ニュース

国内初のVR特化型インキュベーション施設「Future Tech Hub」が正式オープン

VRクリエイターよ大志を抱け! 最高のVR開発環境が月額15,000円より

12月14日オープン



会場:Future Tech Hub

 コンサルティングやレンタルオフィス業を展開するブレイクポイントは12月14日、国内初のVR専用インキュベーション施設「Future Tech Hub」の開所式を行なった。

開所式はFuture Tech Hubのオープンスペースエリアを利用して実施された
Tokyo VR Startup代表取締役社長の國光宏尚氏(gumi代表取締役社長)
Tokyo VR Startup取締役の新清士氏(よむネコ代表取締役社長)
トークセッション「日本のVRスタートアップが世界で勝つために必要なこと」

 Future Tech Hubは、国内初となるVR特化型のインキュベーション施設。gumi出資のTokyo VR Startupと提携し、インキュベーションプログラムに参加する企業をはじめ、幅広くVR分野のスタートアップ企業の入居を募り、今後1年間で30社の入居を見込む。

 場所は、ブレイクポイントが運営し、Tokyo VR Startupも利用している汎用のインキュベーション施設箱崎インキュベーションセンターからわずか5分の好立地にあり、現在入居しているTokyo VR Startup二期生とのリレーションも含め、箱崎エリアをVRスタートアップの聖地にしようという考えだ。

 利用条件は、「VR関連ビジネスを行なっている、もしくは準備中の個人、法人で、他のアントレプレナーとの交流・協業・相互貢献に前向きなこと」としており、個人レベルでの参加も可能。入居料は、フリーデスクプランが月額15,000円(税別、別途契約手数料)、固定デスクプランが月額35,000円(税別、別途契約手数料)となっており、極めて安いコストでレンタルオフィスを利用することができる。

 機材については、VRデバイスやPCなど一切合切は自ら用意しなければならないが、VRのデモや検証を行なうためのスペースは無料で利用することができ、商談用の会議室も用意されているなど、至れり尽くせりの環境が整っている。

 開所式ではブレイクポイント代表取締役社長 若山泰親氏をはじめ、Tokyo VR Startup代表取締役社長の國光宏尚氏(gumi代表取締役社長)、Tokyo VR Startup取締役の新清士氏(よむネコ代表取締役社長)が参加し、祝辞を述べた。

 新清士氏は、Tokyo VR Startupの役員であると同時に、Tokyo VR Startup参画企業の1社よむネコの代表取締役社長という2つの顔を持つ。新氏は、Tokyo VR Startupとその受け皿としてのインキュベーション施設の設立について、「アメリカで取材して、あちらと日本で様々な面でギャップを感じた。アイデアに対して予算を付ける仕組みが日本にはなかった」と、アイデアを具現化する方法論が確立されていなかったことに危機感を感じ、國光氏の全面協力を受けてTokyo VR Startup設立にこぎ着けた経緯、そしてその意義を改めて説明した。

 参画企業として1年間箱崎インキュベーションセンターを利用した感想としては、「この環境で仕事ができるのは幸せそのもの」と喜びを語った。大きな理由は、國光氏が海外から持ち帰る最新情報が聴けることや、TVSメンターと呼ばれるメンタープログラムに参加しているメンターたちから刺激的なアドバイスを受けられるためだという。ほかにもオーストラリアメルボルンの経済大臣をはじめ、シンガポールのメディアや中国系のVCが視察に訪れ情報交換できたことで、「世界が動いているという実感を得られ、この環境を我々だけで独占するのはもったいないと感じた」とまで語り、Tokyo VR Startupの取り組みを自画自賛した。

 開所式後半では特別プログラムとして登壇者らによるトークセッション「日本のVRスタートアップが世界で勝つために必要なこと」が行なわれた。

 口火を切ったのは第一線で戦っている國光氏。國光氏は、「勝つぞという覚悟は重要」と切り出し、「VRゲームを最初から海外で勝つんだと思って作るのと、日本で売れればいいやと思って作るのでは大きな差になる。そのためには自分たちがいま世界のどの位置にいるのかを客観的に知ることも大事で、最先端のレベルがどうなっているのかを把握した上で、世界で勝つということを念頭に置いた上で壁を乗り越えていくことが重要」とした。

 新氏が、國光氏の見解に対してジャーナリストとして全面的な賛意を示した上で、「大きなビジョンを持たないとそこにたどり着くことはできない。スタートアップは最初にどれだけ大きなイメージを持てるか、どういうゴールを描くかが重要で、そのためには大量の情報を吸収しなければならず、その最適解がFuture Tech Hubへの入居だという。

