★ PCゲームレビュー★

6年ぶりの新作は歴史に残る傑作となったか!?
Half-Life 2

  • ジャンル:アクションアドベンチャー
  • 開発元:Valve Software
  • 発売元:サイバーフロント
  • 価格:6,850円
  • プラットフォーム:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:発売中


 待ちに待った超大作「Half-Life 2」がついに発売された。'98年に発売された「Half-Life」から実に6年。発売を待ち望むファンたちをやきもきさせながらの、ソースコード流出騒ぎ、そして度重なる発売延期。数々の試練を乗り越えて、この11月16日をもってついに正式リリースとなった。

 改めて言うまでもないがFPS界において前作「Half-Life」が果たした役割は非常に大きい。それまでは走る・跳ぶ・撃つがすべてだったFPSに複雑なキャラクタアニメーションと徹底したスクリプト制御を持ち込み、説得力あるストーリーテリングを可能にした。他ジャンルに負けない豊かな表現力を獲得した「Half-Life」以降のFPSは、単なるシューティングゲームの壁を突き破り、「Quakeクローン」の存在を完全に過去のモノへと押しやったのだ。

 本作「Half-Life 2」はこの流れを汲み、新しいフェイシャル・アニメーション技術を始めとする新技術に支えられた映像表現力を獲得。本格的な物理エンジンを搭載してインタラクティブ性にも磨きをかけた。新たな表現力を駆使して語られる、「ブラック・メサ事件」後の世界に飛び込んでいこう。


■ ゴードン・フリーマンの新たなる戦いが今始まる

この男が「G-Man」。背景に映画「Matrix」のような情景が広がる
「シティ」の頭目に収まったブリーン博士の宣伝映像。彼の言う「協力者」とは異世界の者らしいが……
 時空転送装置実験の事故により異世界からのエイリアン大量侵入がもたらされた前作の「ブラック・メサ事件」。ブラック・メサ研究所の一職員、論理物理学者である主人公ゴードン・フリーマンは、単身で異世界「Xen」に乗り込みエイリアンとの戦いに勝利した。フリーマンは前作のエンディングで、ミステリアスな人物「G-Man」から2つの選択肢を突きつけられている。「G-Man」の与える任務に従うか、さもなくば死か。

 それから十数年。フリーマンが「G-Man」のために戦う道を選択した、その未来が本作の舞台となっている。「ブラック・メサ事件」後、生態系が変化した地球で生存圏をひどく制限された人類は、いくつかのコロニーを作ってなんとか生き延びていたようである。ここはその中の一つ、「シティ17」。このコロニーには時折、列車で移住民が運ばれてくる。

 「目覚めのときが来ました。フリーマンさん。さあ、目を覚ますのです」

 「G-Man」の呼び声に応じて主人公が覚醒する。そして気が付けば、揺れる列車の中に立っていた。「お前が乗るのを見ていないが」との同乗者の言葉に、自分がここにテレポートしてきたことを知る。本作では他の多くのFPSと同様に、主人公の武器もなく、置かれた状況も知らず、これからなにをすべきかもわからない状態からスタートする。ともかく行ける場所に行き、眼前に広がる世界を見て、ここがどこなのか、世界に一体何が起こったのかを少しづつ理解することが最初のステップだ。

 駅について列車を降りて始めに目にするのは、巨大なモニターに映し出されたブリーン博士の映像だ。「ようこそ、ようこそシティ17へ」。彼はブラックメサ研究所の事務局長だった男だが、現在では数々のコロニーを統括する立場にあるらしい。彼がこの都市で行なっている所業は次第に明らかになるが、当面、駅のホームを抜けてロビーに至り、兵士に近づいて警棒で殴られてみたり、青い服を着てウロウロしている人々の陰鬱な表情を見て、ここが異常な都市であることをすぐに理解できることだろう。

 「水を飲むな。薬物が混入されている」。そう警告するうつろな目をした人々を横目に、検問所のような場所から奥まった部屋に連行されると事態は急変する。その部屋で係官をしていたのは、ブラックメサ研究所のガードマンの一人だった男バーニィだった。彼は前作の序盤で一瞬だけ主人公と共に戦ってくれるチョイ役だったのだが、なぜか人気が高く再登場することになったらしい。

 そんな彼は、ここ「シティ17」の民間保安軍兵士に成りすまして潜入を果たし、外部からの協力者をかくまう活動をしていたようだ。バーニィは突然の来訪者フリーマンの出現に喜び、同じく研究所の生き残りでレジスタンス活動の同志であるクレイマー博士のもとへ送り出そうとする。

