インタビュー

“胸像”、「FORMANIA EX νガンダム」担当者インタビュー

生まれ変わった6年前の“こだわり商品”。そのディテール表現に注目

2017年4月発売予定

価格:21,600円(税込)

 バンダイコレクターズ事業部の「メタルビルド」シリーズは、高品質商品ならではの“質感”を強調したアレンジでガンダムをはじめとしたロボットを再現している。動かして楽しむだけでなく、ポーズを取らせてから、モデリングや関節構造、パーツの組み合わせ、金属パーツの使われ方などなど細部をチェックしたくなる。

「FORMANIA EX νガンダム」は2017年4月発売予定

 しかし実はこの“細かくチェックする”という楽しさにさらにグッと踏み込んだ商品があったのである。6年前、2010年に発売された「FORMANIA(フォルマニア)」シリーズだ。「νガンダム」と、「サザビー」の“胸像”モデルで、全高18cmの大スケールでモビルスーツの上半身を再現。装甲の合わせ目からのぞく複雑なメカニックなどディテール表現にとことんまでこだわった商品だった。

 その「FORMANIA」が、「FORMANIA EX(フォルマニア イーエックス)」として復活する! 第1弾の「FORMANIA EX νガンダム」は2017年4月発売予定だ。今回は「FORMANIA EX」担当の佐藤央氏に試作品を解説してもらい、その思い入れを語ってもらった。「FORMANIA EX」は今後のシリーズ展開も視野に入れたアイテムであり、コレクターズ事業部の新たな挑戦の出発点となる商品とのことだ。

塗装、ダイキャストパーツ、ライト……生まれ変わった胸像モデル

 「FORMANIA EX」の第1弾となる「FORMANIA EX νガンダム」は、6年前の「FORMANIA νガンダム」の“リニューアル商品”となる。塗装や“解釈”を変え、新ギミックを加えてアイテムが持つ魅力をさらに突き詰めるというコンセプトでのリニューアルを行なっている。このためどこが変わるか、今回は旧製品と並べて話を聞いた。

「FORMANIA EX」担当の佐藤央氏
今回は試作品を前に話を聞いた
こちらは6年前の「FORMANIA EX νガンダム」。比べると質感が大きく違う
「FORMANIA EX νガンダム」の頭部アップ。ほほ部分の銀色のパイプや首回りのケーブルなど、凝りに凝ったディテール表現が楽しい
ライトアップすることで雰囲気が大きく変わる

 まず共通する商品の基本的な要素を見ていこう。「FORMANIA EX νガンダム」は、劇場映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の主役機「νガンダム」の胸像モデルだ。上半身、コクピットから上部分を分離し、腕も肩部分から下は取り外された形でメカニカルな台座に設置されており、台座には大きなシリンダーが付いているほか、巨大なケーブルがνガンダムに接続されている。“メンテナンス中”の雰囲気のモデルだ。

 可動部分は意外に多く、首、肩コクピットハッチ、さらにバックパックの2つのブロックが可動する。本体と接続された台座部分も可動し、本体を傾けた状態での飾り付けも可能だ。肩も可動し、腕の付け根をのぞき込むこともできる。またケーブルについた「作業員」のフィギュアが2体付属している。ケーブルは自由に曲げることができ、多彩なシチュエーションを演出できる。手足のない胸像モデルだが“物語”をイメージした飾り付けがたっぷり楽しめるモデルとなっているのだ。

 圧巻なのはそのディテールである。「FORMANIA EX νガンダム」は全高約18cmの大型モデルになっており、アニメの設定画以上のディテールが多数盛り込まれている。これらの風潮はまさに「メタルビルド」のコンセプトを先取りしたものだ。プラモデルのモデラーがそのセンスを活かしてディテールをあらん限り盛り込んだような、ユニークなアレンジが成されている。「この『FORMANIA νガンダム』は、現在の高品質商品の流れを予見したような商品だったと思います」と佐藤氏は語った。

