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「ドラゴンクエストX」ロングインタビュー前編

プロデューサー齊藤氏、ディレクター藤澤氏に聞く
「ドラゴンクエストX」の“これまで”、そして“これから”


9月4日 収録


 8月2日より正式サービスが開始され、それから約1カ月が経った「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」(以下「ドラゴンクエストX」)。そこで、「ドラゴンクエストX」のプロデューサーである齊藤陽介氏、ディレクターである藤澤仁氏にインタビューを行ない、オンラインゲームの「ドラクエX」はどのように生まれたのか? 今現在はどのようなゲームなのか? そして、これからはどんなゲームになっていくのかを伺ってみた。

 このインタビューは、隅々までたっぷりとお話し頂けてかなりの長編となったので、前編・後編にわけさせて頂くことにした。まず前編となる今回は、“「ドラゴンクエストX」のこれまで”として、開発初期から、正式サービスが始まるまでの内容を収録している。後編には“これからの「ドラゴンクエストX」”として、今後のバージョンアップや展望などを伺っているので、そちらも楽しみにお待ち頂きたい。




■ 「FFXI」でオンラインゲームの魅力を知り、自身がつまづいた要素を解消した作品にするべく「ドラゴンクエストX」開発へ参加した藤澤氏

プロデューサーの齊藤陽介氏。筆者が知る限りでも、ゲーム全般はもちろんとして、オンラインゲームも多数プレイされている

――オンラインゲームの「ドラゴンクエスト」という初めての試みだったわけですが、プロジェクトはどんなところからスタートしたのでしょうか?

齊藤氏:始めはすごく少ない人数で、それこそ片手で収まるぐらいの人数で話し合いをしていました。時期的には「ドラゴンクエストVIII」の開発が終盤を迎えた頃だったでしょうか。オンラインゲームとしてやはり、10年以上続けられるぐらいの下地をしっかり作るのが大事だと考えていますので、そこにたっぷりと時間をかけましたね。

 その下地作りがだいぶできあがってきて、さぁ本格的に作りましょうとなったのは「ドラゴンクエストIX」の開発が終わって、藤澤が「ドラクエX」に集中できるようになってからですね。

――そのタイトルは最初から「ドラゴンクエストX」というものであり、オンラインゲームにするという形で進んでいたのでしょうか。

齊藤氏:ナンバリングの「X」になるかどうかは、実はその時まだ決まっていなかったです。でも、当時堀井さんからも「『ドラクエ』シリーズのひとつの形としてオンラインゲームをやりたい。みんなが同じ世界に集まって楽しめる『ドラクエ』があってもいいよね」という話がありました。それも、その規模はMOではなくMMOでというものでしたね。

 ただ、藤澤は最初(オンラインゲームとしての「ドラゴンクエストX」制作を)あまりやりたがってはいなかったんですよ。

――それはなぜでしょう?

ディレクターの藤澤仁氏。「ドラクエ」シリーズに長く参加しており、「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」でもディレクターを務めている

藤澤氏:当時、「ドラゴンクエスト」の次の展開が「ドラゴンクエストVIII」(プレイステーション 2)という形に向かっていった中で。齊藤としては、あのビジュアルでオンラインゲームの「ドラクエ」ができたらという夢が広がったのではないかと思うんです。

 でも、僕はその頃スタンドアローンのゲームの方が好きでしたし、今もまだ払拭しきれてないと思うんですが、世の中には“オンラインゲームって怖いんじゃないか”とか、“すごく時間がかかってしまうんじゃないか”と不安視する人が多いと思います。僕の中にもそういう感覚があったんですね。

 そういう気持ちを持っている自分がオンラインゲームの「ドラクエ」を作るのは、イメージが湧かなかったというのがあって、1度「すいません、それはできません」とお断りしました。


齊藤氏がプロデューサーとしてエニックス時代に手がけたWIN用MMORPG「クロスゲート」。日本国内では2007年10月3日でサービスを終了しているが、中国や台湾では今もサービスが続けられている

――1度断っていたというのは衝撃的なお話ですね。そんな藤澤さんに対して、齊藤さんはかなりオンラインゲームをやられていますよね。元々エニックスの頃にもWIN用MMORPG「クロスゲート」を手がけていましたし

