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AMD、ドライバ大型アップデート「Radeon Software Crimson ReLive Edition」配信

録画・配信機能を標準サポート。新機能“Radeon Chill”も搭載

12月8日23時アップデート予定(日本時間)

「AMDで最大のアップデート」とされる今回のドライバアップデート
コンシューマー向け、プロ向けの両バージョンが一挙に更新される

 Radeonシリーズを展開するAMDは、日本時間12月8日23時にドライバのメジャーアップデートを実施し、「Radeon Software Crimson ReLive Edition」の配信をスタートする。本アップデートではGCNアーキテクチャを搭載するRadeonシリーズ(Radeon R7/R9およびRXシリーズなど)にて複数の新機能が追加される。

 また同時にプロフェッショナル向けGPUであるAMD Fire Proシリーズにも同様の大型アップデートが行なわれ、「Radeon Pro Softweare Crimson ReLive Edition」として、コンシューマー向け版と共通のRadeon Settingsインターフェイスをサポートし、ユーザビリティを向上させる。

 AMDでは本アップデートについて「2015年のRadeon Software Crimson Editionを超える、史上最大のソフトウェアアップデート」としており、ハイパフォーマンスゲーミングやプロフェッショナルグレードの安定性、またVRパフォーマンスを改善することで、DirectX 12(DX12)世代のリーダーシップをさらに強化するものとして位置づけている。

 まず全般的なパフォーマンス改善として、Radeon RX 480リリース時のドライバ(Radeon Software Crimson Edition 16.6.2)と比較してDX11~DX12対応の各種主要ゲームにて4~8%のパフォーマンス向上を果たしている。

Radeon RX480リリース時点のドライバに比べ、主要タイトルで4~8%のパフォーマンス向上を実現

H.265対応の録画・配信・インスタントリプレイ機能「ReLive」を標準搭載

ドライバ機能として統合された録画・配信機能「ReLive」
Radeon Pro Softwareでも同様の機能がサポートされる
Radeon Settingsインターフェイスから録画機能にアクセス
インスタントリプレイ機能では最長1時間のバックグラウンド録画に対応

 Radeonシリーズにおける録画・配信機能はこれまでサードパーティ製コンパニオンアプリの「Raptr」を通じて提供されてきたが、今回のドライバアップデートによりドライバ標準機能としてRadeon Settings内の機能として統合される。それが本ドライバの名称にもある「ReLive」機能だ。

 これまで使われてきた「Raptor」は独自のソーシャル機能を持つゲーミング支援アプリで、録画・配信機能だけが欲しいユーザーにとっては少々無駄が多く、インターフェイスもRadeonドライバ標準のものとは統一されていなかったため、常駐させることに抵抗のある部分もあった。その録画・配信機能が今回のアップデートでRadeonドライバ標準の「ReLive」として統一されることで、“余計なアプリ”を入れずにフル機能を利用できるようになった形だ。

 「ReLive」による新しい録画・配信機能は、Radeonドライバの標準オーバーレイインターフェイスであるRadeon Settingsの「Recording」、「Streaming」タブから簡単に利用できる。通常の録画や、Twitch/YouTube Liveなどの主要なストリーミングサービスへの配信をサポートするほか、最大1時間までのインスタントリプレイ(バックグラウンド録画)機能にも対応する。

 AMD独自の強みとなるのは、NVIDIAの同様の機能ではサポートされていないH.265でのエンコーディングに対応しており、より少ない容量で高画質の録画を実現する点。ビットレートは最大50Mbpsまで無段階で設定可能なほか、解像度やフレームレート(最大4K30fps)の設定も柔軟だ。従来からのH.264でのエンコーディングも選択できる。このほか配信動画に対するウェブカメラやカスタムイメージのオーバーレイ表示に対応し、またデスクトップ全体のキャプチャーや、ホットキーによるスクリーンショット保存なども可能となっており、総合的にライバル製品に勝るとも劣らない機能を実現している。

