Game Developers Conference 2009現地レポート

GDC Expo会場レポート

Wiiの新作やPS3立体視システム、脳波スキャンデバイスなどが登場


3月23~27日 開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Center



 Game Developers Conference(GDC)では本題のカンファレンスのほかに、ゲーム関連企業各社がブースを出展する「GDC EXPO」や、ビジネスミーティングスペースの「GAME CONNECTION」、求人・求職をサポートする「CARRIER PAVILION」といったコーナーが併設されている。

 中でも「GDC EXPO」は、世界中のゲーム開発者に向けて売り込む商品を展示しているため、最新のハードウェアやミドルウェアが出揃う。またコンソールハードホルダー各社は最新ゲームソフトの試遊台を置いており、これだけで1つのイベントと呼んでいい規模になっている。本稿では「GDC EXPO」から、ハードホルダー3社の様子と、ユニークな商品を置いていたメーカーのブースをレポートする。




■ Wii「Punch-Out!!」、「Excitebots」の2タイトルを置いた任天堂

DSiの発売が近いこともあり、ブースの注目度は高かった

 任天堂ブースでは、北米では今春発売予定のWii用ソフト「Punch-Out!!」と「Excitebots」がプレイアブル出展されていた。

 「Punch-Out!!」は、ファミコン用として発売されたボクシングゲーム「パンチアウト!!」のリメイクとなるソフト。画面中央に背中向きのプレーヤーキャラクターと、その前に立つ相手キャラクターがおり、相手のパンチを避けつつパンチを繰り出す。基本的なゲーム内容はファミコン版と同じだが、操作はWiiリモコンとヌンチャクを使用し、パンチを出すように手を動かすと、それに合わせてプレーヤーキャラクタもパンチを出す。グラフィックスも3Dになり、ボクシングらしい臨場感を存分に味わえるタイトルになった。

 「Excitebots」は、ファミコン用「エキサイトバイク」から続くレーシングゲームシリーズの最新作。昆虫のような外見をしたマシンを操る3Dレーシングで、会場ではWiiハンドルを使って操作できた。コース中には大きくジャンプする場所がいくつかあり、飛んでいる間にハンドルを回して車体を回転させたりといったトリックを決めることによってポイントが得られる要素がある。またコース中には棒のようなものがあり、これに触れると捕まってその周りをグルグルと回り、離して一気に加速するという仕組みも用意されていた。


3Dグラフィックスとヌンチャク操作で、ゲームの雰囲気もがらりと変わった「Punch-Out!!」スピード感のあるレースが展開される「Excitebots」。「『マリオカート』の新作か?」と聞いている人が多かったDSiのデモとして「うつすメイドインワリオ」が置かれていた



■ PS3を使った立体視のデモを実施したSCE

例年どおりの雰囲気で展開されているSCEブース

 SCEブースは、プレイステーション 3やPSPの多数のタイトルをプレイできる試遊台が並べられた、例年どおりの構成。パッケージソフトのほかにも、「PlayStation Store」で販売されているダウンロードソフトや、「PlayStation Home」の試遊台も用意されていた。

 ゲームは特に目立った新作は置いていなかったが、PS3を使った立体視システムのデモを行なっていた。内容はTaipei Game Showに参考出展されていたものと同じで、専用の3Dグラスを使うことで、「MotorStorm」などの映像が立体に見えるというもの。ただ今回は実際にゲームをプレイでき、自分の操作したとおりの画面で立体視が実現できているのがわかった。


PSP「Monster Hunter Freedom Unite(モンスターハンター ポータブル 2ndG)」など新作を出展ソファーを用意してPS3を遊べるスタイルもSCEブースではおなじみの光景。「ストリートファイターIV」が人気だPS3の立体視システムも置かれており、実際にプレイもできた



■ Live Arcadeやコミュニティゲームの出展が充実していたMicrosoft

発表されたばかりの新開発キットも置かれていた

 Microsoftは「GDC EXPO」のエリアには出展していないが、Moscone CenterのNorth Hallの1階に自社コーナーを設け、Xbox 360とWindowsのゲームソフトの試遊台を設置していた。

 特にXbox Live Arcadeのタイトルが充実しており、刀をブンブン振り回して敵を倒していく横スクロールアクション「The Dishwasher: Dead Samurai」や、名作アクションパズルのリメイク版「Lode Runner(ロードランナー)」など、北米でまもなく配信されるタイトルを試遊できた。「Lode Runner」は、追ってくるロボットをレーザーガンで掘った穴に埋めて撃退しつつ、フィールドにある金塊を全て集めるというゲーム。本作も基本ルールは同じだが、次のステージへの移動がシームレスな横スクロールになっていたりと、若干の変更点が見られる。

 またXbox Liveコミュニティー ゲームのタイトルもいくつか置かれていた。中でもアクションゲーム「Weapon of Choice」は人気が高かった。基本は銃器を扱う2Dアクションで、アームのようなもので壁や天井に張り付いて移動できるなど自由度が高い。また敵の攻撃が一定距離に近づくと画面の色使いが変わりスローモーションになる。色が変わったら逆方向に移動して攻撃すればほぼ助かるので、ハードな見た目よりも難易度は非常に低くなっている。


