インタビュー

「FFXIV」韓国サービス、実装直後のパッチ「3.1」などを吉田Pに聞く

パッチ3.2でついに実装される「初心者の館(仮称)」のコンセプトも紹介!

11月13日収録

 スクウェア・エニックスは韓国釜山で開催されたゲームショウG-STAR 2015のLG Electronicsブースで、PS4/PS3/Windows/Mac用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド(以下、『FFXIV』)」を大々的に展開した。韓国では今年の9月1日から韓国版「FFXIV」の正式サービスがスタートしており、今冬には「パッチ2.4 氷結の幻想」が実装される。ステージでは「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏によるプロデューサーレターLIVEや、蛮神チャンレンジなどのイベントが開催され、熱量の高いファンが集結し、大いに盛り上がっていた。

 G-STAR期間中、吉田氏から韓国サービスや、グローバルで実装されたばかりの「パッチ3.1」について話を聞く機会を得、「初心者の館」など、「パッチ3.2」の話も聞くことができたのでさっそくお届けしたい。

2015年ローンチのMMORPGではトップだが、期待値はさらに上だった

「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏
韓国G-STAR 2015のLGブースは「FFXIV」一色だった

――G-STAR 2015はいかがですか?

吉田氏: まだ会場を回れていないのです(笑)。昨日は1日中、韓国メディアの方々の取材対応をして、その後はブースでプレーヤーの皆さんと話をしたり、写真を撮ったりしているうちにクローズでした。今日も朝からずっとLG/FFXIVブースに張り付きで、あまり見ることができてないのですが、全体としては、PCゲーム市場がますます厳しくなっているのかなと感じています。去年はまだ「リネージュエターナル」や「Tree of Savoir」や「ロストアーク」があって、「FFXIV」もブースを出していて、結構大作があったのですが、今年はよりしんどいなという感じですね。

――今年のG-STARは大きなサプライズがなくて、話題性の低いイベントになってしまいましたね。

吉田氏: 韓国のスタッフを交えて話をしたのですが、これは韓国市場だけを反映しているわけではなく、韓国市場では色々な会社が集まって、物理的なイベントを開催することのメリットがあまりなくなってきているように思います。

――見本市という形態が限界にきているということですか。

吉田氏: 韓国は初期からネットワークゲームによって発展した市場です。結局、イベント会場にはモチベーションのある人しか来ないし、モチベーションのある人は、すべての情報をネットで拾えます。HD解像度のハイクオリティなトレーラーもネットで見られますし、物理的にコストをかけてまで、釜山という場所まで集まる理由がなくなってきている。だからこそ大手が出展に積極的ではないのかもしれない。世界中のゲームショウに参加していて、今がそういう転換期なのかなとは思います。今1番勢いがあるなと思うのはドイツのGamescomや、先日行なわれたパリのParis Game Weekです。韓国の場合は、首都ソウルから離れている、ということも要因かもしれません。

――韓国も首都への一極集中が激しい国ですしね。

吉田氏: そうなのです。今のところは熱のあるコミュニティがオフ会のように集まっているというのが印象です。

――そんな中で今回はLGさんのブースでの出展でしたが、どういう経緯があって今回出展することになったのですか?

吉田氏: いわゆるローンチ前のPRというタームはいったん終わったので、今後やるとしたら単独で「FFXIV」のプレーヤーに来てもらって、もしくは友達を連れてきてもらって、「FFXIV」尽くしで盛り上がれるイベントをやったほうがいいのではないかというのが韓国運営チームの意見でした。ですので、今年のG-STARに出展の予定はなかったのです。ところが9月になり、LGさんが非常に強力にバックアップしてくれるという話が出てきたのです。今の時代、PCは商品単体ではなかなか魅力を遡及しづらいです。そのPCでどんな体験ができるのかということをLGさんが考え、これだけのブースを構えるのでLGの製品と一緒に「FFXIV」の魅力をアピールしてもらえませんかというお話でした。こちらにとってもありがたいお話でした。

――予想以上に「FFXIV」のブースでしたね。

吉田氏: そうですね(笑)。韓国運営チームがものすごく頑張ってくれたと思いますし、LGさんもすごく理解を示してくれました。ウルトラワイドモニターってこんなに視野が広く見えるというのを伝えるには、ゲームが中心になったほうがいいと言ってくださって。

――蛮神チャレンジコーナーにウルトラワイドモニターがずらりと並んでいるのは壮観でした。

吉田氏: そうですね。視野が広いとこんなに楽なのかと思いました。LGさんはグローバル版の方でも協力を申し出てくださっていて、だから今は僕のデスクのモニターもLGのウルトラワイドモニターに切り替わっています。

――韓国は9月から正式サービスが始まっていますが、今はどういう状況ですか?