 また「ReLive」ではRadeon GPUに搭載されているハードウェアエンコーダーを利用するため、ゲームへのパフォーマンス的な影響は最小限に押さえられている。具体的には、「Overwatch」、「Battlefield 1」といった主要な最新ゲームにて最大でも4%のフレームレート低下(1080p60fps録画時)に抑えられており、録画・配信機能を常時ONにしても全く影響を感じられないだけのパフォーマンスを実現している。

「ReLive」機能利用時のゲームへのパフォーマンス影響は最大でも-4%に留まる

新機能「Radeon Chill」でパワーマネジメントを強化

消費電力や発熱を効果的に抑える「Radeon Chill」
画面に変化がない場合、描画処理を行わないことで効率化を図る
無駄なフレーム更新が行なわれないため、レスポンスが向上する効果もあるという
対応タイトルはローンチ時点で18種類。今後拡張していく意向

 「ReLive」機能の搭載に並ぶ大きなポイントとなるのは、ノートPC等でバッテリー消費を積極的に抑える新機能「Radeon Chill」が搭載されることだ。

 Radeon Chillは、ゲーム画面の更新状況に応じてフレームレートを動的に調整する機能。例えばユーザーがマウスやキーボードの入力をしておらず、画面がほとんど変化しない際にはフレームレートを大幅に下げることでシステムの消費電力を減らし、またGPUが発生する熱を抑える。ユーザーが入力を行なって画面が激しく変化する際にはフレームレートが向上し、フル稼働時と同様のレスポンスを提供する、という仕組みだ。

 ライバルであるNVIDIAのノートPC向けドライバでは、バッテリー節約のためフレームレートを固定で引き下げる機能を搭載しているが、そうすると全般的にゲームのレスポンスが低下してしまうために使用をためらうケースも多い。Radeon Chillではフレームレートを動的に変動させることで、電力の節約と高いレスポンスを同時に実現しているというのが特徴だ。

 このRadeon Chillは、Radeonの統合的な電源管理システムであるWattMan内に統合されており、ユーザーの任意でゲーム毎のON/OFFを制御したり、最小/最大FPSを調整することが可能だ。レスポンスを維持したまま電力消費の低減や発熱を抑えることができるため、ノートPCのみならずデスクトップPCでも、省エネや静音環境の実現のため活用することができる。

 実際の計測結果としては、「World of Warcraft」(Blizzard Entertainment)にて消費電力が31%低減、GPU温度が平均13%低減といった効果が報告されている。逆に無操作中でも様々な要素が動き回るゲームでは効果が薄いようで、例えば「Paragon」(Epic Games)では消費電力の低減は12%、発熱の低減は4%にとどまっている。タイトル毎に効果の幅が大きいところがひとつ読みにくい部分となるが、Radeon Chillの設定で最大フレームレートを大幅に低下させることも可能なので、より積極的に電力消費を抑える設定とすることも可能だ。

 Radeon Chillはゲームの挙動と密接に連動する機能であるためデフォルトでオフとなっており、対応タイトルは慎重に選択されている模様だ。現時点で対応するゲームは、人気の高いオンラインFPSを中心に18タイトル。DX12およびVulkanを用いたタイトルは現時点ではサポートされない。AMDでは今後のアップデートで対応タイトルを拡充していく見込みだ。

 これにあわせて今回のドライバアップデートでは、WattMan機能がこれまでのRXシリーズのみから、Radeon R7/R9シリーズ等のGCNアーキテクチャ搭載GPUにサポートが拡大する。WattManはファン速度や電圧の制御を通じてオーバークロックツールとして活用することも可能なので、1世代前のGPUをさらに使い尽くすという意味でも新ドライバーの導入価値はありそうだ。

