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SCEA、「GOD OF WAR III」開発者インタビュー
あの500メートルの巨人や怒りの表情はこうして作られた!


2月25日収録(現地時間)

会場:SCEA Santa Monica Studio


 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントは3月25日、プレイステーション 3向けアクションゲーム「GOD OF WAR III(ゴッドオブウォースリー)」を発売した。本稿では「GOD OF WAR III」を開発したSony Computer Entertainment America(SCEA)Santa Monica Studioの開発チームのインタビューを紹介したい。

 このインタビューは2月25日、米国ロサンゼルスにて開催された完成披露会「Global Media Day」の次の日に、開発チームのあるSanta Monica Studioで収録した。ゲームのディテールに踏み込む取材となったため、発売後の記事掲載となってしまったが、「GOD OF WAR III」のキャラクターデザインや、戦闘アニメーションなど各担当者が、どういったアプローチで本作を開発していったか、開発機材でのデモを行ないながら説明を受けた。また、「GOD OF WAR III」のSenior Producerを務めるSteve Catersonにも開発の経緯と、完成の抱負を聞いた。

 また、今回、話を聞くことでほんの一部ではあるが、最先端のアクションゲームがどのように作られているか、どういった役割分担でゲーム表現に取り組んでいるかを知ることができた。統一したビジョンを持ちながら、どこまでクリエイターの個性を作品に注ぎ込んでいくのか、その個性を盛り込むためのツールはどんなものなのか、最先端のゲーム開発現場はどういったものなのか? 本稿では、実際のゲーム画面も交えて紹介していきたい。

SCEA Santa Monica Studioは昔の駅を改装したものだという。「GOD OF WAR III」開発チームの他に、日本などの各国のタイトルをUS版にローカライズする部署や、独立系デベロッパーのタイトルを管理する部署も同じ建物内にある。「GOD OF WAR III」開発チームのブースには様々な「GOD OF WAR」のグッズが飾られていたり、意見を交わしたホワイトボードがあったりと興味深かった。開発者の机の周りはゲームグッズがたくさんあった




■ 500メートルの身体そのものがステージとなるガイアのモデリング。巨人の動きで変化していくクレイトスの状況

SCEA Santa Monica Studio Lead Game DesignerのTodd Papy氏

 最初に話が聞けたのが、Lead Game DesignerのTodd Papy氏。彼が主に担当したのはガイアなどのタイタン族のモデリングだという。Papy氏が画面に映し出したのは、スタート地点でのガイアのシーンだ。

 このステージでは、大地の母神ガイアの体の上そのものが戦いの舞台となる。具体的には、ガイアの右肩から腕の上でクレイトスは走り戦う。設定上のガイアの身長は500メートル。2メートルのクレイトスにとってはガイアの体の上はまさに大地に等しい。

 「GOD OF WAR」シリーズは後のゲームに大きな影響を与えているが、その要素の1つとして、「プレーヤーが立っている場所が動き、変化する」というものがある。最新作の「GOD OF WAR III」ではさらにここから一歩踏み込み、ガイアの上をバトルフィールドにする、というアイデアを実現させた。ガイアは四肢を大きく動かし壁を登り、時にはリヴァイアサンにからみつかれて姿勢を崩す。体の上にいるクレイトスはそのガイアの動きに大きく翻弄されることになる。

 Papy氏はモニター上にガイアのフレームを表示する。クレイトスが進んでいくルートは緑色で表示されている。ガイアの腕の動きでクレイトスがいるところがどう変わっていくかを表示し、クレイトスが上にいると重力や座標がどう変わっていくかが常にわかるようになっている。カメラの動きもここで制御できる。クレイトスの戦いをどの視点で捉えるかを設定できるのだ。フィールドの制御はデータとしての整合性だけでなく、見せ方の面白さ、動きの迫力も必要で、アニメーターと常に話し合いながら作業を進めていく。

