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人類最強のゲームプラットフォーム「Steam」完全ガイド with PayPal
2017年6月21日 07:00
アクティブユーザー数1億2,500万人以上。ピーク同時接続ユーザー数1,400万人。237カ国・21言語でサービスが展開。遊べるゲームは10,000本以上。2016年には5,000本以上の新タイトルが配信され、2017年はさらに加速中。
人類最大かつ最強のゲームプラットフォームに成長したSteam。トップメーカーの超大作から掘り出し物のインディーゲーム、あるいはユーザー制作のMODコンテンツ、便利な各種アプリケーションまで、PCでゲームを遊びまくるためのありとあらゆるものが集まる。疑問の余地なく、PCゲーマー必携である。いまでは国産タイトルの充実など、日本人好みの施策も急展開中だ。
このSteamで主要決済手段のひとつとして、国内外で幅広く活用されているのがPayPalだ。Steamでは、Steam自身の仮想通貨であるSteamウォレットや、もっともポピュラーな課金決済手段のクレジットカードも利用できるが、PayPalならではのメリットも数多く存在し、ゲームファンの中にはPayPal愛好家も多い。本稿では、SteamにおけるPayPalの賢い活用法も合わせてレクチャーしていきたい。
Steamについては弊誌でも幾度となく取り上げてきたが、今回はまだSteamを利用していないという方や、Steam初心者の皆さんをターゲットに完全ガイドをお送りしたい。Steamのはじめかた、ゲームの買い方、さらにゲームの楽しみを広げる方法。PCゲーマーが日常的に享受している便利さ、自由さ、面白さ。いちど知ったら後戻りはできない、最高のゲーム環境をその手に。
Steamってなんぞや?
SteamはWindows/Mac/Linuxで利用できるPCゲームのダウンロード配信ソフトだ。開発・運営は「Half-Life」シリーズのデベロッパーとしても知られる米Valve。ゲーム業界では珍しい、プライベートカンパニー(株式非公開会社)である。株主の顔色を伺う必要がない体制にて、ゲーマーファーストの施策を貫き続けている。
Steamならではの“スゴ素晴らし”ポイント
数あるゲーム配信プラットフォームの中でもSteamは別格である。圧倒的である。その理由をざっとご紹介しよう。
・無料:
Steam自体の利用は完全無料。PS Plus/Xbox Liveのような会費は一切なし。
・最新トレンドにいち早く対応:
ゲーム界のカッティング・エッジはPCゲームにある。そのPCゲームはほとんどがSteamに集まる。「アーリーアクセス(早期アクセス)」として開発中のゲームを提供する仕組みもあるため、コンシューマー機では3年後に流行るようなゲームをSteamでは今すぐ遊ぶことができる。たとえば、今Steamで猛烈に流行っているバトロワ系ゲームの代表格「PLAYERUNKOWN'S BATTLEGROUND」(参考記事)も、現時点で遊べるのはSteamオンリーだ。
・ゲームが安い:
オトクなセールが連発。週中、週末、季節毎のセールで5割引き9割引きは当たり前。ときには人気タイトルが一時無料化することも(ウィークエンドフリープレイ)。
・すぐ遊べる:
ダウンロードが超高速。日本にも強力なCDNを設置しており、混雑というものを知らない。
・どこでも遊べる:
所有ゲームは複数のPCにもインストール可(同時プレイは1台まで)。別PCにインストールされたゲームを遠隔で遊べるホームストリーミング機能を標準搭載。
・ゲームをシェアできる:
家族等のアカウント間で所有ゲームをシェアできるファミリーシェア機能がある(同時にはプレイできない)。
・返品できる:
購入から14日以内かつ、2時間未満しか利用していないゲームは理由を問わず返金リクエストが可能。一発ネタ系のインディーゲームを殺す施策として悪評もあるが、ゲーマーにはとてもありがたい。
・コミュニティ機能:
フレンド機能、ライブストリーミング、ボイスチャット、インバイト機能、グループ、掲示板、ユーザーレビュー……考えうるありとあらゆる機能が使いやすく存在。コンシューマー機では不可能なユーザー制作コンテンツの配信システムまである。
・お金を稼げる:
正確にはSteamウォレット(Steam内で現金と同等価値だが換金はできない)を稼げる。ゲームをプレイしてゲットしたアイテムをコミュニティマーケットに販売。レアなアイテムだと1つで数万円の値がつくことも。これを利用して徹底したタダゲー戦略をとるゲーマーも存在しているようだ。
・誰でもゲーム配信可能:
ゲーム製作者は誰でも、「Steam Direct」の仕組みを通じて直接Steamストアにゲームをパブリッシュ可能。
国内動向は急速に展開中!
