【特別企画】

2021年にX68000向けフロッピー版「イース I&II」が何故発売されるのか?

リアルタイムでプレイしたユーザーが、気になる部分を製作スタッフに直撃!

 1月8日から予約開始となる「イースI&II ~Lost ancient kingdom~」だが、令和の時代になぜフロッピーディスクで発売するのか、移植元にPC-8801mkIISR版を選んだことには理由があるのか、そもそもどのような経緯で移植が実現することになったのか、そして追加要素はあるのかなど、当時を知るものとしては気になる点が数多く噴出したのは確かだ。

 そこで今回、それらをまとめて製作スタッフへと質問したので、戻ってきた回答の全文を掲載しておこう。答えてくれたのは、本作プロデューサーのBEEP丸山氏と、プログラムを担当したFu-.氏だ。なお発売日は、日本ファルコムの誕生日となる3月9日となっている。

本作のプロデューサーを務めるBEEP丸山 満氏
本作を手掛けたプログラマー、Fu-.氏

――なぜ、今のタイミングで数あるタイトルの中から「イース」シリーズを移植タイトルとして選んだのでしょうか。

丸山氏:まずきっかけとなったのは、某ゲームメーカーのY氏からプログラマーのFu-.さんをご紹介してもらった事でした。Fuー.さんからX68000で遊べる、88版イースの完全移植バージョンをプレイさせてもらったのです。その時瞬時に「これはすごいものだ!世のX68000ユーザーにも遊んでもらいたい!」と思い、Fuー.さんに頼み込み計画がスタートしました。「イース」は私(丸山)が中学生の時にパソコンを買ってもらうきっかけの作品でした。そんな作品をBEEPが世に出せたら……と思うと不思議に使命感が産まれたのです。

――そもそもの話として、X68000で発売するに至った経緯を教えてください。

丸山氏:現代のOSでリリースする選択の方が多くのユーザーに遊んでもらえる事は承知してましたから、実機用にリリースをすることのリスクは何回も試算しました。しかし、X68000実機で過去作品を販売する企画は「コットン」で実施中だったので、その延長で発売は不可能ではないと判断しました。最後は思い入れだけでスタートをさせた記憶があります。また、X68000は近年中古市場でも人気機種でしたので、BEEPでの中古品本体の販売促進にもなると考えました。より多くのユーザーにシャープが誇る歴史的技術に再び光を与えたいと考えました。

――移植に際して、なぜPC-8801mkIISR版を選んだのでしょうか。例えば、一部で完全版と言われているFM77AV版を選ばなかった理由はなんでしょうか?

丸山氏:一番初めに世に出た「イース」は私(丸山)個人も購入していましたし、初めて遊んだPCソフト、それがイースだったので、そんな思い入れが強かったイース88版に少しでも携われると思っただけで身震いがしました。使命感が産まれたのです。

Fu-.氏:決定的な事は、当時の8bit御三家(NEC、富士通、シャープ)の中からで、一番数が出ていると思われるのでPC88SR版をベースにしたのは必然です。何にしても体験したユーザーの数が違います。なお、FM77AV版で聞ける「Final Battle」のBGMも今回のX68000版には手移植したデータで鳴るようにしてあります。

――今回は、どのようにして復刻させたのでしょうか。また、日本ファルコムさんの許諾をどのようにして取ったのか、よろしければ教えてください。

丸山氏:元々ファルコム様とはザナドゥの復刻CDでお世話になっておりましたが、ある忘年会で加藤会長(日本ファルコムホールディングス代表取締役 加藤正幸氏)にお話を聞いていただきました。それからはとんとん拍子にお話が進みました。ファルコム様の懐の深さには感謝をしております。

――今回は、販売するメディアや(お店売りや通販といった)販売形態はどうするのでしょうか?

丸山氏:販売メディアはもちろんフロッピーディスクですね。今回は5インチ版と3.5インチ版があります。BEEPの通販と店舗にて販売を予定しております。残念ながらフロッピーディスクの在庫が限られていますので、沢山は作れないのですが多くのファンの手に行きわたるよう尽力したいです。

――なぜ販売メディアにFDを選んだのでしょうか? CDや、Windows上で動くイメージファイルでの頒布といったことは検討されたでしょうか?

丸山氏:それしか思いつかなかったのが正直な回答です。実機でしか遊ばないというお客様に向けて、過去のゲームを遊ぶきっかけとなればと思い販売のメディアとしてFDを選ばさせて頂きました。あとパッケージを手にする喜びを再体験してもらいたいと思いFDのみにしました。なおイメージファイルでの販売も検討致しましたが、サーバー管理やPCとソフトの紐づけの実現が困難であることから、断念致しました。

――ソフトはFD版での供給ということですが、ゲームデータの保存はどのように考えていらっしゃるでしょうか? 当時は、別にブランクディスクを用意して、そこへ保存していました。保存出来るのも1カ所でしたが、そのあたりは変更があるのでしょうか?

