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ネクソンモバイル事業部、メディア向け説明会を開催

「世界レベルの楽しさを日本のモバイル市場へ」

8月17日 開催

 ネクソンのモバイル事業部(以下、モバイル事業部)は8月17日、メディア向けに国内モバイル事業に関する説明会を開催した。

 ネクソンは、2015年の8月にモバイル事業部を立ち上げ、本格的に国内モバイルゲーム事業に参入した。説明会では、設立以降の取り組みや市場の傾向、主要リリースタイトルについて説明するとともに、今後の事業方針などについて語られた。

日本のモバイルゲーム市場の背景

ネクソンのモバイル事業本部本部長 金起漢(キムキハン)氏
国内のモバイルゲーム市場の変遷

 説明会で登壇したのはモバイル事業本部本部長 金起漢(キムキハン)氏。技術職としてネクソンに入社し、モバイル事業立ち上げ時から本部長を務めている。

 初めに金氏は国内のモバイルゲーム市場について言及した。モバイルゲームは2011年から2012年にかけてブラウザゲームからネイティブゲームにシフトしてきた背景があり、まず「モンスターストライク」や「パズル&ドラゴンズ」のようなカジュアル層に向けたゲームの成功があった。

 その後やりこみ要素や高いゲーム性を盛り込んだゲームが市場に登場して競争が激化する一方、開発やマーケティングにかかるコストの高騰も見られ、配信ソフトのヒット率も下がってきたのが2015年あたりの成熟期だと説明した。

 そして昨年2016年の下期あたりから、オリジナリティの高いタイトルや海外タイトルも国内でリリースされるようになったことで、さらに市場が成長してきていたという。その時期にモバイル事業部では「HIDE AND FIRE」などのタイトルをリリースして一定の成果を得ており、新しいゲームを紹介することで新しいニーズを創出することができる段階だったのではないかと語った。

ネクソンのモバイル事業部について

 ネクソンのモバイル事業部は2015年8月に設立された。日本市場におけるモバイルゲームの盛り上がりは2012年頃から始まっており、そうした意味では他社から3年ほど遅れてのスタートだったという。

 立ち上げはゼロベースだったわけではなく、もともとPCジャンルやモバイル分野で実績のあるスタッフが集っており、パブリッシングに必要な機能は全て揃った状態であったということだ。

 当時のの人数は35名ほどだったということだが、現在では70名と人数は倍近く増員しているほか、社内のカルチャライズやデータマイニングの専門部門の協力を得つつ事業を行なっているという。

 そんなモバイル事業部のミッションは、「世界レベルの楽しさを日本モバイル市場へ」紹介することだという。日本ではいわゆる「JRPG」ジャンルが人気だが、モバイル事業部では世界中のゲームに目を向け、それを日本市場に紹介することで新たな遊びを提供し、日本のモバイル市場の成長にも繋げていく狙いがあるという。

 モバイル事業部は2015年の立ち上げ時点で3本のタイトルをリリースしており、2016年、2017年と年を追うごとにリリース数が飛躍的に増えている。特に2016年の下期以降は月1本以上のタイトルをリリースしており、その際ジャンルやテイストにこだわらず幅の広いゲームを揃えることを意識して、「ネクソンのロゴがなかったらどこのゲームかわからない」と金氏が語るように、多種多様なゲームを手掛けている。

 モバイル事業部のタイトル累計登録ユーザー数については約2年で16倍強となっており、ゲームのリリース数に比例して伸びているとのことだ。現在では延べ900万ユーザーを数え、日本のモバイルゲーム市場の人口が3,000万人から3,500万人ということから考えると、3分の1から4分の1程度をモバイル事業部が占めている。

 DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)に関しては新規タイトルのリリースや大型のプロモーションの実施時に大きく伸びており、昨年2016年の「HIDE AND FIRE」や「HIT」のリリース、「HIT」のCM放映に合わせて増加していることがわかる。

 モバイル事業部の売り上げ推移について、立ち上げの2015年の第3四半期と、最も高く売り上げが推移した2017年の第1四半期を比較すると約8倍ほどの売り上げに成長しているという。2017年の第1四半期の売り上げの理由として、「HIT」のリリースと大型プロモーション、そして「HIDE AND FIRE」の成功があったと分析しているという。

モバイル事業部の主要タイトルの振り返り

「ドミネーションズ」

 2015年のモバイル事業部立ち上げとともにリリースしたタイトル。ジャンルはストラテジーで、グローバルで3,000万インストールを記録している。日本でもリテンション(定着)率が高く、長期運用が実現できているタイトルだという。2016年1月から2月のユーザー数の伸びはTVCMの効果によるものだという。