齊藤氏:そうですね。ユーザーとしても「ウルティマオンライン」や「ディアブロ」をどっぷり遊んでいましたし、「World of Warcraft」もやってましたね。スタンドアローンのゲームは1人で集中して遊べるという良さがありますけど、オンラインゲームで誰かと一緒に遊ぶというのは、それに加えて新しい面白さを与えてくれると思っています。

 そこで、日本ではまだまだオンラインゲームというのがメジャーではない頃だったんですけども、「クロスゲート」を作りました。実はその時にも“「クロスゲート」に「ドラゴンクエスト」というタイトルを付けたい”と考えた事があったんです。それもあって、コマンド式のMMORPGにしています。

 ただ、当時エニックスはPCゲーム市場から一旦撤退していたということもあり、それに「ドラゴンクエスト」の名前を冠するというのは、あまりにもお客様の持っている「ドラクエ」のイメージからはかけ離れていました。ですから、最終的に「クロスゲート」というオリジナルのタイトルになりました。

 「クロスゲート」は、国内では1万〜2万人ぐらいの方がプレイしているというサイズのゲームにはなったのですが、遊んでもらえた方には面白いと言ってもらえました。実は国内ではサービスが終了していますが、台湾や中国では今もサービスが続いていて、もっと多くの人に遊んでもらってます。やって良かったと思いますね。

 自分でそうしたオンラインゲームのタイトルを手がけてきましたし、個人的に遊ぶものも必ずしもオンラインゲームだけに限っているわけではないですけど、比較的時間をかけて遊んでいるものはオンラインゲームが多いですね。

 今はもちろん「ドラゴンクエストX」をこっそり遊んでいます。レベル50になりましたよ(笑)。

――なんと(笑)。ここまでの話を整理すると、齊藤さんは個人的にもすごくオンラインゲームには慣れている人で、堀井さんは「ドラクエ」をオンラインゲームにしてみるのも面白いんじゃないかと考えていた。それに対して藤澤さんは、スタンドアローン派でオンラインゲームに不安を持っていた、という3人だったんですね。

藤澤氏:そうですね。それで、齊藤に「試しにオンラインゲームを遊んでみなよ」と言われて「ファイナルファンタジーXI」をプレイしたんですがやっぱり途中で挫折しました。でも、その後も「やれやれ」ってしつこく言うんです(笑)。それで再チャレンジしたんですけど、ある境目を超えたところで面白さに気づいて、途端にどっぷりハマったんです。

――「FFXI」は、レベル20を越えてジュノにたどり着いたあたりから本格的にのめり込める……というところがありますよね。確かにファーストプレイだとそこに至るまでは、困惑もあって敷居が高いかもしれないです。

藤澤氏:まさに“サポートジョブを取得するあたりまでの敷居”で僕は1度挫折したんです。でも、そこを越えた途端に「こんな面白い世界があったのか!」というほどハマって(笑)。2カ月ぐらいずっと遊びまくりました。

 その短い期間に一気にハマった経験から、“オンラインゲームの面白さとは何か”とか、“何が精神的なハードルになるのか”ということが自分の中で整理できたんです。

 そこで、「ドラクエ」をオンラインゲームにするなら「自分が面白いと思った部分はちゃんと面白さとして入れていきたい」、と同時に「自分が挫折したハードルを1つずつ取り除いていけば独自の作品になるのでは」という気持ちになりました。オンラインの「ドラゴンクエストX」を作ってみたいと思えるようになったのは、その頃からですね。

シリーズ初のオンラインゲームとして登場した「ドラクエX」。スタッフもみなプレイしながら開発を続けている。そこには“作り続ける以上、遊び続ける”という理念がある

――そのあたりの経緯やせめぎ合いがあって、うまく進められたんですね

藤澤氏:そうですね。開発スタッフの中には昔からオンラインゲームをすごく遊んできた人もいれば、まったくやったことがないスタッフもいます。そこはある種の思想の違いというか、両者の話は噛み合わないこともあるんですけど、オンラインゲームをやらない人の視点を特に大事にして、これまで作り続けられたのは良かったなと思いますね。

齊藤氏:オンラインだからこそなのかもしれないですけど、普段、ゲームの開発スタッフって自分の作ったゲームをあまりやらないんですよね(開発中に飽きるほど触るため?)。でも、「ドラゴンクエストX」は結構遊んでますね。

