インタビュー

「War Thunder」はまもなく海軍追加、新作「Crossout」もPC/PS4でリリース!

最強のオンライン・ミリタリーシム開発元GAIJIN EntertainmentのCEO、Anton Yudintsev氏インタビュー

「War Thunder」はまもなく海軍追加、新作「Crossout」もPC/PS4でリリース! 陸も空もリアルに遊べるオンラインゲーム「War Thunder」
陸も空もリアルに遊べるオンラインゲーム「War Thunder」

 リアルな空軍と陸軍で遊べるPC用オンライン・ミリタリーシム「War Thunder」。DMM.comとの協業で日本語サービスを提供しはじめて1年が経過する本作だが、昨年の協業スタート以来、日本軍戦車ツリーの実装や、現代兵器の実装など極めて大きなコンテンツアップデートを実施してきた。

 いまでは第二次世界大戦から東西冷戦時代に至る空陸の軍事兵器をこれでもかとリアルに遊べるゲームとして唯一無二の存在になっているが、これからも大きな進化を遂げようとしている。まずは年内にも、プレイステーション 4版の日本国内でのサービス開始、そしてプレイアブルな海軍の実装が予定されている。

 そして今回、本作の開発元であるGAIJIN EntertainmentのCEO、Anton Yudintsev氏が東京ゲームショウに合わせて来日し、インタビューを行なうことができた。Yudintsev氏は丁寧に多角的な説明をする人物で、様々な質問に非常に詳しく答えていただくことができた。

 なんとも不思議な社名の由来から、DMMとの協業による日本展開について、各種兵器の開発へのこだわり、コンソール版のあれこれなどについて聞くことができたので、その模様をお届けしよう。

1年間に提供するアップデートのコンテンツ量は、大作ゲーム3本分に匹敵!

「War Thunder」はまもなく海軍追加、新作「Crossout」もPC/PS4でリリース! GAIJIN Entertainment CEO、Anton Yudintsev氏
GAIJIN Entertainment CEO、Anton Yudintsev氏
「War Thunder」はまもなく海軍追加、新作「Crossout」もPC/PS4でリリース! ジャパニーズスタイルの作風で日本市場に挑戦した「X-Blades」
ジャパニーズスタイルの作風で日本市場に挑戦した「X-Blades」

──そもそも、「GAIJIN Entertainment」という社名の、「GAIJIN」はどのような由来で付けられたのですか?

Anton Yudintsev氏:もちろん日本語の「外人」です。実は、これはちょっとアイロニックな意味が込められた名前です。というのも、弊社は2002年に設立したのですが、当時はいつもコンソールゲームを開発したいと思っていました。当時の最高のコンソールゲームデベロッパーといえば、やはり日本の会社でした。でも同時に、日本のマーケットは非常に特殊で、日本国内でヒットしたゲームは外に出てこないし、日本の外でヒットしたゲームも日本には入っていかなくて、自給自足みたいになっているわけです。外から見ると非常に閉ざされていると。という、日本のマーケットを外から見ていた私達の、いわば局外者的な立場を、ちょっと皮肉を込めて「外人」というふうに名乗ったのが由来です。

 そして2009年には「X-Blades」というゲームを、日本でもリリースしました。Xbox 360とPS4のゲームで、日本のアニメ的スタイルをとっていたのが特徴です。そこで日本のコミュニティの反応を見ていると、「外人がジャパニーズスタイルのゲームを作ったみたいだぞ。しかも日本の大半のゲームより良く出来てるんだが」と。そこで「GAIJIN」という社名も含めてネタにされまして、面白かったですね。

 その2009年のゲームが初めての日本市場への参入だったわけですが、それまでは日本市場の障壁が非常に高く見えていましたから、今日のように日本でビジネスできるようになるとは夢にも思っていませんでした。

──「WarThunder」は2012年のオープンβ開始から5年という歳月が流れましたが、ここまで持続的に人気を高め続けている秘訣みたいなものはありますか?

