インタビュー
「ファイナルファンタジーXIV」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー
2016年6月24日 18:30
パッチ3.4以降の展開について。ストーリーはいよいよ4.0の導入へ
――ストーリーについて、パッチ3.3で竜詩戦争が一区切りを迎えましたが、パッチ3.4以降もイシュガルドを舞台にした物語は続くのですか? それとも別のエリアにフォーカスが移るのですか?
吉田氏:イシュガルドが絡まないことはないです。イシュガルドも4都市目としてエオルゼア同盟に復帰したので、パッチ3.4、3.5で彼らが絡まなくなる、ということはないです。どちらかというと、戦争を終わらせてくれた光の戦士や暁に対して、さらに協力していくよという形で関わっていくことになります。
――それではパッチ3.4や3.5でもイシュガルドを舞台としたストーリーが展開されますか?
吉田氏:うーん、ニュアンスが微妙ですね……。次のストーリーの幕開けでもあるので、またガラッと変わっていきます。
――それはパッチ3.4から変わるんですか?
吉田氏:大きく変わるのはパッチ3.5からだと思います。前回もパッチ2.5、2.55で大きな転換を迎えたと思うので。
――パッチ3.5という名前が何度が出てきましたが、パッチ3.xシリーズはいくつまで続くのですか?
吉田氏:3.5までは確定ですね。これ以上は言えないです(笑)。
――これまで奇数のパッチでは新コンテンツが実装され、偶数パッチだとアレキサンダーのようなバトルコンテンツが実装されてきたと思いますが、この傾向は今後も続きますか?
吉田氏:そうですね。アイテムレベルの更新が、メジャーアップデート2回につき1度やってきます。そのタイミングで高難易度レイドを実装しないと、挑戦のしがいがなくなってしまうので、そういった流れは変わりません。同時にそのレイドを早期攻略するためのクラフト装備が実装されるので、カジュアルコンテンツが実装しにくいタイミングでもあります。
皆さんは数カ月掛けてアイテムレベルを上昇させていくことになり、それと同時にカジュアルコンテンツを実装してしまうと、日を追う毎に難易度の低下が激しくなってしまいます。良い報酬を設定しづらくなってしまうので、この流れは今後も続くと思っています。もちろん、偶数パッチにカジュアルコンテンツや、新基軸のコンテンツを実装しない、ということではなく、パッチ3.4でも新しいコンテンツは存在します。今後のPLLなどでまたお知らせしていければと思います。
――先日のPLLでファンフェスティバルの詳細情報なども出始め、いよいよ4.xに向けてアクセルを踏み始めたかなという印象を受けましたが、その一方で3.xシリーズはまだ続くわけですが、3.xシリーズの今後の構想について聞かせて下さい。
吉田氏:ネタバレになるのでストーリーのことは何もお話しできませんが、ファンフェスでの発表も、ある意味メインストーリーの一部として観ていたりもします。パッチ3.4のストーリー、アメリカのファンフェスでの発表、東京での発表、その後にパッチ3.5の急展開が見え始め、ヨーロッパのファンフェスで最後の発表……、というように、ファンフェスでの発表内容とパッチ内容を連動させたいと考えています。今言えるのはそこまでですかね。
――“4.0”の詳細は10月のファンフェスを待って下さいと?
吉田氏:そうですね。たくさんのプレーヤーの皆さんに支えていただいているゲームですので、一番のビッグニュースは、ファンフェス会場で皆さんと共有したいです。
――9月の東京ゲームショウでは何も出さないのですか?
吉田氏:パッチ3.4のコンテンツの話はしていると思います。
――そこまでシナリオの公表を引っ張るのは、新展開だからですか?
吉田氏:そうですね。
――ほー、見たら「FFXIV」プレーヤーは驚きますか? 「こう来たかー!」と?
吉田氏:どうでしょう。最初はそれほどでもない……のかな? 僕はミステリー好きなので、伏線を張って予想を裏切るという仕掛けが好きでもありますが、「よしよし、やっぱりそう来たか、俺はわかってたぜ!」という感覚も嫌いではありません。ってこれだとさっぱりわからないですね(笑)。
「FFXIV」は1.0から2.0への以降で大きな変革があったゲームです。「FFXIV」では、ゲーム内だけじゃなく、ゲーム外の要素も楽しんで貰いたいので、せっかくリアルイベントをやるのであれば、ゲームに合わせて情報発信して、ゲームと一緒に楽しんでいただければと思っていたりします。
――パッチ3.4の実装時期は?