2017年6月現在、Steamの公開データによると全アクティブユーザーのうちおよそ1%が日本語で利用している。全世界のアクティブユーザー数は1億2,500万人以上なので、少なくとも国内の利用者は120万人を超える水準まで広がってきているようだ。
しかし国内にはおよそ5,000万人のPCユーザーが存在する。WebやSNS、書類作成にしか使われていないようなPCがものすごくたくさんあるということだが、それらのPCでもSteamを入れれば一瞬で、無数のゲームが遊べる最高のゲームマシンに変貌するのだ。おお、それを使って遊ばないなんてもったいない!
特に最近の注目は、国産ソフトの充実だ。スクウェア・エニックス、セガ、コーエーテクモゲームス、バンダイナムコエンターテインメント、カプコン、マーベラス、日本一ソフトウェアなどなど、どちらかといえばこれまでSteamに消極的だった国内パブリッシャーの看板タイトルが多く国際配信されるようになってきており、ほとんどのタイトルがPC版ならではのハイクオリティ(高解像度&高FPS)で楽しめるのも嬉しい。特にアクション系のタイトル、例えば「ダークソウル」シリーズや「NieR: Automata」などは、PC版のスムーズさや高解像度を体験すると、もうゲーム機に戻れなくなるかもしれない。
さらに、海外では「Waifu Games」と呼ばれる同人系のビジュアルノベル系タイトルや、コンシューマー機発のキャラゲー(ちょっとピンク色なのも含む)の展開も、熱狂的ファン層の支持にて猛烈に加速している。このあたりはスペックが低くても問題なく遊べるものが多く、ビギナーにもお勧めだ。
そして決済システムも劇的に改善された。従来はクレカ必須でしかもドル建て払いというのがハードルとなっていたが、2014年以降は国内のeコマース支援企業であるデジカが入ることで円建て化が実現。手段についても各種プリベイドやコンビニ払い、銀行振込、そしてPayPalなど様々な方法で決済ができるようになった。
それから、これまで日本のユーザーが虐げられてきた感のある、いわゆる“おま国”・“おま値”(お前の国では売ってやらない・お前の国ではこの値段で売ってやる)も随分減ってきた。ほとんどのタイトルで日本語もきちんと使える。おかげで、それなりのゲーミングPCがあれば国産ゲームを遊ぶにもコンシューマー機がほぼ要らない感じになってきている。
入門!Steamの導入、ゲームの探しかた、便利な決済方法
さて、ここまで読んできたあなたはもう、Steamを使いたくてウズウズしているに違いあるまい。Steamはわかりやすいインターフェイスのおかげで始めてでもおおよそスムーズに利用することができるが、ベテランでも「そんなの知らなかった」というような機能もたくさん盛り込まれており、およそゲームプラットフォームとしてやりたいこと・できるべきことが幅広く網羅されているのも特徴のひとつ。
ここからは導入・ゲーム購入といった基礎から、よりゲームを楽しむためのあれこれまで、Steamの利用方法についての解説をお届けしよう。
Steamクライアントを導入しよう
Steamのストアやコミュニティ機能はWebブラウザ上でも利用できるが、ゲームを実際にダウンロード&プレイするにはWindows/Mac/Linux用のSteamアプリの導入が必要だ。Steam公式サイトにある「Steamをインストール」ボタンをクリックすれば、数分でインストールが完了する。
初回ログイン時にはアカウントの登録が必要となる。アカウントの登録はメールアドレスだけでできる。セキュアな2段階認証(スマホやSMSを利用)の追加も、アカウント登録後に可能だ。
