インタビュー

「FFXIV: 新生エオルゼア」吉田直樹氏発売記念インタビュー(後編)

エキスパンション、新ジョブ、RMT対策など気になる話を聞いてみた

エキスパンション、新ジョブ、RMT対策など気になる話を聞いてみた

先の話も聞いてみたが、吉田氏はかなり慎重だった。また機会があれば聞いてみたい
「FFXIV: 新生エオルゼア」は第七霊災の5年後が舞台となっている。どのようなストーリーが紡がれるのか、まずはプレイして確かめてみたい

――少しずつエクスパンションについて話す機会が増えてきてますよね。内容はイシュガルドエリアが中心で、新ジョブも追加されることなどが明らかになっていますが、現時点でさらにお話しできることはありますか?

吉田氏: ええ、まだローンチ前ですよ?(苦笑)。2年9カ月前に「新生FFXIV」のプロデューサーを引き受けて、まだ結果は何も残してないので、もう少し安定してからお話しさせて下さい(笑)。

――でもユーザーさんのフォーラムでの書き込みやTwitterの反応などを見ていると、もう正式サービスに関しては確実な期待感みたいなものは持っている感じがあって、正式サービスに関する情報は吉田さんもプロデューサーレターLIVEやフォーラムを通じて直接提示されると思うので、私の仕事は正式サービス後の話をどれだけ聞けるのかがポイントかなと思っていて(笑)。

吉田氏: エクスパンションまでのプロットと、エクスパンション自体のテーマはもう書き上げて、シナリオチームに渡しています。僕は第七霊災にチャレンジしてきて、すごく良かったなと思っているのが、シナリオが時系列にそって前に進んでいくというところです。パッチで続いていくシナリオは用意してあって、そのストーリー進行と、光の戦士達の活躍があって、それで初めてイシュガルドのエクスパンションに繋がっていくという感じですね。

――というと、第七霊災のように、エクスパンションに合わせて、半強制的に時間が進んでいくイメージですか?

吉田氏: 時間というか、メインストーリーが進むという意味ですね。その一端は、今回パッチ2.1のラストのメインストーリーの区切りまで見ていただければ、それが分かると思います。

――ゲーム本編をパッチ2.1までクリアするとエクスパンションの展開がちょっとずつ見えてくるわけですか?

吉田氏: いきなりそうではないですが、予感は確実に見えます。ただ、エンドコンテンツもシナリオが入っています。大迷宮バハムートにも結構カットシーンが入っていますし。

――ちなみにエクスパンションの前にレベルキャップの開放は行なわれますか?

吉田氏: 何とも言えないですね。

――吉田さんとしては珍しい表現ですね。ユーザーの反応次第ということですか?

吉田氏: いや、ゲームデザイン次第ですね。まだクラスやジョブを足した方がいいかなと思っている面もあるので。それの前に開放してしまうと、ちょっとバランスを崩しそうなので。

――それに関連して新クラスと新ジョブについても伺いたいのですが、例えば銃術士は入れることを広言されていますが、どのようなクラスデザインになるのか、それ以外に考えているクラスやジョブがあれば教えて下さい。

吉田氏: 色々ありますけど、まだお話できないです。

――銃術士のクラスイメージもまだ検討中ですか?

吉田氏: 僕がこの言い方をするときには、たいていちゃんとやろうとしている時ですが、銃術は時期的にはそんなに近くはないので、今言うことじゃないと思います。

 「新生FFXIV」は有用性をとても大事にしているので、やはり自分が遊んできたクラスやジョブが突如、コンテンツでいらないと言われた時のショックとかもそうですし、コンテンツファインダーだからこそ、単純にいまアタッカーが多い状態で、「うわ、銃術来たハズレ」、「まじかよ」って言われるのは辛いです。みんながイメージしているのは、ガンガン銃をぶっ放すような、遠距離系のDPSを期待していると思うのです。

 かっこよくリムサの提督のメルウィヴみたいに二丁拳銃撃ちたいのはよくわかるのです。ただ、いますぐにそれを実装してしまうと、バランスが絶対に崩れるので、やはりロール間の数のバランスが大切です。DPS職が増えれば増えるほど、ドロップしたアイテムのDPS職間での競争率が激しくなります。アイテムがドロップしても、競争率が高くて次のコンテンツへいけなくなる。その結果、それで詰まってしまったDPSだらけになって、またファインダーも回らない……と色々考えなければいけないことが沢山あります。だからちゃんとしたバランスを取ったうえで足さないといけないと思っています。

――なるほど、巴術士までは比較的サクサクっと足した印象がありますが、これ以上のクラスやジョブの追加に対しては、かなり神経質というか慎重に考えているわけですね?

