PS3ゲームレビュー

最強、最高、最先端のアクションゲーム見参!
更なる蛮性を宿すクレイトスに酔いしれろ!

「GOD OF WAR III」

  • ジャンル:アクションアドベンチャー
  • 発売元:ソニー・コンピュータエンタテインメント
  • 開発元:Sony Computer Entertainment America
  • 価格:5,980円(ゴッド・オブ・ウォー トリロジー:9,800円)
  • プラットフォーム:プレイステーション 3
  • 発売日:3月25日
  • プレイ人数:1人
  • レーティング:CERO:Z(18歳以上のみ対象)


  •  「GOD OF WAR III(ゴッド・オブ・ウォー・スリー)」が3月25日、ついに日本でも発売される。ゼウス、ヘラクレス、ゴルゴン、キマイラ……ギリシャ神話の神々、怪物達が闊歩する世界で、禿頭の英雄クレイトスが血塗れの戦いを繰り広げる。怪物を屠り、巨人を倒し、神を殺しながら目指すは主神ゼウスへの復讐! 本作はバイオレンス溢れるアクションゲームである。プレーヤーはその圧倒的な“力の感触”に酔いしれることになるだろう。

     本作はシリーズ伝統となっている過激な残酷描写があり、レーティングは最高のZに位置づけられる作品となっているが、これまでのアクションゲームの歴史を変えるスケールとギミック、「PS3の性能を最大限に引き出したゲーム」と迷わず言い切れる最高のグラフィックス表現はぜひ、目にして、そして触れてもらいたい作品だ。自分が無敵の英雄になったかのような高揚感を感じられる作品だ。



    ■ クレイトスの血塗れの復讐ついに完結!? 狙うはゼウスの首!

    主人公クレイトス。彼の憤怒と復讐の心は、神をも殺す力へと変わっていく
    ファーストステージは、ガイアの身体の上。足場は戦いの間絶えず変化する
    タイタンを迎え撃つオリュンポスの神々。右からポセイドン、ヘルメス、ゼウス、ハデス、奥にヘリオスがいる

     クレイトスとオリュンポスの神々の最終決戦が始まる! 「GOD OF WAR III」はオリュンポスの主神ゼウスの血を引く英雄クレイトスの血塗れの戦いを描くアクションゲームである。プレーヤーはクレイトスを操作し、襲いかかってくるギリシャ神話の怪物をたたきのめし、神々自身と対決していく。

     スパルタ軍最強の戦士だったクレイトスはバーバリアンの戦いの際、魂を戦の神アレスに捧げ、神の戦士となる。しかしアレスはクレイトスをさらに強くするために、クレイトスの娘と妻を彼自身が殺害するように仕向ける。クレイトスの怒りはアレスに向けられ、彼はついにアレスを倒し、戦いの神となる。

     しかしその戦いがオリュンポスの主神ゼウスに恐れを抱かせた。ゼウスはクレイトスを戦いの神として利用した後、その力を奪ってしまう。しかしクレイトスは倒れなかった。彼を止めようとする運命の3女神を撃ち倒し、ゼウス達によって支配者の地位を追われた巨人族タイタン族を味方につけ、彼らと共にオリュンポスの神々へ挑戦の雄叫びを上げる。「GOD OF WAR III」のオープニングはこの、巨人達と共に神々の元へと向かうシーンから始まる。今作で、いよいよオリュンポスの神々との最終決戦が描かれるのだ。

     「GOD OF WAR III」は最初からプレーヤーを一気にゲーム世界の中に引きずり込む。タイタン族の身長はおよそ500メートル。最初のステージはタイタン族の1人、ガイアの身体の上が舞台となる。オリュンポスに繋がる岸壁を巨大な身体を動かし上っていく巨人達の姿は圧巻だ。迎え撃つゼウス、ポセイドン、ハデスらは身体の大きさは人間サイズだが、その力は圧倒的で、巨人達を翻弄する。そしてポセイドンの使い魔「リヴァイアサン」がガイアを襲う。

     リヴァイアサンは使い魔と言っても、巨人ガイアを海に引きずり込むほどに強力で、大きい。その強大な怪物に恐れることなく向かっていくクレイトス。リヴァイアサンのパワーの前に、ガイアの姿勢は大きく乱れ、時には垂直に、時には天地逆さまになって戦う。リヴァイアサンを撃退したと思ったのもつかの間、さらに巨大なポセイドンが三つ叉の槍を手にガイアを圧倒し、クレイトスを狙う……。

