G-Star 2011レポート
【G-Star 2011】NEXON Mobile CEOイム・ギョンジュン氏インタビュー
モバイル事業はスマホに全面移行、「アラド戦記」のモバイル版も開発中!
韓国NEXONで、ヒット作を連発している子会社NeopleやNdoorsと並んで元気なのがモバイルゲーム部門NEXON Mobileだ。日本でもMobage向けに展開している「メイプルストーリー 僕らの冒険」やGREE向けに展開している「涼宮ハルヒの団結」などは、NEXON Mobileの手によるものだ。
これまで同社はフィーチャーフォン向けに主にNEXONのIPを使ったモバイルゲームを提供してきたものの、日本と同様にハードやキャリアの壁に阻まれ、なかなか結果が出せない状況が続いていたが、ターゲットプラットフォームをスマートフォンに切り替えてからは、状況が一変し、にわかに活動が活発化してきた印象がある。
今回はNEXON Mobile CEOを務めるイム・ジョンギョン氏に、NEXON Mobileの事業戦略と、「G-Star 2011 Press Conference」で正式発表した新作モバイルゲーム「Combat Arms: Zombie」について話を伺った。
■ Unreal Engine 3.0はレベニューシェアでライセンスすることでモバイルゲームへの適用を可能に
NEXON Mobile代表取締役イム・ジョンギョン氏 |
NEXON Mobileは、NEXONのモバイルゲーム部門としてNEXONのIPを使ったモバイルゲームを積極展開している |
編: まずはじめにイムさんの今までの経歴を教えてください。
イム氏: 韓国のソウル大学のコンピューター工学部を卒業し、韓国のインターネットポータルサイトであるDaumを経てNEXONに入社しました。韓国NEXONとNEXON Mobileで合わせて5年ぐらい勤務しています。韓国NEXONでは財務と戦略企画の方を担当していたので直接関わったタイトルはありませんが、1年前からNEXON Mobileの代表取締役を兼務して、NEXON Mobileのタイトルは全て担当しております。
編: イムさんが担当しているNEXON Mobileは現在どのような事業を行なっていますか?
イム氏: 会社の名前からある程度想像できるとは思いますが、NEXONタイトルのIPを利用したモバイル向けのゲームの開発と展開、それからNEXON以外のタイトルのパブリッシングもやっています。グローバル向けの展開をやっていて、日本、中国、アメリカ向けのモバイルゲームを作っています。また、以前は主にフィーチャーフォンのゲームを開発していて海外展開が難しかった点もありますが、開発の中心をスマートフォンに移したことで、海外展開もより積極的にできるようになりました。
編: 開発しているタイトルの提供プラットフォームは?
イム氏: 主にはスマートフォンのiOSとAndoroid向けにゲームを開発しています。また、ニンテンドーDS用の「メイプルストーリー」も開発して、こちらは今後日本でも発売される予定です。フィーチャーフォン向けのゲームは昔は開発していましたが、今はもう開発していないです。グローバル展開もフィーチャーフォン向けのゲームはもうないです。
編: 「Combat Arms: Zombie」でゲームエンジンにUnreal Engine 3.0を採用した理由は?
イム氏: 一番最初の理由はハイクオリティというところです。Unity 3Dの方も検討してみましたが、Unity 3Dは色々なプラットフォームにも対応できて開発も容易なのですが、グラフィックスのクオリティ的にはUnreal Engine 3.0の方が上でした。PCのオンラインゲームでハイクオリティのゲームを作るためにUnreal Engineを使用するのと同じ理由からです。ちなみにすでにリリースしている「KartRider Rush」では、Unity 3Dを使用しました。
編: しかし、両者では値段が天と地ほど違いますよね。Unreal Engine 3.0のライセンス費用は非常に高く、モバイルゲーム単体ではなかなかペイしないと思うのですが。
イム氏: (笑)。実はEpic Gamesとの契約で、レベニュー・シェアリングをすることにして、初期のライセンス費用を安くできました。
編: ビジネスモデルは?
イム氏: まず、ダウンロードは4.99ドルから6.99ドルの間での有料ダウンロードを予定しています。あと、キャラクター、武器、装備の強化、などのアイテム課金制です。
編: 提供プラットフォームは?
イム氏: iOSとAndroidです。iOSが最初に発売して、安定化してからAndroidを予定しています。タブレットPCにも対応します。
編: ゲームのボリュームはどのぐらいですか?
イム氏: 最初はマップが2つ用意されています。1つのマップは4つの難易度が用意されて、各難易度別に10のラウンドが存在します。また、一番難しい難易度であるInfinityモードというのは、ラウンドの制限が無く、ゲームオーバーになるまで永遠にプレイし続けるモードです。
編: モバイル向けといえども、かなり奥が深そうですね。
イム氏: プレーヤーによって異なると思いますが、1日では終わらないと思います。ラウンドは全てのゾンビを倒すとクリアとなります。ラウンドが後半になるほど難しくなって、1度のプレイでクリアするのは難しいですね。何度もプレイすることで貰えるゲームマネーで、装備を購入し、また強化し、再チャレンジするといった感覚です。
編: 電車で移動中のような短い時間でも遊べますか?
イム氏: 難しくない序盤のラウンドだと遊べると思いますが、後半になればなるほどちゃんとプレイする必要があります。
編: 海外展開の予定について教えてください。
イム氏: PC向けのオンラインゲーム「Combat Arms」は欧米と南米で人気なので、まず最初は英語版で発売されます。その後が、韓国語バージョンなんですが、韓国の場合、18禁のゲームはゲーム物等級委員会を通じた審査が必要となるので、流血とかを抑えたバージョンを別で用意する予定です。韓国以降は検討中です。
編: 音声はどうなりますか?
