「EA EUROPEAN SHOWCASE」タイトルレポート その4
BioWareの新作ファンタジーRPG「Dragon Age: Origins」、
タイソンが登場するボクシングゲーム「Fight Night Round 4」など5本を紹介
米Electronic Artsが、4月23日に英国ロンドンで開催した「EA EUROPEAN SHOWCASE」。タイトルレポート第4弾では、「Dragon Age: Origins」、「Fight Night Round 4」、「Spore Hero」、「Spore Hero Arena」、「Brutal Legend」の5タイトルを紹介したい。
「Dragon Age: Origins」は「Baldur's Gate」シリーズや、「Neverwinter Nights」シリーズといった日本でもコアなファンがいるBioWareの新作ファンタジーRPGで、これまでの流れを濃密に受け継ぐタイトルである。「Fight Night Round 4」はマイク・タイソンなど伝説のボクサーを骨格から筋肉、リーチ、戦い方まで精密に再現したボクシングゲーム。他にも「Spore」をコンシューマ向けにどのようにアレンジしたか等々、注目せずにはいられない作品が目白押しである。
■ 名作RPGのエッセンスを濃厚に受け継ぎ、よりハードに雰囲気たっぷりに進化した「Dragon Age: Origins」
「Dragon Age: Origins」のLead DesignerのMike Laidlaw氏(左)と、Quality Assurance AnalystのBruce Venne氏 |
会場ではボス戦を体験できたが、難易度はかなり高かった。炎のエフェクトが非常に美しい |
「Dragon Age: Origins」は「Neverwinter Nights」シリーズの他、「Mass Effect」シリーズ、さらにセガとのコラボレーションで「Sonic Chronicles: The Dark Brotherhood」なども手がけるカナダのゲーム開発会社BioWareの新しいシングルプレイRPGだ。ヨーロッパではPS3、Xbox 360、PC向けのリリースを2009年秋に予定している。
「Dragon Age: Origins」は6つの異なったキャラクターで様々なストーリーを体験できる。ゲームでは最大4人のパーティーが組め、キャラクターの構成によってもストーリー展開は異なってくる。また、NPCとの会話の際に選択肢が現われ、選択によってもストーリーは変化していく。
EA EUROPEAN SHOWCASEでは、特設ブースで1シーンを体験できた。邪悪な魔術師と対決する場面で、会話をした後に敵は巨大なモンスターに変わる。モンスターは炎を吹き出したり、キャラクターを凍結させる魔法を使ったりとかなり強力な上、護衛も引き連れている。難易度は高く、ゲーム内でも大きく盛り上がるシーンの1つだという。ただ、初めてゲームを体験するためのシーンとしてはバランスはかなりきつく、ゲームの要素を調べるまもなく倒されてしまう人が多かった。
ゲームシステムは「Neverwinter Nights」シリーズに近く、プレーヤーはキャラクターを選択し、目的地をクリックすることで移動を行なう。視点は、「Baldur's Gate」や「Neverwinter Nights」のようなクォータービューから、アクションゲームのようなFPSに近い視点までシームレスに変更できる。戦闘時にはスペースキーを押すことでポーズをかけることができ、各キャラクターに個別に指示を出すことができる。グラフィックスは特に炎の表現が美しい。敵がまとうオーラのような光や、魔法のエフェクトなど、「空気感」も見事に表現していると感じた。
画面から伝わる雰囲気は、「本格的なダークファンタジー」という印象で、好感を持った。キャラクターの装備や、フィールドは細部まで書き込まれていて、重厚な世界観が伝わってくる。このシーンで登場するモンスターは人間に無理な力を加えてモンスターに変化させてしまったようなグロテスクな表現で、フィールドも石造りの城に不気味な寄生生物がとりついている、といった感じである。どんな背景で城がこんな風に変わってしまったのか、興味が惹かれるところだ。
戦闘は、一瞬でも気を抜くと倒されてしまう緊張感の高さを感じた。各キャラクターのスキルと特性を把握した上で、前衛が前方で敵を引きつけ、回復役は戦士をフォローする。アタッカーは的確に敵を射抜き、魔法使いは距離をとって大ダメージを与える魔法を準備する。テストプレイでは誰がどんな役割を果たすかも把握できず倒されてしまったが、キャラクターを育て上げ、パーティーに合わせた最適な作戦を考えることでかなり爽快な戦闘を体験できそうだ。