藤澤氏:今では全員プレイしているんじゃないかな(笑)。

齊藤氏:「ドラゴンクエストX」を普通にプレイしているスタッフが、開発現場でも「あーでもない、こーでもない」と論議していますよ。

 従来のパッケージゲームだと発売したら一区切りになりますけども、オンラインゲームは開発が終わってサービスが始まってからがスタートです。自分がゲームで体験したことが、これからのバージョンアップに活かせると思いますので、今後も継続してプレイしたいと思っています。

藤澤氏:実際にゲームを触って“その世界で起こっている事の温度感”を理解していないと、物を作る上での判断を間違えてしまうと思うんですよね。そこに関しては“作り続ける以上、遊び続ける”というのはセットだと思います。

――やはり、開発側で想定している遊び方とプレーヤーさんの遊び方というのは違っていますか?

藤澤氏:もう全然違いますね、ビックリします(笑)。

――そこを自分でもプレイして知った上で、次のステップに繋げていく事が大切というわけですね

藤澤氏:そうですね。ゲームとしては、やはり難易度の調整も1つのポイントだと思うんですけど、簡単にすればあっという間に飽きられてしまうし、難しくし過ぎればライトに遊びたい人がついて行けなくなってしまう。いろんなプレーヤーさんがそれぞれの考えを持ってプレイしていることが、今後のゲームデザインにダイレクトに影響していると思いますので、そういった“感覚的なもの”を今も勉強させてもらっています。

齊藤氏:思ったよりも、(開発スタッフを除く)弊社の社員で「普段はゲームあんまりやっていないよね?」という人たちが遊んでいるんです。しかも、そういう人たちのほうがレベルが高いこともあるので、ライトな人にも遊んでもらえてるという部分には手応えを感じてます。




■ 「ドラクエX」の世界“アストルティア”の世界観やシナリオの起点になったのは“5つの種族と人間”

左から順に、プクリポ、ウェディ、オーガ、エルフ、ドワーフ。この5種族からプレーヤーは自分のキャラクターの種族を選ぶ

――アストルティアという世界をどのように作っていたのか、というところをお伺い致しますが、5種族が共存しているという世界観は、どういうところから決まっていったのでしょう?

藤澤氏:これに関しては……、また僕は最初反対だったんですけど(笑)。僕は主人公が人間ではないというところに違和感があったんです。ただオンラインゲームとして、どこに行ってもみんなが同じ種族というのは画面が単調になりすぎるというのが、ある種セオリーとしてあったので、堀井さんや周囲の提案もあり今の方向にしました。

齊藤氏:私は逆に、鳥山先生の絵っていろんな頭身のキャラクターがいることが魅力的だと思っているんですね。スラッとした女性もいれば、三頭身ぐらいの男もいたり、全然人間ではない種族のキャラもいる。いろんなバリエーションの個性が出せる人ですから、それを発揮してもらえたらと思っていました。そこは、堀井さんからも「人間にこだわらなくてもいいんじゃないの?」という話がありましたね。

――5つの種族には、オーガなら赤、ウェディなら青、ドワーフなら緑というように5つのカラーがありますが、あれはやはり見た目のわかりやすさを重視したのですか?

藤澤氏:それぞれのイメージカラーというのは開発初期からありましたね。種族の性格や住んでいる地域などある程度の設定をこちらで考え、それを基に鳥山先生に描いてもらいました。

 それで完成した種族には全く違和感が無かったですね。ただ、ウェディだけはちょっと変わったんですけども……(笑)。初期のウェディは今よりもずっと魚っぽかったんですよ。

――ウェディは今ではだいぶ人間っぽい種族ですよね。それもあってβテストの頃は1番人気があったようにも思うのですが、正式サービス後はオーガの方が多いですか?