 このガイアのモデルはフィールドとしてのモデルだけでなく、石を投げたり、リヴァイアサンをつかんだりと他のアクションをするときにも使っているモデルだ。このためフィールドとしても動いているキャラクターとしても整合性が取られている。ただし、ガイアの内部に入るシーンでは、使われるマップは別物でガイアのモデルには含まれていないという。

 Papy氏が参加したとき、すでにガイアのプロトタイプができていたのだが、Papy氏は最初の大きさからガイアを3倍に大きくしチームの要求する戦いの場所にしていくためにブラッシュアップをしていった。このガイアを作るために、1人のアニメーターと1人のプログラマーが1年間かかり切りになって完成したとのことだ。プレーヤーが「巨人の上で戦っている!」という驚きを与えるために注力したという。

 実際の作業ではここからさらに戦闘専用のコンバットアニメーターや、戦闘部分を担当するプログラマーなど多数のスタッフの手によって「ガイアの体の上で戦うクレイトス」が完成していく。プレーヤーは実際にガイアの体の上で動き、走り、垂直や逆さまになった場合は「ブレイズ・オブ・アテナ」をつきたて、足場にしてしがみつきながら戦っていくのだ。

 ゲームでは、ガイアはリヴァイアサンに腕を引っ張られたり、敵を壁に押しつけたりと状況が目まぐるしく変化する。そのマップが画面切り換えではなくガイアの身体そのものをきちんと動かして作っていたというのは驚かされた。


ガイアのモデリングデータ。クレイトスが戦う場所も設定されている
実際のゲーム画面。ガイアの腕がリヴァイアサンにつかまれ大きく振動し、ついには逆さまになる



■ フィールドを美しく表現するレベルデザイン。しかし何よりも注力するのは“ゲーム性”

Lead Environment ArtistのChris Sutton氏

 次に話を聞いたのは、Lead Environment ArtistのChris Sutton氏。彼のチームはレベルのデザインを担当している。彼らのチームはクレイトスが走破していくフィールドをより美しく表現していくのだ。美しさも重要だが、チームが最も重視するのはゲーム感覚を失わないことだとSutton氏は語る。プレイしやすいフィールド、わかりやすい位置、足場をきちんとプレーヤーに見せた上で、PS3の能力を最大限に活かすフィールドを作り上げていく。

 Sutton氏は実際の作業工程を説明する。今回見せてくれたのはオリュンポスの絶壁に作られた道だ。急な山肌に作られた道は狭く、岩肌はゴツゴツしている。すぐ横は崖になっていて、開いた視界の向こうには遠くの山々が見える。このフィールドの元になるのは大きなブロックを組み合わせただけのマップだ。これがクレイトスが移動できる具体的な「足場」となる。

 ここにイメージイラストを元にフィールドを作り出していく。基本的な岩の並びを描き、テクスチャーを貼り付け、岩場を覆う雪などを追加していく。さらに樹木などのオブジェクトをつけ、風の流れが感じられるようにアニメーション処理を追加していく。背景に関しては引いたパースで設定し、通常のカメラではとらえられない範囲まで設定していく。こうして基本的な地形が完成する。

 次は光源処理だ。プレーヤーを誘導したり注意を払ってもらいたいところに光源処理を行なっていく。プログラマーから提供されたツールで、光源の設定、大きさ、色などを自由に設定でき、瞬時に反映できる。背景での光源と共に重要なのはクレイトス向けの光源である。どんな背景にいてもクレイトスは強い光で背景から浮かび上がるようになっている。影も独立して設定でき、現実の光とは違うが、よりゲームとしてわかりやすい風景になる。このバランスはスタッフの経験から生まれているという。

 「GOD OF WAR」シリーズはプレーヤーがカメラを動かす機能はないため、どう見せるかを開発者側から設定できる。プレーヤーにどこを見て欲しいのか、どう注目してもらいたいかを常に考えて作っていく。以前はディテールに凝りすぎてしまうと言うこともあったが、全体を作りすぎるのではなく、ユーザーの視点ゲームとしての表現を考えて密度を変えていくという。遠景をぼかして前をシャープにするといった処理も行なっている。

