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【特別企画】藍ちゃんとぼったくりが目に付いた台北ゲームショップレポート
何でも揃う遊びの新メッカ「三創生活」に行くべし行くべし!
2017年1月25日 13:41
台湾は1月26日からの春節(旧正月)を直前に控えて、日本の師走のような慌ただしさを迎えている。Taipei Game Showは毎年この春節の直前に行なわれるため、旧暦に合わせて派手に開催時期が変わるという珍しいゲームショウとなっている。Taipei Game Showで行列合戦に勝ち抜き、見事PS4 ProやPlayStation VRを購入したゲームファンは、春節の始まりを心待ちにしていることだろう。
今回は春節を目前に控えた台北の電脳街を歩いてみた。台北は比較的変化に乏しい街だが、実際に練り歩いてみると様々な発見があり、新しいスポットにも遭遇することができた。さっそく紹介していこう。
様々なエンタメに出会える新鋭のITモール「三創生活」
今回訪れたスポットは、光華商場、台北地下街、西門町の3カ所。この中で台湾でもっともメジャーな電脳街である光華商場は、最大のランドマークとなる電脳城「光華数位新天地」の隣に、IT系のショッピングモール「三創生活」が誕生し、光華商場エリアのど真ん中にあった老舗のマーケットは駐車場と化し、一気に垢抜けた空間になっていた。
かつて光華商場はガード下にあり、地上1階地下1階の2層空間にびっしりショップが入居し、書籍やPC、プリンター、ビデオカードなどのデバイスに混じって、PCやPS2の海賊版ソフトがタダみたいな値段で売られていた。そういう暗黒時代を知っている人間からすると今の光華商城は隔絶の感がある。
現在では、このあたりでは海賊版や改造を手がけるショップはまず見かけなくなった。代わりに優良店を示す認定書が飾られたショップが軒を連ね、新作の予約を募り、発売したてのタイトルのアピールに余念がない。逆に日本では、リアル店舗では、家電量販店が圧倒的に強いため、こういったゲームショップは姿を消しつつあるため、台湾でこうしたゲームショップに入り、口角泡を飛ばしながら熱心に新作を売り込む若い店員の姿を見ると、日本の失われた風景を見る思いがする。
余談だが、光華商場から海賊版が消えたのは、SCE(現SIE)のアジア部門SCE Asia(現SCEJA)とSCET(現SIET)による長年の取り組みのおかげだ。政府や警察と連携して、海賊版撲滅を働きかけ、PS4の世代でついに海賊版を根絶やしにした。もし両社の働きかけがなかったら、今でも光華商場は海賊版のメッカであり続けていたかもしれない。
そう思う理由は、光華商場のメインの商材は、PC、ゲーム、そしてアダルトビデオだが、アダルトビデオはまだ幾らでも海賊版があるからだ。1枚数十台湾ドル、10枚数百台湾ドルという安値で、ディスク売りしている店舗がまだいくらでもある。なぜ放置され続けているのか誰もわからないという光華商場七不思議のひとつである。ゲームとアダルトビデオでどこで差が付いたかというと、煩い人間がいたかどうか、それだけの違いのような気がする。
そして光華商場の新しいランドマークとなった三創生活は、最近アジアに増えている小洒落たハイセンス系のITモールと思いきや、まあ実際そうだったのだが、エンタメ系が非常に強く、ゲームファン/ホビーファンはかなり楽しめる施設だった。
先日紹介したVIVELAND(参考記事)もここの3階に入居しており、そのほかにもドローン専門ショップがあったり、VIVELANDとは別のVRアトラクションがあったりして目移りするような楽しさがある。
圧巻だったのは6階の「動漫基地(GAME)」。PS4からNew 3DSまで主要なゲームコンソールの試遊台をすべて揃えた台北最大規模のゲームショップがあり、そのほかにバンダイが運営する「機動戦士ガンダム」専門店「GBT1(GUNDAM BASE TAIPEI NO.1)」模型ショップ、玩具ショップ、フィギュアショップ、ガチャガチャコーナー、e-Sports施設など、まさに夢のような動漫基地となっており、ここだけで1日楽しめる濃度がある。
特に凄いのはゲームショップで、PS4(3台)、PS VR(1台)、PS Vita(2台)、Xbox One(1台)、Xbox Kinect(1台)、ニンテンドー3DS(1台)と主要ハードすべての試遊台を揃えている。台北のゲームショップは売り場面積が限られるため、PS4 1台、Xbox One 1台ぐらいがせいぜいだが、ここまで試遊台を揃えている店舗は見たことがない。このショップではハード、ソフトの購入、ゲームの試遊のほか、オフィシャルグッズの購入も可能で、この点でもポイントが高い。台北のゲームトレンドを見たいと思ったらぜひ押さえておきたいショップだ。