藤澤氏:正式サービス後はオーガが多くなりましたね。今ではオーガとウェディの男キャラが、日々1位を競り合っているという感じです。

齊藤氏:オーガはやはりわかりやすいんだと思うんです。1番人気の職業が戦士ですから、戦士が似合う種族として増えているんだと思いますよ。見た目からして力強いですし。オーガは、男女の性別で多少開きがあるかな? 男の方が多いよね。

藤澤氏:そうですね。どの種族でも男女の比率には開きがあるんですが、エルフだけ男女比がほぼ同じになりました。エルフは一時期、全5種族の中で唯一女性の方が多かった種族なんですけど、今ではほぼ同数になっています。

 種族ごとのプレーヤー数に関しては、正式サービス開始当初にはかなり偏りがあったんですけど、日が経つごとに平均化されてきてますね。極端な差は無くなってきています。

――なるほど、ユーザーさんの間ではドワーフがちょっと少ないという話もあるようですが……。

齊藤氏:そんな事ないですよ! なぜなら私がドワーフでプレイしてますから!!

――ドワーフ界の希望の星ですね(笑)。

齊藤氏:ドワーフのプレーヤーは、素材を拾ったりして普段忙しいから町にあんまりいないだけだと思うんですよ……? ドワーフの女の子とかかわいいんですよ……?

藤澤氏:ちょっと希少な感じにはなってますかね(苦笑)。あと最近は、人間の姿になったプレーヤーさんも増えてきましたので、今後さらに増えてくるのではと思ってますね。

5種族に加えもう1人、プレーヤーが作成する「人間」。プレイを進めることで5種族のいずれか、もしくは人間の姿かを変えられるようになっている。これが「ドラクエX」の世界観やシナリオの基盤となったということだ

――人間の姿をしたプレーヤーが現われる時期というのは、想定していたよりも早かったですか?

藤澤氏:そうですね……。プレーヤーさんによってずいぶん差が付くだろうなとは思っていたんですけど、プレイが早い人は、僕らが思っていたよりも少し手こずっているなという印象でした。全体のイメージとしては、プレーヤー間の差が小さく全体的に進行速度は早かったという感じです。さっき齊藤の話にもありましたが、普段あまりゲームをやらない人の進み具合が思ったよりも早いです。そこが予想外でしたね。

――早いプレーヤーさんは、もっと早く人間の姿になるかもと予想されていたのですね。実際のところ「ドラゴンクエストX」では、早めに人間の姿になったプレーヤーさんがすぐに出てきても“問題はない”という考えだったのでしょうか?

藤澤氏:それはその通りです。極端な事を言えば“サービス開始の翌日に出てきた”のでも構わなかったんです。プレーヤーさんは人間以外の5種族でスタートしますが、世界にはNPCの人間が最初からいるように、そもそも人間のいない世界ではないんです。

 アストルティアという世界の世界観は、「人間を含めた6種族が共存している世界」なので、人間の姿になったプレーヤーさんがいるというのがネタバレになるという意識はなかったですね。最初から予定していることでしたから。

 先ほどもありましたが、「種族を選べるようにする」というところに僕は最初反対したんです。というのも、例えば人間を含めた6種族から種族を選べるという形式だったとしたら、おそらく「ドラクエ」のプレーヤーさんはかなりの人が人間を選ぶと思うんですよ。それこそ、全体の6割〜7割ぐらいが人間みたいな偏った種族バランスになるかもしれないと思ったんです。

 そうなると、他の種族が活きてこないので、そこで堀井さんともたくさん相談して生まれたのが、今の“プレーヤーは5種族のいずれかにもなれ、人間の姿にもなれる”という形だったんです。実は、この決定から「ドラゴンクエストX」のシナリオや世界観が生まれていったという面もあるので、そこは上手く流れてくれたと思います。

――5種族を活かすアイデアが世界観作りの起点にもなったんですね。

齊藤氏:人間でキャラクターメイクをする時に、自由度として肌の色を青くできたり緑にできたとしても、好んでそうする人はそんなにいないだろうと思います。それが5つの種族のテーマカラーとして自然にあれば違和感はないので、今いろんな種族で賑わっている世界ができていると思うんです。今の5種族の姿にも、人間の姿にもなれるという作りにしたことで、人間の姿になれるようになったけど、今のままでいいやという人がたくさん出てきてくれたと思います。5種族の姿に馴染んでもらえたというか、愛着を持ってもらえたと思うんです。

藤澤氏:あとプレイの流れとして、5種族の姿でフレンドになった人と、人間の姿で会うと見た目の違いに驚かれるというのもありますね。

齊藤氏:そうそう、ドワーフやプクリポの良いところは、人間の姿を見せるとすごく驚いてもらえるんですよ。「えぇ、お前人間だとそんな感じになるの!?」って反応してくれる(笑)。ドワーフやプクリポの小さくコミカルでかわいい感じから、立派な人間の姿になったときのギャップがありすぎて、「今さら見せられない度合い」が高いですよね。

