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YECK Entertainment CEO 蔡光程氏インタビュー
支援のもとPS3、PSPタイトルを制作する台湾メーカーのビジョン

6月30日収録

 

 ソニー・コンピュータエンタテインメント アジア(SCEA)の台湾支部(SCET)と台湾経済部とその外郭団体の資訊工業策進会(資策会)が6月29日に開催した「新世代デジタルコンテンツ台日合作記者会」。この発表会では、「ゲームクリエイター育成プロジェクト」と、独立系メーカーに対する「デジタルコンテンツ補助事業」という2つの大きな施策が提示された。

 この2つの施策により、台湾のゲーム業界にPS3、PSPのゲーム開発の環境が積極的に導入されることとなる。今回はデジタルコンテンツ補助事業の支援を受けるYECK Entertainmentに取材し、YECK EntertainmentのCEOの蔡光程氏とVice Executive Officerの黄鶴樓氏にインタビューを行なった。

 本誌では2009年2月に両氏にインタビューを行なっている。支援プロジェクトのもと、PS3とPSPのタイトルを制作していくという。今回は、コンシューマゲームの開発をテーマに質問をぶつけてみた。この支援プロジェクトにゲームメーカーはどんな期待を寄せ、実際にどういったことを行なっていくのだろうか。



■ 日本メーカーとコンシューマーゲームを共同開発、世界に通用するカジュアルゲームを

YECK EntertainmentのCEOの蔡光程氏
YECK Entertainment Vice Executive Officerの黄鶴樓氏

 今回インタビューを行なった蔡光程氏と黄鶴樓氏には、台湾の新しいコンテンツクリエイターとして2月にもインタビューを行なっているが、コンシューマーゲーム開発プロジェクトにより、大きな変化を迎えたという。以前のインタビュー時には両氏はそれぞれAgun & MilkとYECK Entertainmentという2つの会社だったが、今回の支援をきっかけに、YECK Entertainmentとして合併することになった。現在のスタッフは20人だが、今後スタッフを50人まで増強する予定で、オフィスもより大きなものに変えるとのことだ。

 YECK Entertainmentが大きく規模が拡大できたのは、資策会とSCETで進められる独立系メーカーに対する「デジタルコンテンツ補助事業」を受けることができたためだ。YECK Entertainmentは台湾クリエイターが関わったPS3タイトル「Railfan台灣高鐵」を手がけた実績を評価され、支援を受けることになった。今後、コンシューマーに関してはPS3とPSPのタイトルを1本ずつ制作していく予定だ。

 細かい情報は現在は開示できないが、ゲームジャンルとしてはPS3はネットワークを通じて他の人とコミュニケーションをとることができる作品、PSPはライトなカジュアルゲームとなる。PS3、PSPのタイトルはどちらもSCETの協力の下、日本のメーカーと共同開発という形でコンテンツを制作していく。ゲームの仕様やアイデアなど、ゲームの企画そのものから関わっていき、担当するゲーム部分を決めていく。

 メインコンセプトに関しては協力する日本メーカーから提示されるが、前回の「Railfan台灣高鐵」とは異なり、コンテンツ内に盛り込まれるアイデアや、実際にゲーム化していくシステム、ゲームコードに関するところまでゲーム開発の根幹から関わり、積極的に台湾クリエイターの意見を取り入れた作品を作るべく開発を進めている。コンテンツの企画からコンシューマーゲームを作るのはYECK Entertainmentでは初めての試みになる。

 開発の支援として、SCETからは開発キットも送られており、YECK Entertainmentはこのツールを社内教育としても活用し、教育とコンシューマーゲームをコンスタントに生み出すことのできる開発環境を整えていく予定だ。支援を受けられるという環境と共に、SCETと事業パートナーになれることに魅力を感じていると蔡氏は語る。SCETを通じてコンシューマーの世界的な市場情報を得ることができ、技術的なサポートも受けることができるようになった。

 コンシューマーゲーム開発は、これまでYECK Entertainmentが作りあげてきたゲームのノウハウとは違う点がある。大きなところではスケジュールの厳格な設定、クオリティーのチェックといった外部からの働きかけが強まるところだ。こういった働きかけは、プレッシャーにもなるが、品質に対する意識を向上させる効果も強いのではないかと感じていると黄氏は語る。

 ユーザーへのアプローチも新しい意識を持って取り組んでいる。オンラインゲームやiPhoneのゲームとは、基本プレイ無料などの間口の広い方向でユーザーの認知度を上げ、アイテム課金といった方法で収益を上げていく。一方、コンシューマーゲームはコンテンツを購入させる形を予定している。1アイデアで作り上げるiPhoneよりも充実したコンテンツを目指しながら、一部のオンラインゲームほどコアプレーヤーにフォーカスした方向ではなく、“バランス”を意識したゲーム開発を目指していくという。

 「現在の我々がいきなり『メタルギアソリッド4』などに比肩するような、最新技術を投入した、ボリュームの充実したゲームを作れるとは思っていません。カジュアルな方向性を持ちながら、ユニークなアイデアを盛り込んだ作品を作っていきたいです。カジュアルゲームは面白ければ世界中の人に受け入れてもらえる可能性を持っている。そういった作品を生み出せればと思っています」と蔡氏は語る。

 「台湾のクリエイターによるコンシューマーゲームでのヒットの可能性はどこにあると思うか」という質問をぶつけたところ、「もちろん台湾クリエイターのゲームが国内でヒットした作品もたくさんあります。しかし世界的なヒットを成し遂げた作品はない。それは『三国志』や『武侠』といったローカルなテーマだったからだと思います。これまで台湾でも何社かがコンシューマータイトルに挑戦していますが、大きなムーブメントを起こせなかったのは、技術力の問題と取り上げる題材に世界市場を見越した視点が足りなかったからではないかと思っています」。