 駅舎を出て町に出ると、東欧風の寂れた町並みが眼前に広がる。広場の放送を聞き、どうやらブリーン博士と彼が支配するシティが異世界の者達の強い影響下にあることを知る。保安軍の検問を避けて居住区に向かうと、そこはまるでワルシャワのゲットーのような世界。ブリーン博士の一派に抑圧された住人達が吐く救いのないセリフが印象的だ。

 そんな中で、ついにフリーマンの不法侵入が明らかになる。のっけから追われる身となった主人公だが、脱出の途中、イーライ博士の一人娘アリックスに助けられてクレイマー博士のいる潜伏施設に案内される。彼らにとって、フリーマンは自由の象徴であり、人類の光明なのだ。

 本作はこのように、フリーマンすなわちプレーヤー自身の置かれた立場、そして世界の状況が少しづつ判明していく作りになっている。一種の冒険活劇としてこの手法自体は特別なものではないが、これまでの水準を越えた映像と演出がゲームにのめりこむ原動力となっている点で、本作は特別な魅力を発している。

列車を下りるといきなり偵察カメラのようなものに撮影されてしまう。住人はすべて監視されているのか。異様な雰囲気の中、兵士に連れられた先に待っていたのは潜入していたバーニィだった。 ここからストーリーが急展開していく
駅舎を出ると、そこはひどく寂れた東欧風の町並みが広がる。人通りは少なく、ただブリーンの宣伝放送だけが鳴り響いている。各所に検問があり自由に通行できないので抜け道を探そう。グラフィック的にはすばらしい完成度で、きめ細かく作りこまれている
しばらくの逃避行の後、アリックスの案内でクレイマー博士に合流。クレイマー博士はフリーマンの到着を喜び、おなじみのハザードスーツの着用を勧めてくる。そしてテレポーテーション装置に乗るフリーマンであったが……我等のフリーマンがいる限り、この種の装置がまともに作動するわけがないだろう? ここまでが、本作の実質的なプロローグとなっている


■ 本格的な物理エンジンが新しいゲームプレイを拓く

フリーマンのお気に入り武器“バールのようなもの”。小型エイリアン「ヘッドクラブ」など一撃で十分です
ゲーム中を通して強い味方になるグラヴィティガン。鉄製のソーサーをぶつけると、敵はまっぷたつに両断される
 本作のユーザインターフェイスは前作とほぼ変わりない。操作に使用するキーの数は前作よりも減ったぐらいで、FPSの経験が浅くても操作面でつまづくことはまず無いだろう。前作のプレイ経験があれば、ほとんど同じ感覚でプレイできる。

 登場する武器も大部分が同じだ。フリーマンを象徴するような武器である“バールのようなもの”はもちろん登場。他にハンドガン、マグナム、サブマシンガン、ボウガン、ロケットランチャー、手榴弾、これらの各武器は前作から共通するもので、挙動や性能もほぼ同じに感じた。本作で初登場となる武器は三種類だが、特筆すべきはなんといってもグラヴィティガンだろう。

 グラヴィティガンは物体を吸い寄せたり、弾き飛ばしたりすることができる特殊な装置だ。これを使って、マップ上に散在するドラム缶やコンクリートブロックなどの重くて硬い物体を掴み、弾き飛ばして敵にぶつければ、並みの銃器よりも強力な攻撃力を発揮する。ゲームの所々には敵の数に比べて弾薬の量が明らかに不足する場面もある。そんなときはグラヴィティガンをうまく使い、ソーサーなどの金属製品を敵にぶつけて倒していくわけである。重い物体をぶつければ、銃で撃つよりも派手に吹っ飛んでくれるので気分爽快だが、投げつけた物体もよく回収不能になるのでよく考えて使おう。

 グラヴィティガンを可能にした本作の物理エンジンだが、業界標準となった感のあるHavocエンジンをフルに活用したその完成度は素晴らしい。物理エンジンに制御されるすべての物体には材質や質量などのパラメータが設定されており、木材なら水にプカプカと浮き、古タイヤならギリギリの浮力でフワリと浮いてくる。鉄やコンクリートなら水底へまっしぐらといった按配で、まるで現実の物体を触っているような感覚に襲われるほど。

