インタビュー

「World of Warships」柳沼P&畑井PSインタビュー

戦艦紀伊や武蔵の実装裏話、「はいふり」コラボの今後の展開について話を聞いた

9月21日~24日開催

会場:幕張メッセ

 東京ゲームショウ初日に、戦艦紀伊でメカデザイナー小林誠氏とのコラボレーションを発表した「World of Warships」。また、待望となる超弩級戦艦「武蔵」の実装計画も発表され、話題に事欠かないTGSとなった。本稿では、発表会後に行なわれた「World of Warships」柳沼恒久プロデューサーと、畑井翔プロダクトスペシャリストのインタビューの模様をお届けしたい。

 余談だが、柳沼氏と畑井氏は不思議な関係性で、インタビュー中にたびたび夫婦漫才のようなツッコミ合いを行なう。いつもは容赦なく全ボツにしているが、今回は特におもしろかったので、ガッツリ収録している(唯一、畑井氏の“タケゾウ”ネタは、長い割にオチがなく、全然おもしろくないのでボツにしている)ので、そのあたりも含めてお楽しみいただければと思う。

小林誠氏とのコラボ。反応次第でモデリングから描き起こす可能性も

アーティストシグネチャーシリーズ: 小林誠 x 戦艦 「紀伊」

――戦艦紀伊における小林誠氏とのコラボの経緯から教えて下さい。

柳沼氏:実は今年の初めぐらいから動いていました。APACの中で日本は特に大事な市場で、東京ゲームショウに話題となるものを提供したいと考えていました。「パンアジアのテックツリーを出します」といっても日本の方には今ひとつピンとこないと思うので、準備を進めていました。

――小林さんは、重厚なロボットのデザイナーという印象が強いですが、宇宙戦艦ヤマトなど、艦船のデザインも手がけていて、「WoWS」と親和性の高い方だということを発表を通じて知りました。

柳沼氏:メカデザイナーですよね。「WoWS」もメカカテゴリーに入るゲームですので、今回は迷彩のデザインをお願いしました。

――戦艦紀伊そのもののデザインはお願いしていないんですか?

柳沼氏:はい、戦艦紀伊は存在する戦艦なので。

――ステージでは多少いじっているというお話でしたが、それはウォーゲーミングの方でいじったということですか?

畑井氏:そうですね。作る過程で、世界観を出すにあたり、小物、アレンジを加えることになりました。艦橋上部のレンジファインダーですね。あれは未来の人類が付けたという設定になっています。大まかなデザインは史実に則ったデザインで、レンジファインダーだけが後から追加されたものです。本当は、もっと時間があれば、もっとアレンジを加えたかったんですが、変えだすとキリが無くなってしまいますので、作業工程、開発工程的にこのような形になりました。

柳沼氏:小林先生のポテンシャルを最大限に活かすためには、モデリングからやるのがベストなのはわかっているのですが、そこは工数との兼ね合いになりますので、今回はこれぐらいにしましょうということになりました。ですから、今回の反応を見てから、今後どうするかが決まると思います。反応が良ければ、モデリングからお願いすることも視野に入れたいですよね。

畑井氏:実は一番最初にご相談させていただいた時も、こういう(と両手を前にしながら)船がふたつに分かれているようなものが来ましたからね(笑)。完全に当たり判定とか変わっちゃいますよね、というもので。大変ありがたいのですが、ゲームのバランスは変えない程度に留めないと調整が大変になりますので(笑)。

柳沼氏:そのモデリングを実装したら、絶対「当たってないのに、当たったぞ」と文句が出てきますから(笑)。

【小林誠氏の代表的なイラスト】

――しかし、あの迷彩デザインはビックリしましたね。想像の遙か外にある内容でした。艦船の迷彩を、ああいう風にデザインしてしまう人がいるというのが衝撃でしたね。

柳沼氏:コンセプトとしては「今までにない」というところを大事にしていて、今まで我々が作ったようなデザインと似たものを作ってもしょうがないので、今回、小林先生の迷彩は全世界で販売しますので、「今までにない」迷彩という点では狙い通りかなと思っています。