吉田氏:まだ内緒です。皆さん予想が付いていると思います。3.0から3.1までは、お待たせしてしまいましたが、以降のパッチで戻したサイクルを変えるつもりもありませんので、そこから推測可能なのではと……。パッチが火曜日なのも変わらないでしょうし(笑)。だいたい誤差1〜2週で皆さん当ててくると思います。
――ファンフェスティバルの来場/視聴特典についてですが、後日販売されないのですか?
吉田氏:あの手の参加者限定特典というのは、後から一般販売するという風潮になってしまうと、せっかくそれを楽しみに参加してくれた人に対して失礼かなと思います。サントラCDの初回特典に付いているミニオンも一切販売していないのは、初回限定と言っているからですね。
――今回の特典は「ファイナルファンタジーX」の3キャラクター、リュック、ルールー、ユウナのミニオンですが、これらのほかに今後ナンバリングで人気キャラクターをミニオン化する計画はありますか?
吉田氏:ないわけではないですが、現時点では何も言えません。
――PLLで公開したケットシーの可愛いぬいぐるみですが、あれは日本でも買えるのですか?
吉田氏:はい。日本のe-Storeでも予約開始しています。
――モーグリのスリッパについてはいかがですか?
吉田氏:これはまだ安全検査前のものです。マーチャンダイジング部が提携工場で作ってきたものを我々開発チームが確認しているところです。
――では実際に発売が決定した際は一部デザインが変わっているかもしれない?
吉田氏:そうですね。ただ、このスリッパは完成度が高いので、ほとんどこのままかもしれませんね。
――以前インタビューでお話ししていた海外で企画されているフィギュアについてはいかがですか? 今回発表されませんでしたが。
吉田氏:絶賛作業中です。おそらくファンフェスが近くなれば……、これまでのグッズに比べると、かなり値は張りますが、出来はいいですとだけ。「FF」らしいし、「FFXIV」らしくもあるアイテムです。
――3万円とかするんですか?
吉田氏:そこまではしませんが、ファンフェスにいらっしゃる方は、少し多めにお小遣いを持ってきていただけると嬉しいです。
――E3ででぶチョコボを出展した理由は?
吉田氏:北米のマーケ/PRチームがPRのために企画したもので、E3向けに割り当てているマーケティング予算の中から考案したものです。E3会場のバナーを買うぐらいなら、今回は乗れるでぶチョコボを作って写真を撮ってもらい、それをTwitterに拡散することで、「FFXIV」への興味喚起へ繋げるという考え方です。でぶチョコボは北米でも人気ですから、期間中ずっと行列ができていますが、誰か落ちてしまわないかなと気が気ではないです。結構な高さなので、これに普段から乗り降りしている光の戦士凄いなと……これに平気な顔して乗っているのかと自分で乗ってみて思いました(笑)。
――中国版の課金アイテムとして制作されたパンダなどのミニオンが日本でも販売されていますが、ほかにもチャイナドレスなどもありますが、日本で販売する予定はありますか?
吉田氏:予定はあります。日本側でデータを追加するための準備はしていますので、もうちょっとしたら正式にお話できると思います。
――今MMOで全プレーヤーが1カ所でプレイするメガサーバーを採用するケースが増えてきていますが、「FFXIV」で採用する予定はありますか?
吉田氏:たぶん無理です。データベースから何から、初期設計に依存しているものなので、運営しながらメガサーバーに対応させるぐらいなら、新しいMMOを作った方が早いですね。
――ではデータセンター(DC)間のマッチングについてはいかがですか?
吉田氏:DCを超えるということは、物理サーバーと論理サーバー、両方を超えるということなので、技術的にはかなりハードルが高いです。もちろん、トライはしていきますが、一朝一夕にできることではないです。
サーバー周りに関して、いま全力で取り組んでいるのはワールドを超えたパーティ募集です。ワールドを超えて募集を立て、募集に集まったメンバーと、ワールドをまたいでチャットまでできる、という仕様を基本として、パッチ3.5でのリリースを目指して頑張っています。
これが可能になるとDC内がほぼ同じワールドという感覚が生まれると思っています。先にDC内で募集を使い、パーティを組んでおいてコンテンツに挑んだりできるので、遊び方がかなり変わると思います。それができてからですね、DCを超えたマッチングにチャレンジするのは。
ただ、先ほどのお話に出たメガサーバーを設計すること自体の難易度よりも、サービスを続けたまま、別のサービスに移行する、ということのほうが難易度は高いです。サービス中のデータを破棄して良いなら、手のうちようも明確になりますが、もちろん絶対にありえないことですし、とてつもなく難易度が高いですね。
――PSVRが今年ローンチしますが、何か動いていることはありますか?