 このステージを作る場合、全景と遠景でそれぞれ1人ずつで40日ほどの作業時間がかかった。ゲーム全体では13人のアーティストが本作の背景を作り出しているとのこと。目の前でフィールドをじっくり見せられるとその細かい作り込みに感心させられる。テクスチャーの転用などが可能にせよ、膨大なゲームフィールドを作り上げるのにどれだけの手間と時間がかかるのか、改めて実感させられた。

 Sutton氏は「このタイトルが私たちのPS3の初タイトルです。技術的な試行錯誤していきながらの作業でしたが、他のタイトル以上のものを作り上げなくてはならなかった。そのために全力を尽くしました」と語った。


基本的な足場から、テクスチャー、そして様々な効果を付与してフィールドは完成する。遠くの山などもきちんとモデリングされている
実際のゲームでは、地形の様々な場所を走破していくことになる。様々なギミックを持ちながら整合性のあるレベルデザインが求められる



■ ストーリー性、キャラクター性を重視して作られる“シネマティックムービー”。CGで直接作られるムービーシーン

Lead Cinematic Environment ArtistのJohn Palamarchuk氏

 Lead Cinematic Environment ArtistのJohn Palamarchuk氏のチームはゲーム内での“シネマティックムービー”を担当する。「GOD OF WAR III」では様々なカットシーンがシームレスに挿入され、クレイトスの視界以外でも起きている状況が語られる。Palamarchuk氏のチームは戦闘以外のムービーが担当だ。CSアタックなど戦闘のムービーは他部署の仕事で、“シネマティックムービー”は戦闘以外のムービーを意味する。よりストーリー性にフォーカスし、状況やクレイトスの心情、神々の思惑を表現していくのだ。

 Palamarchuk氏のチームのアニメーターはまず企画から提示された「スクリプト」を画面に起こしていく。この場合のスクリプトとは、プログラムという意味よりも、どう動くか、要素とギミックをテキストなどで指示を出す、指示と提案、アイデアの総称だ。アニメーターはイラストで書かれたストーリーボードや絵コンテ、事前に簡単に作られたCGムービーなどはなく、主にテキストによって書き起こされたシーンを提示され、そこからイマジネーションをふくらませて絵作りをしていくという。

 アニメーター達も絵コンテなどは作らず、直接MAYAでムービーを制作し、動かしながら他スタッフと話し合いをしていくという。アニメータースタッフは最初は大まかなモデルを組み合わせて場面を作り、ムービーの大枠を作る。今回見せてもらったのはポセイドンが上ってくる巨人を撃ち倒し、水の中に潜るシーン。最初のアニメーションではポセイドンは灰色のぼんやりとした人型で、海に落ちたときに上がる水柱はただの円柱だ。まずはこういったシンプルなムービーを作り、シーンの流れ、キャラクターの動き、様々なものの大きさなどを決めていく。

 ここからディテールを描き込む作業に入る。各オブジェクトの精度を向上させ、テクスチャを細かく設定した後、ライティングを設定していく。「PS3になってリアルタイムでライティングを調整できるようになり、より作業効率が上がった」とPalamarchuk氏は語る。シネマティックアーティストはここから霧など画面効果をどんどん描き込んでいくという。大体1つのシーンには3〜4カ月の制作期間がかかるとのこと。

 「GOD OF WAR III」はムービーもほとんどリアルタイムで描画しているため、プリレンダムービーはそれほど多くなく、プリレンダリングを使用する場合も、リアルタイムムービーと混ぜて使っている。プリレンダリングは演出で必要なだけでなく、活用することでバックグラウンドで次のステージのローディングを行なうこともできるため、演出と実用性を両立できるメリットもあるという。