吉田氏: でもまだ根本的に足りないと思っている部分があるので、そこをまずは足していきます。

――足りないものってなんですか?

吉田氏: それ誘導じゃないですか(笑)。それは僕MMORPGをある程度やっている人なら推測できそうではありますが。

――リンクシェルではシーフや暗黒騎士はいつだろうねって話をしてますが、正式発表まであれこれ予想してみてくださいと?

吉田氏: そうですね。あと一手足りないなとは思いますね。僕も二丁拳銃ぶっ放したいですよ。でも活躍できる場ができて初めて望んだものになると思っているので、ちゃんと考えていますし、面白い話も出ています。「FFXIV」はこれからローンチするところなので、新クラスだ新ジョブだと言う前に、まずは既存のクラスやジョブを徹底的に使いこなしてくださいよ、という感じですね。

――全体的なグランドデザインの話を伺いたいのですが、現状で吉田さんがやりたかったことって何%くらい実行できているのですか? 就任してからずっとインタビューさせていただいて、まあ就任した時にこんな大きな風呂敷を広げていただいて、それがいまどのくらい回収できているのですか?

吉田氏: 就任したときの風呂敷なんて、とっくに通り過ぎたと思っています。1番最初のインタビューではそんなに言ってないですよね。コンテンツの量だったり、バトルの設計やエンドコンテンツは、初期リリースとして僕が想定していた以上のレベルまでいったと思います。

――それでは現状70%どころか120%できているということですか?

吉田氏: 部分によりますけど。フィールドのコンテンツはもうちょっと足したかったです。それについてはパッチですぐ実施していく予定です。

――7月に中国のChinaJoyに行ってきて、「FFXIV」中文版を見てきました。中文版について、現在の開発の進捗と、サービスの開始時期、ローカライズ、ビジネスモデル。この辺りについてもし決まっていることがあれば教えてください。

吉田氏: 中文版に関しては基本翻訳ベースなので、ほぼグローバル版とイコールです。ただ認証システムが盛大独自の認証システムなのと、やはり盛大がサーバーインフラとして使いたいハードウェアがあるので、そこの最終構築をお互いのエンジニアでやっているところです。実はビジネススキームに関しては最終の結論はまだ出していないです。

――ではFree to Playもありえますか?

吉田氏: ないと思います。最初は。

――というと、中国市場で月額制や従量制でいくつもりですか?

吉田氏: 月額ではなく、通信時間モデルを考えています。中国でもないわけじゃないですからね。200万同接の従量課金ゲームもありますからね。でも「まだ決めてない」が正直な答えなのですよ。いまのテスト構築がうまくいった辺りで、先方としっかり話そうと言っています。

――なるほど、サービス開始時期はやはり日本、欧米よりも遅れそうですね。

吉田氏: それは間違いないです。やはり中国のプレーヤーの皆さんは、他国に比べコンテンツの消費スピードが早いです。中国では、外からゲームを持ってくる場合は半年、1年くらいのパッチを貯めてから矢継ぎ早にアップデートという形が理想です。なのであえて遅らせます。

――年明け以降になると?

吉田氏: わからないです。中国のゲーム市場は、売り時がそんなに多いわけじゃなく、年に2回くらいしかないのでそのタイミングに合わせる形になると思います。

――念のため確認ですが、日欧米と中国のサーバーは別々で、コンテンツファインダーで中国のユーザーとマッチングするようなこともないわけですよね?