Fu-.氏:ユーザデータはファイルとして保存します。「イース」のセーブデータは所謂レジューム/サスペンドのような形を取っているため、同じようにデータは保存されます。また、「イースII」ではセーブデータを3箇所保存できる様にしています。

――例えば、内蔵または外付けHDDへのインストールなどは可能でしょうか?

Fu-.氏:可能です。取扱説明書にも記載されると思いますので、そちらを参照下さい。

――今回の作品は、PC-8801mkIISR版の完全移植なのでしょうか? 当時と比べて、何か違う所はありますか?

Fu-.氏:完全移植+αになります。オリジナルで希に起きるバグ修正を含みます。

――「イース」では、ダルク・ファクト戦で流れる「Final Battle」がFM77AV版となりましたが、エンディングにFM77AV版のグラフィックスが収録されていたりはするのでしょうか? また、「イース」、「イースII」共にスタッフクレジット部分は若干変更があるのでしょうか?

Fu-.氏:「完全版」といわれる所以は「Final Battle」の曲が異なるためで、それ以外の点はPC88SR版から変更はありません。ちなみにPC88SR版のFinal Battleでラスボス戦に臨むことも可能にしてあります。スタッフクレジットは私の名前を追加してある点以外は全く同じです(笑)

――X68000には、さまざまな拡張ハードが登場していますが、それらを搭載している状態でも正常に動くでしょうか?

Fu-.氏:まーきゅりーゆにっとV4 (MK-MU1O)に対応しています。他の拡張ハードウェアは特に意識していません。040turbo/060turbo 搭載機でも動作確認をしてあります。

――今回、当時の「イース」シリーズを現代(X68000)に復刻させる際に、苦労した部分はどこでしょうか?

Fu-.氏:ちらつかない描画と OPN のエミュレーションの2点は特に苦労しました。また、サウンドはノイズの特性が「OPN」と「OPM」で異なるため、どうしても似ない部分がありますので、何とかそれっぽく聞こえる様に苦心しました。

――例えばですが、当時の作曲者本人に頼んでアレンジ曲を作ってもらったり、移植者が手がけるアナザーバージョンの追加収録などはありますか?

丸山氏:こちら検討致しましたが、残念ながらございません。なるべくオリジナルと同じ構成でパッケージングを心がけました。

――現在、実機を持っていない人は、どうすれば遊べるでしょうか?

丸山氏:お店や通販では、整備されたX68000を頻繁に販売しておりますので、X68000版イースを遊びたいという方は、ご購入して頂けたらと思います。なお、実機は所有しているが、故障している方向けに、BEEPでは本体のオーバーホールの相談も承っております。愛機が何十年ぶりに蘇るかも?お気軽にご相談ください。

――“昔の人がニヤリとできる話題として”ですが、気になる人には気になる、コピープロテクトはかかっているのでしょうか?

丸山氏:もちろん実施しております。実際にご購入して確認して頂けたらと思います(笑)。

――本作以外にも、X68000に移植する予定の作品はあるのでしょうか?

丸山氏:予定はございますが、詳しいことにつきましては、弊社からの続報を楽しみにお待ちして頂けたらと思います。もちろん移植のリクエストも承っております。皆様の思い出のゲームが令和に蘇るかも?

――今後は、X68000以外の機種も考えているのでしょうか?

丸山氏:もちろんです!可能性があるのであれば他機種でも様々な展開をしたいと考えております。皆様のご希望をお聞かせいただきたいと考えてます。

 年末年始の忙しい時期にもかかわらず、開発陣からは以上のような丁寧な回答をいただいた。「イースI&II ~Lost ancient kingdom~」が、日本ファルコムの誕生日である3月9日に発売されるということにくわえ、質問への充実した答えと併せると、製作スタッフの自信のほどがうかがえた。元々の出来が素晴らしい作品であり、一個人としても大好きなタイトルだけに、X68000でプレイできる日が待ち遠しい限りだ

 なお、僚誌AKIBA PC Hotline!では、後日「イースI&II 〜Lost ancientkingdom〜」を特集した⽣配信をYouTubeにて⾏なう。プロデューサーの丸⼭⽒とディレクターの⽯橋⽒、そしてプログラマのFu-.⽒をお招きする予定。さらに、スタジオにX68000の実機を持ち込み実演を⾏なうべく準備を進めている。詳細は後⽇AKIBA PC Hotline!にて告知するので、こちらも楽しみにしてほしい。

【1月8日 訂正】 掲載当初、8ビットパソコン及びPC-8801mkIISRの画面解像度について「640×400」と記載しておりましたが、正しくは「640×200」です。ここにお詫びして訂正致します。