     クレイトスが立つ大地そのものが垂直に、逆さまに動くダイナミックな仕掛け、敵に合わせ自在に視野を拡大縮小するカメラ、群がるザコ敵、身体の表面にひっきりなしに水をしたたらせ、馬の頭とカニの足を持つ不気味な怪物リヴァイアサン、そしてポセイドンの圧倒的なパワー描写、ガイアもまたその巨大な体躯で戦う。

     これら強大な存在の前に、身長2メートルという圧倒的な“小ささ”でまったく引けを取らないクレイトスがまたすごい。クレイトスの描写はその派手な敵達に力負けしない。手に巻き付けた鎖で振り回す刀「ブレイズ・オブ・アテナ」の赤く美しい軌跡、リヴァイアサンの足をもぎ取り、ポセイドンの胸のコアをこじ開けるそのパワー、クレイトスの戦いに、いつしかプレーヤー自身が肉食獣になったかのような荒々しい感覚に飲み込まれ、画面に圧倒されていく。「GOD OF WAR III」はプレーヤーの“内なる蛮性”を刺激する、演出と描写が楽しい作品だ。最初のポセイドンの戦いから、プレーヤーは「GOD OF WAR III」の世界に取り込まれるだろう。

     「GOD OF WAR III」のモチーフとなっているのは「ギリシャ神話」である。雷を操る天空の神ゼウス、海の神ポセイドン、死者の国の神ハデス、商売と泥棒の神ヘルメス、美の神アフロディーテ、鍛冶の神ヘファエストス……、神話で語られる様々な神が登場する。ギリシャ神話最大の英雄であるヘラクレスは、「私は様々な試練を与えられたのに、クレイトスの方が名声を得ている」という嫉妬にかられて勝負を挑んできたりするのだ。ギリシャ神話に対する知識があると、この作品は一層楽しい。

     「GOD OF WAR III」は力強い演出、ステージそのものが大きな仕掛けになるというアイデア、ギリシャ神話からふくらまされたイメージ、そしてパワー溢れる演出と、全ての要素が従来のゲームの範囲を超えたアクションゲームである。前作「II」がそうだったように、全てのゲーム開発者への挑戦状というべきクオリティを持っている。プレーヤーはPS3というハードの潜在能力を実感することになるだろう。悪のり気味の残酷表現と年齢制限のため、全ての人にオススメとは言い切れないが、血湧き肉躍る“蛮性”の世界はぜひ多くのプレーヤーに見てもらいたい。

     1つだけ気になったのが、特に最初のステージの難易度だ。リヴァイアサン、ポセイドンと巨大な敵と派手な戦いが続くのだが、最初のステージにしては敵の攻撃範囲がわかりにくく、結果として魔法攻撃連打でのりきるバランスになっている。この魔法は以降のステージでは使えない上に駆け引きもレベルアップするのだが、若干の「大味さ」はぬぐえない。チュートリアルやヒントの出し方ももう少しというところで、厳密な「ゲーム性」を切り取ってみると、最新のアクションゲームの基準から言うと、全体的にもう少し煮詰められるようにも感じた。


    目まぐるしく動くガイアの上で、リヴァイアサンと戦う。吹き出る水の表現が美しい
    リヴァイアサンを撃退した次の瞬間襲ってくるポセイドン。ガイアと協力し、人間サイズの“本体”にクレイトスが攻撃を加えるシーンは凄惨だ。ガイアとクレイトスはゼウスのところまで登りつめるが、雷に撃たれ、クレイトスは一気に冥界まで落とされてしまう
    左から、鍛冶の神ヘファエストス、前作で命を絶ったはずの戦の女神アテネ、そして英雄ヘラクレスとの力比べのシーンだ。ギリシャ神話の知識があると、本作は一層楽しめる



    ■ 神をも殺すクレイトスの武器。力を引き出し、怪物達をたたきのめせ

    新たな武器、ブレイズ・オブ・エグザイル。オレンジ色の軌跡を放つ双剣だ
    オーブを消費して武器を強化。ゲームが進むと武器の種類が増えていく

     クレイトスのアクションはパワフルで大きな爽快感をもたらしてくれる。今回は「ブレイズ・オブ・エグザイル」という名のオレンジ色の軌跡を描く、鎖に繋がれた刀がメインウェポンとなる。クレイトスはこれを振り回し、多数の敵をなぎ倒していくのだ。□ボタンで出す通常攻撃と△ボタンで出す強攻撃を組み合わせてコンボを繋げていくことで、敵を吹き飛ばしてバリバリ戦っていける。

