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「Deus Ex Mankind Divided」の様々なアプローチを実現させるレベルデザイン

姿勢によってプレイ風景が全く異なるゲーム展開を実現させる工夫

2月27日~3月3日開催

会場:San Francisco Moscone Convention Center

 スクウエア・エニックスが3月23日に発売を予定しているプレイステーショ 4/Xbox One向けアクションRPG「Deus Ex Mankind Divided」。本作の大きな特徴が“自由度の高さ”である。プレーヤーには単純な戦闘だけでなく、ステルス、交渉、ルート探索など様々な方法で事態の解決を目指すことができる。

Senior Level Designerを務めるSylvain Douce氏
プレーヤーのアプローチでプレイ風景が全く異なる
マップには様々な要素が組み込まれている
移動できる足場なども考えてマップをデザインしている

 GDC 2017のセッション、「A City of a Thousand Choices: Prague City Hub in 'Deus Ex Mankind Divided'」はこの自由度の高さをもたらすためにどういった試みがなされたかを、Senior Level Designerを務めるSylvain Douce氏が語った。

 「Deus Ex Mankind Divided」は大きな柱として「ステルス」と「コンバット」があり、それに続く柱として「ハッキング」、「ソーシャル(会話)」、「探索」がある。プレイではこれらを活用し、様々な方法で目標へ到達することが可能だ。Douce氏はムービーでそれぞれを重視しながら進む光景を提示して見せた。全く風景が異なっているのが非常に興味深い。

 本作の主人公アダムはサイボーグであり、「オーグメンテーション」というサイボーグ技術で能力を拡張していく。プレーヤーによって拡張する傾向は大きく変わっていき、ゲームの展開も変わってくる。だからこそ「Deus Ex Mankind Divided」こういったプレーヤーの幅広い傾向に対応する“懐の広さ”が求められる。

 戦闘が好きなユーザーには「戦闘とステルス」、奥深い物語が好きなユーザー向けには「会話と議論」、探索が好きなユーザーには「サイドクエストと探索要素」、実績好きのユーザーには様々な

 戦闘好きのユーザーに向けての要素として、デザイン上で気をつけたところは「パワーアップを存分に使えるシチュエーション」、「物語上重要なNPCも殺害可能」というところだという。後者はデメリットになりかねないが、ゲームが不利になっても進めることができたり、殺せてしまうからこそ慎重になるというゲームの深みを感じさせる要素ともなっている。

 「Deus Ex Mankind Divided」のマップは重要なストーリー以外で関係する「サブロケーション」がマップに点在している。簡単に到達できる部分もあるが、例えば銀行は警備が堅く、下水道は進入ポイントが見つけにくい。また“名所”や特徴的な建物を配置することで、プレーヤーが自分がどこにいるか、進む先に何があるかを意識できるようにしている。

 「すべてのものを見て回りたい」というユーザーに向けては、深く深く侵入できるような場所を作り込んでいる。また侵入したときのリワードなども用意しているという。リワードの1つがサイドミッションだ。下水道の奥や、建物の影で本編とは関係のないサイドミッションを依頼してくる人物に出会う。彼らの願いを叶えることでプレーヤーは利益を得られるのである。

 探索を進めることでこの世界の成り立ちや街の情報などをプレーヤーはより深く知ることができる。しかし、それらの情報は開発者側にとっては意図して与えた情報であり、物語の核心は巧妙に隠していかなくてはならない。探索付きのユーザーに何を与えるかを計画するのもレベルデザインの楽しさだとDouce氏は語った。

 「会話」も本作のおもしろさだ。モノを与えたり、相手の望む答えを探し出すことで難関を楽に突破できたり、思わぬ報酬を得ることでプレーヤーは駆け引きの楽しさを学ぶ。そういった人間くさいNPCとその会話パターンを多く用意することで、「Deus Ex Mankind Divided」はより“生きて呼吸している世界”という感覚をユーザーに与えてくれる。より深い会話をできたNPCはその後もプレーヤーを助けてくれる存在となったりする。その後の展開を助けてくれるアイテムや、情報を得ることもできるのだ。

 また、やりこみ派のプレーヤーにとって「実績」も魅力的なモノを用意した。マップ上でとても行けない場所に行ったときや、難しいものを得たときなど、「俺以外誰がここに来るんだ?」といったことをしたプレーヤーに与える実績を用意しているのだ。こういった”遊び”の部分も本作にはしっかり盛り込まれているという。

 また本作の奥深さは”時間や状況の変化”にも盛り込まれている。昼間は楽々ショップに入れるが、奥の秘密に場所まで到達するには住人や客が邪魔だ。夜に店は閉まるが、警備システムのスイッチが入っており、場合によっては難易度が上がる。そしてシナリオの展開によっては何らかの事件が起こり、警官が事故現場として見張っている場合もある。同じロケーションでもステータスが変化し、アクセス方法に工夫が求められる。こういった変化が起きるフィールドとして本作は設計されているのだ。

 また、自由度に加え、プレーヤーのアクションに対するゲームの変化も紹介された。アダムが1つのセキュリティルームの金庫の中のアイテムを奪おうとするとき、最初はドアや金庫をすべてハッキングで、ある意味“強引”に突破し、目的を得るシーンが紹介された。次に別のケースとして、アダムが何らかの方法でキーワードを入手し、それでドアを開けるが……そのキーワードを手に入れるアクションを敵に察知されたためか、目標のモノが移されてしまっていたのだ。単純にアプローチが多数あるだけでなく、プレーヤーの行動がトリガーになってゲームの展開そのものも変化するという要素も紹介された。

 もちろんこうしたこった要素だけでなく、時には“カット”も必要だとDouce氏は語った。際限なく盛り込むのではなく、プレイしやすさ、シンプルさも意識して要素を絞り込む。その上で「プレーヤーが何をするか分析する」、「街のハブをきちんと作り、わかりやすい構造を目指す」、「枝分かれ要素はスマートに」、「どこにリソースを投入してゲームのメリハリをつけるか」といった、“鉄則”を提示し、Douce氏は講義を終えた。

 前作「デウスエクス」も自由度の高さがウリだった。屈強な男達が入り口をふさいでるディスコの裏口に、荷物が乱雑に積まれておりその上の通風口から侵入できたり、近くを見ると偶然チケットが落ちていたりした。「Deus Ex Mankind Divided」はさらに凝った形でのアプローチが楽しめそうだ。本作の日本での発売が楽しみである。

【Deus Ex: Mankind Divided - Launch Trailer】
【A City of a Thousand Choices】
NPCとの関わりは大きな変化をもたらす
様々に変化する状況を演出し、その中でプレーヤーがどうアプローチしていくかを考える
プレーヤーの自由度を求める気持ちを考え、状況を用意するには要素の絞り込みとわかりやすい提示が必要だとDouce氏は語った