Anton Yudintsev氏:長くサービスが続いているゲームは「WarThunder」だけではなく他にもたくさんありますが、1つ言えるのは、常に進化を続けているということです。サービス開始からこれまで、新しい国だけでなく、陸軍も入れましたし、最近は現代戦車も実装しました。空軍では新しい国や機体、最近では銃手用の一人称視点も追加しました。常に新しい体験を導入しているので、5年前とは大きく別のゲームになっているんです。

 つい最近、アップデート1.71「New E.R.A」」を提供しました。そこで銃手の一人称視点、2つのマップ、24種類の新しい車両、それから複合装甲、爆発反応装甲といった新しいメカニクスなどを導入しました。こういった大型のアップデートを3カ月毎に提供しているのですが、これが1年分になると、平均的なAAAゲームの3本分のコンテンツ量に匹敵します。ちなみに、「WarThunder」を最初にリリースした当初のコンテンツ量は、今年9ヶ月間で追加したコンテンツ量よりもずっと少なかったんですよ(笑)。

 また、リリース当初からこれまで2回のゲームエンジン刷新をしました。これに平行して5年前の飛行機のモデルや、古いマップなども見直し、最新のコンテンツと品質がつりあうよう、常にアップデートをかけています。このようにゲームの質と量を増していくことで、グローバルなプレーヤーから支持を受けることができました。これを今後も続けていきたいと考えています。

【War Thunder: Update 1.71 "New E.R.A."】
最新アップデートであるバージョン1.71の紹介動画。数々の現代兵器が一気に実装された

DMMとの協業で日本での伸びしろ大。PS4版の提供でもDMMが鍵に

「War Thunder」はまもなく海軍追加、新作「Crossout」もPC/PS4でリリース! DMMの「War Thunder」サイト。国内プレーヤーのための大会なども開催している
DMMの「War Thunder」サイト。国内プレーヤーのための大会なども開催している

──日本では昨年からDMM.comによるサービスが始まりました。1年が経ちますが、これまでの日本国内サービスについて感想を聞かせてください。

Anton Yudintsev氏:非常に満足しています。DMMと提携したおかげで新しい人々にゲームを届けることができるようになりました。それ以前からも日本から遊んでくれる方々はいたのですが、あまり目立つ存在ではなかったんですよね。それが、より人目につく形で扱ってもらえるようになっていますし、我々が日本語では提供しにくかったカスタマーサポートもしてもらえています。

 それから、PS4版の日本国内サービスを4月にスタートしました。新作のカジュアルシューティングゲーム「Crossout」も10月にPC、PS4で開始しようとしています。これもDMMとのパートナーシップで実現できるようになったことです。日本ではPCゲーム市場が比較的小さいので、コンソール市場にゲームを提供することは非常に重要だと考えています。

「War Thunder」はまもなく海軍追加、新作「Crossout」もPC/PS4でリリース! PCゲームの盛り上がりに加えてコンソール版の提供も控えており、日本での伸びしろは大きいと評価
PCゲームの盛り上がりに加えてコンソール版の提供も控えており、日本での伸びしろは大きいと評価

──今後、「WarThunder」は日本国内でどれくらい伸びていくと考えていますか?

Anton Yudintsev氏:もちろん、もっとたくさんのプレーヤーが来てくれることをいつでも期待しています。特に日本ではモバイルやコンソールゲームの市場が成熟していますが、PCゲーム市場はまだまだ大きな伸びしろがあると思います。DMMは私達のゲーム以外にも秀逸なPCゲームを展開していますので、PCゲーム全体がさらに盛り上がっていくだろうということも期待しています。それから日本のお客さんは非常にクオリティにこだわりますし、日本語でのサービスを重視します。こういったいろいろの理由を踏まえて、日本では今後何倍もの成長機会があると考えています。

 それから、大きな機会になるのがコンソール版です。ただ、コンソールは参入が難しいという部分があります。「WarThunder」は、欧米ではPS4のローンチタイトルとしてデイワンから提供されていますが、日本ではようやく今年の4月から提供することができるようになりました。こうも時間がかかったことにはいろいろな理由があるのですが、基本的には日本のコンソール機にゲームを出すにはいろいろの“お役所仕事”を乗り越えないといけなくて、非常に障壁が高かったのです。

 まず日本国内にパブリッシャーが存在する必要もありますが、そこはDMMと提携したおかげでクリアできました。しかし、その上でもまだ様々な承認プロセスをクリアする必要があり、いま現在のところ「Crossout」のリリースに向けた準備が進行中です。というわけで、新しいゲームをはやく遊びたいなら、オープンなプラットフォームであるPCがいちばんなのは間違いないところです。特に日本ではね。

──PS4では積極的にやられていますが、Xbox One版も考えていたりしますか?