     敵の攻撃は右スティックで回避する。右スティックを倒すとクレイトスは素早くその方向に移動し、敵の攻撃をかわす。敵に囲まれないようにすばやく位置を変え、敵の集団に切り込んでいく、というのが基本的な戦い方だ。また、L1ボタンでガードができ、敵の攻撃にタイミングを合わせることで敵に大きな隙を作らせるカウンター攻撃ができる。さらに武器を強化していくとボタンの組み合わせでより多彩な攻撃ができるようになる。

     ゲームを進めていくことでクレイトスは様々な武器を入手する。サブ武器としては遠距離攻撃と、周りの敵を巻き込む炎の攻撃ができる「アポロの弓矢」、敵をひるませられ、隠されたものを暴く「ヘリオスの頭」、ダッシュで敵に突撃する「ヘルメスのブーツ」がある。これらは閉ざされた道をすすんだりマップの様々な仕掛けを突破するのにも有効だ。

     メイン武器としては「ブレイズ・オブ・エグザイル」の他に、ハデスの使う鎌「ハデスの鉤爪」、ヘラクレスの使うボクシンググローブのような打撃武器「ネメアのカエストス」といった武器を入手していく。ハデスの鉤爪は遠距離まで攻撃でき、様々なモンスターの“魂”を呼び出す能力がある。ネメアのカエストスは接近してパンチ連打という、他の武器とは違った戦い方をする。他の武器では壊せない堅い物質を破壊できる、“ヘラクレスの力強さ”を体現する武器だ。

     これらの武器は敵を倒したりすることで入手できる「オーブ」というアイテムを使って強化する。どの武器をどう強化していくかで戦い方は変わってくる。この他に体力の上限を上げるアイテムなどが用意されており、それらの多くはマップの脇道や、ヘリオスの頭から放たれる光で発見できる場所に隠されている。オーブはマップのオブジェクトを破壊すると取れる場合もあり、丹念な探索がクレイトスを早く強化できる道となっている。「探索要素」も本作の大きな楽しさだ。

     「GOD OF WAR III」ではクレイトスの能力を引き出していくのが楽しい。どうコンボを当てるか、魔法はどう使い、敵の能力をどう返せばいいか。アポロの弓矢を使う方が効率が良い場合もあるし、有効な武器も敵によって異なる。また1度クリアしてからは別な武器で敵に挑む、という楽しさもある。難易度によっても大きく戦い方は異なっていく。ハードモードでは敵からのダメージが大きくなり、より慎重な戦い方を求められるし、反対にイージーモードならばクレイトスの無敵っぷりを堪能できる。イージーモードはまず爽快感を味わいたい、という人にオススメだが、難易度が変わるのは戦闘のみで、謎解き要素などは共通なので注意したい。


    怪物の魂を使役するハデスの鉤爪の魔法。ネメアのカエストスはオニキス製の縦やオブジェクトも破壊できる。アポロの弓は溜め攻撃することで炎の矢を発射できる
    炎の矢で行く手を阻む茨を燃やす。ヘリオスの頭はランタンのように暗闇を照らす。ブレイズ・オブ・エグザイルは引っかけることでロープ代わりになり、離れた場所へターザンのように移動できる
    ブレイズ・オブ・エグザイルの魔法はスパルタの戦士の魂を呼び出し、周囲に攻撃できる。オリュンポスの剣は、ゲージを消費することで一定時間無敵に。ヘリオスの頭は隠されたアイテムボックスを見つけ出す



    ■ 引き裂き、突き刺し、えぐり抜け! モンスター達を残虐に殺すCSアタック

    火のタイタンと対決。アクションシーンの演出は毎回驚かされる
    サイクロプスの目玉を引き抜く。顔をしかめそうになる残酷描写だ

     「GOD OF WAR III」では登場する怪物達もギリシャ神話にちなんでいる。蛇と獅子と山羊の頭を持つキマイラ、1つ目の巨人サイクロプス、牛頭人身のミノタウロス、人間の頭を持つ鳥ハーピーなどが開発者独得のアレンジで描かれる。プレーヤーはクレイトスの能力をフルに発揮してこれらと戦っていくのだ。

     蛇の生えた頭を持ち見る者を石化させるゴルゴンは蛇の下半身を持つラミアと合わさったような姿をしていて、クレイトスを蛇の身体で圧殺しようとするのだが、そのぬめぬめとした鱗の描写が、艶めかしくおぞましい。力強い青銅の巨人タロスは身体以上に大きいハンマーをクレイトスに叩きつけてくる。