 「プリレンダの目標はできるだけリアルタイムの描画と雰囲気を変えないことですが、演出などでリアルタイムとは違った手法を使うこともできます」とPalamarchuk氏は語った。今回、特に苦労したのは、ガイアの描写で、まずデータそのものが大きく、モデリングをインポートするだけでも数時間かかったという。


ポセイドンが落下し、巨人達を撃ち倒すシーン。灰色の大まかなモデリングで場面を作り、ブラッシュアップしていく



■ 内臓まで表現!? 各キャラクターの特性にフォーカスして決められていくモデリング

Lead Character ArtistのPatrick Murphy氏

 次に説明を受けたのがLead Character ArtistのPatrick Murphy氏による“キャラクターのコンセプトについて”だ。彼のチームはコンセプトに応じて実際にキャラクターモデルを作成していく。Murphy氏はクレイトスなど主要なキャラクターのデザインを担当したとのこと。

 Murphy氏が最初に画面に映し出したのは、冥界で戦うことになるハデスだ。炎にあぶられたような赤黒い肌、トゲのつきだした背中など禍々しい雰囲気のキャラクターだ。開発機器では作業用のPCと共にPS3ではどのように描画されるかがリアルタイムでわかるようになっている環境でモデリングしていく。

 ハデスはダメージを受けると表皮がはがれるのだが、内臓までモデリングされていてかなりグロテスクだ。ゲーム内でははっきりと内臓がわかる程にアップにはならないが内臓もきちんとモデリングされている。もっとも、内臓のあるところは表皮の取れる部分だけで、内臓全て作られているわけではない。ハデスでは3万近くのポリゴンで作られているという。ちなみにガイアは6万5千ポリゴン。ガイアの身体そのものよりも、身体の周りの木が大量のポリゴンを必要とするためだ。

 次に映し出されたのがクレイトスのモデル。「GOD OF WAR III」ではクレイトスのモデリングはムービーもゲーム内も同じものを使用している。身体全体を細かく作っているのではなく、顔など、必要な部分に大量のポリゴンを使用している。顔のモデリングは最大限に時間をかけてモデリングが行なわれた。クレイトスのモデリングは「クレイトスらしさ」を提示し話し合って決めていった。クレイトスは2万3千ポリゴン。ちなみに前作「GOD OF WARII」では2千ポリゴンだという。

 「クレイトスらしさは、まず体型にある。クレイトスは腕と足が長く、頭が小さい。拳は大きめだ。リアルではあり得ないプロポーションをしているが、それがゲームの中ではうまくマッチするんだ。とがった顎、耳は小さく、ヘルメットのような頭。そしていつも怒りの表情をしている。ゲーム内では彼は時に小さく、時に大きく表示されるが、どの場合でもクレイトスだ、とわかるようにデザインしている」とMurphy氏は語る。

 モデリングに関しては、キャラクターはスケルトンが決められており、また動きを意識するため、極端なモデルデザインや、出っ張った部分などある程度制限される。そういった制約の中でコンセプトを表現するキャラクターモデルを制作していった。

 クレイトスの表情に関しては、筋肉や血管に注意しながら、「動物的な表情」を演出することを心がけたという。前作までのモデリングはムービー用のデーターは別のスタジオで作成されていたりと、統一されたものがなく、『GOD OF WAR III』では足りない部分も含めて全て作り直さなくてはならなかった。またコンセプトを改めて検討し、シリーズ間で違うデザインになったキャラクターもいるという。


精密で、キャラクター性が細部までみなぎっているキャラクターデザイン。クレイトスは頭や顎の形からも“野獣のような雰囲気”が感じられる
大きなハデスが躍動感たっぷりに動く。モデリングの確かさを実感できる場面でもある。CSアタックではクレイトスはハデスの表皮をはがしていく