 本当に見ているだけで目が奪われる。細かく分割されたアーマー、メンテナンス用ハッチなどの様々な用途を感じさせる装甲表面のスジ彫り、ほほ部分のダクトやケーブル、複雑な形状の胸のセンサー、可動しそうな胸の装甲、かなり目立つ頭部バルカン、複雑な形状の首や肩のジョイント、冷たい金属光を放つ肩のバーニア……。バックパックはカバーを外した形状になっており、内部機構が露出している。大きなパイプが通っており、流れるエネルギー量の多さを物語っている。半身の装甲を切り離して内部メカを描写した「カットモデル」を思わせる演出だ。

 そして旧製品と「FORMANIA EX νガンダム」の違いである。最も大きいのは塗装の質感。旧製品はつや消し塗装だったが、メタリック塗装やつやありの塗装に変更されている。さらに一部の部品、肩のロールバーや、脇の下の装甲からのぞくフレーム部分などをダイキャスト部品に変えて“マテリアル感”を増したアレンジを行なうとのことだ。

 塗装は細部もかなり変わっており、肩の隙間から見えるコイル状の部品の金属感を際立たせたり、バルカンの銃口や顔の周りのパイプも銀色の金属地むき出しの感じになっている。全体的に“異なるマテリアルの組み合わせ”を意識した塗装となっているという。全身にマーキングも追加されており、情報量が増している。

 並べてみるとかなり質感が変わる。佐藤氏によれば金型は旧製品と同じものを使用しているが、より精度を上げ、さらに新規で作成した部分もあり、より遊びやすいように部品の“合い”を考えた調整を行なっているとのことだ。また胸部ダクトに関しては新規造形で、ダクトの奥にメカニカルな雰囲気のあるディテールが追加されている。

 コクピット周りやフレーム部分には「サイコフレーム」を思わせる緑の彩色も盛り込まれているという。今回は話を聞きながら商品をチェックしていたが、実際に購入し、より長い時間をかけてさらにじっくり見ることで、まだまだ発見できるものがありそうだ。

 こだわりはマーキングにも込められている。マーキングは「νガンダムが実物大だったらこのくらいの大きさ」というところから逆算した物になっているとのこと。マーキングは他の商品ではわざと大きめに目立つように作られている。このため実際のサイズで考えると不自然なほど字が大きくなるものがほとんどだ。こういったこだわりも「FORMANIA EX」のサイズだからこそできるという。

 そして「FORMANIA EX νガンダム」の最大の売りとも言えるものが「ライト」である。本商品ではフレキシブルに動くアームとスポットライトのようなLEDライトが追加されており、様々な角度で照らすことができる。佐藤氏のオススメはあおるように下から当てるライト。これはお台場の「実物大ガンダム」が見せた“巨大感”をフィードバックしたもので、ライトアップにより約18cmの胸像が、さらなる巨大感を醸し出すようになる。もちろん顔にライトを当てたり、コクピットに集中させても雰囲気は大きく変わる。ライトによりさらなる“情景”の演出が可能となるのだ。

 ライト部分には「LR-44」というボタン電池の比較的大型のものを2個使用する。設計上はもっと小さい電池にすることも、個数も減らしたものにでもできたが、「眺めて楽しむ商品だからこそ、できるだけ長く照射できるように」というところでこの規格にしたという。いくつものポイントでさらなるこだわりを込めたリニューアル商品となっているのだ。ここからさらに佐藤氏の思い入れや、今後の展望を聞いていきたい。

【FORMANIA EX νガンダム】
マテリアル感を強調した塗装、細部の表現に圧倒される。作業員フィギュアが付属し、ケーブルにより様々な表情付けができる
「メンテナンス中」をイメージし、背部の装甲は取り外されている。巨大なケーブルがジェネレーターの大出力を感じさせるなど、内部機構を考えさせられるのが楽しい
胸部ダクトは大きく変わっており、内部ディテールが追加された

