インタビュー
カプセルフィギュア「ザクヘッド」クリエイターインタビュー
“大きさ”、“ディテール”、これまでの常識を覆す挑戦!
2017年2月6日 07:00
カプセル容器を廃し、球型のモデルがそのままガシャポン自販機から出てきて、組み立てることで精密な“ザクのヘッドフィギュア”になる……この衝撃のコンセプトを実現したのがバンダイの「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD(以下、「ザクヘッド」)」だ。2月中旬発売予定で、全3種、1回500円(税込)。
筆者は昨年の9月に開催された全日本模型ホビーショーで本商品の試作品を見て、大いに衝撃を受けた。カプセルレスという新しさ、丸い形状を利用してザクの頭を再現するという面白さは強い印象を持った。そして先日のリリースをニュースとして取り上げたところ、大きな反響を得た。
リリースでさらに驚かされたのは「ザクヘッド」の精密さである。装甲の分割ラインや、モノアイをカバーするクリアパーツ、さらに内部メカまで再現している。「これは話を聞いてみたい!」と思ったのだ。今回、本商品の企画担当者に話を聞くことができた。インタビューでは商品の詳細や思い入れに加え、これまで挑戦したカプセル商品へのチャレンジも聞くことができた。カプセル商品ならではのユニークな取り組みも取り上げていきたい。
シェエルにもみなぎるこだわり、カプセル容器を廃した新アイディア
「カプセルの中にものを詰めると、どうしてもデッドスペースが生まれる。大きさも自ずと限定されてしまいます。大きい商品を作ろうとすれば部品を小さくバラバラにして詰めるという方法もありますけど、それはユーザーにとってわかりづらい。その解決策として取り組んだのが、カプセル容器を廃した今回の商品です。大きさと、クオリティを追求しています」。
そう語りながら、企画担当者は商品の包装を取っていく。「ザクヘッド」は、カプセル形態でガシャポン(ベンダーマシン)から出てくる。ガシャポン商品では自販機からスムーズに排出させることが必要だ。このため、「ザクヘッド」はカプセル状になる外装を採用しているだけでなく、ビニールでの包装も行なっている。
ビニールを取り外すとザクをイメージした成形色のカプセルとなる。このカプセルは側面と底面に“保護用シェル”が取り付けられており、これを外し、中身を組み立てることでザクの頭をモチーフとしたフィギュアが完成するのだ。今回は動画も用意しているので、本文と合わせて組み立てプロセスを動画で見て欲しい。
面白いのはこの保護用シェルにさえ開発者の“こだわり”が感じられるところ。このシェルはフィギュアを組み立てるとき使わない部品なのだが、マットな表面仕上げで、側面には「MS-06 ZAKU II」の型式番号、底面にはジオンの刻印がされている。カプセルのまま置いていてもガンダム商品であることがきちんとわかるのが楽しい。ここは企画担当者と共に本商品を開発した設計担当のこだわりとのこと。
シェルはすべてを被っているわけではなく、頭頂部と台座はカプセルの一部となっており、イメージとしてはカプセルそのものが変形する印象も与える。「カプセルから変形するような企画も考えましたが、今回はモデリングにこだわったフィギュアにしたかったため、こういう仕様にしました」と企画担当者は語った。
シェルを取り去るとビニールに包まれた部品と、ミニブックと呼ばれる取扱説明書が出てくる。ガシャポンが好きだった子供時代を過ごした人ならばこのミニブックには思い入れが深いだろう。本商品のミニブックには組み立て方と、他の商品ラインナップが描かれている。子供の頃はこういったミニブックを刷りきれるまで何度も見返した。今でも変わらないガシャポン商品のフォーマットだ。ミニブックの取扱説明書は、ホビーファンでない初心者向けにわかりやすさを重視して作っているとのこと。
ビニールに包まれた部品を外してから、企画担当者は基部となるパーツを“分解”し始める。「ザクヘッド」はシェルを外したらそのまま組み上がっているのではなく、基部を構成しているパーツから台座や内部メカなどを一旦全部取り外し、向きを変えて組み替えることで完成する。
この商品の最大の注目点は「ザクヘッド」の中心となるベース部品の“変形”にある。中心となるパーツは口部分と、後頭部の動力パイプ接続部分が内側に折りたたまれており、これを引き出すのだ。このギミックにより、カプセルの大きさを超えた大きさを持ったフィギュアとなる。折りたたまれていたパーツが外に出ることでグッと大きさが増す感じは、驚きをもたらす。
ここに一旦取り外した内部メカをきちんとザクの頭の中にはめ込み、後頭部のジョイントに頭頂部のハッチを取り付ける。ハッチにクリアパーツのモノアイカバーを取り付ける。そしてビニールから動力パイプの部品を取り出し、はめ込んでいく。この部品は一見細かく似通っているが、きちんと場所が決まっており、ジョイントの形を確認すれば間違わず組み上げることができるという。頭部のハッチを閉じ、台座に固定すれば、組み立て完了だ。
「『ザクヘッド』はプラモデルほど難しくないですが、ちゃんと作り上げる行程を楽しめます。動力パイプも間違えないように工夫していますし、普段プラモデルを触っていない人でも、店頭でこの商品を手に取り、気軽に組み立てていただけると思います」と企画担当者は語った。
モノアイの奥にまでもこだわる! 大サイズだから実現できたディテール表現
組み上がった「ザクヘッド」で驚かされるのは、その精密さだ。大きさは幅約100mm、全高約65mmという大サイズで、プラモデルでの最大サイズである1/60サイズを大きく超える。そしてディテール表現は非常に凝ったものとなっている。
