インタビュー

国産タイトルの大躍進にSIEWWSプレジデント吉田修平氏もニッコリ。

PS VRの供給体制も大きく改善。そんな吉田氏に、とある“認識の変化”も?

6月12日~14日開催



会場:Los Angeles Convention Center

 米現地時間の6月12日に行なわれた「PlayStation E3 Media Showcase」では、今年のプレイステーション プラットフォームを彩る大量すぎるほどの大作、期待作が披露され、以前にも増してプレイステーション 4(以下、PS4)のコンテンツが充実してきていることが実感された。

 その中でも、国内での圧倒的な人気を誇るシリーズの新作「モンスターハンター:ワールド」が欧米に向けて発表されたことや、超大作RPG「The Elder Scrolls V: Skyrim」のVR版が登場するなど、大きな驚きも連続することとなった。

 ますます勢いを増すPS4、そしてPlayStation VRについて、ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ(SIE WWS)のプレジデントを務める吉田修平氏にお話を伺うことができた。

 大きな流れとして国産タイトルの海外展開が本格化している、という吉田氏だが、VRに関しては最近、わりと根本的な部分で認識の変化があったのだという。さて、PS4とPS VRを取り巻く状況が、どのようなひらめきを吉田氏にもたらしたのか。そのあたりも含めてお伝えしていこう。

PS4はタイトルラインナップ大充実。PS VRのコンテンツ開発も「乗りに乗っている」

インタビューに応える吉田修平氏

── 今回のカンファレンス「PlayStation E3 Media Showcase」では、ハードウェアやサービス関連の発表がないかわりに、タイトルの紹介に集中する形でしたね。

吉田氏: そうですね。今年はゲームコンテンツが非常に旬と言いますか、内容の充実しているものがたくさんありますので、とにかくしっかりお見せしよう、ということになりました。

── 先日、Xboxのブリーフィングで“Minecraftのプラットフォーム統合”という話が出ましたが、そこにPSプラットフォームが含まれていないところが気になりました。そのあたりSIEとしてはどのように対応するのでしょうか?

吉田氏: そうですね。私はファーストパーティ担当ですので直接担当していないのですが、すでにPCとのクロスプラットフォームというのは複数のタイトルで実施しています。ただ、技術的な面での課題などがありますので、基本的には個々のデベロッパーさんやパブリッシャーさんと話し合いながらそれぞれ進めていくという方針だと理解しています。

── 今後、ユーザーの要望が多ければ、というのは期待してもいいですか?

吉田氏: はい。可能性としては、常にオープンにアプローチしようという考え方だと認識しています。もちろん、エクスペリエンスの面など、解決が必要な数々のハードルがあるというのも事実です。

── 今回、非常に幅広いジャンルのVRタイトルが発表されました。特に、Oculus陣営のように見られていたPlayfulの参加や、Supermassive Gamesが複数タイトルを展開ということで、非常に勢いがあるなと感じられました。

吉田氏: ええ、乗りに乗っていますよ。Supermassive Gamesについて言いますと、去年、ローンチで「Until Dawn」の世界観を使った「Until Dawn:Rush of Blood」というレールシューターを出しました。それはそれですごく評判が良かったのですが、一方で、「Untill Dawn」ファンの方からは、「もっとホラーアドベンチャー的なものをVRでやりたい」と、そういう声をいっぱい頂きまして。

 そこで今回発表したのが、「Untill Dawn」の世界観の中でも過去を描くという形で、同じ雰囲気を持ったサイコホラーアドベンチャーVRの「Inpatient」というタイトルです。Supermassive GamesはこれでVRタイトルが4作目となりまして、かなり手慣れてきていますので、かなり期待していただけるのではないかなと思います。

── まだPS VRが出て半年ちょっとという短さなのに、もう2周目、3週目に入っているデベロッパーさんもいるとは、展開が速いですね。

吉田氏: そうですね。SIEのタイトルで言えば、欧米で5月に発売されました「Farpoint」と同時に出しました「PlayStation VR シューティングコントローラー」が非常に好評を頂いていまして、さっそく「Farpoint」に続くタイトルもやっていきたいと考えています。

 先日のプレゼンテーションではっきり伝わったかわからないのですが、「Bravo Team」という協力プレイのミリタリーシューター。カバーシューターなんですけれども、あれがやっぱりシューティングコントローラーをすごく意識して作られていますね。