Anton Yudintsev氏:基本的には、どのプラットフォームであれゲームを提供したい気持ちはあります。ですが、コンソールというのは基本的にクローズドなものです。「WarThunder」ではすでにPS4とPCが一緒に遊べるようにしているため、そこにXboxを参加させることをMicrosoftは望まないでしょう。同様のことは他のたくさんのゲームでも起こっています。

 「WarThunder」は空軍、陸軍、そして将来的には海軍と、複数の遊び方がありますので、マッチングを成立させるためにはプレーヤーベースが非常に重要です。ですので、私達にとって、クロスプラットフォームプレイの対応は、コンソールのローンチに合わせる上では必須でした。とはいえ、今現在のXbox Oneには膨大なユーザーがいますので、Xbox Oneだけの閉じた世界でゲームを提供することは不可能ではないと思います。

 やり方としては3つあると思います。ひとつめは、出さない。まあこれは現状通りです。ふたつめは、今申し上げたように、Xbox One版を独立したバージョンとして提供する方法。みっつめは、PC版とXbox One版をクロスプレイに対応させつつ、Xbox One版とPS4版はお互いにマッチングしないような仕組みを入れることです。技術的にものすごく複雑で、傍目にも奇妙な方法ですが、原理的にはそういう選択肢も存在します。

 こんな選択肢が出てくるくらい、コンソール間の壁というのは高いんですよね。個人的には、このようなクローズなやりかたはプラットフォーマー、パブリッシャー、ユーザーともに、誰も得しないので、やめればいいと思っています。新バージョンのXbox One Xはものすごくパワフルで素晴らしいコンソールだと思いますけどね。

日本の兵器再現には苦労した!リアル至上主義がもたらす海軍のプレイにも注目

「War Thunder」はまもなく海軍追加、新作「Crossout」もPC/PS4でリリース! 各種兵器の見た目も性能も忠実に再現するため、資料収集に多大な力を割いているという
各種兵器の見た目も性能も忠実に再現するため、資料収集に多大な力を割いているという

──「WarThunder」の魅力のひとつは、非常にリアルに再現された戦車や戦闘機だと思います。これらはどのように高い再現度を実現しているのでしょうか?

Anton Yudintsev氏:当時のものを可能な限り忠実に、ひとつの妥協もなく再現することが私達のゴールです。そのために古い写真を集めたり、実物があれば3Dスキャンもします。ゲームへの実装後も資料収集は続けていて、あとから出てきた資料で違ったデータが出てくれば、複数の資料を突き合わせ、可能な限り正確なものに修正していきます。例えば同じ兵器でも、現場で独自に改修したものの写真が残っていたりするわけです。あとから量産型の正確な資料が出てきて初めて、既存の写真が現地改修だとわかる場合もあります。ですから複数の資料を集めることは非常に重要です。

 写真、設計図、使用マニュアル、とにかく集められる限りの資料を集めますが、第二次世界大戦時の資料にはいまだに機密解除されていないものも存在しているんですよ。別に秘密だからそうなっているわけではなくて、単に機密解除のために政府が仕事しないといけないのが、放置されたままになっているケースです。そういうものが博物館や図書館にあって、よしんば閲覧はできても、写しは取ってはいけないし、もちろん一般公開もしてはいけないと。そういう障害にもぶち当たりながらやっています。

 すべての国の兵器の中でも、特に日本のものは難しいですね。別に日本語で書いてあるからではなくて、多くの資料が散逸したり焼失していて、一級の資料にアクセスすることが極めて難しいためです。このため日本の戦車ツリーを導入するまでに非常に多くの時間が必要となりました。

【War Thunder: Way of The Samurai】
日本軍戦車の紹介動画
「War Thunder」はまもなく海軍追加、新作「Crossout」もPC/PS4でリリース! 日本の航空機ツリーは大充実。当初から空母も存在するなど、日本軍は本作の非常に重要な要素だ
日本の航空機ツリーは大充実。当初から空母も存在するなど、日本軍は本作の非常に重要な要素だ

──日本の兵器は苦労して実装されているんですね。再現が難しいという以外に、日本の兵器にはどのような特徴があると思いますか?