藤澤氏:プレイ前は「人間で遊びたいな」と思った人が多かったと思うのですが、5種族の姿で冒険をするうちにそっちの姿に愛着を持ってもらえたらいいよねと、僕たちは最初から思っていたので、そういう空気になってくれたのは本当に嬉しいですね。




■ MMORPGとしては非常に珍しい“オフラインモード”を搭載した「ドラゴンクエストX」。オンラインの世界へ接続してもらうための導入として齊藤氏が要望したのがきっかけ

オンラインの世界に入る前に展開されるオフラインの「オープニングシナリオ」。ここである出来事を体験し、プレーヤーはオンラインの世界へと足を踏み入れていく。オフラインのシナリオには続きもあり、オンラインプレイを始めてから遊ぶこともできる

――5つの種族と人間という種族がいるというベースができあがって、そこから世界やゲームデザインが組み立てられていったのですね

齊藤氏:私がその後、開発チームに1番初めに強くお願いしたことがあります。オンラインの世界ってプレーヤーのみんなで世界を共有しているものだから、例えば“世界が滅亡したり崩壊する”という大きな事件があまり入れられないんです。だからあえて、“プレイの最初に世界が滅亡してしまうんじゃないかと思うような大事件を入れて欲しい”と話しました。それがオンラインの世界に入る前のオープニングシナリオ(オフラインプレイ部分)になりました。そういう仕掛けがあれば、多少敷居が高いと言われているオンラインゲームに接続する手順も頑張ってもらえると思ったんです。あのオープニングシナリオは、プレイすると「おおっ」っと思ってもらえると思います。

――確かにあの展開は先が気になりますよね。そこをひとつ用意してあるからこそ、オンラインゲームが初めての人でも登録手続きなりログインの処理なりを乗り越えてもらえるというわけですね。

齊藤氏:そうなんですよ。そこも上手くできたかなと思います。

――オフラインでプレイ出来る部分をオンラインの世界に入ったあとにも用意されていますが、今後そのオフラインプレイの部分を拡張していったり、別のストーリーを加えたりといった事はありますか?

藤澤氏:今のところオフライン部分はあれで完結というつもりでいます。

齊藤氏:そこも(開発内で)議論はあったんですよ。オフラインの部分も「繰り返し長く遊び続けられるもの」にしてはどうかという意見も開発の最後の最後、ギリギリまでありました。でも、そうすると肝心のオンラインの世界に来てもらえなくてなってしまうかもしれないし、そうなったら本末転倒だということで、今の完結がある形に落ち着きました。

藤澤氏:オンラインがやはりメインですので、オフライン部分に対して意見や感想を頂くことが少ないんですよ。でも、オフラインに情熱を傾けて作ったスタッフがいるので、「(オフライン部分も)面白かった」と言ってもらえたら嬉しいです。まだプレイしていない方がいたら、ぜひプレイしてみてもらいたいですね。

――オフラインでプレイできるモードもあるMMORPGというのは珍しいですし、斬新だなぁと思いました。メンテナンス中にプレイできるので、そういう意味でも嬉しかったですね。例えば、1年に1回ぐらいあれぐらいのオフラインプレイモードが増えてくれたらとも思うのですがいかがでしょうか?

藤澤氏:メンテナンスに関しては、そもそもなるべく少なくしていきたいと思っている部分ですが、そう言って頂けるのはありがたいですね。後々に余裕が出てきたら、オフライン部分も広げていくというのも面白いかもしれません。




■ 正式サービス開始! その勢いは想像を遥かに超え齊藤氏いわく“ものすごかった”

――正式サービスが始まってから約1カ月が経過したわけですが、お2人にとってどんな1カ月でしたか?

齊藤氏:今週あたりからやっと心が安らいできました(笑)。

 サービス開始当初はやはり、かなり頻繁にメンテナンスをせざるを得なくなってしまって、プレーヤーの皆さんには本当に申し訳なかったと思います。

おそらく最も大変だった、正式サービス開始直後のことを思い出しているお2人。予想の数十倍という負荷や、そこから起こる連鎖的なトラブルがあったということだ

――想定していたよりもユーザー数や負荷が大きかったというのがあるのでしょうか?