 「そこで私達が考えているのが、より普遍的なおもしろさを持ったカジュアルゲームなのです。我々は新しいテーマでよりワールドワイドなユーザーを視野に入れて開発を進めていきたいと思っています。今回、日本のメーカーとの共同開発の中でその方向性を模索していきたいと思います。もちろん、台湾の開発者のセンスを活かしたローカルテーマの作品も作っていきますが、それと共に世界を目指したカジュアルゲーム制作、という大きな目標を持って努力していきたいと思っています」と蔡氏は語った。

 現在、YECK Entertainmentが開発しているタイトルに関しては、PS3、PSPどちらのタイトルが先に出るかも未定で、ビジネスモデルに関してもまだ考えているところだという。販売地域に関しては台湾だけでなく、SCEAが担当するアジア地域になる予定だ。日本や欧米市場へも販売できればという希望も持っている。

 E3で発表されたPSPgoというハードに関しては、黄氏は「ダウンロード販売、という新しいチャレンジを行なっているところに強く興味を持ちました。私達はダウンロード販売という形態でゲームを販売している経験もありますし、この販売形態に関しては柔軟に対応できます」と語った。




■ カリキュラムにより育成されるクリエイターへの期待。ゲーム開発で追い求めるテーマは「コミュニケーション」

インタビューでは、蔡氏が話し、黄氏が言葉を添えるという感じで進行した。2人の親密な信頼関係が伺える

 企業支援プログラムと共に、SCETと資策会で進めるプロジェクトのもう1本の柱が「台湾クリエイター育成プログラム」である。SCEAではこのプロジェクトに先行して香港で同じようなカリキュラムで50人の卒業生が生まれている。活発な交流が行なわれている香港と台湾において、先行したプロジェクトは台湾ゲーム業界に影響を及ぼしたのだろうか。

 「私達の会社としては、先行されたプロジェクトの具体的な成果というのはまだ見えていないというのが正直なところですが、資策会は香港でのプロジェクトを見た上で、台湾でのプログラムの実施を判断したと思っています」と黄氏は語った。具体的な役割、というところでは明かせないが、台湾でのクリエイター育成プログラムにおいてYECK Entertainmentは積極的な協力を行なっていくという。

 9月からスタートするクリエイター育成プログラムにより、台湾に190人のPS3のゲーム開発のテクニックを持った卒業生が誕生することになる。YECK Entertainmentはカリキュラム卒業前から受講者達には注目し、自社のニーズに合う人材であるかを見ていくという。カリキュラム受講者は台湾ゲーム業界にとって非常に注目される存在となるようだ。

 「カリキュラムでは“ゲーム作り”のアイデアにおいて、月並みな固定化された企画ではなく、より世界の市場を見据えた発想を訓練していきます。それは我が社が目指す方向にも合致するし、台湾のゲーム業界においても新しい風を呼び込んでくれるものになるのではないかと思っています。卒業生が小さなスタジオを作ったり、大きな会社が彼らを雇うなど様々な動きがあると思います」と蔡氏は語った。

 黄氏は「カリキュラムではPS3のゲーム開発を学びます。台湾ゲーム業界において、コンシューマーゲーム開発はハードルが高いですし、1年のカリキュラムですばらしいゲームを生み出す開発者が完全に育成できるというわけではないと思います。しかし、台湾のゲーム業界において“いいスタートになる”と思っています」と語った。

 今回のカリキュラムはPS3に限定されている。コンシューマーのSCE1社によるプロジェクトの推進に関しては、今回のプロジェクトに関してはチャンスであり、私達台湾ゲーム業界が選べる状況ではなかった、と蔡氏は指摘する。「私達が置かれている状況において、援助を申し出てくれるメーカーがある、というだけでもありがたいと感じています」。

 台湾のゲーム業界は勢いを持って拡大している。GamaniaやSoft Worldといったオンラインゲームパブリッシャーも自社開発のコンテンツを次々と発表している。しかし今回のプロジェクトにおいては台湾の大手オンラインゲームメーカーは動いていないように見える。「大手メーカーはオンラインゲーム開発で手一杯になっているのかもしれません。だからこそ私達のような新しいデベロッパーは様々な方向性を目指したいと思います。今回のプロジェクトに関しては、今後も様々なメーカーが参入してくると思います。既存のゲームアイデアではなく、新しいアイデアが求められる市場というのも魅力的です」と黄氏は語った。

 今後作ってみたいゲームは? という質問に対して、蔡氏は「コミュニケーション」をテーマにしたいと語る。「最新のハードを使った上で、人と人をつなげるゲームを作ってみたいです。対戦ゲーム、パーティーによる協力プレイなど現在でも様々なコミュニケーションをテーマにしたゲームが生まれています。私はまだ具体的なアイデアとして言葉にはできませんが、私がとりくみ続けるテーマとしてコミュニケーションはどんなものか、というのを問い続けていきたいと思います。この考えは、これから作るPS3、PSPのタイトルでもチャレンジしていきたいと思います」。

 最後に日本のユーザーへのメッセージとして、蔡氏と黄氏は「これからの台湾クリエイターが生み出すコンテンツにご期待ください。私達はコンシューマーゲーム開発の“後輩”として、様々なアイデアを盛り込んだゲームを作っていきたいと思います」と語った。


【Legend of Glory】
MMO+MOというゲームスタイルになる予定の「Legend of Glory」。今回キャラクターを動かすデモを見ることができた。サービス予定は2010年の後半とのことで、まだまだこれからといった印象だ

(2009年 7月 1日)

[Reported by 勝田哲也 ]



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ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

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