インタビュー

北米の老舗オーディオメーカー・Polk AudioのEd Johnson氏へインタビュー

「Halo」、「Forza」のエンジニアも参加したゲーミングオーディオの実力とは!

9月26日 発売

 9月4日、いよいよ日本でも発売の日を迎えるXbox One。それにあわせて北米の老舗オーディオメーカーであるPolkのXboxライセンス製品であるサウンドバー「N1 surroundbar」や、Xbox One用ヘッドセット「4shot」も、9月26日に日本で発売されることが決定した(Xbox 360用のヘッドセット「melee」も同時に発売)。これらの製品を手がけるPolk Audioは、北米で40年以上もオーディオ製品を手がけ、現在もトップシェアを誇る老舗で、音にもこだわりたいゲームファンに注目してもらいたい製品群が登場することになった。なお、日本での販売はMSYが行なう。

 今回は、日本を訪れたPolk AudioのExport Manager、Ed Johnson氏に話を伺う機会を頂けたので、その模様をお伝えしていこう。いずれの製品もMicrosoftとの共同体制で“高品質なゲームオーディオ環境を作る”ことを目標に制作されており、「Halo」や「Forza Motorsport」のサウンドエンジニアが参加している。開発チーム推奨の「最高のサウンド環境でゲームを楽しめる一品」というわけだ。

(商品情報記事はこちら)

「Halo」、「Forza」のエンジニアが納得するまで作り込んだサウンドの秘密

今回お話を伺ったPolk AudioのEd Johnson氏。プロフェッサーのような風貌からも想像できると思うが、音に対するこだわり、理論の深さには圧倒されるものがある

――まずは、今回のプロダクトのはじまり、きっかけについて教えて頂けますか?

Johnson氏:始まりは、Microsoftからお話を頂いたことです。Microsoftは高音質な音を求めていましたが、それだけでなく、“トータルでゲームのエンターテイメントを表現できるオーディオシステム”を考えていました。その上で、「Polk Audioがベストなパートナーだ」とお話を頂けました。

 Microsoftのエンジニアと密接なコミュニケーションを取り、それぞれのゲームにあった音作りというものを徹底的に再現するというプロジェクトです。

 今回の製品は、約2年ほど前から開発が始まりました。元々、Microsoftからライセンスを受けていた「SurroundBar 5000」という製品があり、これに高い評価を頂いていました。「これをさらにチューンナップすれば、ゲーミングに最も適した製品ができるのではないか」という話があり、「N1 surroundbar」の開発が始まっていきました。

 「SurroundBar 5000」はシネマやオーディオに特化した家庭用のスピーカーでしたが、それをベースに、Microsoftが力を入れているタイトル用のチューニングを施すことで、ゲーミングスピーカーという新しいカテゴリーの製品となっていったのです。

――なるほど、Microsoftからの提案があってスタートしたのですね。では、Polk Audioはどんなオーディオメーカーなのか教えていただけますか?

1972年に創業以来、北米のスピーカーメーカーの代表格と言っていい存在のPolk Audio。今も18%のトップシェアを獲得している

Johnson氏:Polk Audioは、Sound Unitedというグループのひとつです。グループ内には、パーソナルユースのBOOM、フルレンジハイエンドのPolk Audio、ソリッドデザインなDEFINITIVEという3社があります。

 Polk Audioは全米のスピーカーシェアで18%を獲得しているトップシェアの会社です。過去10年間で1,000万台以上のスピーカーを販売してきました。ユーザーのコミュニティフォーラムも持っていて、登録者は16万人、200万以上の投稿が行なわれています。私たちは、彼らの意見も吸い上げて、より良い製品を作っています。

 社内にはたくさんの専門施設を作っています。こうした施設で、より先進的なデザイン、プロダクツを生み出していくのです。

 マーケティングリサーチに力を入れて、カジュアルなユーザーから、オーディオに熱心なユーザー、そして自分の好みを理解している成熟したユーザーと、それぞれのターゲットに的確な展開を行なっています。

 私たちは素材を吟味し、手作りの感覚を大事にして製品を作っています。音に向き合ってきたバックグラウンドも長く、ブランドイメージとしても伝統的な位置づけにあると言っていいでしょう。

 私たちは音を聴いてもらう時に、“製品を通して音を聴いてもらう”のではなく、“音を製品を通して聴いてもらう”ことを心がけています。できる限り音とリスナーの間に製品の影響を与えないこと。それを理想としているのです。

 大事なことは、基本的なリサーチを繰り返すことで、正しい、高いパフォーマンスと価値のある製品を生み出していけるということです。何が求められているかを常に研究し、開発することを大事にしています。

 研究のひとつを紹介しましょう。これは20年前から行なっている弊社独自の研究方法なのですが、レーザーを使用し、スピーカーのコーンが実際に音を発している時に、どんな波動を描いているかを測定しています。Polk Audioが世界で初めて、コーンに対してレーザーを2点照射することで、音を出している時のコーンがどのような動きをしているかを測定したのです。

 コーンは共鳴を起こし、どんな状況でもノイズを発生させてしまいます。私たちはそれに対し研究を重ね、できる限りノイズが出ないコーンの仕組みを採用しているのです。常に、どういった形状、素材にするかでノイズを最小限に抑えられるかを、研究し続けています。

耐久性にも自信あり。通常行なっている耐久テストを他社の製品で試したら、激しく燃えて火事になってしまったこともあったとか

 製品の耐久テストも厳密に行なわれます。例えば、高熱で焼かれた時に音にひずみが出ないのか? 当社ではカーオーディオも手がけているので、高温になることも想定するのです。塩分を含んだ霧を吹き付けることもします。室外用のスピーカーへの影響を見るためです。この他にも、紫外線を照射するテストなど、たくさんの耐久テストを行なうのです。

 ちなみに、他社の製品を同じようにテストしてみたら燃えてしまい、消防隊が駆けつけたこともあります(笑)。

 モノ作りというのは、料理に例えますが、いくら同じ素材、同じレシピを使っても、違ったスキルを持ったシェフが作れば、全く違った物が出来上がっていくのです。

ここ10年で1,000万台以上のスピーカーを販売し、専門の施設を多く持ち、様々な研究を重ね、特許もたくさん取得している。日本ではオーディオファンでないとあまり馴染みがないかもしれないが、北米では本格オーディオの定番といっていい存在という

(山村智美)