「EA EUROPEAN SHOWCASE」タイトルレポート その1
ドイツ占領下のパリで抵抗活動を繰り広げるTPS「The Saboteur」、
4つのパートを演奏できる「Rock Band Unplugged」など、5タイトルを紹介

4月23日収録




 Electronic Artsは4月23日、ロンドンで「THE EA EUROPEAN SHOWCASE」を開催した。このイベントでは15ものゲームタイトルが発表され、各タイトルの解説を聞くことができ、一部のタイトルは試遊をすることもできた。ヨーロッパを中心に140を越えるメディアが集まる大きなイベントとなった。

 本稿はTHE EA EUROPEAN SHOWCASEレポートその1として、第二次大戦時のドイツ占領下のパリを舞台に、解放のための戦いを繰り広げる「The Saboteur」、ギターやベース、ボーカルといった様々なパートをPSP1つで演奏できる「Rock Band Unplugged」、「Wii Motion Plus」を同梱し、よりリアルなゴルフスイングによるコース攻略が可能になる「Tiger Woods PGA TOUR 10」、など5タイトルを紹介したい。


■ ナチスの支配を血と爆薬で覆す、戦時下のパリを舞台とした箱庭型アクションアドベンチャー「The Saboteur」

「The Saboteur」のLead designerを務めるTom French氏
本作のコンセプトアート。灰色の世界で、血とナチの腕章だけが赤く浮かび上がる
ナチの支配から開放された街は色を取り戻す。奥はまだ重い灰色のままだ

 「The Saboteur」は第二次大戦時のドイツ支配下におけるパリを舞台としたアクションアドベンチャーだ。発売日は未定で、PS3、Xbox 360、PCでの発売が予定されている。開発は「Mercenaries」や「Star Wars: Battlefront II」などを開発したPandemic Studios。レーティングも未定だが、紹介ムービーでは暴力描写や、キャバレーでの女性のセクシーな姿が描かれていて、対象年齢はかなり高くなりそうだ。

 本作は広大なパリの街を3Dグラフィックスで描き起こし、占領下に暮らす人々や、彼らを威圧するドイツ軍人が闊歩している。プレーヤーはこのパリを舞台にナチに敵対する破壊活動を行なっていく。「sandbox(自由に遊べる砂場)」といわれるゲームジャンルの作品で、どんな行動を行なっていくか、自由度の高さもセールスポイントだ。プレーヤーはアイルランド人のレーシングカー整備士である「Sean Devlin」となる。彼はあるきっかけでナチの将校にすべてを奪われ、ナチへの復讐のためにレジスタンス活動に身を投じることになる。

 Lead designerのTom French氏によるデモプレイを通じて「The Saboteur」の要素を知ることができた。帽子を目深にかぶり、厚手のコートを着た主人公Seanは非常に地味な存在に見える。ドイツ占領下のパリは建物の質感や、道行く人の服装、街路樹や看板などすべてが細かく作られているが“色”が全くない。すべてがモノクロで描写されている。その中をSeanは物陰に隠れて進み、ナチの兵士に殴りかかる。兵士の口から真っ赤な血がはき出される。

 「The Saboteur」ではナチに占領された世界はすべてが灰色で描写されているという。建物に貼り付けられたハーケンクロイツが描かれたドイツ国旗だけが、血のような赤で灰色の世界から浮き上がっている。空に浮かぶ巨大な飛行船「ツェッペリン号」の船体にもドイツの旗が描かれているところはくっきりと赤く染められている。

 このモノクロの世界でSeanはドイツ軍を撃退するため、時には敵から隠れる隠密行動を行ない、時には銃を手に正面から戦う、爆弾テロを仕掛け、脱出のためのカーチェイスを繰り広げてることもある。French氏は「『The Saboteur』では多彩なアクションを主人公にさせたかった」と語る。スニークアクションやドライブゲーム要素の他、窓枠や屋根を足がかりに建物に上ったりと高い身体能力を活かしたアクションも可能だ。

 マップにはアイコンでミッション開始場所が描かれていて、そこに行くと建物の中に入って破壊工作を行なう、といったミッションがスタートする。隠れたままミッションを遂行することも、武器を手に正面からドイツ兵をなぎ倒すことも可能だ。スナイパーライフルやロケットランチャーといった武器も用意されており、ロケットランチャーではツェッペリン号を打ち落とすことができた。

 見つかると敵が警戒状態になり、瞬く間に周囲の兵士につけねらわれる。敵意を持った兵士は灰色の景色の中に赤く浮かび上がる。敵から逃れるには警戒範囲を脱することで可能だ。警戒中の道を車で駆け抜ける、というミッションでは車で敵の警戒が解除されなかったが、赤く光る敵の一団をまとめてはじき飛ばすアクションも見ることができた。乗り物は、主人公の職業を活かしたレースカーはもちろん、装甲車やトラック、さらには戦車などにも乗ることができるという。