【Radeon Chill対応タイトル一覧】
Call of Duty Infinite Warfare(DX11)
Counter Strike(DX9)
CrossFire(DX9)
Dark Souls III(DX11)
Deus Ex: Mankind Divided(DX11)
Fallout 4(DX11)
Far Cry 4(DX11)
Far Cry Primal(DX11)
Overwatch(DX11)
Paragon(DX11)
PlanetSide 2(DX9)
Rise of the Tomb Raider(DX11)
Team Fortress 2(DX9)
The Elder Scrolls V: Skyrim(DX9)
The Witcher 3(DX11)
Tomb Raider 9 (2013)(DX9/DX11)
Warframe(DX11)
World of Warcraft(DX9/DX11)

オーバクロックにも使えるパワーマネジメント機能のWattManが、既存のR7/R9シリーズでも利用可能に

対応HDRフォーマットの拡充、FreeSync機能強化などその他の更新点

 今回の「Radeon Software Crimson ReLive Edition」アップデートでは、上記のほか様々な機能追加が行われる。

・HDR対応の拡充

 最新のHDR規格であるDolby VisionとHDR 10を新たにサポート。

Dolby VisionとHDR 10をサポート

・最新DisplayPort規格HBR3に対応

 DisplayPortの新たな高ビットレート規格であるHBR3に対応し、4K 120Hz、5K 60Hz、8K 30Hzの画面出力が可能に。

HBR3規格への対応でより高解像度・高リフレッシュレートの出力が可能に

・FreeSyncの機能強化

 従来のフルスクリーンモードのみから、ボーダレスフルスクリーンモードでもFreeSync機能が利用可能に。また、段階的にフレームレートを変化させることで急激なフレームレート変化を抑え、よりなめらかな表示をサポートする。

FreeSyncがボーダレスフルスクリーンモードに対応
急激なフレームレート変化を抑え、表示をより滑らかに

・Thunderboltで外部GPUの接続をサポート

 Thunderbolt接続対応したノートPCや省スペースPCにて、外部GPUユニットの接続をサポートする「AMD XConnect」テクノロジーをサポート。

「AMD XConnect」で対応の外部GPU接続が可能に

・VP9フォーマットの再生支援

 WebM等のブラウザ向けの最新動画コーデックであるVP9の再生アクセラレーションに対応し、Chrome等のブラウザでの動画再生をより低負荷で実現。

VP9フォーマットの再生支援でウェブ動画を低負荷で再生

・Skypeのパフォーマンス向上

 AMD APU搭載PCにて、Skypeの通話中におけるAPU使用率を低減し、デスクトップパフォーマンスを向上。

Skype通話利用時のAPU負荷を軽減

・HDMIケーブルのエラー検出機能

 古いHDMIケーブルなど障害のあるケーブルを接続し信号不良が発生した際、システム側で同期タイミングを自動調整していき、どうしても正しく映像出力できない場合には検知してケーブル不良を報告する。

HDMIのケーブル不良を検知・報告可能に

・ソフトウェアインストーラーの改良

 Radeon Settingsと共通のインターフェースを採用し、より使いやすく。最新ドライバの自動更新や、前バージョンを自動削除してのクリーンインストール操作もサポート。

インストーラーがより使いやすく。自動のクリーンインストールも可能に

・アップグレードアドバイザー

 Radeon Settings内にて、Steamタイトルの最低・推奨スペックをチェック可能に。PCスペックが足りない場合、アップグレード候補のパーツを提案してくれる。

ゲームの動作スペックをチェックし、足りない部分についてアドバイスしてくれる

・ユーザーフィードバック機能

 ドライバへの評価や好ましい機能への投票などをRadeonのソフトウェア開発チームに直接フィードバックすることができる。

Radeonのソフトウェア開発チームに直接フィードバックが可能に

・Linux対応ドライバの拡充

 LinuxでFreeSync機能をサポート。Linuxで全てのGCNアーキテクチャ搭載GPUが利用可能に。

Linuxドライバのサポートを拡充