インタビュー
【特別企画】フィギュア+ジオラマ、バンダイ「D.D.PANORAMATION 」インタビュー
「教皇の間」の対決を再現! 「聖闘士星矢」シリーズで始動!
2016年2月2日 00:00
「D.D.PANORAMATION」は、バンダイ コレクターズ事業部の新コンセプトフィギュアブランドだ。
まずは、「聖闘士星矢」をモチーフとして展開していく「D.D.PANORAMATION」シリーズだが、「聖闘士~」シリーズを代表する商品である「聖闘士聖衣神話(セイントクロスマイス)」と大きく異なり、“ジオラマ”に大きくフォーカスした商品となるという。今回は、両商品の試作品を触りながら企画担当者のT氏に話を聞いた。今回の商品の企画意図や、託した想いはどんなものだろうか?
ジオラマパーツで「十二宮の戦い」のクライマックスシーンを再現
バンダイは「聖闘士星矢」をモチーフとして1987年のアニメ放映時から「聖闘士聖衣大系(セイントクロスシリーズ)」を展開し、大ヒットとなった。アニメの設定と同様にダイキャスト製の聖衣(クロス)をフィギュアに装着することができた上、聖衣は星座を示すオブジェクトに組み替えることができた。
主役の5人に加え、金メッキの聖衣で全身を包んだ黄金聖闘士が大ヒットとなり、12宮の黄金聖闘士全てが販売され、その後のキャラクターも積極的に展開されていった。アスガルド編の「神闘士」、ポセイドン編の「海闘士」やリペイントバージョンなども発売された。
そして「聖闘士聖衣神話」は“聖衣をフィギュアに装着する”というコンセプトを受け継ぎ、2003年に第1弾である「ペガサス星矢 新生青銅聖衣」が発売された。よりハイターゲットのユーザーを意識し、キャラクターを当時の最新技術で精密に再現することでこちらも大ヒットとなった。
素体(フィギュア)をアップデートし可動範囲を広げ、様々な必殺技も再現できるようになり、以前には立体化されなかったキャラクターも商品化されたり、さらに表現力を増した「聖闘士聖衣神話EX」も発売され、シリーズは現在も拡大、進化を続けている。
今回発表となった「D.D.PANORAMATION ペガサス星矢 -ペガサス流星拳-」、「D.D.PANORAMATION ジェミニサガ-教皇の間-」はこれまでと大きくコンセプトを変えた商品である。まずパッケージの構成からして大きく異なる。パッケージには柱やプレートといった“ジオラマ”部分が大きな面積を占めているのだ。
柱などのパーツはプラモデルを思わせるランナーでまとめられている。購入者はランナーからパーツを切り離してジオラマを組み立てていくことになる。「D.D.PANORAMATION」はまさにこの“ジオラマ”にフォーカスした商品だとT氏は語った。そして「聖闘士星矢」で最も人気が高い「十二宮編」のクライマックスである「教皇の間の対決」を再現すべく、第1弾でこの2つの“空間”を商品化したというのだ。
そこで、まず今作の目玉であるジオラマ部分に注目したい。「D.D.PANORAMATION ペガサス星矢 -ペガサス流星拳-」には舞台となるギリシアの聖域(サンクチュアリ)にある十二宮をイメージしたパーツが付属している。パーツは“台座”と、ストラクチャーパーツといわれる支柱で構成されている。
台座には支柱やエフェクトパーツを刺せる穴、さらにフィギュアの足の裏の穴に対応したピンがあり、星矢のフィギュアを立たせ、周囲に柱を立てることができる。柱は先端には穴とピンがあるのでいくつも連結ができる。パルテノン神殿を思わせる溝が掘られており台座に立たせると十二宮で戦う星矢の姿が再現できる。台座部分は年月を感じさせるひび割れなども描かれており、雰囲気もバッチリだ。
「D.D.PANORAMATION ジェミニサガ-教皇の間-」はさらにリッチな内容となっている。柱と台座に加え、豪奢な“教皇の椅子”、そしてそれに繋がる階段まで用意されている。柱は連結可能なものに加え、途中で折れた柱もあり、転がしておいたり、立たせておくことで朽ちた感じも出せる。さらにフィギュアを空中で固定できる透明なアームも付属しており、車田正美氏のコミックでおなじみの「必殺技を食らって吹っ飛んだ姿」も再現できる。