6年間の技術の進歩がもたらした“再出発”。今後の展開も予定

 なぜ今回「FORMANIA」が“再出発”するのか? 「FORMANIA」が発売された当時はこのような造形の商品はあまりなかったが、現在はユーザーが高額商品、ハイディテール、そして大きなアレンジを行なったモデルを受け入れるようになった。佐藤氏は“時代が『FORMANIA』に追いついた”と語った。また旧製品は東アジアでの評価が特に高く、もう1度、胸像モデルというユニークな表現方法をユーザーに提示し、さらなる展開も見せていきたいという。

肩を回転させると内部までしっかり作り込まれているのがわかる
こちらは筆者の「METAL BUILD デスティニーガンダム(ハイネ機)」。肩や肘に金属パーツが使われている。金属パーツを使うことで、独特の雰囲気がもたらされる
ライトのスタンドの自由度は極めて高い上、スタンドの様々な場所に取り付けられるので、凝ったライティングが可能だ
向きを変えただけで大きく表情が変わるのが楽しい

 胸像モデルは、アクションフィギュアとは異なるロボット表現を可能にする。まず上半身のみで約18cm、大スケールだからこそできるディテール、メカニカル表現で他のアクションフィギュアとは異なるより詳細な表現ができる。それこそ「FORMANIA EX」の手法で全身を表現したら、大きさ、価格ともユーザーが限られる商品になりかねない。胸像モデルだからこそできる“工夫”をこれからのラインアップにも盛り込んでいくと佐藤氏は語った。

 今回“再出発”にあたって盛り込まれたのが「金属パーツ」だ。試作品では残念ながらまだ足されていないが、フレームの一部や、肩のロールバーなどに金属パーツを使用し、“ダイキャストの輝き”を新たに加えていく。これは「メタルビルド」からフィードバックしての演出だ。

 ライトもいくつもの“実績”が活きている。ライトアップの効果などは全高約30cmの「DX超合金魂 マジンガー」シリーズの台座に取り付けたライトなどでその効果を実感しているし、今回は大型のライトを使用するのもチャレンジと言える。そしてライトを支える支柱はフィギュアを飾る台座「魂STAGE」での技術を盛り込んでいる。基部にまで軸が仕込まれており、自由度は非常に高い。「FORMANIA EX νガンダム」は、コレクターズ事業部が6年間の間に蓄積した技術を盛り込んだ商品なのだ。

 「FORMANIA EX」は、νガンダム以降も展開していく予定だ。旧「FORMANIA」では「風の谷のナウシカ」に登場する「ガンシップ」を再現するというユニークな展開を見せたが、「FORMANIA EX」では現状は「ガンダム」作品を想定していくとのことだ。

 「ブランドを新たに『FORMANIA EX』にした以上、νガンダムで終わらせるつもりはありません。さらにギミックを盛り込むなど、この大きさだからこそできるアイディア、MS表現を考えています」と佐藤氏は語った。

 「6年前、当時『FORMANIA』を買っていただいた方もいらっしゃると思いますし、今回初めてこういった商品があったことを知った方もいらっしゃると思います。『FORMANIA EX』は今回大きく生まれ変わり、完全新規商品と言っても良いものになっています。ぜひお手に取り、色々な角度で眺めていただき、お楽しみください。」最後に佐藤氏はユーザーに向かってこう語りかけた。

 「FORMANIA EX」という商品は、本当に眺めてたっぷり楽しめる商品だと感じた。筆者は仕事のデスクにアクションフィギュアなどを飾って仕事をしているが、仕事の合間じっくりと眺めてしまうことが多々ある。クオリティの高い商品は、細かくチェックすると今まで気がつかなかったディテールを発見したりすることも多い。「FORMANIA EX」はそういった発見する楽しさがたっぷり詰まっている商品だと感じた。今後の発表も待ちたいところだ。