各キャラクターのスキルは多彩で、育て上げることで様々な特性を獲得していくようだ。「Dragon Age: Origins」ではプレーヤーキャラクターの職業などは自由に選択でき、3人の仲間のメンバーも、誰にするか選択できるという。プレーヤーが選んだ職業、やってみたい戦術、もしくは敵に効果的な戦い方など、様々なテーマを持ってパーティーを編成したり育てていけそうで、やりこみ要素にも期待したいところだ。
「Dragon Age: Origins」を触ってみて、ファンタジーという世界観だけでなく、システムや敵との駆け引きなど、全体的に、「Neverwinter Nights」や「Baldur's Gate」シリーズのエッセンスを濃く受け継いでいるところに好感を持った。早くプレイしてみたいタイトルだ。北米では2009年の夏に本作のルールを活用した紙とペンで遊べるボックスタイプのRPGも発売されるということで、こちらにも期待したいところだ。
スクリーンショット、かなりハードな世界観となるようだ。選択肢によるストーリー分岐にも注目したい | ||
モンスターとの戦いも激しい。血が飛び散ったりと、表現の過激さも特徴だという |
■ タイソンのけんかスタイルでアリに立ち向かえ! 新エンジンで名選手を再現する「Fight Night Round 4」
「Fight Night Round 4」のAssociate Producer Mike Mahar氏 |
会場はリング仕立てだった。メディアの記者達はかなりエキサイトしながらプレイしていた |
「Fight Night Round 4」はこれまでとはゲームエンジンを一新、「新しい世代のボクシングゲーム」を目指して開発が進められている。PS3とXbox 360で、ヨーロッパでは6月30日に発売される予定だ。
「Fight Night Round 4」では元ヘビー級世界チャンピオンマイク・タイソンがシリーズで初めて登場する。リーチ、パンチの重さ、筋肉の付き方からその動きといった選手が持つ身体的データと、戦うスタイルまで余すところなく再現した「本物のマイク・タイソン」が登場する唯一のゲーム、と言うわけだ。
マイク・タイソンの他にもモハメド・アリなど伝説の名選手達をその全盛期の姿で収録しており、「もし彼らが時代を超えて実際に戦ったら?」という夢を本作は実現している。若い頃のマイク・タイソンのけんかスタイルのフックとアッパーで敵を粉砕するパワフルな戦い方。華麗なフットワークで「蝶のように舞い、蜂のように刺す」といわれた、リーチを活かしスピードのあるジャブで切り込むモハメド・アリの戦い方など、彼らのボクシングスタイルを再現し、よりリアルな「夢の実現」を目指している。
パンチを食らった際にゆがむ顔、飛び散る汗や血といった表現も物理エンジンで再現しており、パンチの応酬によりリアルな感触をもたらしている。アドレナリンの影響による興奮、戦いを継続することで生じる疲労、パンチのダメージの蓄積、フットワークなど、戦いで変化していく要素も取り入れられている。
EA EUROPEAN SHOWCASEではマイク・タイソンとモハメド・アリの対決を対戦プレイで体験することができた。基本は2つのアナログスティックを使い、左スティックでキャラクターを動かし、右スティックを倒すことでパンチを繰り出す。敵の隙をつくように上、下を打ち分けていく。タイミングよくパンチを繰り出せば相手に大ダメージを与えられるが、初めてなのでひたすらレバーを入れる“ガチャプレイ”になってしまった。それでも画面内では2人の選手が激しくパンチを繰り出しており、初心者も楽しいゲームだと感じた。
相手のパンチの隙間をかいくぐってパンチを当てられたときは相手の顔が大きくゆがみ、大きな爽快感をもたらす。リーチに勝りアウトレンジの戦いが得意なアリ、接近してアッパーをたたき込むタイソンとそれぞれのファイトスタイルを把握することでより有利に戦える。練習を重ねることで選手の能力を最大限に生かす戦い方を学んでいけると感じた。頭をたたきつけるバッティングといった反則要素も用意されており、ラフな戦いもできる。選手によっては「ばれない反則」が勝利の鍵になるかもしれない。
本作の日本での発売は未定だが、日本語マニュアル付き英語版でも充分楽しめるタイトルだと感じた。オンライン対戦にも対応しており、世界の強豪と戦うのも楽しみだし、CPU戦で往年の名選手を破っていくのも楽しそうだ。何よりも全盛期の姿をリアルに再現する、と言う要素でボクシングファンにはたまらない魅力を持った作品である。
会場ではタイソンとアリの一戦を体験できた。リアルな二人の肉体のぶつかり合いに圧倒されてしまう。ダウン時の対処はミニゲーム風になっていて指示された方向にスティックを倒すことで起きあがる |
■ 生物の進化を描いた「Spore」をより親しみやすいストーリーで! Wii版「Spore Hero」、DS「Spore Hero Arena」
一足早く「Spore Galactic Adventures」を触ることができた |