■ 神々、英雄、モンスターならではの動きを! アニメーターと二人三脚で作る戦闘・武器デザイン

Combat/Weapons DesignerのAdam Puhl氏

 クレイトスの戦闘のアイデアや、武器デザインを担当するのがCombat/Weapons DesignerのAdam Puhl氏のチーム。Puhl氏のチームは戦闘に関する動きや、使用する武器などの詳細をテキストや簡易プログラムで提示する「スクリプト」で指示を出し、戦闘アニメーションスタッフがそのアイデアを元に武器やモーションを作り上げていく。お互いに意見を交換しながらクレイトスの戦闘時のモーションやCSアタックを作り上げていくという。

 実際に作り、画面でモンスターと対峙させ、どう動いていくかを考え、簡易プログラムとテキストでイメージを作り上げる。その要素から、どう作っていくかはアニメーターの仕事だ。Puhl氏はアニメーターが作ってきたアニメーションを実際のゲームでどう活かすかをデザインしていく。敵との対峙、敵の攻撃の範囲、ステージとの整合性、難易度、攻撃時のレスポンスなど様々な要素を考え、マッチした「動き」を作り出していくのだ。

 アニメーターのセンスを活かしつつゲームにマッチした形を求めていくため、いつでも意見交換し、修正できるようにPuhl氏の部署と戦闘アニメーターの部署は隣り合っており、すぐに行き来が可能だ。もっと早く動かしたい、できるだけシンプルな動きで表現したいなど、アニメーターが作り上げたシーンに、もう1度デザイナーから注文を出し、修正作業を行なうことも多い。

 Puhl氏のチームは様々なアニメーションをピースで管理し、1つ1つの要素をチェックしていく。アニメーションを考えるときはキャラクター性を最も大事にしているという。サイクロプスなど体の大きなモンスターは、いかにも大きく、行動に慣性をつけたアニメーションにする。気を付けるのは「敵の動きを多すぎないようにすること」プレーヤーに行動を覚えさせ、次に同じ敵と対峙したとき、プレーヤーが敵の性格を把握して戦う駆け引きを重要視している。

 CSアタックのアイデアも戦闘デザインチームが作る。こちらの提示したアイデアに、アニメーターが残酷すぎる絵を作ってきて没にすることもあるという。残酷さはセールスポイントだが、一定の基準は持たせている。リアルすぎない描写にも気を使っている。「楽しい」と「気持ち悪い」のバランスを気を付けているという。

 ポセイドンの両目をクレイトスが親指でつぶすとき、プレーヤーはコントローラーのスティックを親指で押し込む。このデザインは話し合って「いままで誰もやったことのないアイデアだ!」と興奮したという。ポセイドンがクレイトスに倒されるときはポセイドンの視点になる部分がある。これはある映画の演出が元ネタになっている。

 以前の欧米のゲームは当たり判定や、地形とキャラクターの関係で大味さがぬぐえなかった。Paul氏達は「デビルメイクライ」に大きく影響を受け、繊細な当たり判定、戦闘の爽快感、ゲーム性などを練って「気持ちいいプレイ感」をもたらすゲームを作るようになったという。これまでコンバットデザインをするデザイナーというのは欧米では少なかったが、現在はプレイ感にフォーカスしたPuhl氏達のような開発者も増えているとのことだ。

 Puhl氏は「欧米のゲームが日本で受けいられないのは残酷描写が原因なのか?」と、逆に我々に質問をしてきた。「そうではないと思う」と筆者は答えたが明確な答えを出せなかった。ユーザーが残酷描写を忌避しているだけで欧米産ゲームをプレイしないわけではないだろう。しかし、昨今の欧米で大きなヒットを記録する作品はテーマ性、ゲーム性、グラフィックス共に優れているが、日本の市場の浸透度はまだまだだと感じる。どうしてなのか筆者自身はまだまだ考えていかなくてはいけないと、改めて思った。


サイクロプスならではの動きを、スローモーションなどの演出を、Combat/Weapons Designerはそれぞれのキャラクターや場面に合わせた動きを考え、そして演出していく
ポセイドンとの戦い。ガイアと協力してポセイドンの本体を撃ち抜く。クレイトスの前に敗れたポセイドンは、クレイトスの怒りの力の前に圧倒されていく。犠牲者の視点に変わるアングルは映画が元ネタだという