吉田氏:ないです(笑)。昨年のTGSでタイタンのVR版を出展したとき、体験してくださった皆さんの反応はとても良かったです。しかし120フレームをキープできないと、VRの場合、人によってはもの凄く酔います。酔わなくてもVRのプレーヤーと非VRのプレーヤーがマッチングしたときに、やはり問題が出てしまいます。また、PS4版の方しか遊べないわけですし、実際にサービスしようと考えるとハードルは高いです。VR専用のコンテンツ作るよりも、全員が遊べる新しいコンテンツを増やして欲しい、とも言われると思いますし、ビジネス、テクノロジー、プレイフィールと、VRタイタンを作ったからこそ、判断ができているともいえます。
VRで最上級のコンテンツにしようと思ったら、しっかりコストをかけ、VR専用UIをガッチリ作るべきです。VRの可能性については凄く感じるし、会社からVRのコンテンツを作れと言われたら全力投球したいところですが、それは「FFXIV」でやるべきことなのかなというのが正直な所ですね。
――「FFXIV」をモチーフにした別VRゲームなどの展開だったら?
吉田氏:それだったらまだ可能性はありますよね。「ミコッテレッスン」とか(笑)、イディルシャイアにVRを持っている人しかアクセスできない空間があって、入るとそこにミコッテパラダイスがあったらお金取れるよねと。でも、それぐらいやらないとおもしろくならないと思いますね。今はまだそんな感じです。
――E3の出展作で気になったタイトルは何ですか?
吉田氏:毎年そうなんですが、このインタビュールームからほとんど出られなくて……。でも、「God of War」と「Horizon Zero Dawn」の高水準のHDゲームを完成させる安定性、ノウハウ、経験値といった点に関して、日本のゲームとの差をより強く感じました。悔しいというところが正直な所ですね。
カンファレンスで「Horizon」のプレイアブルデモが出たときに、僕は草ばっかり見ていたんです。動画が出ているのでご覧頂くとわかると思いますが、キャラクターの3〜4メートル先で、自動生成される草ががりがり書き換わっていきます。「FFXIV」でも地面のある程度の草は自動配置なので、同じ場所に行っても、同じ場所が生えているとは限らないのです。これを実現するために、地面にメッシュ構造のデータを配置し、そこに草の種類、密度、解像度などの数値を持たせ、生やす草のパーセンテージを設定することで自動的に生える仕組みになっているんです。「Horizon」の場合、草の生え方が密度別に3段階くらいある感じでしたね。パフォーマンス稼ぐために、普通はもっともクオリティが高く、しかし処理の重たい草は、キャラクターの3〜4メートル手前までしか表示しない。複数の自動草を制御することで、画面内の密度を高くしつつ、表示のON/OFFに気づきにくいように工夫がされています。草だけ見ていると、キャラクターが走っているシーンでは、草の量がバッと変わるんですが、あまり気づかない。また、静止画で見ると、もの凄く密度感があり、綺麗な絵に見えます。
あとLODの滑らかさと割り切り。LODは割り切りが大切です。処理を稼ぐために、消すモノは大胆に消す。でも、それを感じさせないぐらい画面の説得力があるし、フレームレートが安定している。あの辺は作り慣れなんだと思います。あって当たり前の技術を、あって当たり前に洗練させている。だから安定性がもの凄く高い。
日本だとあのレベルでサクサクとHDゲームを作れる会社はほとんどないと思います。新規タイトルなので、どうしても新要素に目が行きがちだと思いますが、あれが当たり前にできていることが脅威だと思っていて、ショックというか悔しいですね。ゲーム開発者はああいうところを見て欲しいです。
最新の北米のゲームは、PS3の頃からそうだったんですが、単にシェーダーを書くだけでなくて、シェーダーの上に味を載せるレベルに来ています。「Horizon」や「GoW」も単なるフォトリアルではなく、芸術的に見えるようにしているので、レベルが一段違います。
そうした中で「ゼルダの伝説」はまだ見られていないんですけど、GAME Watchの中村さんが大絶賛でしたね(笑)。先ほど任天堂さんにご挨拶に来ていただいたので、「E3が終わったら、どこかでなんとか見せて下さい」とお願いしたところです(笑)。
――4.0についてまだコメントできないということですが、一般的な話題に置き換えて質問したいのですが、まず4.0ではPS3はサポートされますか? また、「蒼天のイシュガルド」ではレベリングがたった10レベル分だったにも関わらず大変な思いをしたので、仮に4.0が存在する場合、この点はどうなるのか、レベルスキップのような概念を導入するつもりはあるのかどうか、そのあたりのビジョンについて教えて下さい。
吉田氏:PS3に関しては、以前からお話ししているとおり、3.x中はサポートし続けますので、安心して遊んで下さい。今はそれ以上の回答はないです。
レベリングに関してですが、仮にまたレベルキャップが開放されて10段階レベルを上げるとする場合、前回はダンジョンの経験値を絞りすぎてしんどかったので、バランスはもう少し考えたいところです。が、プレイ時間は変えないつもりなので、プレイ感覚をなんとかうまくやりくりしたいですね。3.0の時は後半特にレベリングが苦しくなってしまったので、あそこまでにはならないようにしたいです。
あと悩んでいるのは、中国版・韓国版で「FFXIV」にはすでに実装されていますが、「WoW」にもあるジャンピングポーションと呼ばれるものをグローバル版にも用意するかどうか、ですね。「FFXIV」の場合は、メインシナリオもあるので、メインシナリオを拡張パッケージの直前までクリア済みにするポーションと、特定ジョブのレベルを一気にひとつ前のレベルキャップまでアップさせるポーションの2種類があります。グローバル版に入れるかどうかは皆さんの需要次第だと思います。
――ではまずはグローバル版のプレーヤーの意見を聞いてみてから判断したいと?
