インタビュー

「Vainglory」、開発元CBOに聞くアップデート2.3の反響と最新動向

世界に向けてイベント拡大中。日本コミュニティは“クリエイティブに愛してくれる”

4月 収録

 Super Evil Megacorp(SEMC)が展開するAndroid/iOS用アクション戦略ゲーム「Vainglory」。ゲーム内ではこの3月30日にアップデート2.3が実装されたばかりであり、e-Sportsシーンでは3月18日から5月14日まで、世界大会に向けたアジア向けの公式リーグ「Vainglory 8」が開催中となっている。

 今回は、SEMCの共同創立者であり、現在はPresident and Chief Business Officerを務めるBo Daly氏に、「Vainglory」の最新の動向や情報を聞くことができたので、こちらをお伝えしたい。

アップデート2.3は好反応。世界大会は開催場所を投票受付中!

President and Chief Business OfficerのBo Daly氏

――昨年の世界大会直前、Boさんの役職がCEOからPresident and Chief Business Officerに代わるという発表がありました。この経緯や、現在の活動内容を教えてください。

Bo氏: 会社を設立したときは、ゲーム自体を大きくしていく必要があったのですが、ゲームが大きくなり、完成に向かっていくにつれて、開発と同時にパブリッシング面やビジネス面、コミュニティ、e-Sportsといった部分をもう少し強化したいなと考えました。

 2年前は日本や韓国などでローンチするために各地を回っていたのですが、昨年は開発に時間を割いていました。その間コミュニティに直接触れ合えなかったので、もっと積極的に関わりたいなという思いもあります。

――今回の来日も、その活動の一環なのでしょうか。

Bo氏: そうです。今回は日本や韓国、中国を回っていて、ビジネスパートナーとのミーティングもこなしていますが、今回実装になったアップデート2.3でのみなさんの声も聞きたいなと思っています。

 アップデート2.3では特に既存プレーヤーに喜んでもらえる要素が入っていて、たとえばアイテムビルドのオススメが切り替えられたり、アイテムの並び順を変えられたり、またヒーローが踊ったり絵文字のような吹き出しを表示できる「チャーム」という要素も登場しました。

 このチャームは、随分前にシークレットで実装して好評だった“ダンス”について、復活の要望が多かったことを受けて入れたものです。今は限定的なものですが、このチャームをどのように進化させていくかの意見も聞いていきたいと考えています。

【New in Update 2.3 - Charms】

2017年シーズンより正式採用されているダブルバン制によるドラフト。これにより、駆け引きの面白さ、様々なヒーローが見られる面白さが加わった

――そのアップデート2.3ですが、評判はいかがですか?

Bo氏: すごく好評で、ストアの反応もポジティブです。購入すると一定期間すべてのヒーローが使えるようになる「アクセスパス」も良い反応です。

――アップデート2.2で登場した新ヒーロー「グランプジョー」はいかがですか?

Bo氏: 私自身は上手く扱えませんが、競技シーンでもよく使われています。特に東アジアでは人気のヒーローとなっています。

――競技シーンといえば、試合前のドラフトが正式に「ダブルバン制」になりました。かなり大きな変更ですが、反響はいかがですか?

Bo氏: このダブルバンは、実はe-Sportsチームのリーダーたちと一緒に作り上げてきたものです。なので、上手く設計されているなと感じます。

 昨年の世界大会でも見られたように、ダブルバン実施前は同じヒーローがバンされることが多くありましたが、ダブルバン制を採用することでこれまで見られないようなヒーローも見られるようになりました。シーズンとしてはちょうど前半が終わるころですが、ダブルバンを開始してから全ヒーローが最低1回は登場しています。今後、見る人にとっても面白くなるように思います。

 バンドラフトについては上位プレーヤーにしか適用されていませんが、ゆくゆくは全員に適用したいと考えています。ただそのためには、バンの方法や考え方を伝えていく必要があると思います。

――世界的なコミュニティの成長、という点ではいかがでしょうか。

Bo氏: 昨年9月のインタビューから、プレイ人口もコミュニティも大きくなっています。日本では以前からオフラインイベントを実施していますが、そうした施策を世界的に広げている最中で、自主的なイベントの開催も東南アジアでは積極的に見られるようになってきました。先日ジャカルタでも、700人規模のイベントが開催されました。

――日本のコミュニティはいかがでしょう。

Bo氏: 日本のみなさんは「Vainglory」に対する愛をいろいろな方法で表現するのがとても上手いと思います。絵を描いたり、コスプレしたり、時にはオリジナルのラップを歌ってくれたり(笑)もします。クリエイティブに愛してくれるので、いつも来るのが楽しみです。

 またe-Sportsシーンでは、DetonatioN Gaming、SCARZという日本で人気のある団体がこの半年で参入してくれました。彼らとは「Vainglory」だけでなく、e-Sports自体を普及させていくパートナーだと考えているので、今後とも一緒に取り組んでいけたらと思います。

開発中の5対5モード。社内テスト中ということで、まだまだ具体的な形は見えてこない

――では「Vainglory」の今後について伺いたいのですが、まず注目なのは、先日発表された「5対5」モードです。こちらの進捗はいかがですか?

Bo氏: 「5対5」はまだ始まったばかりで、現在はフレームワークができあがって、社内でテストしているところです。まだまだ時期的なことはわかりません。

――「クイックモード」へのアップデートも同時に発表されていますが、こちらはいかがでしょうか。

Bo氏: 「クイックモード」は、プレーヤーのペースにあわせて様々な選択肢を用意できればという意図で、ランク戦とは違うモードです。こちらも実装時期などは未定ですが、「タレント」などのやりこみ要素もありますし、楽しいモードになります。

――直近での今後の最新情報などありますか?

Bo氏: まだアップデート2.3が出たばかりですので、次に何が入るのかは確定していません。これは毎回なのですが、何が入るかはいつも直前に決まるのです。ただ、今回はバグもなくスムーズに運んでいるので、次をどうしようか考え始めているところですね。

――今後で言うと、第2回目の世界大会もそろそろ気になってきましたが、何か最新情報はありますでしょうか。

Bo氏: 現在は世界大会に繋がる「Vainglory 8」が開催中で、まずは各地域のリーグをしっかり立ち上げることに注力しているので、世界大会はまだ構想段階です。

 ただ世界大会については、コミュニティに向けて「どこで開催したいか」をアンケートしています。その声も聞いて、企画したいと考えています。日本も候補地に挙がっていますので、日本で開催したいと思う方はぜひ投票してください!

――すみません、時間が来てしまったとのことです。本当は「5G」(※)についても伺いたかったのですが……。

Bo氏: 5Gはe-Sportsにとって大きな影響を与えると思います。まず遅延が軽減されますし、1度に大人数でプレイできるようになります。インフラが整備されることで、良い影響が出るはずです。通信会社も、ゲームに集中していくようになるのではないでしょうか。

 ……5Gについては、本当はあと1時間くらい話したいですね(笑)。ですが、それはまたの機会にします。

――ぜひお願いします! 本日はありがとうございました。

※次世代の無線通信システムで、その通称が「5G」。Bo氏は世界最大のモバイル関連イベント「Mobile World Congress」で「5G」に関して基調講演を行なっている。