PC関連は2階「数位潮流(TOUCH)」で、MSI、Acer、ASUSといった台湾メーカーに加え、ソニー、Razer、Lenovo、HPといったPCメーカーが、新モデルの試遊をメインにしたショップを展開している。
中でもユニークだったのがRazerのショップだ。ここはあたかもネットカフェのようなデザインを採用しており、しっかり座ってRazer製のゲーミング、マウスパッド、キーボード等を使って最新モデルをじっくり試すことができる。インターネットにも繋がるため、活きの良い若者は、「League of Legends」などのゲームを遊びまくりで、口コミで広がっているのか試遊するための列までできている。Razerとしてはこの体験でRazer製品に慣れ親しんで貰い、新たな顧客になってくれればいいと考えているのだろう。こちらも三創生活に赴いた際は立ち寄りたいユニークな施設だ。
藍ちゃんまみれのゲームショップ。その一方でぼったくりも大きな存在に
そのほか、光華数位新天地や台北地下街、西門町でゲームショップを探し求め歩いたが、目に付いたのは藍ちゃんとぼったくりだ。
1つ目の藍ちゃんというのはSIET独自のマスコットキャラクターで、台湾のイラストレーターVOFAN氏が作画を担当したオリジナルキャラクターとなる。もともとPlayStation Networkの販売促進のために誕生したキャラクターだったが、どんどん人気が高まり、ついにPS4の藍ちゃんモデルが2タイプ発売されるまでに至った。
春節向けの広告展開でも藍ちゃんを前面に押し出しており、藍ちゃんのポスターや等身大ポップ、藍ちゃんモデルのPS4のケースを至る所で見ることができた。もはやSIET≒藍ちゃんというぐらいまで存在感が高まっており、このまま行けば、藍ちゃんデザインのPS4がリリースされる日が来るかもしれない。
もうひとつのぼったくりというのは、文字通りぼったくり価格での販売だ。今回、台北のゲームショップを見てみようと思った理由は、今年SIETがTaipei Game Show 2017用に3,000台のPS4 Proと、1,000台のPS VRを用意したものの、いずれも10時の開幕を待たずに売り切れるという予想を上回る凄まじい人気を見せたことがきっかけになっている。SIETがなぜそんなに膨大な台数を用意したかというと、台湾のゲームファンが「どこも買えない!」と怒っているからであり、日本と同様にぼったくり価格で販売されており「ふざけるな」とさらに怒っており、その怒りを和らげる必要に迫られたためだ。
しかし、本当にそうなのかどうかは見てみないとわからない。そこで実際にショップにハードがないのか確かめてみようと思ったのだ。
今回、ゲームを取り扱うショップをざっと20店舗ほど見て回ったが、結論から言うとそれらのハードはあることはあった。しかし、ショップの奥やケースの中に大事そうに飾られ、値段を聞くと市場価格の1.5倍から倍ほどをふっかけてきた。そこはあうんの呼吸で「高い値段だけどわかるよね?」という感じで、別に悪びれるそぶりもない。それが普通なのだろう。
実は台湾に限らず、この手のぼったくりショップはアジアに非常に多い。それは並行輸入品の取り扱いとワンセットになっているためで、もともと並行品は、日本でのショップ価格+人海戦術の人件費+台湾への輸送費で、定価より高い値段で仕入れているため、儲けるためには高くせざるを得ない構造になっている。だから並行品は1割2割の割り増し価格で販売されることが普通になっているが、今回のPS4 ProやPS VRのような非常に競争力の高い商品は、いくらでも出して買うユーザーがいるから、バカみたいに値段がつり上がるわけだ。
ヨドバシカメラやビックカメラなどの家電量販店で人海戦術を使って大量にハードを購入するアジア人がいるが、その行き着く先がこういったぼったくりショップだ。SIETでは、こうした並行品の高値転売は市場に悪影響を及ぼすため禁止している。だから優良店では、こういった風景はまず見られない。ただ、「ファミリーコンピューターミニ」のような他社製品の取り扱いまで規は制できないため、SIET認定の優良店でも「ファミリーコンピューターミニ」を3,000台湾ドル(約11,000円)で販売して小遣い稼ぎをしており、客観的に見て“どのゲームショップでも人気ハードの高値転売をしている”という雰囲気はある。
今回よく見かけたのはPS4 ProやPS VRのほか、「ファミリーコンピューターミニ」、「ポケモン GO Plus」あたりで、PS4 ProやPS VRが台湾で極端な品薄のためか、こうしたぼったくりショップは勢いを増している印象だった。コンソールゲームが金持ちだけの贅沢な遊びにならないよう、これ以上増えないことを願いたい。