 それぞれの物体が単に独立してリアルな挙動を示すだけでなく、複数の物体を積み上げたり、組み合わせたときの挙動もしっかりとシミュレートされている。それをよく理解できるのが、ゲーム序盤に登場する小さな公園だろう。そこにはブランコやシーソーなどの遊具があるのだが、すべて物理エンジン制御の物体で構成されていて、触って動かすことができる。例えばシーソーの両方にコンクリートブロックを乗せてみると、きちんとバランスが取れて安定する。そこに主人公がジャンプして乗っかると、勢いよくシーソーが傾き、持ち上がった側に乗っていたブロックが飛び跳ねて落下する。まるで本格的なシミュレーションを見ているようで面白い。

 ゲームの各所には、この物理エンジンを駆使したパズルも登場する。箱を積み上げて足場にするといった基本的なものはもちろん、板をたてかけて坂道を作ったり、シーソー状の物体のバランスを調節して動かしてみたり、様々なアイデアが盛り込まれている。ゲーム中に登場する多くのパズル要素は現実的な物理現象に基づいているため、とにかく「見た目の構造自体がヒント」というストレートさが嬉しい。現実の物理感覚で問題を処理できるため、シングルプレイゲームにありがちな作り手側の都合主義的な解決法に振り回される、という感覚と無縁なのである。

 パズル以外にも物理エンジンの活用は広い。敵の攻撃をかわすために、ドラム缶などを盾にしつつ前進したり、積み上げてバリケードを作ったりといった行動も重要なテクニック。ときには敵の立っている足場を切り崩して倒すこともできる。こうした創意工夫を随所で試せるため、一本道のストーリー進行でありながら単調さを感じることがない。高度な物理エンジンによる究極のインタラクティビティが、このゲーム世界に没頭するきっかけとして重要な機能を果たしているわけだ。

可燃性のドラム缶を爆破して敵の乗っている足場を破壊する。一瞬のでき事で敵は一網打尽だ。こういった仕掛けがゲーム中随所に登場する。まじめに撃ち合うだけでなく、なるべくラクをして敵を倒す方法がないか、常に気をつけてプレイしてみよう
序盤すぐの公園にあるシーソーで遊んでみる。片方にブロックを乗せると、当然その方向に沈む。逆側にフリーマン自ら飛び乗ると、一気に逆向きに傾いて、その勢いでブロックが飛び跳ねた。現実では当たり前だけど、ゲームでこのような挙動を見れるのは楽しい
こちらはクレーンを使ったパズル(?)。重い鉄の塊をコンテナにぶつけ、敵キャラごと吹っ飛ばす 開かないゲートを無理やり通過すべく、廃車を積み上げ足場にし、バギーを反対側に弾き出そうとしているところ。本作の物理エンジンはこんな強引な方法も許容するのだ 大量の敵の襲撃に備えてバリケードを作ってみた。重いドラム缶は銃弾を弾いてくれる上、木箱なら粉砕されるような衝撃にも耐えてくれる



■ 戦いの場は都市から運河、郊外へ。多彩な展開と写実的な映像美を堪能しよう

保安軍兵士がドロップシップから下りてきた。こちらはホバークラフトだ。このまま轢いてしまえ!
「シティ」を離れると、エイリアンに寄生されたおなじみのモンスターがワラワラと出現
 さて、われらがフリーマンは「シティ17」中心部を脱し、当代最高の物理学者でありレジスタンス勢力の重要人物であるイーライ博士に合流すべく移動を続けていく。本作のストーリーは14のチャプターからなり、主人公の視点を離れることなく、完全にシームレスに進行していく。1つのチャプターはおおむね1~2時間でクリアできるボリュームで、全体としては20時間程度でコンプリートできる感じだ。その間、最終局面までプレイが中断されることはなく、カットシーンすらない。これは、主人公の視点=プレーヤーの視点という疑似体験のスタイルを徹底する「Half-Life」シリーズの伝統といえるだろう。

 前作では対エイリアンの戦いが大部分を占めていたが、本作は逆に人間(「シティ」の保安兵)」との戦いが多くなっている。前作で登場した多くのエイリアンが本作では登場しなくなったことは残念だが、戦闘ヘリとの戦いや、全高数十メートルにもなる昆虫型生物兵器「ストライダー」との戦いなど、展開の豊富さは負けていない。

 「シティ17」市街地を抜けたフリーマンは運河を越え、下町を抜けて郊外に出、海外線を突っ切り進んでいく。前作には無かったホバークラフトやバギーといった乗り物に乗って進む場面もあり、ゲーム展開は多彩だ。乗り物の挙動は、ゲーム的なデフォルメはあるものの物理エンジンを適用しているようで、比較的リアルな動きを見せる。バギーなどは傾斜に乗り上げてバランスを崩すとすぐにひっくり返ってしまう。このあたりのシビアさは賛否両論あるところだろうが、単なるFPSの枠を越えて、「Battlefield 1942」に代表されるようなフリーフォームFPSへの脱皮を感じさせる。