イム氏: 現在、英語のボイスを入れていますが、韓国語のローカライズの際には、音声を韓国語にするか、英語のままにするか、検討中です。
編: 快適にプレイできるハードウェアスペックは?
イム氏: iPhone 3GSから快適なプレイができます。iPod Touch は第4世代や、iPadなら1でも2でも快適にプレイできます。
イム氏は、今後の展開について、すでにリリースしている「カートライダー」や「メイプルストーリー」の機能強化に加えて、新作としてモバイル版「アラド戦記」を開発中であることを明かしてくれた |
「Combat Arms: Zombie」のゲーム画面 |
編: 「Combat Arms: Zombie」の最大の魅力を教えてください。
イム氏: 開発に際して「Infinity Blade」を参考にしましたが、アイテムを強化していくやり込み要素があります。色んな武器やキャラクターがあって、自分だけのキャラクターを作っていく楽しさがありますね。武器の場合、武器ごとAランク、Bランク、Cランク、Dランクといった等級がありますが、強化でランクアップすることができます。自分が好む武器を強化していくことができます。
編: 武器の入手方法を教えてください。
イム氏: ゲームをプレイするとゲームマネーを獲得できますが、そのゲームマネーを貯めて、ショップで武器やキャラクター、装備を購入することができます。欲しいアイテムを手に入れる前には、やはり時間が掛かるので、時間を短縮したい人はゲームマネーをキャッシュで購入することができます。
編: 武器を強化することで、ゲームはどのように変わりますか?
イム氏: ゲーム性自体はそのままですが、難しかった難易度をクリアできるような、強い装備を揃えることができます。今は2つのマップしかないですが、今後のアップデートを通じて、追加される新マップでは別のゲームモードを考えており、また違ったゲーム性が楽しめます。
編: その別のゲームモードというのは何でしょうか?
イム氏: 例えば、車両が特定の場所に移動中に、その場で車両をゾンビから守り切るモードとかを考えています。
編: 新しいマップは有料のコンテンツなんでしょうか?
イム氏: マップは無料でダウンロードできます。
編: アプリのサイズはどのぐらいですか?
イム氏: まだ、開発中なので確定していませんが、できれば100MB以下にしたいところです。やはり、Unreal Engine 3.0とグラフィックスのためのデータが大きいですね。
編: PCオンライン版との連動機能はありますか?
イム氏: 現段階はありませんが、今後の計画で、PCオンライン版「Combat Arms」のスペシャル武器が貰えるコードを、「Combat Arms:Zombie」のプレイ報酬として貰えるものが、予定されています。
編: リリース後の拡張計画について教えてください。
イム氏: 1カ月に1回のアップデートを行う予定です。PCオンライン版では武器やアイテムが350種類が用意されていますが、「Combat Arms:Zombie」では、まだ25種類しかありません。残り325種類のアイテムと、新しいマップ、新しいキャラクター、オリジナルのゾンビなどを追加していく予定です。マップについてはコンセプトはPC版と同じですが、構造やグラフィックスは、モバイルでも無理の無いように、再開発されています。
編: NEXON Mobileの今後の事業戦略についてはどのように考えていますか?
イム氏: 2つのキーワードが挙げられます。1つ目はハイクオリティーのゲームと、2つ目はオンラインマルチプレイ。このコンセプトのゲームを開発、展開していくつもりです。例えば、「Combat Arms:Zomebie」の場合はハイクオリティー寄りのゲームで、今回、ブースにも出した「Space Tank」の場合は、オンラインマルチプレイ寄りのゲームになります。
編: NEXONのIPを使って開発しているモバイルゲームは何がありますか?
イム氏: まず、「KartRider Rush」の次のバージョンです。これではマルチプレイができる新作が予定されています。また、「メイプルストーリー」もコミュニティー機能が強化された新作を用意しています。最後に「アラド戦記」のスマートフォン版も開発中です。というか、この発言が初公開となりますね(笑)。
編: 日本ではまだまだフィーチャーフォン向けのゲームも元気ですが、韓国はもう完全にスマートフォンにシフトしたという感じですね。
イム氏: 韓国でとスマートフォンの人気が凄まじくて、2011年の年末には利用者の50%がスマートフォンになると予想されています。スマートフォンの利用者が50%といっても、ゲームといったコンテンツの利用者という面でみると7~8割がスマートフォンですね。だから、NEXON Mobileでは、もうスマートフォン向けのゲームしか開発していないのです。また、韓国のフィーチャーフォンだと、スマートフォンとの性能の差が、日本より全然大きい事も移行の要因の1つですね。
編: 日本のユーザーの皆さんにメッセージをお願いします。
イム氏: NEXON Mobileは、日本でもGREEさんや、DeNAさんを通じて、ソーシャルゲームを展開しています。その経験を生かして、今後も日本のユーザー様に満足できるようなゲーム作りに精一杯頑張っていきますので、今後ともNEXON Mobileをよろしくお願いいたします。
□「G-Star」のホームページ(韓国語、英語)
http://www.gstar.or.kr/
□NEXONのホームページ(韓国語、英語)
http://www.nexon.com/
□NEXON Mobileのホームページ(韓国語、英語)
http://nexonmobile.com/
(2011年 11月 12日)