吉田氏:先日の韓国メディアの合同インタビューの中でもお答えしたのですが、2015年に韓国内でローンチしたMMORPGの中では、1位を獲得させていただきました。とはいっても、グローバルであれだけの成績を出しているにも関わらず、「FFXIV」で売り上げ1位でも数字的な物足りなさがあるのは、韓国市場にとってもショックだったようです。

――韓国の業界関係者の中ではもっといくと思われていたわけですね。

吉田氏: 各メーカーのトップの方とお話した時に、「絶対ヒットすると思っていた、成績としては想定していたほどではないかもしれないけど、この市場でよくぞ」とは言ってもらっています。

――韓国メディアの合同インタビューでも、そのあたりが話題になっていましたね。

吉田氏: ゲームに対する評価はすごく高いのですが。韓国ユーザーも二極化していて、PC房でハイエンドなゲームを遊ぶ層と、「StarCraft II」すら知らないモバイルで育ってきた世代が完全に二極化していて、韓国の市場にショックを与えているようです。

――PCでゲームを遊ばない層が増えてきているのですね。

吉田氏: 今やフィールドマップがあることがデメリットになる時代でもある、というのは、僕にとっても少なからずショックでした。「マップを歩くのが面倒くさい」と言われると、どうにもならないですね(笑)。

――韓国の「FFXIV」プレーヤーは、そういった若い方が多いのですか?

吉田氏: 世代として高めの人が多いのですが、MMORPGで遊ぶのはこれが初めてだという人が相当数います。韓国ではPCオンラインゲーマーはみんなホームに当たるゲームをもっていて、ゼロベースの人はほとんどいません。もともと遊んでいるゲームがあって、そこから乗り換えるかどうかという考え方をします。ホームゲームが例えば「League of Legends(LoL)」だと、「LoL」はPCのゲームではありますが、起動すると即遊べて、即盛り上がって、即終われるというお手軽さという意味ではソーシャルゲームに要素がすごく近いです。そこからゲームというエンターテインメントに入った方にとって、マップが面倒なものに該当するようです。びっくりしたのが「M」キーでマップを開いてもマップが見えないと言われたのです。キャラが歩けばマップはオートで描かれるのですが、マップが見えないのでどこへ進めば良いのかわからないと。

――それはなぜなのですか?

吉田氏: ディスカバリーという考え方の違いでしょうか。冒険のつもりで作っているので、冒険した先に、自分の即席としてマップは完成する。でも、この先にいったら何があるかわからないから行かない。「だから、止める」ということのようです。

――ヒドイ話ですね(笑)

吉田氏: フィードバックもありますが、数字が証明していることも事実です。ゲームというものは、ある程度ストレスがあってそれを乗り越えた時の達成感が面白いジャンルのエンタメだと思っています。受動メディアのテレビと違って、能動的にインタラクティブ性を発揮するからこそゲームにしか味わえないものがある。理想ではそう考えているのですが、それだけでは、すべての世代に訴求できないというのが、今の時代なのだとも思いました。「M」キーを押したら完全開放されたマップが表示され、向かうべき方向が示されるというオートマチックさも必要なのだと。これは選択の問題なのだと考えるようになりました。

――ゲーム開発者と今のプレーヤーの間に世代ギャップができてきているということですか。

吉田氏: ゲーム開発者と、ではなく、育ってきた環境や時代のギャップだと思います。これはもう良いとか悪いではなくて、その世代、その時代、そのお客様の価値観に沿った導入を作らなければいけない。ワールドワイドに、さらに色々な価値観の人に触ってもらうためには、そこまでやらなくてはいけないのだなと感じています。

――そういう韓国のプレーヤーのプレイから得たフィードバックは、グローバル版にも活かされていますか?

吉田氏: 今回のパッチ3.1で、グローバル版にもある「序盤でショップからアイテムを買ってくる」というクエストなどを調整しているのはそういうことがあるからです。“アイテムをショップで買う”というのは、これまでのゲームでは普通の事でした。しかし、スマートフォンのゲームや、フィールドを持たないゲームの場合、そうではない。あのクエストは、「ショップでアイテムを買う、ということのチュートリアル」のために作ったのですが、その価値感がない人にとっては、思いつきもしないことだと気づきました。そういうところは積極的に直していきます。エンドコンテンツ型のゲームを作っているので、ここで躓くのであれば、直してどんどん先に進んでいただいたほうがいいと思っています。

 それから「パッチ3.2」での実装を目指して作っている「初心者の館(仮称)」というコンテンツもそうですが、極シンプルにしようと、スタッフとも話して試行錯誤して貰っています。エンドコンテンツに向かっていった時に、ゲーム本来の面白さがあって、そこに向かってどうステップアップをしていってもらうかは、僕らが考えれば良い。最初からそのステップアップを若いプレーヤーに要求しているのだとしたら、それは僕らが考え直すべきかな、というのが今の立ち位置です。それは韓国版とかグローバル版がという話ではなくて、データを見ての感想です。