ログインを完了したら、そこはゲームだらけの世界。決済情報をいっさい入れなくても、「Team Fortress 2」、「Dota 2」、「Paladins」などなど、無料で遊べる最高級のゲームがごまんとある。週末フリープレイを狙えば有料タイトルもタダで遊べる。まずは無料でプレイできるタイトルから始めてSteamに慣れていけば良いだろう。
お宝ザクザク! ゲームの探しかた
初めての方は、とりあえず無料タイトルでゲームを始めてみよう。画面上部のメニューから「ストア」を選択。すると、ユーザーの好みに合わせたゲームをリストアップしたカタログが現われる。そこで画面左側にある「ジャンルでチェック」のリストから、「無料プレイ」を選んでみよう。数百タイトルの無料プレイゲームがリストアップされる。
これらのゲームは、詳細画面を開いたら「今すぐプレイ」を押すだけでインストール開始。インストール完了後に「プレイ」ボタンを押せば即座にゲームを始められる。初めての人は「Team Fortress 2」か「Dota 2」を試してみるのがおすすめだ。
有料ゲームも同じ要領で探せる。ゲームの検索はジャンルで絞る方法に加えて、売上上位や、スペシャルセールでの絞り込みも可能。絞り込んだあとの検索画面では、OSでの絞り込み、機能での絞り込み等々、様々な方法で好みのゲームを見つけられる。
もっと気楽にゲームを探したいなら、「Steamキュレーター」機能というのも面白い。おすすめゲームをリストアップするキュレーター活動をしている個人や団体が無数にあり、それぞれの基準でゲームをピックアップしてフォロワーに共有している。
各ゲームのストア画面で「キュレーターの意見」をチェックすると、そのゲームをおすすめしているキュレーターを見つけられる。その中から自分の好みに近いキュレーターをフォローすれば、高確率で遊びたくなるゲームが見つかるという塩梅だ。
いくつかのゲームを買ってプレイしたり、ストアで気になるゲームをウィッシュリストに追加する、といったことをしばらくやっていると、SteamストアのAIがより正確にユーザーの好みに合わせてゲームをピックアップしてくれるようになる。「ディスカバリーキュー」という機能を利用すると、まさにあなたの趣向に合わせたラインナップをチェック可能だ。高確率で、「おっ」という発見がある。
セキュアで安心な方法も!ゲームの買いかた
さて、気になるゲームが見つかったら購入だ。昔はクレカ必須&ドル建て決済というハードルのあったSteamの決済システムだが、最近では国内eコマースサイトもかくやというレベルで決済手段が充実している。
メジャーな方法は依然としてVISA、MASTER、AMEX、JCB等のクレジットカードもしくはデビットカード。カード番号・請求先等の等の決済情報を入力して利用することになるが、Steamでは2015年に、サーバーがクラッキングを受けて一部の個人情報が流出した事件があり、クレジットカードの登録に不安を感じる人もいるだろう。
そこで安心のためのセカンドオピニオンとなるのが、コンビニ等を利用する代理決済や、各種のプリペイド系システム。Steamは銀行振込、コンビニ払い、ペイジー、WebMoney、BitCash、NetCash、nanacoギフトに対応していて、クレジットカードを持たない未成年者でも好みの方法でゲームを購入可能だ。使いすぎの心配もない。
しかしプリペイド系はチャージ単位が決まっていて使い切るのが難しくてもったいないとか、銀行振込やコンビニ決済は購入手続きが面倒だし時間もかかる、といった弱点もある。純粋な電子マネーであるBitcoinでの支払いもできるがそれはそれでまだニッチすぎる。
PayPalの活用法をしっかり学ぼう!