齊藤氏:とてもありがたいことなんですけど、“ものすごかった”ですね。

藤澤氏:僕らはβテストを経て、かなり用意周到に準備を進めてきたつもりだったのですが、負荷はβテストの数十倍という規模でした。そこから、想定していなかったようなトラブルがどんどん起こってしまいました。そういう時、僕らはその対応に集中する必要があるのですが、少し説明不足だったというのが反省点としてあります。

 僕らは、オンラインゲームを初めてプレイする人に遊んでもらいたいというのをずっと言ってきたのですが、初めての人であれば「課金ってなんで必要なの?」とか、「メンテナンスって何のためにしているの? しないといけないの?」というのが基本的な疑問だと思うんです。

 メンテナンスって、プレーヤーさんから見れば“ゲームをプレイできない時間でしかない”わけですから、そこで僕らは「今どういう問題が起きていて、それを直すためにどういうことをしているのか」ということを、もっと伝えるべきだったと反省しています。今後、そのあたりもしっかり取り組んでいきたいと思います。

――それはプレーヤーさんも興味深く、納得できるようになると思います。では、例えば正式サービス直後の緊急メンテナンスというのはどういう問題が起きていたのでしょうか?

藤澤氏:サーバー負荷が大きくて処理が追いつかないというのはどんなオンラインゲームでもあると思うのですが、今回「ドラゴンクエストX」で齊藤が当初からこだわっていた仕様として、別々のサーバーにいてもプレーヤー同士でチャットができるという要素があります。パーティーを組んでいる状態も維持されます。それを実現するために“全てのサーバーを管理する中枢サーバー”というのがあるのですが、そこの負荷が想定していたよりも高くなってしまったのです。

齊藤氏:あと、ログインの処理をするサーバーや、ゲームインやパーティーを組んでいる状態を管理するサーバー、チャットの機能を動かすためのサーバーとか、それぞれ役割の違うサーバーがたくさんあるんです。

 そこで例えば、チャット機能の処理が追いついていなくて不具合が起きている時に、チャットのサーバーだけを高速化すれば解決すると思われるかもしれませんが、それひとつを高速化すると、そこで高速に処理されたものが他のサーバーにどんどん貯まっていき今度はそっちがパンクするんです。そうすると他のところに新たな問題が起きます。

 そうしたところを見るために、開発中にはいわゆる“BOT”、架空のプレーヤーを何十万と生み出して、AIで行動をさせて負荷を見るというのもやってはいたんです。でも、実際にプレーヤーさんがプレイするいろんな行動による負荷には及ばなかった。想像を遥かに超えていました。

藤澤氏:実際のプレーヤーさんの場合、チャットの量が想定していたよりも多く負荷も高かったです。さっきの齊藤の話にもありましたけど、そこでチャットの部分を直すと、他の問題が起きてしまうという良くない連鎖がしばらく続いてしまいました。最近やっと、その連鎖も落ち着いてきました。

齊藤氏:あとは、「こんでる」表示になっているところに皆さんが入っていくというのも原因の1つとしてありました。

――プレーヤー数が充実していて楽しそうという風に見えてしまうんですよね。

齊藤氏:そこで告知のドラキーマに一生懸命、すいてるサーバーでプレイしてくださいって言ってもらいました。

――告知のドラキーマの頑張りも含め、全体の運営・開発のチーム編成をおおまかに教えて頂けますか?

藤澤氏:規模はかなりのものですね。Wii U版の開発チームのように明確にわかれているチームもありますが、その他のものは運営・開発それぞれで、できるかぎり共通のスタッフで行なうようにしています。例えば開発では、将来のバージョンを開発するチームと、現行バージョンの保守を行なっていくスタッフをはっきりわけてしまうと、現場での温度感が伝わらなくなると思うので、そこは共通のチームでやっています。

 やはりオンラインゲームは、今プレイしているプレーヤーさんの意向が反映されるべきだと思うんです。将来的なバージョンを作るチームがそれを見ずに先行して作りすぎても意味がなくなってしまうので、この体制が良いと思っています。




■ 現状のバトルや狩り場について

――正式サービス後のバトルについてお伺いしていきたいのですが、何か印象深いことはありますか?