まずその大きさこそ最大のセールスポイントだと企画担当者は語る。口と後頭部が引き出されることで大きさがカプセルのものから大きく超える。完成品を見たとき、これがカプセルフィギュアだ、ということが分からない人も多いのではないだろうか。ユーザーを驚かせるサイズ感、それが企画担当者が「ザクヘッド」で最も表現したいことだ。
そしてその巨大感を引き立てるのが精密なディテール表現だ。装甲のパネルライン、ピンクのクリアパーツに銀メッキで周囲を飾り立てたモノアイの表現。さらに「ザクヘッド」では頭部パネルと口部分のハッチが開き内部パーツを見ることができるギミックが用意されている。大サイズのフィギュアならではの密度の高いメカ表現は目を近づけて、細かくチェックしたくなる。
口部分や頭部のメカ表現。銀色の塗料で塗られて金属感を引き立てており、他のパーツとの違いがわかる。圧巻なのはモノアイの表現だろう。モノアイの周りは配線のようなディテールが確認でき、さらにモノアイの奥も細かいパターンが見て取れる。ここまで力の入ったモノアイの表現は例がないのではないだろうか。手に持って、目を近づかせ、色々な角度から眺めてみたくなるフィギュアだ。外装も基本は成形色だが、側頭部に「ZION」の文字と紋章が描かれているのが楽しい。
「このサイズ感ならではの“気持ちの良い密度感”を目指しました。クオリティの高さは見ていただければ伝わると思います。ガンメタリックの塗装、モノアイ周りのシルバーのメッキ、そしてモノアイはディテールを印刷した両面のシールの上にクリアパーツをかぶせており、これにより独特の光沢表現ができています。ここまで細かくモノアイを表現している商品は、あまりないのではないかと思います」と企画担当者は語った。
大きさ、遊び方、コスト……様々な課題。ユーザーを驚かせ続ける商品開発
今回のインタビューでは「ザクヘッド」への想い、そしてカプセルフィギュアというジャンルへのバンダイの挑戦を聞くことができた。「ザクヘッド」は“カプセルの大きさ”への挑戦だったと企画担当者は語る。ガシャポン商品を開発するバンダイベンダー事業部はカプセルの大きさ、コストで商品企画を決めていく。しかし、その“枠”に甘えることなく、常にその枠をぶち破っていこうという挑戦もし続けている。
これまでも、風船状のアイテムで膨らませると特撮ヒーローの武器になる商品や、より大きなサイズの商品を入れられるカプセルそのものを大きくした「ガシャポンカン」といった試みを行なってきた。ガシャポンカンではその大きさを活かし「鳥獣戯画」をモチーフとした巻物状のアイテムや、「魔法少女まどか☆マギカ」の布製タペストリーなども作ってきた。そういった試行錯誤の中、カプセルそのものをフィギュアとして活用しようといって生まれたのが、「ザクヘッド」だという。
カプセル型のフィギュアとしては「ドラえもん」や、「キテレツ大百科」などの球形と相性の良いキャラクターをそのままカプセル型にデフォルメし、内部に胴体を入れて組み立てるという商品もあった。今回は、大人も欲しくなるようなリアルタイプのフィギュアを作りたいということでザクをモチーフにした。
「ザクヘッド」を初めて展示したときのユーザーの反応は、実はあまり大きくなかったと企画担当者は語る。本商品は2016年8月の「C3TOKYO 2016」がデビューだったが、その時はギミックをきちんと説明できず、伝え方の難しさを感じたという。筆者などコアなホビーファンはこのコンセプトに強い興味を示したが、多くのユーザーの反応は薄かった。
企画担当者はその時に伝えることの難しさを感じ、新しい挑戦を理解してもらうにはどうすればいいかを考えるようになった。組み立て説明のわかりやすさを重視して、なおかつ写真数を最小限にしたり、リリースや公式ページの告知でカプセルを超える大きさを実現したことを強くアピールする方向性にした。こういった様々なアイディアにより、発売前のリリースで、多くのユーザーの大きな反応が得られたという。
改めて「ザクヘッド」のお気に入りの部分を質問したが、企画担当者は「頭部ハッチのクリック」と答えた。「ザクヘッド」の頭部ハッチは大きく開くとクリックによって半固定状態になる。内部パーツを露出した形で飾っておくことも可能なのだという。
また、「量産型ザク」、「シャア専用ザク」に加え、「黒い三連星ザク」をラインナップに選んだのは“複数集めることに意味を持たせることができるため”とのこと。「緑、赤、黒で全く違った印象があるザクのデザインの奥深さをぜひ楽しんで欲しいです」と企画担当者は語った。
今後のラインナップなども検討しているが企画担当者は「ザクは認知度と、カラーバリエーション、球体への親和性の高さということで選びましたが、今後はどう展開していくか、考えていきます。ジオン系MSであれば、構造的には作りやすそうですが、それではギミックとしてザクと似てしまう。また別のアプローチでチャレンジしてみたいです」。
最後にユーザーへのメッセージとして企画担当者は「自分は、デスクの片隅など、仕事場でも気軽に置けるようなキャラクターグッズが好きなんです。『ザクヘッド』も、日常の中にさりげなく置いていただければ良いなと思います」と語りかけた。
「ザクヘッド」はとても面白いコンセプトだと思う。そして今回、話を聞き、何よりもモノアイのディテール表現に心惹かれた。自分の手元に置き、それこそ穴があくほど様々な角度から長め、その表現を隅々まで楽しみたい。発売が楽しみなアイテムだ。
(C) 創通・サンライズ