 ミッションをクリアすることでその地域はナチの支配から解放される。そうなると今まで灰色だった世界が、風景画のように美しく色鮮やかなものに変わる。空は青く澄みきっており、木々は青々としていて、建物も優しい色遣いで平和な世界を感じさせる。ナチの占領地域とは線が引かれているように色がとぎれ、灰色の世界になる。このはっきりとしたコントラストは「The Saboteur」の世界の大きな魅力だと感じた。灰色の重苦しい世界が、プレーヤーの手ではっきりと変わっていくのだ。

 レジスタンスの活動の拠点の一つとして地下クラブやキャバレーが設定されており、彼らの生活様式も興味が惹かれるところだ。1940年代のパリの文化はどんなものだったのか、そしてナチスの文化とはどういうものなのか、ゲーム画面からは制作者がどれだけ力を入れているかが伝わってくる。

 パリそのものも注目だ。セーヌ川、空にそびえるエッフェル塔、ノートルダム寺院、有名な建物だけでなく、市井の人々や、各地で検問を行なうナチ党員、そしてのどかな郊外の風景、あの時代のパリがどんなものだったかを感じることができる。白黒の画面は想い雰囲気と共に、照明やナチの旗だけが浮かび上がっているところはスタイリッシュなセンスを感じさせられるところもある。このパリを歩いてみたい、と思わせる魅力を持っている。

 現在のバージョンでは敵が撃たれても闇雲に前進してきたり、多くの敵が突っ立ったままただひたすらこちらに銃撃を浴びせてくる場面があったりと、敵との駆け引きという部分ではまだまだ練り込みが必要だと感じた。一方、パリの街は現在でも非常に美しく作り込まれていて、見ているだけで楽しかった。やはり驚かされたのが色が変わるところだ。灰色一色だった世界が、色鮮やかな、世界に変わる。色の付いた世界は「平和」を象徴しているかのようにのどかで、自分の手で成し遂げたら強い達成感が味わえるだろうなあと感じた。

 アクション部分も楽しみである。ミッションでも隠れることに集中したプレイも、戦車で進むような派手なプレイもしてみたい。レジスタンスとしてどんな活動を行なっていくのか、どんなストーリーが展開するのか。パリ解放という歴史的な事件の中でプレーヤーがどんな役割を果たすのか。盛りだくさんなゲームシステムと、大きなテーマ全てが魅力的に感じた。まだ発売日も未定とのことだが、早くプレイしてみたいタイトルだ。


壁にしがみついたり、ロープを伝ったり、主人公Seanは超人的な身体能力を持っている
Saboteurとは「破壊者」を意味する。スナイパーライフルを使ったり、抵抗組織から支援を受けた爆薬を活用したり、様々なミッションで破戒活動を行なっていく


■ 4つのパートを一人で演奏。アバター要素などのやり込みも楽しいPSP「Rock Band Unplugged」

「Rockband」シリーズのPRを担当するAlex Navarro氏
4人1組のロックバンドの演奏を1人で追体験。さびの部分を演奏していく

 「Rock Band Unplugged」はリードギター、ベース、ドラム、そしてボーカルをすべて1人でやってしまおうという、ユニークなリズムアクションゲームだ。プラットフォームはPSPで、ヨーロッパでの発売は2009年6月9日を予定している。

 「Rock Band Unplugged」のメインモードとなる「ワールドツアー」モードではプレーヤーはギター、ボーカル、ベース、ドラムの4人のバンドメンバーとして世界の都市でコンサートを行うな。ゲームシステムそのものは上からスクロールしてくるマークに合わせて指定されたキーを叩くという「Rock Band」のシステムを踏襲しているが、本作がこれまでのシリーズと違うのは「演奏中に他のパートにジャンプできる」というところだ。ギターパートを奏でたかと思うと、ボーカルに、そしてベースに。ソロパートでは再びギターに。

 4人のバンドを一人でやるというのはちょっと難しく感じるが、パートが変わっても操作は同じだ。一定時間各パートを成功すると他のパートに移るように指示され、曲を奏でていく。成功すると腹に響くベースの音や、ボーカルの高音がきれいに曲に乗り、とても気持ちいい。一人で4人のバンドを操作できると言うのも面白い。

 ただしゲームになれない最初は印に合わせてボタンを押すのに精一杯で、ギターに慣れたときに他のパートに動かなくてはならないのは「もう少し長くやりたい」と思った。操作は同じでもパートを変えるとちょっと考えてしまうのだ。曲が終わるまでにどのパートもバランスよく演奏しなくてはならず、少し難しいかな、とも感じた。

 しかし、「曲」に注意するとその不満が勘違いであることに気づいた。めまぐるしく変わるパートは、それぞれの「サビ」を表現している。歌が盛り上がるところではボーカルに、旋律が強まるところではベースに、ドラムのソロパートは眺めに。曲を取り出し、「一番おいしいところ」だけを連続して奏でられるという演奏者が夢見た世界がそこに実現しているのだ。