齊藤氏:特定のモンスターがとにかくたくさん倒されているということですね。ピンクモーモンやトンブレロの討伐数が突出していて、ふつう、こんなに狩られた種は絶滅するぞっていうぐらい(笑)。

 

――絶滅されるのは困りますね(笑)。やはりユーザーさんの間で効率がいいと評判になったというのが大きいのでしょうね

藤澤氏:そうですね。効率がいいという噂がまずあって、高レベルになってもリスク無く倒し続けられるというのもあります。モンスターの取り合いみたいな状態でも、そこでプレイし続けるという光景も見られます。確かにピンクモーモンは無難ですが、実は他にも狩りやすいモンスターはたくさんいると思います。

――狩り場を自分で開拓できるようなプレーヤーさんは、別のところを見つけてやっているのかもしれませんね

藤澤氏:そうですね。世界を歩いてみると他にもいろいろとレベル帯にあった、効率のいいモンスターがいるのですが、そういった場所を見つけている人はそこでやっているし、ピンクモーモンでいいやという人はずっとそこでやっているという傾向になっていますね。

 ただ、それに関してはシステム側でも「もっとレベル帯にあったモンスターを狙うといいんだよ」というのを、やっていかなければならなかったなと思ってます。今よりももっと自然に分散してもらえるような取り組みを、今後は何かやっていきたいですね。

――レベルの高いプレーヤーさんでも実際にまだ行った事がほとんどないエリアというのもたくさんあるでしょうね

齊藤氏:たくさんあると思いますよ。その辺で美味しい思いをしている人というのは、放置されているのが多い人が来ないエリアの「青い宝箱」(フィールドにランダムポップする宝箱)を開けまくっています。

藤澤氏:今作ではやはり、“『ドラクエ』はやったことあるけどオンラインゲームはやったことがない”というプレーヤーさんが多いと思います。そういう方に、バトルでヘイトによるターゲットのコントロールをさせたり、あるいは毎回死と隣り合わせのような激戦が続くバランスでは「ドラクエ」が好きな人にびっくりされてしまうと思ったんです。

 僕の思う「ドラクエ」らしい良い戦闘というのは、基本的には難しいことは考えずにボタンを押しているだけなんだけど、それによって色んな展開が起こって、そこで起きたファインプレイを“自分が上手くプレイができた”とプレーヤーが実感できる戦闘です。

 それをひとつの目標として、そこに向かって制作していましたが、一方で、「ドラクエ」をプレイする人の中にも“もっと歯ごたえのあるモンスターとも戦いたい”というプレーヤーさんが想像よりも多かったです。ここは今後の課題として、強敵と戦って勝つためにほかのプレーヤーと一緒に色んな事を試行錯誤していくという要素も入れていきたいと思います。

――戦術的な面白みと言いますか、スキルや特技をどう使うのかというところが結構独特なゲームと感じます。今のバトルからどう深みが増していくのか、オンラインゲームを多くプレイしてきたコアな人でもまだ想像がつかないのかもしれませんね。

齊藤氏:そう簡単には勝てないボスキャラも出てくると思いますよ。

藤澤氏:そうですね。バトルの要素は、オンラインゲームの世界ではかなり異端なゲームだと思います。やはり軸になるのは、開発では“移動干渉”と呼んでいますが、モンスターとの押し合いですね。

 多くのオンラインゲームにあるヘイトコントロールというのは、例えば前衛職のプレーヤーが挑発をしてターゲットを自分に引きつけるというもので、僕自身もあのシステムを初めて理解した時に、完成度の高さにすごく感動しました。

 ただ、「ドラクエ」で例えば戦士が挑発をして「ドラキー」を引き寄せるというような光景があったとして、それが「ドラクエ」らしいバトルだとは思えなかったんです。一方で僕がオンラインゲームをプレイして最初に感じた違和感は、モンスターが自分のキャラをすり抜けてしまう事でした。魔法などを使う後衛のキャラクターを守ろうとして自分が間に割って入っても、すり抜けてしまうんですよね。そこで“本当に体を張って守れたらいいのに”と思ったことが、「ドラゴンクエストX」のバトルの原形になったと思いますね。

齊藤氏:わかりやすいですからね。

――最大の特徴でもある「押し合い」をうまく使っていくというものになりそうですね。ただ他にも、レベルが上がることでもっと特技なども増えると思うのですが、特定の特技を活かした戦術を使うという方向にも進化していくでしょうか? それとも基本的にモンスターとの押し合いやレベルアップでなんとか倒せるものに留めていくのでしょうか?