そこで幅広くおすすめできるのが、オンライン決済サービスのひとつであるpaypalだ。テスラ・モーターズの代表として時の人となっている天才起業家イーロン・マスクの置き土産でもある。
PayPalは複数の決済手段をひとつの窓口にまとめ、国境をまたいだ口座として機能するサービス。国によって利用できる機能が異なるが、日本では複数のクレジットカード・デビットカードによる決済をPayPalアカウントひとつで一元管理し、利便性とセキュリティを高める目的でよく利用されている(海外では銀行口座からの出金等も可能な地域もある)。
特に、PayPal決済では店舗へカード番号等の個人情報が伝わらないことが大きい。決済のたびにカード番号や暗証番号を入力する手間も不要だ。Steamであれば、PayPalアカウントを決済手段として登録しておくとワンタッチで購入を完了できる。SteamにはPayPalによる決済結果だけが共有されるため、Steamアカウントにカード番号等の重要な情報は残らない。
また、PayPal側では決済に使うカードを指定・変更することができるのも便利なところ。小さな買い物はこのカード、大きな買い物はこのカード、海外はこれ、というふうに複数カードを使い分けている人も多いと思うが、PayPalにそれぞれ登録しておいて、あとは使用時に切り替えるようにすると、そういった使い分けもお手軽にできる。
購入履歴も、各カードのサイトにアクセスするまでもなく、PayPalで一元的に管理できるため家計簿をつけるのが楽。それからSteamは別だが、月額制の会員サイト等でのサブスクリプション情報もPayPalで管理でき、不要になったら即座にPayPal上でキャンセルすることも可能だ。退会がやたら面倒くさいサイトもこれなら一発である。オンラインでいろいろとお金を使うことがある人には非常に便利だ。
さらにPayPalには、購入した商品が届かないとか、説明と内容が違いすぎるといった詐欺被害時に返金を代行する消費者保護システムもある。まあSteamにおいては、Steam自身が「購入から14日以内かつ、2時間未満しか利用していないゲームは理由を問わず返金リクエストが可能」という独自ルールがあるため、使うことはあるまいが、国内で流通していない各種ゲームデバイスやゲームグッズを海外サイトから購入する際など、心理的ハードルを下げてくれるのは間違いない。
ついでにいうと、PayPalには非常に重要な機能がある。PayPalアカウントは国境をまたぐ口座として機能するのだ。PayPalアカウント同士で支払いが可能で、手数料も格安。筆者は海外からドル建てで支払いを受けた経験がいくつかあるが(最初はロシア製ゲームの邦訳に協力したときだったか)、受取方法は昔なら小切手、今ならPayPalである。普通の国際振込だと手数料がガッツリかかることが多いのだ。
というわけで国際派のゲーマーの皆さんにはPayPalをおすすめしておく。Steam以外でも、国内外のゲーム関連サービスでは当たり前にPayPalに対応しているので大変便利だ。Originとか、Uplayとか、DMM Games、Wargaming.net等々いろいろある。まずは自身がプレイしているタイトルがPayPal決済に対応しているか確認してみるといいだろう。
全部使いこなせるか!? ゲームの楽しさをさらに広げるSteam便利機能一覧
ところでPCゲームは、単に遊ぶだけでは終わらない。より便利に遊んだり、友人や家族に楽しみを広げる方法、ゲームのコンテンツをどんどん拡張する、世界中のプレーヤーと情報を共有するなど、SteamにはありとあらゆるPCゲーミングの面白さが詰まっている。
ここではそれらを実現する、ぜひ活用したいSteamの便利機能をご紹介。いきなり全部使うのは無理でも、少しずつでも触って、ゲーム環境をどんどん快適で楽しいものにしていこう。
・Steamライブラリフォルダの設定