■ 整合性を持たせつつも、爽快感にフォーカスし造られる戦闘アニメーションパート

Lead In-Game AnimatorのBruno Velazquez氏

 デザイナーと共に協力し、戦闘シーンを作っていく戦闘アニメーターチームのリーダーがLead In-Game AnimatorのBruno Velazquez氏だ。彼が見せてくれたのが、タロスとの戦闘シーンだ。CSアタックによるとどめのシーンで、クレイトスがタロスの持っていた棍棒を奪い、叩きつける。

 開発機器に映るクレイトスとタロスの周りには線が引かれ、黄色い枠が描かれている。黄色い枠がカメラで、黒い線はカメラの方向を示しているという。CSアタックは通常の戦闘と違い、要求されたボタンを押すことで進行する。リアルタイムではあるが制作側がカメラ位置を固定して提示できる。アニメーション作成用のツールでは複数のカメラで様々な視点を検討し、ベストの演出、アングルでアニメーションが展開するように作り込んでいく。

 モデリングそのものはどの角度から見ても整合性がとれるものにしていくが、CSアタック時には見栄えの良いカメラを選ぶ。ゲーム内では常に4つのカメラ視点が用意されており、アニメーションの演出として1番見栄えの良い1つを選んでいく。

 クレイトスや怪物の動きはモーションキャプチャーではなく、アニメーターが動かしていくという。モーションキャプチャーはムービー時に使用しているが、戦闘アニメーションはデザイナーのセンスで動かす。キャラクターのモデル自体はボーンが設定されており、ムービー用もアクション用も共通のモデルを使用しているため、整合性も取れているという。

 開発ツールには関節の限界値、動きに合わせた筋肉の動きなど、モデリングとして不自然にならないように設定がされているため、アニメーターはクレイトスの関節を動かしながらアニメーションを作成できる。不自然さを出さない範囲でセンスを活かした設定が可能になっているのだ。

 「GOD OF WAR III」ではアニメーション中のキャラクターの顔にもこだわりを活かしている。前作まではムービー用のキャラクターモデルとゲーム用のモデルが違ったため表情の変化まではモデリングできなかったのだが、今回はアニメーションを設定しながら同時に表情まで設定できる。様々な場面でクレイトスを含め敵キャラクターはとても表情豊かになっているのでぜひ見てもらいたいという。

 アニメーションでは「爽快感」を大事にしているとVelazquez氏は語る。開発スタジオにはデバッグチームもあり、彼らにプレイしてもらったときのフィードバックが大きな指針になっている。やり過ぎなのか、どうすると気持ちが良いのか、デバッグチームのプレーヤー達の感想からバランスを模索している。

 ちなみにCSアタックはまずアニメーションを作ってから、それに合わせた操作をデザイナーチームが設定しているという。スローモーションになったり、アングルなど特殊効果もアニメーションチームが設定している。アニメーションチームはチーム内やデザイナーチームと打ち合わせをするときは、実際に身体を動かして動きを見せることも多い。このため、「あの部署はケンカをしてるんじゃないか」と他の部署から言われたこともあったという。


ゲーム内の戦闘アニメーションを担当。カメラの位置や、攻撃時のキャラクターの表情まで様々なポイントにこだわり制作されていく
爽快感に注力したというCSアタック。残酷な表現だが、勝利の実感がこみ上げてくる演出だ。右は通常攻撃によるのけぞりだが、ここでも「クレイトスのパワー」が実感できる



■ プロデューサーインタビュー、ユーザーに楽しんでもらうことを最大の目標に作られた「GOD OF WAR III」。今後はDLCの配信予定も

Senior Producerを務めるSteve Caterson氏

 最後にインタビューを行なったのは、本作のSenior Producerを務めるSteve Caterson氏だ。Caterson氏は「私は『GOD OF WARII』からプロデューサーを担当しているが、『GOD OF WAR』シリーズに関わって、7年になる。今回、ようやくゲームが完成し、ほっとしているというのが正直なところだ。“とても長い旅”だったよ」と語った。