そしてこの2つをそろえることで、プレイバリューは大きく広がる。台座同士も連結可能なため、台座を2つ並べて2人が対峙する場面を作り出すこともできるし、教皇の椅子のそばにジェミニサガを立たせ、星矢が教皇の間にたどり着いたシーンを再現することもできる。ジェミニサガでは高低差が出せる階段パーツがあるので、2人の関係を立体的に配置できるのが楽しい。
T氏はこの商品を設計するにあたり、柱のパーツを“高さの単位”として設定している。階段は柱2本分の高さになっており、ブロック玩具のように柱や階段がきちんと組み合うように設計しているという。「魂ネイション」といったイベントや、「魂ネイションズ AKIBAショールーム」では十二宮のジオラマが出展されていたが、製品版では数をそろえることで、きっちりと立体的なジオラマが組めるように将来的な展開を考えているとのことだ。
ギャラクシアンエクスプロージョンも可能! ハイクオリティなフィギュア
フィギュアにも注目したい。「D.D.PANORAMATION」シリーズは約10cmのフィギュアとなっている。「聖闘士聖衣神話」が全高約16cm前後、「聖闘士聖衣神話EX」が約18cm前後が標準サイズであり、これらと比べると、2周りほど小さい。聖衣の脱着こそできないが、アクションに特化したクオリティはぜひ手にとって確認して欲しいところだ。
「D.D.PANORAMATION」はこれまでのシリーズとは“遊び方”が大きく異なるとT氏は語った。本商品はジオラマと組み合わせて様々な場面を作り出す商品であり、小ささ、軽さを活かして必殺技にはね飛ばされるキャラクターなど、「聖闘士聖衣神話」シリーズでは難しかった場面も作りやすいという。
実際手に持ってみると、その軽さが心地良い。可動範囲は広く、動かしても聖衣が外れないしっかりしたところも楽しいところだ。ジェミニサガの黄金聖衣は全身を覆う複雑なパーツだが、下半身部分は細かく分割でき足を大きく開くことができるし、肩パーツは接続パーツの複雑な可動で、腕を大きく上に上げ交差させる必殺技「ギャラクシアンエクスプロージョン」のポーズも可能なのだ。
ペガサス星矢も大きな肩アーマーや、足部分を覆う装甲なども可動を妨げない。着脱ギミックがないので、「聖闘士聖衣神話」シリーズのように聖衣がずれることもない。そしてこの“小ささ”はいじっていて楽しいのだ。今回、試作品を前にT氏の話を聞いていたのだが、気がつくと手の中のフィギュアの腕を動かしたり、聖衣の可動を確かめたりしている。この「心地よさ」は、本商品ならではだと感じた。机の上に「D.D.PANORAMATION」を置いていたら、ひっきりなしにいじって色々なポーズをとらせてしまいそうだ。
「聖闘士聖衣神話」シリーズは金属パーツの聖衣が動くとずれたり外れてしまうこともあり、お気に入りのポーズで固定させる遊び方が多かった。ポーズをつけた後は、自分自身がフィギュアの周りを動いて色々な角度から眺めて楽しんでいた。一方、「D.D.PANORAMATION」の場合はフィギュアを手に持ってひっくり返したりして見ることができる。遊び方そのものが大きく違う商品であることを手に持って実感できた。
今回は公式ページにはなかったギャラクシアンエクスプロージョンのポーズに加え、サガのヘルメットをかぶった姿、星矢のヘルメットを外した姿も試してみた。顔パーツは小さなサイズながら表現が細かく、原作の雰囲気をうまく再現している。表情パーツを差し替えたりと、従来のシリーズと共通の“飾る楽しさ”も追求している。
フィギュアに関してのT氏のこだわりは、小サイズながらしっかりした顔の表現ができたこと。アニメ版を再現したサガの黄金聖衣衣のカラーリングなど随所に及んでいる。実は教皇の間の対決ではサガはコミック版ではギャラクシアンエクスプロージョンを使っているが、アニメ版では「アナザーディメンション」を使っているという。しかしファンの思いを汲んで、両手を頭上で交差するという難しいポーズもきちんと再現できるようにギミックを盛り込んだとのことだ。