 バリエーション豊かな世界を描くグラフィックは驚くべきほど精密で、写実的だ。絵画の世界には、写真のようなリアリズムを重視する「写実派」と、情感にうったえる表現を重視する「印象派」と呼ばれる区別があるけれど、本作のグラフィックは明らかに「写実派」を意識した最高峰だといえるだろう。「印象派」の最高峰は「DOOM3」といったところかもしれないが、本作の徹底的に写実的なグラフィックは、これからのPCゲームに新しい水準を打ち立てるものにちがいない。

 グラフィックについて筆者が特筆したいのは水の表現。ゆらぐ水面に世界全体が反射するのみならず、見た目の水の層が厚くなるにつれて水の色が濃くなっていく点が素晴らしい。単に水深で水の色を濃くしているのではなく、プレーヤーの視点からの角度で水の色の濃さを計算しているところがポイント。この表現手法のおかげで、川や運河の見た目が限りなく実物に近いものになっている。運河をひた走るチャプター「ウォーター・ハザード」の臨場感をぜひ体験して欲しい。

本作の水の描画は本当にすばらしい。水面自体には着色されておらず、反射と屈折、見かけの水中の厚さによる濁りの表現で描画がなされている。物理エンジンによる物体の浮き沈みのおかげで、実際の質感まで伝わってきそうな勢いだ


 それから、本作のストーリーテリングの演出に大きく貢献している、キャラクタのフェイシャル・アニメーションにも注目したい。冒頭に現れる「G-Man」の顔面アップで嫌でも見せ付けられる顔の動き。しゃべっているのだから口が動いているのは当たり前と、そこで思考停止せずによくよく見てみると、額、眉、眼球、まぶた、頬、唇の周辺と、顔中の筋肉がすべて生々しく動いている。本作に登場するキャラクタは、顔だけで何と2,500ポリゴンを使用し、その内側には40ものボーンが設定されて表情を制御しているそうだ。「G-Man」だけではなく、アリックスやバーニィ、イーライ博士、クレイマー博士の見せる多彩な表情に注意してほしい。

 この表情制御エンジンはカルフォルニア医大の著名な精神医学教授の協力のもとで開発されたValveオリジナルのもので、今日のゲーム界において最も強力なゲームテクノロジーのひとつといえる。シリアスな話をするときに厳しい表情をし、おどけた冗談を言えば笑顔を作り、言葉なくして表情で意思を伝える。これは実写映画では当たり前のことだが、この当たり前のことが、リアルタイムのゲームにおいては本作でついに可能になったわけである。

 本作に登場する人間型のキャラクタたちは、単なる3Dポリゴンのデク人形を脱却し、感情豊かな人格を感じ取れる存在になった。このフェイシャル・アニメーションと写実的なグラフィックを組み合わせたことで、プリレンダリングされたカットシーンでストーリーを語る必要なくなった。これは今後のゲームの演出手法に根本的な変革をもたらす重要な技術になるだろう。

 演出を語る上で忘れてはならないサウンドは5.1chサラウンドに完全対応している。サンプルデータ自体も豊富で、キャラクタの足音のみならず、物理エンジンに制御された物体が材質に応じた衝突音を出すようになっている。例えば、ガラス瓶を持ち上げて落下させたときに、衝突した地面がコンクリートなら「キンッ」と鋭い音が鳴り、草地ならば「ボスッ」と鈍い音がなる。木箱の上に落とせば「ゴトッ」と適切な音が再生される具合だ。

 また、環境音効果も抜かりない。EAX3の機能である複数の環境音効果を同時に適用する機能も活用されているようで、屋内で鳴っている音と屋外で鳴っている音の聞き分けが可能な点はゲーム性にも影響しているところだ。監視カメラ越しの音声がスピーカーからの濁った音としてリアルタイムに発声される点などは他のゲームに見られない要素で、細かいこだわりを徹底して実装している印象である。

顔面の細かな筋肉の動きからリアルタイムに再現される表情。情感豊かなキャラクタを表現できるようになったことで、ゲームを中断するカットシーンを使わずに深いストーリーを語れるようになった事実は大きい。今後のゲームに大きな影響を及ぼす重要技術になるだろう