 シューティングコントローラーは他のシューター系のVRタイトルを作っているデベロッパーさんにも非常に喜んでいただいていて、今後の新作だけじゃなく、過去に出たタイトルでもパッチで「シューティングコントローラー」対応をやっていただけると聞いています。

 ただちょっと、PS VR本体の供給の問題がかなり解決に向かっている一方で、今度はシューティングコントローラーも需要が供給を上回りそうな状況です。ただ、本体と同じように、また供給面を強化して行きたいと考えています。今後の対応タイトルも継続的に出てくると思いますので、ぜひ注目していただきたいと思います。

人気シリーズのVR化について吉田氏、「新しい認識」

これまでは、VRコンテンツはオリジナルでないと駄目と言っていたが……

── サードパーティでは「Skyrim VR」のインパクトは大きかったです。

吉田氏: ええ、すごいですね。「それ、できるのか!」っていうものを出してきましたよね。

── 特にあれだけの大作となると、“VR酔い”とか、いろんな問題があると思うんですけども、敢えて「全部プレイできます」というのは、「バイオハザード7」かそれ以上の冒険じゃないかと感じました。

吉田氏: 冒険ではありますが、移動についてはワープしていく方式です。なので、そこを使っていけば多分大丈夫じゃないかな、とは思っています。でもやっぱり、あれだけのボリュームのコンテンツがまるまるVRで遊べるというのは、本当にすごいことだ、画期的だ、と思います。

── マイクを通してドラゴンボイスを使う、ということもできるのでしょうか? 「フス・ロー・ダー」みたいな。

吉田氏: そこまではまだわからないです(笑)。私も今回の発表を通じて初めて知ったという形ですので。それから、Bethesdaさんのカンファレンスでは、PCで「DOOM」と「Fallout 4」のVRも発表されていましたので、あれだけの大作をVR展開されるというのは本当にすごいなと思いました。カプコンさんの例もそうですけれども、やればできるんだなと(笑)。

 私も当初は、VRはオリジナルでコンテンツを作らなきゃ駄目だ、と言い続けて来たんですけれど、それもちょっと見直したほうがいいのかなと思うようになりました。正しく、ちゃんとしたケアをすれば、「バイオハザード7」みたいに、従来の方法とVRの両方で楽しめるゲームが作れることがわかりました。

── そこは結構大きな認識の変化ですね。

吉田氏: そうですね、新しい認識を得ましたね。

── 大きなタイトルというと、今は「グランツーリスモSPORT」が非常に楽しみですね。

吉田氏: ええ、コックピットものはもうVRにピッタリですね。「グランツーリスモSPORT」も本当に楽しいですし、今回のプレゼンでは出てなかったですけれども、「エースコンバット7」も楽しみですね。去年VRで体験させてもらったときはもう、本当に楽しかったですね。高いところ飛んでる!! っていう、こうやって(のぞき込んで)下を見られる、その“飛んでる感”というのが、すごく怖いんですよね。本当に楽しかったです。

── 「エースコンバット」シリーズのファンならぜひVRでプレイすべきと(笑)。

吉田氏: ええ、本当にそう思います。旋回しながら上むいたら“ああああっ!”ってもう、すごいんですよ。パイロット気分を堪能できますね。

国産ゲームが海外で躍進中。海外進出は「絶対にやっていくべき」!

国産ゲームが海外で大いに受け入れられるようになったと吉田氏

── 日本のユーザーさんの反応を見ると、今回のカンファレンスではやはり「モンスターハンター:ワールド」への反響がダントツに大きかったようです。「モンスターハンター」はこれまで日本国内での人気コンテンツという感じでしたが、今回、SIEとして米国で初めて発表した意図や背景について教えてください。

吉田氏: そうですね、やっぱり、PS4のクラスになると、開発の規模が非常に大きくなってきます。「モンスターハンター」シリーズは世界の中でも特に日本でも大ヒットしているシリーズではありますが、やはりPS4向けは過去作品に比べて数段大きな取り組みになっていると思うんですね。そうなると日本だけでなく世界の市場をターゲットとして取り込んでいかなければ、という意識はあったんじゃないかなと思います。

 その中で、E3での発表というのはやはり非常に大きな注目を得ますし、過去においても「ファイナルファンタジー VII」のリメイクですとか、「シェンムーIII」、「二ノ国 II」、あるいは弊社で言えば「Bloodborne(ブラッドボーン)」もそうでした。PS4世代においては、日本のゲームであっても、やっぱり全世界で売っていこうということができますし、普及台数も増えていますので、それだけ日本のコンテンツを海外で遊んでくださるお客さんがすごく増えていますよね。

