インタビュー

SCEKプレジデント川内史郎氏ロングインタビュー

プレイステーション 4の韓国展開と今後の展望について

プレイステーション 4の韓国展開と今後の展望について

SCEKマーケティング部部長のSeung-Jun Ha氏
メタルスライムがまぶしい「ドラゴンクエスト メタルスライム エディション」も韓国で発売される
PS Vita「デカ盛り 閃乱カグラ」は18禁タイトルとなる
韓国人メジャーリーガーとタイアップしてヒットに繋がった「MLB The Show 14」

――PS4についてですが、韓国の状況はいかがですか?

川内氏: 韓国も調子はいいですよね。当然今までのプラットフォームと比べても販売のスピードは速いですし。

――それはPS3よりも高い?

川内氏: 高いです。

――絶対数としてはいかがですか?

川内氏: 絶対数としては、まだ1年なのでまだまだこれからですけれども、他のアジアと比べても非常に多いです。

――今ですとアジア地域のなかで1番多い?

川内氏: そうですね。1番というとあれですが、台湾と同じくらいです。台湾と韓国は人口は倍の開きがありますけど、ゲームの市場規模は、特に我々のコンソールゲーム市場は同じくらいですから。他の東南アジア地域なども含めて比較しても韓国は非常に好調です。

――その一方で、PS4は、タイトルラインナップが十分ではないということが言われますが、韓国での装着率は他の地域と比較していかがですか?

川内氏: 他のアジアと比べて、元々韓国って装着率がいいのです。それは昔からコピーが少ないからです。

――本当ですか? 韓国でも龍山をはじめ各地でよく見かけましたが。

川内氏: もちろんあるのですよ。それは日本でもあるというのと同じで、日本ではあってもそれを買う人はあまりいませんよね。それと近い感じです。韓国でも、コピーは買わずにちゃんと正規品を買う。だからこそ、中古の市場があるんです。コピーを買う代わりに中古品という考え方だと思います。

――PS4での装着率ですけれども、他と比較してからみてどれくらいですか?

川内氏: PS4で今はまだ1:2くらいです。これはまだ発売されて1年たってないので、PS Vitaだと1:6くらいまで伸びますし、サードパーティも含めると1:10くらいの倍くらいになります。それはPS3も同じです。

――そういう意味では、まだPS4のソフト販売は動きが鈍いと言えそうですね。

川内氏: ただ、ここ最近ソフトの販売もかなり多いですし、あとはネットのデータ販売を入れるともっとでかくなります。韓国ってネットの販売の率が高いですから。

――それこそPSPの時代は、装着率が1を切ってましたよね。つまり1本も正規品を買わずに海賊版ばかり遊ぶという(笑)。

川内氏: よくご存じですね(笑)。そういう頃に比べると、しっかりソフトが売れる時代になったと思います。

――ちなみに韓国での人気タイトルはどのようなものですか?

川内氏: 日本はローカライズをしても欧米のゲームはあまり売れませんが、韓国含めたアジアは、日本と欧米のタイトルは両方とも良いものは売れます。「The Last of US」などは、PS3版、PS4版ものすごく売れています。作品としても評価を高くいただいていますが、販売開始からもうかなり経っていますけれど、まだ毎月売れています。

――展示を見る限りでは、「ウイイレ」や「NBA」、「MLB」などスポーツ系が目立っていましたが、スポーツ系の人気が高いのですか?

川内氏: そこに関しては日本とそれほど違いはないと思いますよ。例えばメジャーリーグのタイトルは、韓国人のチュ・シンスンさんをジャケットに使ったのです。みんながみられるようなところで、チュ・シンスンさんがすごく活躍したのですが、それでMLBもものすごく盛り上がったのです。販売にものすごく繋がりました。成功例としてアジアのなかでも、社内でもとても話題になって、こういうことをどんどんやっていきましょうという話になりました。

――販売本数はどの程度ですか? 6年くらい前にインタビューさせていただいた時は、5,000本でヒットですというお話でしたが。

川内氏: いや、もう今は全然そんな規模ではないです。「GT」や「ファイナルファンタジー」などは10万本近くまでいきましたし、私たちも一緒にプロモーションをやったりイベントをやったりしたので。かなりファンが付いています。1万超えのタイトルはざらに出るようになりましたね。

――韓国のレーティングについてですが、グローバルの水準と韓国はかなり違うと感じました。たとえば「DEAD OR ALIVE」や「閃乱カグラ」が18禁になる。韓国ではどのようなレギュレーションになっていて、SCEKとしてどう対応しているのか教えていただけますか?

