGHTY DOG
Best Visual ArtsUNCHARTED 2NAUGHTY DOG
Best Downloadable GameFLOWERTHATGAME COMPANY
Best TechnologyUNCHARTED 2NAUGHTY DOG
Best Handheld GameSCRIBBLENAUTS5TH CELL
Best New Social/Online GameFarmVilleZynga
Best WritingUNCHARTED 2NAUGHTY DOG
Best Game DesignBATMAN:ARKHAM ASYLUMROCKSTEADY STUDIO
Best AudioUNCHARTED 2NAUGHTY DOG
Best Debut GameTORCHLIGHTACE TEAM


【アンチャーテッド 2】
Game of The Yearを含む5部門に輝いた「アンチャーテッド 2」。見ほれてしまうような緻密な美術や、迫力満点のアクションと見所の多いゲームだ

【SCRIBBLENAUTS】
「Innovation Award」を獲得した「SCRIBBLENAUTS」。キャラクターがとてもかわいいDS用のゲーム。タッチペンで単語を集めて乗り物を出すという独特のシステムを採用している

【FarmVille】
「Best New Social/Online Game」を獲得した「FarmVille」。ソーシャルゲームの代名詞ともいえる農場系ゲーム。数多くの派生作品を生み出した

【BATMAN:ARKHAM ASYLUM】
「Best Game Desugn」を獲得した「BATMAN:ARKHAM ASYLUM」。キャラゲーを超えた高いゲーム性と、ハイクオリティなビジュアルで「バットマン」ファンならずとも楽しめるアクションゲーム

【flower】
「Best Downloadable Game」を獲得した「flower」。PS3のダウンロードコンテンツとして販売されている環境系のゲーム。花びらになって風に乗る感覚が心地よい

【TORCHLIGHT】
「Best Debut Game」を獲得した「TORCHLIGHT」。ダンジョンが自動生成される「Diablo」系のゲーム。インディーズの作品ながら、世界中にファンがいる

【電撃発表された「DEUS EX 3」の映像】
受賞式の終了後、Eidos Montrealの最新作「Deus Ex: Human Revolution」が突然スクリーンに映し出された。本作は、サイバーパンク世界を舞台に、ルネッサンスとイカロス伝説をキーワードにした独特な世界観を持つFPSだ

(2010年 3月 12日)

[Reported by 石井聡]