■ 大作にして傑作。一流のインタラクティブエンターテイメント

「フリーマンに続け!」共に戦うレジスタンスメンバーの存在が、ゲーム展開に華を添える
 ゲームが進行し中盤以降のチャプターともなると、レジスタンス勢力の面々がフリーマンと行動を共にして戦う場面も出てくる。プレーヤーが出せる指示は彼らを戦闘配置につかせる一種類のみだが、敵の攻撃が激しい要所で彼らを先行させ壁になってもらい、敵の攻撃をそらしながら背後に回るといった戦い方が可能である。

 仲間のAIは可も無く不可もなくといった感じで、特別複雑な戦い方をするわけでもないが、他のゲームでは危惧される地形にひっかかって進まなくなるようなこともないのでプレイに支障をきたすことはない。これに関しては本作の目玉機能というわけではないものの、ストーリー展開に華を添える要素として純粋に受け入れられる内容だ。

 数々の新技術が投入され、特にグラフィックエンジンのチューンナップが度重なる発売延期の主因になったともいわれる本作だが、それだけに、現在の標準的なPC(GeForce3Ti世代の水準)でも最高クラスの映像で十分にプレイが可能だ。筆者の環境は AthlonXP 3200+、1GB DDRメモリ、GeForce 6800GTといった内容だが、この環境ではグラフィックオプションをすべてONにした状態でも常時60fps周辺のパフォーマンスで快適に楽しめた。

 難を言うならば、長いローディング。大量のテクスチャデータや、莫大な頂点数を持つモデルデータをプリキャッシュする必要があることは理解できるが、ゲーム起動時に毎回1分近く待たされるのは正直辛かった。また、ゲーム中細かく設定されたチェックポイントごとにオートセーブがかかるのだが、そのたびに0.5~1秒程度のひっかかりが発生し、それが戦闘中となると誤操作の原因になってしまう点が気になった。それを除けばおおむね文句なしのシステム的な完成度で、ストレスなくゲーム世界に没頭できる。

 厳しい目で見れば、ストーリーラインについては序盤の展開は遅すぎ、後半は急激すぎるというきらいがある。最後までプレイしてみて、謎の多い「Half-Life」の世界観をより複雑にしてしまう形の筋書きとなっており、完全新作としては不完全燃焼の感じもある。

 また、Valve自身が手がけた日本語字幕についても、各所に翻訳の甘さが目に付いた。特に男性キャラクタのセリフが時折女性言葉で翻訳されているところなどは「オカマかよ!」とつっこみを入れてしまった次第だ。とはいえ、しゃべっている意味は十分に通じるし、文法的に間違っているような致命的なミスはないので安心してほしい。ひとえにゲームとして最高の完成度を持っている本作だけに、細かな錯誤が気にかかってしまうのである。しかし、発売後のローカライズを待たずして日本語で楽しめることには最大級の評価をしたい。世界市場で戦うPCゲームにはローカライズの問題が常についてまわるものだが、Valveのような一開発会社が現地パブリッシャに任せず、日本語を含む各言語へのローカライズを自ら施した点は他のメーカーにも是非見習ってもらいたい姿勢である。

 総合的に見て本作は、現在のところ質量ともにPCゲーム界最高水準の作品といって間違いないだろう。これまでにないリアルな映像、キャラクタの豊かな表情、徹底したサウンドエフェクト、どれをとっても文字通り空前絶後の完成度。素晴らしい臨場感をたたえた「Half-Life 2」の世界は、インタラクティブなストーリーテリングの一形態として、傑作である。このような素晴らしいゲームをプレイできる時代に生きていることを素直に喜びたい、そんな気にさせるゲームである。

序盤は「シティ17」近郊が戦いの舞台となる。敵は民間保安軍(コンバイン)が中心で、距離をとっての銃撃戦や、可燃性ドラム缶を使ったアクションが数多く展開する


郊外に向かう中、懐かしいエイリアンゾンビに遭遇。シティを遠く離れてもコンバインの兵士たちやドロップシップが追跡してくる。人気の少ない地域を拠点に活動しているレジスタンスに出会い始めるのもこのあたりだ


中盤にさしかかるといよいよ、エイリアンの出現頻度が高まる。チャプター「サンド・トラップ」から登場する昆虫型のエイリアンは大量にわいてくる嫌な敵だが、ある時点を境に味方として使役できるようになる


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【Half-Life 2】
  • CPU:Pentium III 1.2GHz 以上(Pentium 4 2.4GHz以上を推奨)
  • メインメモリ:256MB以上(512MB以上を推奨)
  • HDD:4.5GB以上
  • ビデオメモリ:不明


(2004年11月22日)

[Reported by KAF@ukeru.jp]


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