大作ゲームは容量が巨大だったりして、システムドライブには入れたくないもの。Steamはゲームのインストール場所をタイトルごとに指定できる。詳しい設定をするなら設定画面の「ダウンロード」にある、Steamライブラリフォルダのボタンを押し、任意のフォルダを追加しよう。
・Steamクラウド
すべてのSteamユーザーには自動的に1GBのクラウドストレージが付与され、ゲーム設定、セーブデータ、スクリーンショット等の個人コンテンツが自動的にクラウド上に保存される。このためゲームの続きを別のPCでプレイするなども全く意識せずにできる。常時接続の場合は意識しなくていいが、従量回線を使っていて回線使用量を節約したい場合はオプションでクラウド使用をOFFにもできる。
・リモートインストール
自分のアカウントでSteamクライアントが起動しているPCのために、他のPCやスマホのSteamモバイルアプリからゲームの購入やインストールができる。出先にてスマホ版Steamでゲームを購入→家に帰ったら1秒でプレイしたいときに重宝する。
・ホームストリーミング
自分のアカウントでSteamクライアントが起動しているPC同士では、家庭内ネットワークを介してのストリーミングプレイができる。例えば、書斎のPCにインストールされているゲームを、寝室のノートPCで寝ながら遊ぶ、といったことが可能。
・ファミリーシェア
「ファミリーシェア」はゲームを家族等の親しい間で共有するサービスだ。例えば家族が別々のPCを使っている場合、自分のゲームライブラリにアクセスできるPCとして家庭内のPCと家族のアカウントを承認することで、同じゲームを複数買うことなく家族みんなが自分のアカウントでゲームをプレイできる。親のアカウントでゲームを買って、子のアカウントではゲームを買わない、といった運用が可能になる。
・ギフト
ゲームをフレンド用に購入し、プレゼントできる。マルチプレイのゲームで仲間が欲しいときに、お大臣なプレーヤーが複数本をまとめ買いして、フレンドに送りつけるというのがよくある使用形態。これを支援するため、多くのマルチプレイ対応ゲームでまとめ買い割引が存在する。
・スクリーンショット
ゲーム中、デフォルトではF12キーでスクリーンショットの撮影ができる。こうして撮影したスクリーンショットはプレイ後に一覧で見ることができ、お気に入りがあれば即座に自分のアカウント用のSteamクラウドスペースにアップロード・保存が可能。そのまま共有もできる。
・ブロードキャスト
Steamビルトインのストリーミング配信機能。設定画面でオン・オフや画質、公開範囲等の調整ができる。Steamのシステムと連動している強みで、ユーザーの操作は必要とせず、視聴者が現われたら自動的に配信がスタートする。全体に公開されている配信はコミュニティハブから「ブロードキャスト」で、全世界のプレーヤーを視聴可能。気になるゲームのチェックに最適。
・コミュニティハブ
ゲーム毎にコミュニティ機能が集約されている。広域の掲示板、スクリーンショット等の作品共有、ブロードキャスト、ニュース、レビューなどなど。特に早期アクセスのゲームでは、バグや開発の情報などをいち早くキャッチするのに便利。
・コミュニティガイド
ゲームの攻略情報をみんなで制作・共有。誰でもガイド執筆者になることができ、およそどのゲームでも役に立つ情報が見つかる。ゲーム中に詰まってしまったときなど、SHIFT-TABでインゲームSteamオーバーレイを呼び出し、そこからコミュニティガイドを見ると便利。英語が多いが、日本語のガイドもけっこうある。
・ワークショップ
MOD対応のゲームでは、ユーザーが制作したコンテンツがSteam Workshopで共有されている。人気ゲームでは楽しい追加コンテンツが膨大に登録されており、お気に入りゲームのプレイ時間が倍増するどころではすまない勢い。それぞれのMODの導入は「サブスクリブ」ボタンを押すだけで完了。要らなくなればサブスクリブをキャンセルすればよい。簡単。
・コミュニティストア