藤澤氏:1つのエンドコンテンツ的なものとして“このモンスターに勝てますか?”と挑戦してもらうものも必要だろうと思っています。

齊藤氏:とは言え、あまりにも戦術が限定されてしまい、例えばパーティーを構成する職業が決まってしまうようなバランスになってしまうのは良くないと思っています。

藤澤氏:結果的にシビアになり過ぎて楽しみづらくなってしまうのは、避けなければと思います。ですが、正直に言うと、現段階のレベルキャップ(レベル50)で挑むラスボス的な存在というのは、すぐには勝てない存在になるだろうと思っていました。

 実際初めて戦った人は「これは勝てない」という感想だったと思うんです。ですが、装備は練金などが進んで性能が良くなり、戦術も練られて、今では適正に倒されています。こちらが思っている遊びづらくならないギリギリなシビアさというのも、プレーヤーさんは必ず上回っていきますね。

齊藤氏:すでにサポート仲間だけのソロプレイでも倒せてます。

 堀井さんと話したときには、“プレーヤーさん2人とサポート仲間2人ぐらい”で勝てて、レベルキャップが開放された時には“ソロプレイとサポート仲間3人で倒せるぐらい”でやれればいいねと言っていたんですけど、もう現時点でそうなってますからね。

――レベルキャップであるレベル50に到達している人も結構いるのでしょうか?

齊藤氏:データを見ると、想像以上に毎日プレイしてくれている人が多いです。それだけにレベルアップのスピードが速い人もとても多いです。

 今はレベルを上げ、ボスを倒してストーリーを進めるという1つのベクトルの遊びだけになってしまっていると思うのですが、今後いろんな遊びを入れていきます。そうすると、もっと寄り道したりいろんな事をすることができ、レベル上げのスピードにも起伏がつくのではないかなと思いますね。

 今でも、ひとつの職業を一気に上げようと思っている人はレベル50近辺が多いんですけど、今レベル30台ぐらいの人はいろんな職業に転職してベースの能力を高め、その中でメインの職業のレベルが少しだけ高い感じです。

――オンラインゲームで「次はこのボスに行きたいな」と思っても、時間帯などの都合で「いい感じに同じ目的でパーティーを組める人が見つからない」という時間もあると思うんです。その時に、別の事をいろいろやれるというのも大事かなと思います。

齊藤氏:そうですね。今は生産の職人さんをやったり、元からあるクエストに加えてクエストをどんどん配信していますので、それを楽しんでもらうのもいいと思います。フィールド探索でキラキラ光ってる素材を拾ったり、ライブカメラの前で踊るという遊び方もありますよ(笑)。 自分なりの遊びを見つけられる人なら今でもいろいろ楽しめるかもしれませんが、まだまだ遊べる方向が少ないと思っています。開発側から提供する遊びもこれからもっと増やしていきます。そうすれば、レベル上げ以外の遊びもいろいろと楽しんでもらえるようになると思います。

――「ドラゴンクエストX」をプレイしているユーザーさんが今一番関心を持っているのはまさにそこではないかなと思います。

藤澤氏:これまでお伝えしてきた10週間に1度を予定している大型アップデートで順次追加していくのですが、新しいコンテンツには2つの大きな軸があると思っています。ひとつは“レベルを上げてより強力な敵と戦う”というものでいわゆるエンドコンテンツですね。そして、もうひとつは“もっとこの世界での生活を楽しんでいきたい”という方向のものです。

 後者のもので既にお伝えしている要素では「ハウジング(自分の家が持てる)」が大きいですね。土地を買い、家を建て、いろんな家具を配置することができます。バトルではない楽しみの方向がぐっと広がると思います。




 「ドラゴンクエストX」ロングインタビューの前編はここまで。後半には、10月に導入予定の初の大型アップデート「バージョン1.1」や、「東京ゲームショウ2012」でのステージイベント、さらにその先の展望まで“これからの「ドラゴンクエストX」”の話へと移っていく。後編もお楽しみに。




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(2012年 9月 17日)

[Reported by 山村智美]