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HTC直営のVR体験施設「VIVELAND」にVRの明るい未来を見た
HTC Viveがカップルや家族単位でたっぷり遊べる、理想的なVR施設
2017年1月24日 15:05
VRヘッドセット「HTC Vive」をグローバルで展開する台湾HTC。Taipei Game Show 2017でもローンチイヤーの昨年に続いてブース出展(参考記事)し、VR普及に向けてアピールを続けていた。
2016年、VRデバイスが続々とローンチしたものの、それぞれ市場の予測を大幅に下回る低調なスタートとなった。VRが低調に留まった主な要因は、VRそのものの問題と言うよりも、単純にハードの数が揃わず、数が保証されないためコンテンツも出てこないという負のスパイラルが止まらないためだ。
こうした中、VRプラットフォーマー各社はVR普及に向けた戦略転換の必要に迫られている。PlayStation VRが、更なるハードの増産と、コンソールゲームのVR化、Oculus Riftが親会社Facebookをフル活用したノンゲーム系VRへの注力だとすると、HTC Viveが力を入れているのがアーケード展開だ。
現時点で法人利用を認めているのがHTC Viveだけで、日本や欧米に存在するVR体験施設のほとんどはHTC Viveが使われている。そのショウルーム兼アンテナショップとして、2016年秋にオープンしたのがHTC直営のHTC Vive体験施設「VIVELAND」だ。
台湾最大規模の電脳街 光華商城の隣に新たに建設されたITモール「三創生活(SYNTREND)」の3階にあり、光華商城に行ったついでにふらりと立ち寄れる。今回、Taipei Game Showの取材の合間を縫って取材に行ってきたのでその模様をお届けしたい。
HTC ViveによるVR体験が格安で楽しめるVR施設
訪れてみて最初に感じたのは、“垣根の無さ”だ。日本のVR体験施設の多くは、ひとつの独立した店舗となっており、理由は様々ながらも、共通点としては高い壁に囲われ、中がよく見えない。これに対してVIVELANDは、「あ、ここがそうか」というぐらいデパートのショップインショップ程度の区切りしかなく、中の様子が一望できるようになっている。
中が一望といってもスペースは結構広く、ルームスケールが可能なVR体験エリアが7つあり、それとは別に座位で体験できるスペースも存在する。「Front Defence」で積み上げられた土のうに腕を置きながら迫り来る敵に怯えて叫声を上げている女の子も丸見えなら、「フルーツニンジャ」をオーバーアクションで遊んでいるちびっ子も丸見えだ。それを見守るお友達や家族達も楽しそうで、目を細めながら写真や動画を撮っていたりする。通路では、その風景を実際のゲーム内の映像と合わせて鑑賞できるようになっており、それを見てみんなでワイワイ楽しむという、人が人を呼ぶデザインになっている。非常にうまい作りだ。
ビジネスモデルはかなりフレキシブルで1回いくらの回数制、15分いくら、30分いくらの時間制、施設丸ごと1時間でいくらの貸し切り制の3パターンがあり、150台湾ドル(約540円)から遊ぶことができる。すべて揃えると20万円程度は掛かってしまうハイエンドエンターテインメントの試遊料金としてはかなり安い値段だ。
遊べるタイトルは、自社開発の「Front Defence」をはじめ31タイトル(1月23日時点)だが、HTC Viveのコンテンツポータル「VIVEPORT」が起動した状態で、チュートリアルも含めて自由にコンテンツを選んで遊ぶこともできるので、実質的にはHTC Viveで遊べるすべてのコンテンツとなる。
専用ゾーンとなっているのは「Front Defence」と「Project Cars」の2タイトルで、それぞれ説明員が付き、遊び方を教えてくれる。この2タイトルはVIVELANDの手前側に置かれており、常にギャラリーで一杯だ。まさにアーケードの体感ゲーム的なノリでみんなで楽しめるようになっている。
ちなみに、子供は斜視になりやすいということで、VRの利用には年齢制限が課せられているが、この施設では「フルーツニンジャVR」や「Merry Snowballs」など、タイトルを限定して子供でも遊べるようになっている。
訪れたのは平日月曜日だったが、常時満席で数組の待ち行列が発生するぐらいの混み具合で、ルームスケールゾーンの稼働率は100%だった。客層はファミリーやカップル、女の子2人組など、VRデバイスが自宅にないと思われるカジュアル層が中心で、新規ユーザーにVRの魅力を伝えるという狙いは見事に当たっていると言える。
ただ、値段の割安感、施設の広さ、スタッフの多さから見ると、これそのものがビジネスになっているかというと微妙な印象だが、視察していた間にも何百人の来場者がひっきりなしに訪れ、中にはHTCのスタッフに連れられて海外から視察に訪れていた一行も確認できたりして、世界に向けたアンテナショップとしてはしっかり元が取れているという印象だ。
遊べるタイトルは原則としてすべて繁体中文版で、スタッフの説明はすべて中国語で行なわれるため、日本人観光客がひょいと遊びに行くのはあまりオススメできないが、アーケード展開を検討している法人担当者はぜひ訪れるべきだし、中国語がある程度わかるゲームファンは存分に楽しめると思う。とりわけ、「Front Defence」は、まだSteamでリリースされていないものの、すでに日本語に対応しており、ゲームショウのような特別な機会を除いて常設で楽しめるのはここだけなので行く価値は大きい。ぜひ多くのゲームファンに訪れてほしい施設だ。