吉田氏: できないです。事実上データセンターが違うので。

――最後の質問になりますが、正式サービスが始まると、運営という要素が重要になってくるわけですが、そこで考えられる懸念としては不正行為、例えばRMTなどがあります。これらの行為に対して吉田さんとしてこう対処していきますよと言うものがあれば聞かせて下さい。

吉田氏: 「旧FFXIV」の時からスペシャルタスクフォースはいて、もちろん「新生FFXIV」でもそのまま変わらず活動をしていきます。「旧FFXIV」と比較すると、「新生FFXIV」は仕様的にふさいでいる部分が結構多いです。例えば「旧FFXIV」では、効率の良いギルドリーヴをひたすら8人のキャラクターで延々とクリア消し、報酬としてシステムから排出されるギルや素材をひたすら1つのキャラに集めてRMTに回すというスキームができていたのですが、「新生FFXIV」では、システムから排出するギル量の低下を行なうだけでなく、リーヴを共有化するという仕様自体がもうありません。

 経済バランスについても、実際にプレイしてレベルを上げることでしか最大効率が出ないようにしているので、同じ行為をひたすら繰り返しても、プレーヤーが普通にプレイして稼ぐギル量を上回れないようになっています。もちろん彼らはプレーヤーが寝ている間にも24時間ひたすらそれを繰り返すから、小銭でも貯められるという部分なのですが、そもそもかなりシステム側で、繰り返しによる金稼ぎ行為を停止する仕組みが想定されています。

――吉田さんの考え方としては、基本的にRMTはダメだし、アカウント削除対象ですよという考え方ですか?

吉田氏: ゲームプロデューサーでRMTはOKだという人はいないと思いますよ(笑)。僕質問に質問で返すのは好きじゃないのですが、中村さんは、RMTは絶対悪だと思っていますか?

――そうでもないですよ。運営側できっちりコントロールできればいいのではないでしょうか。ニーズはあり続けるのでゼロにはなりませんから。「WoW」をはじめとした各種オンラインゲームの公式RMTシステムがベストの形かどうかはともかくとして、「RMTダメ、絶対!」というなら、キッチリ排除するための行動を採るべきだと思います。問題なのは対処はするといっておきながらなんら実効性を伴う対処をしていなかったり、被害を受けたユーザーのサポートをしなかったり、言ってることとやってることが実は全然違っていたりとか、実はマッチポンプの疑いもあるんじゃないのというような曖昧模糊とした状態ではダメだと思うのです。日本はまだいいですよ、アジアは本当に酷い例がある(笑)。

吉田氏: ああ、なるほど。アジアは酷いでしょうね。そういう意味では「FFXIV」に関しての処罰はかなりきついです。ただ、瞬間的はあっても、常に100%撲滅できるかというと、どうしてもイタチごっこにはなりますが、特にプレイに迷惑がかかる行為は、僕自身がゲームプレーヤーとして最も嫌な行為と強く思っていて、絶対に許せないのでそれは徹底していきます。

――それでは、例えば将来的にリアルマネーを用いた公式なアイテムトレードシステムなどを用意する可能性はありますか?

吉田氏: それをやるぐらいだったら、僕はちゃんとハイブリッドにした方がいいと思います。月額課金のサーバーとF2Pのサーバーがそれぞれあって、ユーザーが選択できてというほうがいいと思います。

――いずれにしてもそれはちょっと先の話ですね。

吉田氏: はい。何をするにもまずは「新生FFXIV」が「面白い!」といってもらって、プレイして喜んでもらうのが第一なので、ビジネスの話をするのはそれからでいいと思っています。ただその楽しいといってくれる「FFXIV」を邪魔するような要素は徹底排除しますというのは確認しているし、その対策はとっているので安心していただきたいなと思います。

これからPAX取材対応のためシアトルに向かうという吉田氏。本当にお疲れ様です

――最後にユーザーさんに向けてメッセージをお願いします。

吉田氏: お待たせしました、本当にようやく「新生FFXIV」をお届けできるところまできました。これまでのご支援、大変感謝しています。正式サービスだけでなく、もちろん、この先の未来もちゃんと計画しています。ただ、繰り返しですが、まずはプレイしてもらって楽しいといってもらえる状態になっているかどうかです。その声を聞きながら、アップデートをしっかり続けて、僕は10年サービスする覚悟ですので、世界中の1人でも多くの人に楽しんでもらいたいと思っています。

――ありがとうございました。

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(中村聖司)