川内氏: 基本的には他の地域と合わせるようにしていますが、やはりちょっと基準が厳しいところはあるのです。韓国で色々な法律などがあって、かなりキツイですし、特にレーティングについても我々が思わないようなレーティングの結果がくることも確かにありますね。

――昨日「閃乱カグラ」シリーズの新作を取材したのですが、制服や体操服はダメだと。なので普通の服に着替えるよう絵を変えているというような話を聞いて、大変だなあと思いました。

ハ氏: はい。ですから、そういうタイトルは表に出るところではプロモーションビデオとかも一切流せないのです。

――それは何が問題なのですか?

ハ氏: 問題と言うよりは、やはりこういうものを子どもも見ることができるような場所では流してはいけないという法律があるためで、もし流すと実際に親からのクレームもむちゃくちゃきます。「何でこんなのを流してるの?」と。実際にありました。

川内氏: 消費者保護法というのがすごく厳しいというか、例えば国としては公平なスタンスでも、消費者からの声が強いので取り上げるケースが多いのです。当然中立な判断がされるべきなのですが、最初に訴えた人の声が強くて、国というか当局も動かざるを得なくなるのです。

――例えば「Grand Theft Auto V」のようなバイオレンス系のゲームもダメですか?

ハ氏: ダメです。

――それではどうやってプロモーションをするのですか?

川内氏: 例えばハードとのバンドルをプロモーションとしてはもちろんやりますけれども、表で一般の人が見れるようなことや試遊するようなことはやることができません。

ハ氏: 内容によってはできるところもあるのですけれども、「GTA」ってちょっと滅茶苦茶なところが面白さじゃないですか。そこはちょっと見せられないですね。だからプロモーションできる広告とかも認知度だけを押しつけるみたいな感じで、本当のすばらしさ、面白さはちょっと紹介できない感じはあります。

ソニーも共同出展していた
メインはデジカメだったが、Xperia Z3を使ったリモートプレイの試遊も行なっていた

――今回ソニーさんと共同でブース展開をしていましたが、どういう経緯で一緒に組んでやることになったのですか?

ハ氏: ワンソニーということがありまして、もともと同じ会社なのでシナジーを一緒にやって行こうという考え方です。ウチはコンテンツを持っている会社なので、向こうはハードを持っていて、一緒にやることによってシナジーが出るということで、韓国ではいつも一緒にやっています。

――Xperia Z3を使ったPS4リモートプレイのデモが目玉でしたが、韓国ではリモートプレイの人気が高いのですか?

ハ氏: ゲーマーの方では話題になっているのですが、一般の人はあまり知りません。それでどんなベネフィットがあるかあまり知られていないところがありますね。逆にメディアの方の反応が良くて、頻繁に紹介されています。

――今回は残念ながらProject Morpheusが出展されていませんでしたが、これは何故なのですか?

川内氏: Project Morpheusは、実はまだあまり外に持っていっていません。9月にプレイステーションのデベロッパー向けのサミットをやったのですが、そのときには韓国で始めてMorpheusをお見せして、それが1回だけです。内容的にはE3とGDCで公開されたものですが反応はすごく良かったですよ。

――今回Oculus VRの「Oculus RIFT」を始め、VRデバイスが沢山出展されていたので、そうした中でMorpheusを出していれば凄いインパクトになったのではと思ったのですが。

川内氏: Morpheusはいろんな仕込みが必要になるので、今お見せするというよりはもうちょっと経ってからのほうがいいかなという判断です。

ハ氏: 別の話になるのですけれども、大学のプレイステーションクラスで、その最後の講義が原田さんなんです。12月18日に原田さんがいらっしゃって、大学で講義をやるのですが、そのときに「サマーレッスン」についてちょっとだけでもいいから語ってくれませんかとお願いしたら、「わかりました」といってくれたので、何か言うかもしれないです(笑)。

(中村聖司)