 最初の作品である「GOD OF WAR」は50〜60人くらいで作り、「GOD OF WAR II」では80人、「GOD OF WAR III」では120人のスタッフで開発を行なった。コアメンバーの他に新しい人を入れたり、1度離れてから戻ってきたゲーム開発者もいる。前作のディレクターは「GOD OF WAR」のアートディレクターを務めていた。「GOD OF WAR III」でも同じように「GOD OF WARII」でアートディレクターだったStig Asmussen氏がディレクターを務めることとなった。

 Asmussen氏をディレクターに起用したのは、彼は「GOD OF WAR」シリーズを深く理解しており、様々な部署とも関係が深く、プログラムやゲームデザインへの理解もきちんとしている人物だったからだ。マルチメディアやポップカルチャーへの知識もあり、ゲームディレクターとしての素質があった。アートディレクターとして20人以上のチーム管理も経験しており、そういった実績からAsmussen氏にディレクターを任せるようになったとのことだ。

 「GOD OF WAR」シリーズはアメリカでのSCEAの人気を支えるタイトルとなった。制作に対してのプレッシャーはなかったか、という質問に対してCaterson氏は「制作の際、プレッシャーに関しては考えを向けないようにしていた。意識するとナーバスになってしまうから。自分たちにチャレンジを課し、自分たちで乗り越えるということに意識を集中していた。とにかく『できる限りのことをする』ということを命題にした」。

 「『GOD OF WAR III』はもちろんGame Developers Choice Awardなどの受賞も狙っているが、それよりもやはり“ユーザーに楽しんでもらいたい”と思っている。ユーザーから楽しかったという声が聞こえればそこで我々は成功したといえるだろう。家族や、友人、みんなが楽しんでもらうゲームになったか、というのが私の考えるゲームの評価基準だ」とCaterson氏と語った。

 「GOD OF WAR」は3部作となったが、正直なところ1作目を作ったときは続編は考えていなかった。「1」の成功を受けて作られた『II』は続編を意識して制作された。第1作目の「GOD OF WAR」の最初のテーマは“なぜギリシャ神話は過去の遺物になってしまったのか”というものだった。しかし「II」からは「I」で提示されたコンセプトやストーリーから“自然な流れ”を意識し、クレイトスの行動から生み出される結果を追っていく、という方向性で開発が進んでいったという。

 「GOD OF WAR III」の次にCaterson氏は何をするか、という質問には「いまはわからない。個人的には、何か別なことをやってみたい。私もゲームのアート方面の出身だ。1アーティストとして、自分の感覚を改善していくために、色々な体験をしたいし、色々な経験をしたい。音楽やエンターテイメントを研究していきたい。スキューバダイビングもいいね(笑)。この『GOD OF WAR』フランチャイズを続けるとしても、色々な影響を受けた上で、新しいものを生み出していきたいと思っている」と応えた。「GOD OF WAR III」の今後の展開としては、DLC(ダウンロードコンテンツ)を考えているが、詳細は現在はまだあきらかにできないとのことだ。

 最後にユーザーへのメッセージとして、Caterson氏はこう語ってくれた。「『GOD OF WAR III』は我々がPS3の能力を最大限引き出した作品だ、ということを感じて欲しい。前作、前々作をみると当時は“すごいことをやった”という実感があったが、いまの視点から見るとやはり色あせて見える。今後もっともっとすごい技術が開発されるかもしれない。私自身、『GOD OF WAR III』を数年後見たときに、どう思うかとても興味がある。皆さんにも現時点での最先端に触れる驚きと、この技術が今後どう評価を受けていくかに注目して欲しい」。


(C)2010 Sony Computer Entertainment America Inc.

(2010年 3月 31日)

[Reported by 勝田哲也]