 通常の迷彩の仕様とは異なる特殊仕様の永久迷彩になっていまして、ゲームの視点は通常艦艇の少し後ろからだと思いますが、その時点ですでに迷彩が見えるというのは、非常に珍しいと思います。通常は側面だけなので、通常視点だとほとんど違いがなかったりするんですが、紀伊の永久迷彩は常に迷彩を見ることができます。

――念のため確認ですが、この紀伊は特殊迷彩だけでなく、通常塗装にも切り替えられるんですよね?

柳沼氏:はい、切り替えられます。今ちょっと用意がないのですが、色は今の地の色より若干暗い感じだったと思います。

――この絵をロボットに詳しいライターに見せたら、「飛んでるけど、飛ばせるの?」ともっともな返答を貰ったんですが、「WoWS」は艦船が飛ぶようなモードも作るつもりですか?

柳沼氏:空モード、宇宙モードが実装されたら、飛ぶようになると思いますね。滅茶苦茶になると思いますが(笑)

畑井氏:無茶苦茶ですよ!(笑)

――おふたりとも冗談めかして言ってますが、「World of Tanks」は月や火星に行ってますからね、ウォーゲーミングさんならやりかねないなと思っています。

柳沼氏:仮にそういうモードを作るとしても、今回の紀伊のためということではないと思いますが、まさにぴったりな戦艦ではありますよね。

――発表してまだ1日ですが、反応はいかがですか?

柳沼氏:ソーシャルメディアの反応だけですが、リツイート等も非常に多く、良い反応が多いと思いますね。

――グローバルで販売するということですが、小林さんの知名度というのは海外でも高いんですか?

畑井氏:そうですね、知っている人は知っているという感じですが、Zガンダムやジ・Oは知ってるけど、小林先生は知らない、という人の方が多いかもしれませんね。

――「WoT Blitz」に続いてガンダムデザイナーのコラボですが、実は狙ってますか?

畑井氏:というわけでもないですね。小林さんの一番最初のコンセプトは、宇宙戦艦ヤマトの方ですので、船だし、ヤマトだしということでお願いできるのかなというのが最初なので、「ガンダム」というわけではないですね。たまたま、Zガンダムのデザインもやられていたというだけで、ガンダム繋がりで狙っているというわけではありません。

――gamescomで「WoWS」の開発者に取材した際、イタリアのローマ、ドイツのグラーフツェッペリンに加えて、日本の魅力的な戦艦も作っているよという話だったので、武蔵かな紀伊かなと予想していたのですが、その両方だったのでちょっと嬉しくなりましたね。

柳沼氏:3月ぐらいには追加したい船のピックアップをしていて、その中に紀伊は入ってました。あれから色々予定は変わってきているんですが、ようやく実装できることになりました。

――戦艦紀伊は色んな計画がありますよね。今回実装されるのは八・八艦隊の紀伊ですが、大和の後継としての紀伊もあります。なぜ八・八艦隊バージョンにしたんでしょう?

畑井氏:バランスですよね。大和を超えるとなると、ではどうバランスを取るかという話になりますので、入れられません。Tier VIIIのプレミアム艦として、兵装なども含めてユーザーが遊んで楽しいだろうというところでこういう形になりました。

紀伊には魚雷発射管が搭載されている

――兵装的には時代を反映して金剛級と長門級の折衷的な感じということで、性能についてはだいたい想像が付きますが、ステージでは「対空が強い」と言っていて「え?」と思ったのですが?