金欠ゲーマーの強い味方。対応ゲームをプレイすると入手できるSteamトレーディングカードや、ゲームアイテムなど、「Steamインベントリ」として扱われるアイテムをSteam Wallet(Steam内でリアルマネー相当)で売買できる。オークション形式だが参加人口が凄まじく多いので相場変動もリアルタイム。10~100円程度で売れるトレカから、数万円の値がつく人気ゲームのレアアイテムまで、ゲーム内でゲットしたアイテムを換金すれば、新たなゲームが実質タダで買えるという寸法だ。
・Steam Big Picture
リビングPCをテレビに繋いでいるときなど、ゲーム機ライクに操作できるフルスクリーンインターフェイス。Steamの全ての機能がゲームパッドなどを使って利用できる。
・SteamVR
Steam独自のVRシステムと、VR用のユーザーインターフェイス。SteamVRはオープン規格を謳っており、HTC Vive、Oculus Rift、HDK、その他、多種類のVRシステムに対応している。VRゲームのプレイをスムーズにできるのはもちろん、ノンVRゲームをVRシアターでプレイすることも可能。
・ソフトウェア
これは機能というより製品のカテゴリー。Steamではゲームだけでなく、各種のツール、実用アプリケーションが豊富に取り揃えられている。PCカスタマイズアプリから、動画編集ソフトにDCG制作ソフト、それも一般向けの安価なものからプロ用まで様々。Steamで購入すれば高価なアプリのライセンスキーを紛失して泣くような恐れもなし。
・Steam Direct
これまで無名のゲーム制作者がSteamでゲームを配信するためには、実績あるパブリッシャーに扱ってもらうか、「Steam Greenlight」にゲームを提出してユーザーの品評とValveによるピックアップを受ける必要があった。6月13日からは後者の仕組みが変更され、今後は「Steam Direct」として、誰でも100ドルの手数料でSteamストアに直接作品を出すことが可能!
【特別付録】あなただけにこっそり教えるSteamの歴史
さて、ここまでSteamのあれこれをご紹介、解説してきたところで、さらにSteamを深く知りたい人のために、Steamがこれまで歩んできた歴史をざっくりとまとめてみよう。Steamはいかにして人類最大のゲームプラットフォームになりえたのだろうか?
Steamは2003年に「Half-Life 2」の配信システムとしてスタートした。当初はただのDL&アップデートツールに見えたものだが、すぐにサードパーティ製タイトルの配信もスタート。各ゲーム機がDL販売にシフトする何年も前からPCゲームタイトルを幅広くカバーするようになり、PCゲームの小売店を絶滅に追いやる元凶となった。
2007年ごろから「Left 4 Dead」、「Portal」、「Team Fortress 2」といったValve謹製タイトルが相次いで大ヒットし、ユーザー数も急速に拡大(日本語対応が完璧になりだしたのもこの頃)。最大手のゲームパブリッシャーもその存在を無視できなくなり、EA、Ubisoft、Activision、Bethesdaといった錚々たるラインナップにて、Valve以外の大作ゲームも潤沢に配信されるようになった。なおEAは後にSteamから撤退、Originという独自配信システムに移行して、当初はその使いにくさからゲーマーの不興を買うことになる(いまでは随分マシになったけども)。
2011年からのSteamはPCゲームプラットフォームならではの独自性を加速。「Team Fortress 2」の無料化とともにユーザー制作コンテンツを簡単に配信・導入できるSteam Workshopサービスをスタートし、プラットフォームにMOD文化を取り込んだ。「The Elder Scrolls V: Skyrim」のWorkshopは特に盛んで、現在までに3万点近い追加装備、追加マップ、追加シナリオ等のユーザー制作コンテンツが配信され、ワンタッチで導入できるようになっている。