 今回、「仁王」の海外パブリッシングを弊社でやらせていただいたのですが、非常に反応が良かったですし、売上も上がっています。あと「NieR:Automata(ニーア オートマタ)」ですとか、「ペルソナ5」といったタイトルも、海外の売上が非常に大きくなっています。そういったこともありますので、日本だけで人気があると理解されているIPであっても、PS4の規模を活かした投資の判断ができると、そういう状況になってきたんだと思います。

── 国産タイトルの海外展開という話題でいうと、今回、PS VRのタイトルで“E3では発表しづらい国産タイトル”というのはありましたか?

吉田氏: そういう意味では確かに、PS VRで日本のタイトルの発表がなかったですね、とよく言われるんですね。私も「確かにそうだなぁ」と思ったのですが、それはやはり2~3年前から欧米のVRコンテンツに対する投資が積極的に行なわれていたことから、取り組みの数、ベテラン具合にしても、欧米のほうが先行しているところがありますよね。そういった中で、カンファレンスという短い時間の中で紹介するタイトルを選ぶとなったとき、たまたま海外タイトルが中心になってしまったのかな、というふうに理解しています。

 SIEの国産タイトルでも、例えば「V!勇者のくせになまいきだR」とかあるのですが、残念ながら選ばれなかったですね。

── なるほど。ただ、“発表しづらい”と言うのは……例えば海外のPS VRオーナーの方が「サマーレッスン」のようなタイトルが欧米で出ないことに対して、血の涙を流していたり(笑)するわけです。その点についてお聞きしたいなと。

吉田氏: そうですね、アジアのユーザーさんは喜んで買ってくださっていると思うのですが、やはり海外で出すかどうかはバンダイナムコエンターテインメントさんの判断なんだろうと思いますね。パブリッシャーさんも慎重な面があるとは思います。とはいえ、せっかく日本で生まれた強いコンテンツですし、そういう意味では日本のアニメ系のコンテンツにも、海外にファンの方がすごくいらっしゃるので、そういったVRコンテンツの海外進出も絶対に進めていくべきだと私としては思いますね。

── そこはSIEとしては、自由にやってくださいという感じですか。

吉田氏: ええ、もう自由にやってほしいなと思っています。でもまあ、やっぱりVRは新しいメディアですので、VRのためのレーティング基準ですとか、コンテンツの表現についてなども、ユーザーさんや、ご家庭の親御さんたちにコミュニケーションしていく手段がまだない状態ですので、ちょっと慎重にならざるをえないのかなとは思います。

ハードもソフトも大充実。「PS4ってどうなのかな」と思っていた方もぜひ注目を!

「ようやくPS VRの供給体制も整えることができた」とニッコリ

── 日本でのPS VRの入手性については、最近では改善の兆しが見えてきたかな、という印象があります。供給側としてはどう認識していますか?

吉田氏: そうですね、6月から日本国内でこれまでの232店舗から394店舗でPS VRを取り扱っていただけるようになりました。これまでお近くにPS VRの販売店がなかった方も、今後はお近くのお店で買えるようにできるだけ努力しています。体験会などもまた展開していくことになっています。

── 最後に、PS4ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

吉田氏: はい。おかげさまでPS4は、今年の頭から大作・話題作ラッシュで、日本のゲームも全世界で見直されて、高い評価を受けているという感じになっています。特に去年の「ファイナルファンタジーXV」、弊社でも「人喰いの大鷲トリコ」や、「GRAVITY DAZE 2」といったタイトルを出しましたし、他社さんも「NieR:Automata」や「仁王」といったタイトルがありました。

 今年海外で出ました「ペルソナ5」なども、大変に評判です。それで今回は「モンスターハンター:ワールド」も発表することができましたし、「ドラゴンクエストXI」も出てきますし、弊社で言えば「New みんなのGOLF」とか「グランツーリスモSPORT」など、人気のシリーズの最新作、それも非常に野心的なバージョンが今年出てきます。ですので、これまで「PS4ってどうなのかな?」と思われていた方は、いままさに買われるチャンスではないかなと、思っています。

 PS VRに関しては、これまで探しても買えなかった、「買えない!」という方には大変申し訳なかったのですが、これからはチャンスですので、ぜひ手にとって頂きたいなと思います。

── ありがとうございました。