 もちろん、1つのパートだけを練習するモードもある。また、楽器のアップグレードや、服装のカスタマイズも可能で、様々なやりこみ要素が盛り込まれている。4人のバンドメンバーをどんな感じに成長させるか、一人だけばりばりのヘビメタ風、といったちぐはぐ感を出すのも面白そうだ。

 収録されている曲はJackson 5の「ABC」や、Nirvanaの「Drain You」、The Killersの「Mr. Brightside」など1960年代から最近のヒットナンバーまで41曲、さらにダウンロードコンテンツとして10曲の配信が予定されている。これまでの「Rock Band」のように、他のプレーヤーとセッションする楽しさや、大きな楽器型コントローラーを使うのとは違うベクトルでロックの名曲に挑戦できる。日本でも展開を検討中と言うことで、今後に注目したいタイトルだ。


上から下へ落ちてくるマークに合わせてボタンを押していく。ボタンの割り振りは自由に設定でき、自分なりの演奏スタイルを追求できる

【Wii「Rock Band 2」】
5月に発売される予定のWii版「Rock Band 2」。PS3やXbox 360番とは違う楽曲をDLCで提供するなど差別化を図っている。友人と同じ部屋での演奏はもちろん、オンラインでのセッションプレイも楽しい作品だ


■ Wii Motion Plusで生まれる新しいショット体験「Tiger Woods PGA TOUR 10」

Wii版の「Tiger Woods PGA TOUR 10」のProducerを務めるReza Elghazi氏

 「Tiger Woods PGA TOUR 10」は世界でもっとも有名なプロゴルファーと言えるTiger Woods氏をはじめとしたプロゴルファーが登場し、彼らに挑戦できるシリーズ最新作だ。PS3、Xbox 360、Wiiでヨーロッパでは6月15日の発売が予定されている。

 特にWii版は、「Wii Motion Plus」が同梱されるバージョンが発売され、これまで以上にリアルな感触でゲームを体験することが可能になる。本稿ではWii版の情報をお伝えしたい。「Wii Motion Plus」をつけることでWiiのコントローラにさらに細かく正確な動きをさせることができるWii Motion Plusを追加させることで、Wiiのリモコンはこれまで以上に正確で細かいプレーヤーの動きをゲーム内で再現させることが可能になる。

 実際に触って面白かったのが、コントローラと画面のシンクロ体験だ。実際のゴルフクラブのようにWiiリモコンを握り、後ろに引くと画面のキャラクタもそのままクラブを引く。Wii Motion Plusのレスポンスの良さはコントローラを握っただけで実感できる。さらに握ったコントローラを傾けるとフックやスライスなども加えることができる。思いっきり振り抜けばボールは空高く飛んでいく。Wiiのゲームの魅力は実際に体を動かしてスポーツを疑似体験できるところだが、本作はそのリアルな感触がさらに一段上のステージに上がったように感じた。

 実際にゴルフクラブを握るとクラブヘッドにボールが当てにくかったり、地形によっては地面を叩いたりと難しい。リアルとはいっても、空振りはしないし、誰でもプロゴルファーのようなスーパーショットができる。気軽にゴルフが楽しめるゲームだと感じた。ただ、パワーゲージなどが表示されないため、フルパワーのスイングというのはどう振ればいいのか、初心者にはわかりにくく感じた。うまくコースを回るには練習が必要だと感じた。

 Wii版ならではの要素としては、円盤を投げてカップを目指すという「ディスクゴルフ」が楽しめる。全米オープンに出場し世界の強豪と腕を競うメインモードとは違った、カジュアルな楽しさを持ったモードである。こちらはWii Motion Plusがなくてもプレイ可能とのことだ。

 カジュアルからシミュレータ派まで幅広いユーザーに対応した本作だが、やはり今作はWii Motion Plusを使って、クラブと自分の動きのシンクロに驚き、そこからベストショットを模索する新しい楽しさがセールスポイントだと感じた。現在はまだ未定だが、日本での発売も楽しみだ。


リモコンを握り、構えるとキャラクタがその通りのアクションをする。その気持ちのよいシンクロはWii Motion Plusならではだ
Wii版ではTiger Woodsなどプロゴルファーに挑戦できるほか、ディスクを投げてコースを進むディスクゴルフを遊ぶことができる

【PS3、Xbox 360「Tiger Woods PGA TOUR 10」】
PS3、Xbox 360版の「Tiger Woods PGA TOUR 10」。ヨーロッパでは6月15日の発売が予定されている。ネットを利用して現実と同じ天気でのプレイが可能になった点が大きな特徴だ。ネット対戦にも対応している。かつてTiger Woodsが直面した様々な状況や奇跡のショットを、練習を積んで再現するモードも

【プロモーションムービー】

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(2009年 4月 25日)

[Reported by 勝田哲也]