続く2012年にはSteam Greenlightをスタート。インディゲーム制作者が作品を登録、ユーザー投票を受けてSteamでの正式リリースを目指すというもので、インディーゲームの登竜門的な位置づけとなった。Greenlightでは、それまでSteamにふさわしくないとされていたビジュアルノベル系のタイトルが強力な支持を集め、Valveの考えを改めさせるに至った。おかげで今日では日本のいわゆるギャルゲーも普通に配信されるようになっている(許される性的表現の上限もR15程度からR18レベルぎりぎりまで上がりつつある)。
Riot Gamesの「League of Legends」がヒットしてMOBAジャンルに注目が集まると、Valveは2013年、MOBAジャンルの開祖「Dota」の正統後継である「Dota 2」を開発し、無料プレイタイトルとしてリリース。瞬く間にSteam最大のユーザーを集め、史上最高額の賞金で世界大会を開催するに至っている。これにてSteamは最高峰のプロゲーマー文化も飲み込んでしまった。
2016年にはSteamVRをローンチ。HTC Viveを公式対応初号機として、完璧なVR対応を果たした。SteamVRはゲーム・ノンゲームを問わず活用されており、今後、PC用VRの標準アーキテクチャになる可能性が極めて高い。
そして……。
Steamはコミュニティの力を借り、極限まで進化する
すでに多数の機能を備え、抜群の使いやすさを実現しているSteam。しかし開発元のValveはまだまだ満足しておらず、さらに幅広くユーザー誰もが満足できるプラットフォームになることを目指して開発を継続中だ。
特に“極限”を目指して進められているのが、ストア機能のオープン化だ。Steamはその歴史において、厳格に管理されたストアから、より多くのクリエイターに開かれたストアへと進化を続けてきた。特に2012年に導入されたSteam Greenlightは多くのヒット作を生み出し、無数のインディークリエイターに成功機会を提供した。が、Valveに言わせると、いまではそのGreenlightすら障害になってきているという。
そこで、役目を終えたGreenlightは廃止。6月13日から新たな仕組み、Steam Directが導入となった。Steam Directでは、誰であれ、どんな作品であれ、Valveによる最低限の審査(適法である、説明とかけ離れていない、マルウェアではない、など)を受けるだけでストアでの販売が可能となる。
ようするにValveは、「スタッフの目でゲーム内容を選別するのはもう無理なので、なんでもストアに載せられるようにして、あとは市場原理に任せます」と言っているのだ。これはすごい。
Valveスタッフによるゲーム内容のチェックがなくなることで、ストアの玉石入り混じったカオスぶりは加速度的に増していくだろう。しかし、それこそPCゲームの世界そのものだ。これまで以上に自由なマーケットになることで、更に多くのコンテンツクリエイターにチャンスを与え、ユーザーにはさらに多様な選択肢をもたらす事になる。
これにともなってストア機能もさらに大きく改良されていく。Steamでは無数のゲームからユーザーの興味を引くものを選り分けるため、独自のアルゴリズムを使っているが、まずはその大幅な改良が直近のマイルストーンとなっている。
そのやりかたは、「Dota2」のマッチングシステムの改善にも使われた手法だという。すなわち、アルゴリズムの中身を公開し、どうしてそのゲームが選ばれたのかをユーザーから見えるようにして、ユーザーのフィードバックを受けて不備・不具合を正していくという方法だ。実際、いまストアページでおすすめされたゲームのページを開くと、そのゲームがどういう基準でオススメに挙げられたのか、いくつものパラメータがページ内に表示されるようになっている。
このようにSteamでは、積極的な情報の公開と、ユーザーの力を借りたシステムの改良が続く。そこには単なる「店と客」といった関係を超えた何かがあるのも確かだ。
ゲーマーが作り、ゲーマーが育てる、徹底したゲーマー中心主義。Steamは今後も進化を続けて、人類最強のゲームプラットフォームであり続けるだろう。