柳沼氏:はい、紀伊は対空性能が優れています(笑)。史実がどうこうではなく、あくまでこの艦はどこが優れているかというパラメータ設計の面でのお話です。実際に使ってみて、10km圏内にはできるだけ入れず、10~18kmの距離で対空支援をするのが有効だなと感じたので、そういう発言になりました。

 ちなみに紀伊は魚雷もあるんですよ。ティルピッツと同程度の6km魚雷だったと思いますが、実は魚雷も使えます。ただ、味付けはかなり違っていて、ティルピッツが頑丈な船なのに対して、紀伊は対空に優れていて、仲間の支援もできるところが大きな違いです。

【戦艦紀伊】

――このアーティストシグネチャシリーズの今後の展開について聞かせて下さい。

柳沼氏:年内で言うと、今年予定されているプレミアム艦艇、もしくはフリー経験値を使って入手する艦艇に採用される予定です。

――次はアメリカ艦ですか?

柳沼氏:突っ込んできますね(笑)。いえ、日本艦艇も入っていますよ。

――ということは2弾といわず、3弾、4弾も計画中ということですね。

柳沼氏:はい、用意しています。1カ月2カ月ぐらいの感覚で実装したいと考えています。

「はいふり」コラボは、新コラボを企画中!

人気を集めたアニメ「ハイスクール・フリート」とのコラボレーション

――わかりました。話は変わりますが、「WoWS」の新コラボということで、もう少し“柔らかいコラボ”を想像していたので、良い意味で裏切られました。たとえば「ハイスクールフリート」のような、柔かい方面の計画も聞かせていただいていいですか?

柳沼氏:はい、それについてはアニメ大好き畑井さんから。

畑井氏:柔らかい(笑)。日本の色んなアニメを調べたり、声を掛けたりしていますが、まだ発表できる段階ではないですね。

――「はいふり」コラボはまだ続きますか?

畑井氏:どうなんですかね?

柳沼氏:なんで私に聞くの(笑)。もともとアニメ担当は畑井さんじゃない。

畑井氏:「はいふり」についてももちろん考えていますが、まだ決まっていることはないですね。

――「はいふり」コラボは、日本ではかなりウケていましたが、海外ではどうだったんですか?

畑井氏:欧米からは、アニメのボイスが良いという声が多かったですね。晴風は、プレミアム艦艇で、違う兵装が3つある船だったので、そういう面でも反響が多かったですね。グラーフシュペーは、もともとあった艦艇とほぼ同じなので、キャラ可愛いという反応ですね(笑)。アメリカとヨーロッパでは非常に好評でした。

――残るロシア圏ではどうだったんですか?

畑井氏:正直、まちまちでした(笑)。アニメというものに、それほど馴染みのある地域ではないので、「兵装が変えられる船」という点だけがピックアップされて紹介されていたりしていて(笑)。

――「はいふり」コラボ艦艇の再販計画についてはいかがですか?

畑井氏:その予定はあります。スケジュールはまだ確定していないのでお話しできないですが。

実装時期が柳沼氏と畑井氏で割れる「武蔵」。TierはおそらくIXに

写真のみが公開された武蔵

――次に「武蔵」についてです。台湾で取材したときからその名前は挙がっていましたがようやくですね。今どれぐらいできているのですか?

柳沼氏:全然できてません(笑)。本当は画像を出したかったんですが、出せないと。実装時期については年内で変わっていません。もともと船体については大和という姉妹艦があるので、大和をベースに変更を加えることで間に合うんじゃないかなと思っています。

――Tier Xにしたくないということですが、その理由と、武蔵のTierはいくつを予定しているのですか?

柳沼氏:同じ船体で、砲が違ったりすることはないのですが、完成してから何度か改装しているわけで、特定のタイミングの改装を切り取ってこれが武蔵です、という言い方もできると思っています。しっかり差別化しないと大和と同じじゃんということになってしまいますので。

 扱いについてはプレミアム艦艇もしくはフリー経験値で入手できる艦艇にしようと思っています。お金やフリー経験値で、大和と同じ性能の船が手に入れられた! となったら苦労して大和を手に入れた方からすれば最悪ですからね。そこはしっかり差別化を図ろうと思っています。武蔵のTierはIX、もしくはギリギリVIIIもあるかなと思っていますが、おそらくはIXでしょうね。

――兵装については、史実に則り、レイテ沖海戦で撃沈される直前の昭和19年の艤装が採用されるという理解でいいですか?

