EA EUROPEAN SHOWCASE現地レポート

EA、「EA EUROPEAN SHOWCASE」を英国ロンドンにて開催
今年のEAの主戦場はWiiに。Wii Motion Plus対応タイトルなどを公開

4月23~24日開催(現地時間)


 世界最大手のゲームパブリッシャーElectronic Artsは、現地時間の4月23日と24日の両日、英国ロンドンにてプライベートイベント「EA EUROPEAN SHOWCASE」を開催した。

 「EA EUROPEAN SHOWCASE」は、ヨーロッパのメディアを対象としたEA UK主催のプライベートイベントで、英国のメディア約70名、英国以外のヨーロッパのメディア約70名の計140名を招待し、2009年に投入される新作16タイトルを披露した。

 基本的には米国やアジアで開催されているプライベートショウと同じ性格のものだが、今年はEA SingaporeがEAグループ全体の業績不振の影響でシンガポールでのプライベートショウを行なわない方針ということで、急遽我々日本のメディアもヨーロッパのイベントに混ぜていただいたという格好となる。

 イベントの内容としては、すでに発表されている新作タイトルを一足先に試遊できる“E3前の先行お披露目会”といった印象で、各タイトルとも、開発中のタイトルとしては異例なほど自由に試遊できた一方で、撮影が極端に制限された上、細かく解禁日が設定されており、実は現時点で書けることはあまりない。中でも今回ヨーロッパのプライベートショウにふさわしいヨーロッパ市場向けの目玉タイトルの発表および試遊なども行なわれたが、こちらもまたご紹介できないのが残念だ。

 本稿ではひとまずイベントの模様と出展タイトルのラインナップをお伝えし、新作ゲームの情報については、EAが指定した解禁日ごとに順次掲載していくつもりだ。なお、発売時期や価格については特に記載がない限り、英国の情報であり、日本での取り扱いの有無や発売日、価格については別途EAジャパンからの正式発表をお待ちいただきたい。


【ウェルカムパーティー】
イベント前日の夜はEA恒例のウェルカムパーティーが開催された



■ ヨーロッパ中のゲームメディアが参加したプライベートイベント

ガラス製のビヤ樽のような形状をしたThe Ark

 「EA EUROPEAN SHOWCASE」の初日は、ロンドン中心部から少し外れたHammersmithのイベントスペースThe Arkにて開催された。朝9時から19時半まで10時間ぶっ通しで、新作タイトルのデモを受けたり、試遊を楽しむことができた。イベントには各国のプレスとPR担当ら100名以上が参加し、会場はE3のクローズドブースのような密度と賑わいを見せたが、実は英国のメディアとそれ以外のメディアの日程をずらし、同じイベントを2日間開催していたという。さすがに米国に次ぐ規模のリージョンのプライベートイベントだと感心させられた。

 会場は7階から9階までの3階層を利用。8階をプレスの休憩スペースに当て、7階と9階にE3のプライベートブースのような空間を用意し、タイトルプロデューサーやリードデザイナーらのデモンストレーションを受けながら、自由に試遊を行なうことができた。プライベートイベントとしてはほぼ理想的な環境である。

 イベント2日目は、プレミアリーグの強豪アーセナルの本拠地エミレーツスタジアムを借り切って発表会および試遊イベントが行なわれた。貸し切りとはいえ、あくまで新作タイトルの発表および体験の場としてスタジアムの一部を借りただけで、試合等を観戦することはできなかったものの、手入れの行き届いたスタジアムの視察は可能だったため、ヨーロッパのメディアの中には新作タイトルの取材より記念撮影に忙しい人もいたほどで、フットボールファンにはたまらないプレミアムイベントとなったようだ。

 冒頭でも触れたように、残念ながらエミレーツスタジアムで何が発表されたかについては一切触れることができないが、EAがヨーロッパ市場をいかに重視しているかを実感させられたと同時に、ヨーロッパメディアの心に強烈な印象を残すことにも成功したのではないかという印象を持った。

 今回のイベントのホスト役を務めてくれたのはEA SPORTS Presidentのピーター・ムーア氏。初日、2日目とも朝一番に挨拶を行ない、午後は精力的に各メディアのインタビューに応じていた。挨拶では自らの担当分野であるEA SPORTSのみならず、EA GAMESのタイトルについても言及するなど、ここ数年ですっかりMicrosoftからEAの広告塔に変わった印象である。


【EA EUROPEAN SHOWCASE】
イベントは1タイトル10分程度のデモの連続からスタートし、午後は自由に移動してゲームをプレイすることができた。入場制限のあるルームではみっちりとレクチャーを受けることができた。手前の部屋は期待のアクションアドベンチャー「The Saboteur」の部屋が見える

【エミレーツスタジアム】
イベント2日目はエミレーツスタジアムで行なわれた。無人のスタンドを歩くという珍しい経験ができた。イベントでの発表内容については後日レポートしたい



■ EAがWiiシフトを進める理由、その展望とは!?

