インタビュー
「サモンナイト」「ネプテューヌRe;Birth1」を手がける同社を直撃
新進気鋭の開発会社が語る、過去、現在、未来
(2013/7/25 00:00)
「フェリステラ」という社名を聞いて真っ先に「サモンナイト」の名前を頭に思い浮かべるのは、生粋の現役「サモナイ」ファンだろう。今までシリーズを開発してきた「フライト・プラン」が事実上の業務停止となり、シリーズの存続が絶望と思われていたなか、同シリーズを開発していたコアメンバーを擁して立ち上げられたのがフェリステラ株式会社だ。
同社は2010年に設立され、2012年7月には「アガレスト戦記 Mariage」を手がけ、「サモンナイト」シリーズを手がけることなどが発表され、ファンを驚喜させた。そして、先日は約6年ぶりとなるシリーズ最新作「サモンナイト5」がリリースされたかと思えば、「超次次元ゲイム ネプテューヌRe;Birth1」を開発中であることが発表されるなど、ゲームファンからの熱い視線を集めている。しかも、この7月1日にフェリステラ合同会社からフェリステラ株式会社に組織変更を行ない、今後新たな展開も予定されているとのこと。その詳細を聞き出すべく、フェリステラの木下貴之氏と森藤康男氏にお話を伺った。
もう1度同じスタッフで、ゲームをつくるまで
―― そもそも御社はどのような形で立ち上げられたのでしょうか?
木下氏: 私自身フライト・プランに1994年に入社してからずっと「サモンナイト」シリーズに関わっていたのですが、会社の事業停止に伴い、今後についてじっくり考える機会ができました。そこで、まず小規模で始められる合同会社としてフェリステラを立ち上げたわけです。開発や本社機能は岐阜ですが、営業機能がこの東京支社になります。
―― 「サモンナイト」のコアスタッフで、また新作を作りたいという気持ちはずっとあったということですか?
木下氏: そうですね。またこのメンバーでやりたいと思っていました。しかし、すぐにとはいかなかったので、まずはアイディアファクトリー(以下IF)さんと、という形になりました。
―― それがフェリステラの1作目であるPSP用「アガレスト戦記 Mariage」ですね。
木下氏: 名前が知られているタイトルですし、どうやって見せていこうかというところはかなり気を遣いました。IFさんからの“「サモンナイト」のスタッフにやってほしい”というご指名でもありましたから、それに応えたいという気持ちもありました。
―― IFさんとはどういう経緯で仕事を始められたんですか?
木下氏: IFさんとはフライト・プランの時代に1度お会いしているんですよ。そのときに、何か一緒にやれたらいいですねというお話をいただいていたんです。フェリステラを立ち上げたときに、ようやくそれが実現したというわけです。
―― しかし、「サモンナイト」シリーズについては、ユーザーさんもシリーズの復活は半ば諦めていたと思うんですよね。しかも、中核のスタッフが残っている形で、もう1度シリーズが遊べるというのはすごいことだと思います。
森藤氏: 私もこの7月にようやく合流した形なので、外から見ていると奇跡ですよね。「サモンナイト」のコアメンバーが木下についていくという話は聞いてはいたんですが……。
木下氏: このまま立ち消えになってしまうのは嫌だとみんな思っていましたし、ユーザーさんになにかしらお伝えしたいという強い気持ちはありました。
森藤氏: そういう意味では「サモンナイト」を復活させていただいたバンダイナムコさんや、立ち上げからお仕事をさせていただいているIFさんには本当に感謝しています。また、ほかにもいろいろなお話を頂けていて、ありがたいかぎりです。
―― 森藤さんはこちらにはどのような経緯で合流されたんですか?
森藤氏: もともと「サモンナイト」が大好きで、当時フライト・プランに入社したんですよ。これが木下をはじめ、スタッフにすごく気持ちのいい人たちが多いんですよね。岐阜の会社に東京から来てディレクターを務めるなんてことになれば、反発も多そうなものですが、直接のゲーム開発以外でも親身に話せる間柄になれた……と思っています(笑)。
その後、私はフライト・プランから一旦離れましたが、フェリステラを立ち上げたことは知っていて、木下がこれから新しいことをやっていこうとしているのであれば、自分の実際的な仕事はプロデューサーで、開発の受諾が主な仕事だったから営業的な仕事もしていた。それはフェリステラの現状にもあう。ならば、自分も力になれるんじゃないかと考えたんです。
―― 営業として他社にもアピールしていく立場だと思いますが、フェリステラの魅力は?
森藤氏: 魅力のあるキャラクターをつくり出せる。それがゲームになるのか、グッズになるのかはわからないけれど、社内に対して厳しい目で見ていてもワクワクさせられるし、よそに持って行くにも自信を持って見せることができる、というところですね。営業的な視点から見るとこだわりすぎと思えることもあります。でも、そのこだわりも大事なんだなと思わせてくれるものがあります。そこが最大の魅力でもあるし、IFさんやバンダイナムコゲームスさんにも、開発にあたって意見がぶつかることはあっても、よいものを作れる気持ちの良いスタッフであるということはわかっていただけていると思います。
―― 木下さんが考えるフェリステラの強みは何でしょうか。
木下氏: ユーザーさんにできるだけ楽しんで頂きたいという気持ちを持っていることではないかと。明文化されているものではなく、プログラマーなり開発スタッフの身体が感覚として覚えているもの。こういうときにはこういう動作をすると良いということが自然にできる。プログラムでいえば、「Now Loading」という表示が出るような長いローディングがないとかですね。そうしたこだわりのある信頼できるスタッフだからこそ、自分も覚悟を決めて代表という立場で動くことができるというところもありますね。
―― そのこだわりは、営業担当としては心強いですね。
森藤氏: 万人にとって100点満点のゲームって世の中にないと思うんです。けど、自分が弊社のゲームをやっていて感じるのは、かぎりなく100点に近いところを目指そうとしているということです。そういう意味では信頼が置ける。それに、スタッフ自身も実際にゲームをやっていて、自社のみならず他社さんのゲームも遊んでいるので、新しいものも吸収していってくれるし、人の意見をきっちり聞いてそれに応えていけるスタッフであることですね。もちろん、数字、予算とかスケジュールは守るという大前提があって、そのうえで、ゲームをよくしていこうと考えています。
―― そういう意味では本当の職人、プロですよね。予算や納期も守るし、つくるべきトコロはしっかりとつくり込む。
木下氏: どういう形であれ、ユーザさんに払っていただいたお金に見合う楽しみが提供できればと思ってやってるんですよね。
森藤氏: 僕はさておき(笑)、開発スタッフはオンオフの切り替えがしっかりできているんですよね。遊ぶときは遊ぶ。仕事するときは仕事すると。そういうメリハリがあるところがいいのかなと。