     こうした不気味なモンスター達を“残忍”に殺していくCSアタック(コンテキスト・センシティブ・アタック)も本作の大きなセールスポイントの1つ。CSアタックとは敵の体力を一定まで減らすと発動できる「とどめの攻撃」で、画面に表示される指示に従うことで大迫力の攻撃を繰り出すことができる。ボスへのとどめは必ずCSアタックで、ザコ敵もCSアタックを使うことでボーナスのオーブを得ることができる。

     ゴルゴンの場合は地面に引き倒し蛇の身体を縦に切り裂いた後、首をつかんで引っ張り、もぎ取ってしまう。タロスの場合はハンマーを奪い取り叩きつける。キマイラは蛇のしっぽを切り落とし、ライオンの頭をぐしゃぐしゃにした後、山羊の頭を地面に押さえつけ角をむしり取って突き刺す。ミノタウロスは口の中に刃を突っ込んでそのまま貫く。頭を押さえつけられたミノタウロスが鼻息を吹き出して抵抗する姿がリアルだ。この力比べはボタン連打で処理されるシンプルなものだが、思わず力が入ること請け合いである。

     強大な敵を動ねじ伏せ、そして圧倒的な力を見せつけて倒す。背筋を駈け上る力の感触と、残虐な描写に「うわぁ」と思わず小さく悲鳴を上げてしまう背徳感がリアルだ。爽快感とちょっと引いてしまう残虐な描写は多少ユーザーを選ぶかな、とも思うが、「神話時代」ならではの野生と蛮性を呼びさます、荒々しい“力の感触”をプレーヤーにもたらしてくれる。

     巨大なポセイドンやハデスとの戦いもCSアタックが発動したらとどめの瞬間だ。敵の身体をよじ登り、弱点を見つけ出し、倒す。ここでは開発者のイマジネーションが炸裂する。また、神々だけではなく、500メートルの体躯を持つタイタン族と正面から戦うというシーンも用意されている。「神を殺す」という人間では本来不可能な行為に対して、開発者達が限界まで知恵を絞り作り上げた世界をたっぷり楽しむことができる。本作の圧倒的なスケール感を強烈に感じられる場面となっているのだ。


    ぬらぬらした鱗の表現が美しいゴルゴン。鉄の身体を持つタロス。ケルベロスは隙を作らせることで一定時間操ることができる
    ハーピーを捕まえ、離れた場所まで移動する。蛇のしっぽと獅子と山羊の頭を持つキマイラ。右はケンタウロスの腹から内臓を引き出すCSアタックだ
    様々なCSアタック。リヴァイアサンの脚を切断し、この脚をコアに突き立てる。ミノタウロスとの力比べでは、このまま刃を口の中に突き立てる。ヘリオスの首をもぎ取るシーン。ヘリオスの苦悶に歪む顔がリアルだ



    ■ 再びオリュンポスを目指して。冥界からはい上がるクレイトスの旅路の終わりには?

    ハデスとの綱引き。この状態でお互いが相手を攻撃する
    クレイトス音ゲーに挑戦!? ミューズの歌声の仕掛けだ
    シリーズ伝統のミニゲーム。今作のお相手は美の女神アフロディーテだ

     ポセイドンを撃退したクレイトスとガイアは一気にゼウスの元に登りつめるが、ゼウスの雷の前に、クレイトスはオリュンポスから一気に冥界まで落とされてしまう。ここから長い「上」への旅がはじまるのだ。

     冥界では炎で茨を燃やし、その上昇気流を使って高く上ったり、ケルベロスを無理矢理従わせ、他の敵と戦うなどのいくつものギミックが楽しい。そして冥界の奥深くで待ち受けるのは、かつて妻ペルセポネを殺され復讐に燃える冥界の神、ハデスだ。ハデスはブレイズ・オブ・エグザイルによく似た鎖の先に鎌を結びつけた武器で攻撃してくる。

     ハデスの身体は10メートルほどで、巨人やポセイドンと違いと1画面に身体全体が収まり、クレイトスと接近戦を行なう。モーションがはっきり見え、だからこそ力強さがリアルで、怖い敵だ。ハデスとは鎖をお互いが握り力比べをするシーンも用意されている。古の決闘のような演出が面白い。プレーヤーもグッと力が入る場面である。