星矢に関してはアンダーウェアのしわの表現や、上腕の筋肉の描写など、「聖闘士聖衣神話」でできなかった部分も造形されている。サイズが小さいので省略しているディテールはあるものの、聖衣が固定式だったり、関節の設計などでこだわりを活かせる部分もあるとT氏は語った。
こだわりといえば「膝のアンダーウェア」も試行錯誤した部分とのこと。星矢もサガも設定では足は太ももまで聖衣に覆われているが、フィギュアでは足の曲げる部分が球状の関節となっている。最初は聖衣と同じ色の部品にしてみたがしっくりいかず、アンダーウェアと同型にすることで「聖衣を装備している感じ」にできたという。聖衣の着脱はできないものの、聖衣はメッキが施され素体とは別パーツになっているため、“装着している雰囲気”はきちんと表現されている。
6月にも2商品が発売決定! 広がりを見せていく「D.D.PANORAMATION」
ここからさらにT氏に「D.D.PANORAMATION」への想いを聞いてみた。聖闘士星矢をモチーフとした商品として「聖闘士聖衣神話EX」シリーズが、“単体のフィギュア”としてみた場合、技術、造形、大きさ、ギミック的にある程度“頂点”というところまで突き詰めてしまったところがあり、全く異なる方向性での商品を見せたかったという。もちろん「聖闘士聖衣神話EX」シリーズは今後も展開していくが、「D.D.PANORAMATION」は新しい方向性を目指していく。
その方向性が「場面の再現」だ。表情や、指の形といった細かい部分ではなく、背景も含めたより大きな視点での情景を再現していく。ブロック玩具のようなオブジェクトを組み合わせることで様々な場面を作り出し、そこにフィギュアを立たせ、複数のフィギュアによる情景の描写を可能とするために、フィギュアのサイズ、オブジェクトの設計などを進めていった。こういった考えは「聖闘士聖衣神話」シリーズを続けながらもアイディアを温めていたという。
「魂ネイションズ AKIBAショールーム」で展示されていたジオラマには、「D.D.PANORAMATION」に託された開発者の想いを垣間見ることができる。十二宮を再現した巨大ジオラマに加え、5人の青銅聖闘士が走り出す場面や多数の兵士を星矢が相手にするといったアニメのオープニングを再現したジオラマが飾られている。これは約10cmの「D.D.PANORAMATION」のサイズだからこそコンパクトにまとめられる。フィギュアが大きければその面積と情報量に圧倒されかねない。このサイズだからこそ描ける風景があるのがよくわかる。
「D.D.PANORAMATION」は6月には第2弾となる「D.D.PANORAMATION フェニックス一輝-鳳翼天翔-」と、「D.D.PANORAMATION バルゴシャカ-処女宮-」が発売予定だ。まずはこの4商品で、組み合わせの楽しさ、情景を作り出す面白さを感じて欲しいとT氏は語った。フェニックス一輝には必殺技である「鳳翼天翔」のエフェクトパーツ、バルゴシャカには座禅を組んで座れる蓮の形をした椅子が用意される。フィギュアはちゃんとこの椅子に足を組んで座れるとのことだ。
第2弾以降は現在は未定だが、このほかの青銅・黄金聖闘士はもちろん、アスガルドやポセイドンに展開することも考えられるし、フィギュアのセットや、オブジェクトのセットなども考えられる。まずは第1弾、第2弾のユーザーの反応や意見を受けてから今後を考えていきたいとT氏は語った。
T氏は最後にユーザーに向かって「『聖闘士星矢』のファンの方は『聖闘士聖衣神話』をお持ちの方も多いと思います。『D.D.PANORAMATION』はこれまでと異なる遊び方、楽しみをもたらす商品です。私自身ファンとして、試作品で遊び、楽しい時間を過ごしています。この楽しさをぜひ皆さんにも味わって欲しいと思います。今後、試してもらう場所も用意していきたいと思いますし、1つ手にとっていただくと集めたくなります。自分の好きなシーンを再現したり、オリジナルの場面を作り出す喜びを体験してみてください」と語りかけた。