インタビューに応じるEA SPORTS Presidentピーター・ムーア氏。Wiiに対する関心が最も高いという印象だった
Wii版「Tiger Woods PGA TOUR 10」。Wii Motion Plus同梱タイトル。スイングの検知はもちろんのこと、わずかな手のひねり、向きの調整まで検知してくれる繊細さが楽しい
Wii Motion Plusを装着したWiiリモコン。Wii Motion Plus装着状態用のカバーは、Wii Motion Plus単体あるいはゲーム同梱パッケージに付属する。手前部分が広がっており、滑り落としにくくなっている

 さて、「EA EUROPEAN SHOWCASE」でもっとも印象的だったのは、PS3やXbox 360、PCを総称する“Next Gen Platform(次世代機)”から、Wiiへの明確なシフトだ。EAはもともとゲームプラットフォームの“乗り換え”が早いメーカーであり、それゆえに常にその動向が注目されてきた。これまでの大まかな流れとしてはPCからスタートして、プレイステーション、PS2、PS3/Xbox 360と来ていたが、今年はついにWiiとなる。その変化は今回発表されたタイトルのラインナップを見れば一目瞭然だ。

    「EA EUROPEAN SHOWCASE」出展タイトル

    ・EA SPORTSタイトル
    EA SPORTS Grand Slam Tennis(Wii、PS3、Xbox 360)
    EA SPORTS Active(Wii)
    Fight Night Round 4(PS3、Xbox 360)
    Tiger Woods PGA TOUR 10(Wii、PS3、Xbox 360)

    ・EA GAMES TITLES
    Dante's Inferno(PS3、Xbox 360、PSP)
    Dragon Age: Origins(PC)
    Need for Speed Shift(PS3、Xbox 360、PC)
    Need for Speed Nitro(Wii、DS)
    Spore Hero(Wii、DS)
    Spore Galactic Adventure(PC)
    The Saboteur(PS3、Xbox 360)
    Dead Space Extraction(Wii)

    ・EA PARTNER TITLES
    Brutal Legend from Double Fine(PS3、Xbox 360)
    Rock Band 2 from MTV Games(Wii)
    Rock Band Unplugged from MTV Games(PSP)

 15タイトル中7タイトルでWii版がリリースされ、「EA SPORTS Active」のようなWii専用タイトルもお目見えし、実質的には移植版とはいえ、「Dead Space Extraction」や「Rock Band 2 from MTV Games」といったWii向けの派生タイトルも生まれつつある。いずれも昨年にはまったく見られなかった光景だ。ピーター・ムーア氏は、この明確なWiiシフトについて「Wiiは今やゲーム市場全体の45%ほどを占める巨大な市場に成長しており、我々はその存在を無視できない。もはや次世代機だけではビジネスにならない」とその理由を語ってくれた。

 ムーア氏は初日の挨拶の中で、女性コンシューマーに向けたコンテンツとしてフィットネスゲーム「EA SPORTS Active」を取り上げ、また、今年6月に任天堂からリリースが予定されているWiiリモコン用アクセサリー「Wii Motion Plus」を、「Tiger Woods PGA TOUR 10」に同梱することなどを明らかにした。

 2日目の挨拶では、自身の担当分野であるEA SPORTSの戦略が紹介されたが、マス獲得のためのストラテジーとしてWiiへの注力が紹介された。WiiへのEA SPORTSの展開は3種類に大別される。ひとつは「FIFA 09」や「MADDEN 09」のWii版で実現していたかわいらしいアバターやカジュアルな操作体系による低年齢層の獲得。2つ目はWiiリモコンとWii Motion Plusによる高解像度のモーションセンサーを駆使した“リアルなスポーツ体験”の実現。3つ目がフィットネスゲーム「EA SPORTS Active」のような有酸素運動や筋トレといった健康維持を目的とした新しいタイプのゲームによる新規層の獲得を挙げた。

 ムーア氏は、メディアインタビューの中で、「任天堂の全面協力によるWii Motion Plusへの参入はEAにとって大きなチャンスであり、個人的にも大好き」とWiiへの熱愛ぶりを披露し、現時点では比較的相性の良いゴルフとテニスの2本のみに留まるWii Motion Plus対応タイトルを、今後も状況に応じて増やしていく方針を明らかにした。

 もちろん、ムーア氏は、Wiiのみならず、他のプラットフォームへも引き続き力を入れる方針としている。具体的なストラテジーとして、さらなる品質の向上、ゲーム性のイノベーション、オンライン機能の強化などを挙げてくれたが、それらに割って入るようにいきなりEAのストラテジーの中で大きなウェイトを占め始めたWii向けのフランチャイズに今後も引き続き注目していきたいところだ。


【The Saboteur】
今年のEA GAMESタイトルの中で一押しのひとつが「The Saboteur」。ナチスドイツ支配下のパリを舞台に、レジスタンス活動に従事するという、モチーフに味わいがある作品。モノトーン調のグラフィックスは、パリ市民の絶望を表し、プレーヤーがレジスタンス活動に成功すると、街に色彩が戻っていくという演出面も素晴らしい。発売プラットフォームはPS3、Xbox 360、PCで発売時期は未定

(2009年 4月 25日)

[Reported by 中村聖司 ]