     冥界を脱出したクレイトスはオリンピアの町を進む。ここでは太陽神ヘリオスと火のタイタンが戦いを繰り広げている。クレイトスの前にはケンタウロスが立ちはだかり、雑兵との連係攻撃を仕掛けてくる。プレーヤーはクレイトスの戦いに夢中にならざるを得ないのだが、視界の隅で行なわれているタイタンとヘリオスの戦いにも心が向いてしまう。さらにキマイラがクレイトスを襲うのだ。

     クレイトスはこの後、タイタンに手を貸しヘリオスを撃退した後、ヘリオスにとどめを刺すのだが、ここでバックブリーカーというプロレス技を繰り出すのが「クレイトスらしさ」なのだ。昨年のE3で話題になった「神の首をもぎ取るシーン」がここで炸裂する。日本版は首を引きちぎるシーンはカメラアングルの変更で、引きちぎる瞬間だけ写らないように対応している。

     「GOD OF WAR III」では人間と変わらない等身大の神を倒すシーンがいくつかあるが、やはり人間と同じ姿をしているだけにクレイトスが痛めつけるシーンはかなりエグイ。「オリジナルに忠実を!」というファンの声もあるとは思うが、カメラのアングルがわずかに変わっただけで、シーンの残酷さはきちんと表現されていると感じた。また、収録されている音声は日本語吹き替えのみで、オリジナルの英語と言葉のタイミングを合わせるためか、一部の台詞回しに少し違和感を感じる部分もあった。とはいえクレイトス役の玄田哲章さんをはじめ声優の熱演にも注目である。

     ヘリオスの首をもぎ取った後、クレイトスはこの首をランタン代わりに使う。ムービーシーンでもこの首を持ったままだったりするのが面白い。この後も様々な神話上の怪物が出てきたり、意外なキャラクターが再登場したりする。イカロスの翼を広げて狭い場所を一気に上昇するシーンや、リズムに合わせてボタンを押すいわゆる「音ゲー」のミニゲームすら盛り込まれている。もちろん、シリーズ通じての「お色気ミニゲーム」もきちんと収録されているのでファンは楽しみにして欲しい。

     ゲームの展開と共に気になるのがやはりストーリーだ。ポセイドンが倒されることで大地には大津波が押し寄せ、ヘリオスが倒されることで太陽が雲に隠れてしまう。神の死亡は世界の破滅をもたらし、人間達はただ神の助けを待ち、クレイトスを止める力もなく嘆き悲しむだけだ。クレイトスの復讐は世界に何をもたらすのか。神との戦いの果てには何があるのか。壮大な神話が本作で終焉を迎える。開発者の熱くて濃いメッセージをぜひ受け取って欲しい。


     「GOD OF WAR III」は驚きのシーンが連続するスケールの大きなアクションゲームである。ステージそのものがダイナミックに変化する感覚、広大な空間が表現されるスケール、「神と戦う」という人間には不可能と思える過酷で背徳的な戦いを繰り広げていく高揚感をこれまでのゲームではなしえなかったレベルで表現している。アクションゲームの歴史の到達点ともいえるゲームであり、他のタイトルがここまでのレベルに近付くことができるのかが今後の課題となってくるだろう。

     ただし、本作においても地形によって2段ジャンプしにくかったり、3D表現のため距離が測りにくかったりと細かいところでミスをしてしまう部分もあった。「トゥームレイダー アンダーワールド」や「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」などはきちんと方向を定めてジャンプすれば、ミスにならないように設計されているが、本作では足場を飛び越えてしまったりする場面もあった。戦闘での当たり判定や、謎解きのヒントの出し方など、本作はまだまだ進化していく余地を残しているとも感じた。この作品が今後、ゲーム史にどう影響をもたらしていくかにも注目していきたい。


    暗く陰惨な冥界。様々なパズルを解くことで先への道が見えてくる。ラストはハデスとの対決だ
    神々の戦いで混乱するオリンピアの町。人々はただ逃げまどうだけだ。キマイラとの戦いの間、ヘリオスは炎を投げつけて攻撃してくる。イカロスの翼で、クレイトスはさらに上へ、オリュンポスを目指す
    炎が次々と落ちてくるシーンや、鏡の迷宮、ヘルメスとは追いかけっこで戦う。翼の生えたサンダルを履くヘルメスは神々1の俊足だ
    鎧をつけたサイクロプスなど強化されたモンスターも次々と登場する。500メートルの身体を持つタイタンとも正面から戦うとシーンも用意されている


    (C)2010 Sony Computer Entertainment America Inc.

    (2010年3月24日)

    [Reported by 勝田哲也 ]