「HIDE AND FIRE」

 日本国内での配信タイトルの中ではモバイル事業部初の長期ヒット作。ジャンルはガンシューティングアクションで、当時日本には類似のタイトルがなく、日本で本当にヒットするのかという懸念もあったという。

 しかしゲーム自体のクオリティが非常に高く、「新しいジャンルを日本に紹介する」というモバイル事業部の目標と合致していたため、リリースに踏み切ったという背景があり、結果として「いい実績が出せた」ということで、嬉しく思っているという。

 ローンチ後1週間で50万ダウンロードを達成し、現在では250万ダウンロードにまで到達しているという。特に大きなプロモーションをせずにこのような結果が出せたことは喜ばしいことだと金氏は語り、そのヒットの理由としてゲーム自体のクオリティの高さ、新しさもさることながら、日本に向けたカルチャライズやマーケティング構築に時間をかけたことが上げられるという。カルチャライズに関しては日本向けにイラストを刷新し、シナリオを1から作り直したという熱の入れようだ。

 現在では公式生放送やYouTuberを起用したイベントを行うなど、内容的にもプロモーション的にも"チャレンジ"をしている段階だという。8月27日にはオフラインイベントも開催されるとのことで、そこでゲームに関する新たな発表もあるので楽しみにしていて欲しいと語っていた。

「HIT」

 国内配信のモバイルタイトルの中で最大のヒット作で、ランキングにおいて初のトップ10入りを果たした。ジャンルはアクションRPGだが、当時モバイル用のゲームとしては日本での成功例はあまりなかったのだという。そのためこちらのタイトルも日本でリリースして成功できるのかという悩みがあったということだが、本作は圧倒的なグラフィックスとクオリティを誇っていたため、不安ながらも自信を持ってリリース当初からテレビCMや大型のマスプロモーションを展開し、結果を出すことができたという。

 これについて金氏は、韓国の開発力と、モバイル事業部の徹底した日本カルチャライズの融合による結果だと語った。カルチャライズにおいては全キャラクターのイラストを差し替えたほか、シナリオを1から書き直したという。また、コンテンツにおいても元々本作はPvP色の強いタイトルではあったのだが、日本ユーザーは「協力コンテンツ」を重視する傾向にあるという分析に基づき、「次元の共闘」というレイドコンテンツを新規に実装するなど、様々な取り組みを進めたという。

Stra Stella

 8月3日にリリースされた新作タイトル。ジャンルはシミュレーションRPGで、モバイル事業部において同ジャンルのものはリリースしているものの、ある意味では日本人に馴染み深い、ともいえる「ロボット」と「美少女」がテーマになったものは初だという。本作も事前登録は10万人を突破するなど結果は好調だということだ。

その他のタイトル

 その他のタイトルとして、「エビルファクトリー」、「アフター・ジ・エンド:忘れられた運命(以下、アフター・ジ・エンド)」、「Lode Runner 1」などが紹介された。

 「エビルファクトリー」、「アフター・ジ・エンド」の開発はいずれも4、5人規模のインディーチームによるものだという。「エビルファクトリー」はレトロなドット絵のアクションゲームで、「アフター・ジ・エンド」は独特の雰囲気を持ったアドベンチャーゲームだ。「アフター・ジ・エンド」はモバイル事業部初の買い切りタイトルで、これもまた"チャレンジ"の1つであったという。

 「Lode Runner 1」は、1983年にApple2用として発売された「ロードランナー」の正式な後継タイトルで、価格は完全無料となっている。いずれも様々な形で"チャレンジ"した作品だということだ。

今後の展望について

 これまで数々のタイトルをリリースしたなかで、ゲームそのもののクオリティと、日本でのリリースに向けたローカライズとカルチャライズの重要性を改めて認識できたという。そうしたことを継続して行なっていくとともに、新規性の高いタイトルや、それに伴って新たな遊び方を提供していきたいと語った。そして最後に金氏は、モバイル事業部のミッションは「世界レベルの楽しさを日本モバイル市場へ」持ち込むことだと再度強調し、説明会を終えた。

 なお、会場では日本での配信を検討中、もしくは未定となっているタイトルもいくつか紹介されており、中にはかなり期待のできそうなタイトルも含まれていた。現在は残念ながら紹介することができないのだが、今後モバイル事業部が新たなタイトルをどのように展開していくのか、注目していきたい。