クリーチャーを進化させ、最終的には生命や文化を宇宙に拡散させていこうというユニークなPC用シミュレーション/アクション「Spore」が、WiiやDSで生まれ変わる。Wii版は「Spore Hero」、DS版は「Spore Hero Arena」というタイトルで、どちらもヨーロッパでは2009年秋に発売予定だ。
「Spore Hero」は1つの生命体の代表として“悪のパワー”と戦うアクションアドベンチャーとなる。プレーヤーは自らの家を、種族を、そしていずれは宇宙を守るために様々なところへ旅し、戦っていくことになる。
3Dグラフィックスで描き出された世界はPC版「Spore」の雰囲気を再現しながらより親しみやすくなっている。インターフェースもWiiリモコンの特性を活かした工夫がされている。悪のクリーチャーとの戦いや、パズルなど様々なミニゲームをプレイしながらストーリーを進めていく。展開するストーリーはユーモラスだ。
ゲームを進めていくことで、プレーヤーは250以上ものクリーチャーのパーツをゲットできる。これらをどう組み合わせていくか、自分だけの奇妙で楽しいクリーチャー作りを目指すことが可能だ。
DS版の「Spore Hero Arena」は基本的な要素はWii版と同じ、宇宙を舞台とした、悪と戦うアクションアドベンチャーだが、より「戦い」に特化した内容になるという。各惑星にはそれぞれ「チャンピオン」がいて、彼らと戦うことでプレーヤーキャラクターは成長していく。
チャンピオンに勝つことでプレーヤーはクリーチャーのパーツをゲットし、様々な特性を持ったクリーチャーに成長させることができる。DS版では通信機能を使って最大4人での対戦が可能で、Wi-Fiにも対応するという。生命の進化をテーマにした「Spore」が、WiiとDSというハードで、より低年齢層を意識したアレンジを加えられ、どのように生まれ変わるのかは興味が惹かれるところだ。
スクリーンショットはWii版のもの。「Spore」の特徴はそのままで、より親しみやすく、また、「クリーチャー同士の戦い」に要素を追加した形にアレンジしている |
こちらはDS版。PC版とは大きく異なった雰囲気だが、ユーモラスなクリーチャーと、探索要素が楽しめそうなマップが見える |
■ ユニークだけどハードで熱い、 魂の奥に燃えるロック魂! 「Brutal Legend」
「Brutal Legend」のCreative Director Tim Schafer氏 |
「Brutal Legend」はヘビーメタルのプロモーションビデオなどで登場するファンタジーテイストの世界を、よりグレードアップしてゲームで再現してしまったユニークな、そして作り手の趣味が前面に出されたアクションゲームだ。欧米ではPS3版とXbox 360版がそれぞれ2009年に発売される予定だ。
本誌では「Brutal Legend」を開発元であるサンフランシスコにあるDouble Fine Productionsの本社オフィスで取材しており、EA EUROPEAN SHOWCASEで紹介された内容はほとんど同じものだったが、改めて本作の「ノリ」に魅了された。
本作の主人公はEddieというもう若くはない男。ロックバンドのツアーマネージャーとは聞こえがいいが、ギターの調整からステージの設営までやらされる何でも屋のような仕事をしている“おっさん”なのだが、突然異世界に迷い込む。そこは彼がイメージし、コンサート会場として作ろうとしていた世界がそのまま現実化したような世界だった。
いきなりローブを着た骸骨におそわれ、「これはなんかの冗談か、夢か?」とかいいながらも、儀式の祭具であった強大な力を持った斧と、弾けば稲妻を発し周囲を黒こげにしてしまうギターで敵を蹴散らすEddie。時々現実との乖離に混乱する表情を見せるものの、すぐに順応し、ノリノリのヒーローになってしまうEddieの適応性がすばらしい。
「Brutal Legend」はけばけばしく、禍々しい異世界で戦いを繰り広げていく。ところどころでユーモアや皮肉を混ぜながらも、根底にはあこがれを感じずにはいられない「怪物をなぎ倒す強いヒーロー」をきちんと表現しているところに強い魅力を感じる。ノリノリで時々かっこいいEddieだけでなく、ヒロインも日本のユーザーでも受け入れやすいデザインで、早くプレイしてみたいと思った。ユニークな作品として日本でも注目を集めそうな作品である。
骸骨や肋骨などのオブジェクト、暗い世界に燃え上がる炎とハードな世界と、立ちはだかる敵を倒していく爽快感。どう見てもアメ車にしか見えない乗り物で爆走など、そのノリノリっぷりに笑ってしまうが、強いあこがれを感じさせる部分もきちんとある作品だ |
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□Electronic Artsのホームページ
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(2009年 5月 13日)