グラフィックスが強化された「Lode Runner」。ゲームシステムは以前からほぼ変わっていない刀でバシバシ敵を斬り倒していくアクションゲーム「The Dishwasher: Dead Samurai」「Weapon of Choice」はアクションの自由度の高さと、映画「マトリックス」を思わせる効果が秀逸



■ 脳波をデータ化してゲームに使うNeuroSkyの「MindSet」

「MindSet」に注目が集まっていた

 「GDC EXPO」で多くの人を集めていたのが、NeuroSkyブース。脳波を読み取って数値化し、ゲームに活用するというデバイス「MindSet」を出展しており、実際にゲームとして体験できるものがいくつか用意されていた。

 「MindSet」はヘッドセットに、額にくっつけるセンサーが付加されたような形状をしている。実際には額のほかに、左耳部分のイヤーパッドにもセンサーがある。これで脳の微弱な電気信号を読み取り、集中度とリラックス度を数値化する。この処理を行なうチップはヘッドセット側に内蔵されているので、PCなどのデバイス側はその数値だけを受け取る。データをどう使うかはソフトウェア次第だ。

 デモとして用意されているソフトには、スクウェア・エニックスが開発した「Judecca」がある。超能力を操る1人称視点のアクションで、オイルの入ったドラム缶に向けて集中して爆発させたり、リラックスして離れた場所にテレポートしたりしながらゲームを進めていく。集中が必要な時には、実際にプレーヤーが集中するよう求められ、集中度のゲージが一定量まで高まると目的の効果が得られる。

 人によって脳波は異なるので、ゲーム開始時にアジャストする。筆者の前にプレイしていた人は、さも簡単に集中度を高めていたのだが、いざ筆者がやってみると、集中度が少し上がっては落ちるというのを繰り返し、なかなかゲームが進まなかった。そもそも集中するという行為がどうしたものかわからないのだが、1点をじっと見つめると上がっていき、ちょっと声をかけられると急に下がったりするので、センサーの読み取りそのものは正確なものだと感じた。

 「MindSet」は先日予約の受付を開始しており、6月1日から199ドルで発売される。NeuroSkyは元々、この処理を行なうチップを開発しており、他社にチップを提供するというビジネスを行なってきた。今夏には、このチップを用いた「スター・ウォーズ」の玩具も登場予定で、集中するとボールを浮かせられる(ボールの動力はフォースではないが……)というもの。価格は150ドル。チップの機能を限定しているため「MindSet」よりも安価になっているという。

 活用されるソフトウェアとしては、脳波からその人に合ったアバターを作り出すソフトや、リラックスしている状態での学習効果が高いといったデータを元に設計された脳トレ系ソフトなどが既に開発されている。ただ使い方は限定されていないので、例えば音楽ライブラリと連携して、曲を聴いた時のデータを集め、自分だけのリラックスミュージックリストを作成するといったことも可能だろう。

 現在は額にセンサーをくっつける仕様になっているが、非接触式センサーの開発も進めているという。ゲームだけに留まらず、さまざまな可能性を感じさせてくれるデバイスだ。


額と耳の部分にセンサーが用意されたヘッドセット「MindSet」額のセンサーがきちんと当たるように装着する同社のセンサーチップを搭載した玩具も発売される
スクウェア・エニックスの「Judecca」など、既にいくつかのタイトルが開発されている。今後はゲーム以外の分野にも広がりそうだ



■ 初めて他社ミドルウェア製品に組み込み提供したCRIミドルウェア

例年、シンプルながら広めのブースを構えている

 日本のミドルウェアメーカーのCRIミドルウェアは、米国法人を置いていることもあり、毎年GDC EXPOに出展している。今年は同社のミドルウェアを採用した「ストリートファイターIV」が北米で大ヒットしていることから、ブース内で対戦イベントを実施。多いときには50人を超える参加者と観客が集まり、比較的落ち着いた雰囲気の「GDC EXPO」の中では異彩を放つお祭り騒ぎとなっていた。

 出展していた製品は、CRI MovieとCRI Vibe(救声主)という既存製品のみだが、米Scaleformのミドルウェア「Scaleform GFx 3.0」にCRI Movieを提供したことも合わせて発表していた。同社はこれまでゲームデベロッパーに対して、完成品としてのミドルウェアを提供してきたが、他社のミドルウェア製品にパーツとして提供する新たなビジネスを始めた。直接的なロイヤリティだけでなく、北米での同社ブランドのプロモーション効果も期待しているようだ。


「ストリートファイターIV」の人気に乗ってブースを盛り上げようとしたら、予想以上に盛り上がりすぎて通路をふさぐほど人が集まってしまった

(2009年 3月 29日)

[Reported by 石田 賀津男 ]