柳沼氏:まあ、そうですね。

――実装時期は年内で良いですか?

柳沼氏:はい、そのつもりですが、畑井予想はちょっと違っていて……

畑井氏:冬かなと(笑)。年内とは言いたくないです。冬は長いですからね。

――ユニーク艦長について新しい展開はありますか?

柳沼氏:まだお話できることはないですね。ただ、日本からは有望な艦長候補をたくさんピックアップして開発側に出しています。

畑井氏:ユニーク艦長は、位置づけとしてはエンドコンテンツなので、少しずつ実装していく形になると思います。

柳沼氏:畑井さんはゲットしたんですか?

畑井氏:僕ですか? それがまだなんです。

柳沼氏:私はウォーゲーミングの力でゲットしました。

畑井氏:それなら僕もゲットしてますよ(笑)

満を持して実装されたイギリス戦艦ツリーだが、「強い!」という意見が多いようだ

――この夏、イギリス戦艦ツリーが実装されましたが、ユーザーの反応と今後の調整について聞かせて下さい。

畑井氏:フィードバックの主な内容は「強すぎじゃないか」というものが多いですね。

――それは大和を含めた全戦艦の中で強いという評価ですか?

畑井氏:そうです。回復性能が高いのでぜんぜん撃沈されないし、HEぶっぱなして燃やせるしということで「強い、強い」という意見が多いです。

柳沼氏:いやあ、何故強いというご意見が多いかというと、大量のゲーム内貨幣を持っている上級者ばかりが使っているからだと思っています。つまり、上手い人が使っているから強いという側面もあるのかなと。

 もちろん弱点もあるんです。防郭を抜かれたら一気にやられちゃいますから、それを刺せないようにうまく立ち回っている方が多いので、強いという印象に繋がっているのだと思います。

――では少しずつイギリス戦艦ツリーを育てている人が上位Tierにも増えてくれば、強いという声も減ってくるかなと?

柳沼氏:そうですね。ですから、調整を加える予定もありません。

――gamescomではフランス戦艦ツリーの開発に着手したというお話でしたが、どういう味付けになるんですか?

柳沼氏:それについてはまったく知りません。次になるという話だけで、gamescomはヨーロッパのイベントなので、パンアジアツリーだけでは弱いと思ったんで、そういう話も出したんだと思います。我々としては日本に関係する艦艇の情報を収集して開発側に送ることですね。

――その日本の艦艇で実装が近いものは何がありますか?

畑井氏:紀伊と武蔵で、それ以外はまだありませんね。

柳沼氏:いや、ありますよ?

畑井氏:僕はそれを言わないようにしていたのに(笑)。

柳沼氏:何とは言えませんけど、用意しています。だって、楽しみにして貰いたいじゃないですか。

――それは武蔵より先に入るんですか?

柳沼氏:内部のテスト次第ですね。まだわかりません。

――種別はなんですか?

畑井氏:これは誘導尋問ですよ。

柳沼氏:わかりました。それではお答えすると、空母ではありません!(笑)

――ツリーではなく、単艦ですか?

柳沼氏:そうですね。

――最後に「WoWS」ユーザーの皆さんにメッセージをお願いします。

柳沼氏:2周年を迎えられたのは、メディアの皆様、ファンの皆様のおかげで大変感謝しております。今後ともよろしくお願いします。

――柳沼さんがぜんぜんサービスしてくれなかったのでサービストークお願いします。

畑井氏:わかりました。大和の姉妹艦が出るということは、ほかにも連鎖で色々起きるんじゃないかと思いますので、ぜひ今後の展開にご期待いただきたいですね。

柳沼氏:意味がわからないですよ。「含みがあるトークを畑井氏は展開しました」と書いておいて下さい。

畑井氏:わかる人にはわかっていただけると思いますよ!

――ありがとうございました(笑)。