 コンテンツ制作の面について國光氏は、「今、GoogleがDaydreamを発表したとか、PS VRがリリースされたとかで出先を決めるのは間違っていて、3年後こうなっているから、2年後、1年後、そして今何をすべきかと逆算して考えることが大事」と説明。國光氏は、3D立体視がウリの3Dテレビが大失敗した例を挙げながら、「VRのウリは世界へ没入できること。その没入した世界で何を見せて、どうインタラクションするのか。技術的にはルームスケールが必須だろうし、余計な設備も不要になり、スタンドアロンでルームスケールが可能になるはずだし、最終的にはそれがスマホになるかもしれない。今からそこに向けて、VRならではの体験を徹底的に突き詰めたコンテンツを作っていくことが大事」と説いた。

 若山氏は、「ビジョンの大事さは世界共通で、そこに向かう覚悟を持つことは共感できる。サンフランシスコのスタートアップの現場を見てきたが、彼らもマーケットがないのはわかっている。今後どうなるかわからないし、確率論で動けるようなレベルでもないが、どんどんスタートアップに飛び込んできている。日本語で言うと覚悟・信念ということになるが、英語だと『Stay Hungry, Stay Foolish』(編注:スティーブ・ジョブズのスピーチの一説)になる。要するにバカなんだけど、彼らの覚悟、信念は明るい感じで、そういう人びとが新しいムーブメントを作って行くのかな」と感想を述べた。

 支援企業からはHTC VIVEの西川氏が、「日本のスタートアップが勝つチャンスは、コンテンツの作りの細やかさにあるのではないか」と述べ、「中国などでVRを見てきたが、質が荒いし、体験の質ももっともっと突き詰められると感じた。(よむネコの)『エニグマスフィア』は細部まで綺麗に出来てて感動した。オキュフェスから見ているが、最初のバージョンから凄く変わっている(場内笑い)。そういう変わり身の早さ、適応力の高さ、そういった柔軟性も大事だと思う」と日本のVRコンテンツに太鼓判を押した。

 入居企業を代表して高橋氏は、「月一ぐらいで、ゲームの内容もジャンルも変わっていく」と切り出し笑いを誘い、「こうなるだろうと思って作って見たらつまらない。だから方向転換する、それを繰り返して精度を高めていく。すぐ試せば、すぐ結果が出るので、すぐ方向転換をすることも小規模開発では重要」と制作手法を語った。

【登壇者】
ブレイクポイント代表取締役社長 若山泰親氏
テクニカルパートナーのサードウェーブデジノス マーケティング本部 本部長 吉岡元義氏
テクニカルパートナーのHTC NIPPONディレクターの西川美優氏
テクニカルパートナーのアマゾンウェブサービスジャパン 事業開発部マネージャーの畑浩史氏

 トークセッション終了後、高橋氏率いる桜花一門が現在開発している「Chaine Man」を体験させて貰ったが、ホラーゲームに変わっていた。その前は物理演算を活かしたVRアクションゲーム、さらにその前は物理演算を活かしたパズルゲームで、確かに高橋氏が告白するようにゲームの内容もジャンルも変わっていた。

 現在のゲーム内容は、鎖で手を繋がれた人間を主人公に、おどろおどろしいフィールドを歩き、脱出するためにオイルタンクを集めていくというもの。途中、ゾンビのような魔物が出現し、前回のバージョンでは斧を掴んで倒すことができたが、「攻撃ができると恐さがなくなる」ことがわかり、ただひたすら逃げるしかなくなっている。この逃げる部分でユニークだったのは、VR世界で自らの操作で歩いている実感が得られるユーザーインターフェイスの導入。

 高橋氏はこれを「松葉杖UI」と呼んでおり、前に付きだした手に、地面に向かって棒きれのようなものが伸びており、杖をついて歩くような操作をすることで、手に地面にコツンと当たったフィードバックがあった上で少しずつ前進していく。杖をつく操作を早くすることで移動も早くなり、まどろっこしい操作を入れることで怖さを助長することができる。高橋氏によれば、実際にこのUIをゲームに導入するかはわからないということだが、2017年梅雨時期のリリースを目指して、現在鋭意開発中だという。発売プラットフォームは、PlayStation VRを予定し、その後、Oculus RIFTやHTC VIVEにも展開していく。

 なお、このFuture Tech Hubは、現在入居者を募集している。現時点では新氏のよむネコ10数名、高橋氏の桜花一門の5名を含めて5社が入居しており、フリーデスクプラン、固定デスクプラン共にまだ空きがあるという。VRスタートアップを目指しているクリエイターは一度相談してみてはいかがだろうか。また、このFuture Tech Hubを通じて発信されるVRコンテンツについても注目されるところで、「エニグマスフィア」のアップデートや、よむネコの次回作にも注目が集まるところだ。

【Future Tech Hubの様子】
広さは約210平米で、会議スペースやデモスペース、OA機器の利用も可能。VRは開発もデモも場所を取るだけに、たっぷりゆとりのある空間になっているのはVR開発には最適の環境だ