――今回「Tree of Savoir」の開発者の方も合同インタビューで、自分たちの作りたいものとユーザーが欲しがるものが違うと言っていました。フィールドでワイワイ遊ぶのがMMOの楽しみだと思っていたが、それがストレスになるのでインスタンスダンジョンが欲しいという意見が多く、結局入れることになったと。

吉田氏: ほとんどのコンテンツがインスタンス型で、コンテンツ数の多い「FFXIV」に対しては、自由度がない、これはMMOじゃなくてMOじゃないかという意見もいただきました。これも良い、悪いではなく、正解はないと思うのです。プレーヤーの方は、遊びの幅は多ければ多いほど良い。だからこそ、今回「雲海探索 ディアデム諸島」を作りました。結局、全部そろえるしかないというのがMMORPGの答えだと思います。

――韓国のローンチが一区切りついて、次の海外展開ということになっていくかと思いますが、予定があれば教えてください。

吉田氏: いつもお話している通り、やりたいと手を上げていただけるパートナーさんがいるかどうかが最大のポイントです。その地域に詳しい会社さんで、情熱的に「FFXIV」をやりたいと言ってくださるパートナーさんがいてくださるなら、お話しを伺いたいと思います。僕らから積極的にアピールせず、一旦拡大路線ではなく、ローンチした各地域へのフォーカスを強めたり、サーバー関連の仕様をグレードアップさせることを優先するつもりです。

韓国ではこの冬に「パッチ2.4 氷結の幻想」が実装される
ウルトラワイドモニターでの「真タイタン討伐戦」

――例えば韓国でも、やる気がある人はグローバルサーバーに入って遊んでいます。そういう意味でローカルサーバーをこれ以上増やすことはリスクが高いという判断ですか?

吉田氏: いいえ、そんなことはないです。やはり言葉の壁は大きいと感じます。韓国版ができたので、グローバル版から韓国版に移ったという人もたくさんいらっしゃいます。今回のG-STARでも「ずっと待っていました」と言ってくださる方が多くて、やはり母国語で遊べることはその国に住んでいれば当然なんだと思います。ローカライズすることはお客様の広がりを格段にあげます。次は運営地域を広げるというよりも、スペイン語とか、言語対応を増やすということの方が優先度が高いですね。

 そして例えば、中南米サーバーを小規模だけど建てようかとか、そちらの方が可能性としては高いと思います。ただ、そろそろハウジングの土地の追加もして欲しい、というリクエストをたくさんいただいてます。欧州データセンターも軌道に乗ったので、そろそろ拡大路線よりは、最適化を進めて土地を増やすことだったり、ギアセットを増やすとか、今までコツコツやってきたことを成果に結びつけたいです。

――グローバル版のプレーヤーは現在「パッチ3.1」を遊んでいますが、韓国版では今度「パッチ2.4」が入ります。いま便利になっているUIなどの最新の機能も実装されるのですか?

吉田氏: いいえ、さすがに全部は無理です。韓国版の「2.4」のベースはグローバル版の「2.45」なのです。それに「2.55」と「3.0」のいくつかの機能はマージ(処理を部分的に統合すること)しましたが、マージって恐ろしく大変なのです。今は韓国版との間に、「2.5」、「2.55」、「3.0」、「3.1」とあります。で、この「3.1」のものをいくつか韓国版2.4にマージしたとします。次の韓国版のベースはグローバル版の「2.5」なので、やはり3.1の内容は入っておらず、またマージが発生します。最新版に追いつくまで、延々にこれを繰り返します。前のバージョンにマージしたものは、またマージしなければならない。バージョンアップのたびにそれをやっていると、ミスが増えるし、ずっとこの古いバージョンを取っておかなくてはならないので、リスクも高く、開発チームの工数も大きくなってしまいます。ですので、バージョンをどんどん上げ、グローバルに追いついて欲しい、というのが開発チームの思いですね(笑)。

――韓国のファン的にも矢継ぎ早にアップデートがあれば嬉しいのではないですか?

吉田氏: 約2カ月半でもう2つのパッチが入っています。次の「2.5」の準備もしています。遅くとも来年の夏ごろには韓国も「3.0」になっていると思います。中国は今月にはもう「3.0」ですし、そのくらいのペースで追いついていくかなとは思います。

――次の拡張パッケージが出るころには、グローバル版に完全に追い付いてそうですね。

吉田氏: ほとんど差がないくらいになっているでしょうね。そのほうが望ましいです。翻訳さえ終われば即出すという方が。基本的にはグローバル版のほうが未来であり、プレーヤーの皆さんのフィードバックを受けてより遊びやすくなっています。プレーヤーの方も開発チームも、グローバルとほぼ同じものを遊べた方が、双方メリットがありますね。

(石井聡)