Anton Yudintsev氏:日本の兵器はとにかくユニークですね。一部には欧米のものとほぼ変わらないような兵器があるのも確かですが、大半が全く違うほど独特です。「WarThunder」で日本陸軍のツリーをプレイするとすぐにわかるかと思いますが、見た目も、装填・射撃の仕組みも、動きも、他国のものとは全然違うんです。私自身にとっても、日本の戦車ツリーは非常に新鮮に感じています。英米戦車とドイツ戦車の違いに比べたら、誤解を恐れずに言えば日本の戦車は“エイリアン”ですね。それくらい特異的な体験を与えてくれます。

 同じことは日本の空軍にも言えますね。ゼロ戦は他国の戦闘機にない圧倒的な旋回性能を持っていますし、その特徴によって、ゲームの中でも長い間、最も人気の戦闘機として君臨していますね。

【War Thunder - The Japanese Air Force】
日本軍航空機の紹介動画

──空、陸につづいて、ついに海軍の実装も進んでいるということですね。現在はアルファテスト中とのことですが、「WarThunder海軍」がいつから遊べるのか、何が遊べるのかなど、その特徴を教えてください。

Anton Yudintsev氏:海軍についてはこれまで10カ月のテストを実施し、たくさんのフィードバックをいただきまして、非常にたくさんの変更も行なってきたところです。結果は非常にポジティブなものでした。

 その中で最も多くの考慮を要し、さらなるプレイテストが必要となるのが大型艦の扱いでした。現在、哨戒艇や駆逐艦をプレイアブルで提供していますし、これに軽巡洋艦も追加されそうではありますが、それより大型になるとプレイ上の困難が生じます。現実同様に動きは遅く、旋回にも多大な時間がかかるためです。戦艦ともなると、肉眼では見えないような、何十キロも先の水平線の向こう側に砲撃して、数分後に何が起こったか想像するしかないような感じになりますから、操縦して楽しいものでは全く無いということになります。

 もし、戦艦のスピードや機動性を大幅に上げたり、射程距離を縮めたりすれば遊びやすくなるでしょう。ですが、私たちは全ての兵器を史実に忠実に再現しようとしています。それが「WarThunder」の大切な特徴ですからね。リアルであることがゲーム的に都合が悪くても、リアルに再現することを優先します。とはいえ、ゲーム自体を楽しいものにすることも同様に大切です。ですので、哨戒艇、駆逐艦、軽巡洋艦まではプレイアブルにしますが、戦艦大和はプレイアブルな形では登場しません。

 提供時期については、まだ100%確実ではありませんが、年内のクローズドβテスト開始を目標にしています。場合によっては来年の始めになるかもしれません。

【War Thunder: Knights of the Sea - Naval Battles Teaser】
現時点ではアルファテスト中の海軍ゲームプレイ紹介

──最後に、日本のファンの皆さんにメッセージをお願いします。

Anton Yudintsev氏:私たちは日本のゲームの大ファンでもありますから、日本の皆さんと一緒に仕事をすることができて、大変うれしく思っています。東京ゲームショウに客としてでなく出展者として参加できたことも非常に光栄です。そして日本の皆さんには、ぜひ私達のゲームを遊んでいただきたいと思います。日本の文化や人々は、私達の国々から見るととてもユニークで特別な存在です。そんな日本の皆さんが私達のゲームをプレイしてくれるのは非常に嬉しいことですし、コミュニティ全体にとっても大きな存在になると思います。

 「WarThunder」は非常にユニークなゲームですし、日本の戦車ツリーや、最近では日本のマップも追加しましたので、より楽しんでいただけると思います。またPlayStation 4版も提供中です。よりカジュアルに楽しめる「Crossout」も10月にPC、PS4でローンチしますので、コンソールユーザーの皆さんにもぜひ注目していただきたいと思います。

──ありがとうございました。