吉田氏:そうですね。3.0のときに北米欧州のメディアからは、「なんでジャンピングポーション入れないの? 友達誘うのが大変なんだけど」とよく聞かれました。今回、実装を悩んでいるのは、別に大きな利益にしたい、と思っているわけではないからなのです。
MMOって今本当に遊ぶのがしんどいジャンルのゲームになっています。ゲームメディアの皆さんに記事を書いてもらうにしても、現役プレーヤーだった場合はまだしも、「FFXIV」をプレイされていないメディアさんの場合、真成編から始めないと拡張パッケージのプレイ記事が書けないわけです。
これは一般のプレーヤーの皆さんだとより深刻で、自分がハマっているゲームの最新拡張パッケージを友人に紹介したくても、友達が拡張パッケージに入るまでに、相当な時間が必要になってしまいます。友達をフォローしてあげたくても、自分は拡張パッケージで追加された要素を思いっきり遊びたい。誘った友達も、どこまでプレイを続けてくれるか不確定ですし、友達をフォローをする場合でも、フリーカンパニーチャットでは拡張パッケージの楽しそうな会話が聞こえてくるわけです……これはしんどい。
そうした場合に「選択肢」として、拡張手前の要素をスキップする手段がある、というのがジャンピングポーションの意図です。全員が使わなくていい、むしろ、使う人は少なくあってほしい。でも、友達と一緒に遊びたい。今からゲームを始めて、ベテランの皆さんに混ざって、最新の「FF」を遊びたい、という場合には、その手段があるのは、プレーヤーの皆さんにとっても、エオルゼアを作り続ける僕らにとっても、良いことではないかと思うのです。
もちろん、レベリングもゲームの一部だから楽しんで貰いたいし、メインストーリーも最初からすべて楽しんで欲しい。でも、今の時代、エンタメの消費スピードは恐ろしく速く、選択肢の数は重要です。「WoW」でもすでに実績がありますし、拡張パッケージに合わせて復帰するのも非常に楽です。その代わり、拡張パッケージで追加された部分を飛び越せるわけではない。Pay to Winにならず、その手前まではショートカットできる手段、ということです。
「蒼天のイシュガルド」にこれらを実装しなかったのは、他のMMORPGとの比較なんてせず、純粋に「FFXIV」を楽しんで下さっている方が、「俺たちがやってきた苦労をお金で売るわけ?」と感じてしまうだろうと予測したことがひとつ。また、まだショートカットしなくても、レベリング速度向上で、十分に追いつける幅だと考えたのが要因です。
中国と韓国では、オンラインゲーマーのほとんどが、ジャンピングポーションの存在を知っています。ですので、現地の運営チームと協議を行ない、僕らがポーションを開発して、彼らに提供しました。韓国版については実装したばかりなので数字はまだこれからですが、中国では、中国版3.0に際して、とてもスムーズに新規の方を招き入れる効果を発揮してくれたと思います。
とはいえ、グローバル版でどうするかは、本当にギリギリまで悩むことになるとおもいますので、どこかで仕様を公開した上で、フィードバックいただこうかなと考えています。
――7月のパッチ3.35を待つユーザーさんに向けてメッセージをお願いします。
吉田氏:パッチ3.3が出て約2週間、やることはまだたくさんあると思うので、しばらくはパッチ3.3を楽しんでいただければと思います。今回は極ニーズヘッグ征竜戦から、カジュアルなアクアポリスまでたくさんのコンテンツを用意できたパッチだと思っているので、それらを毎日コツコツ遊んで頂きながらパッチ3.35の「死者の宮殿」をお待ちいただけたらなと思います。
「死者の宮殿」はこれまでよりさらにカジュアルですし、今までのバトルコンテンツとは遊び方、遊び心地がまったく異なるコンテンツになっているので、それらを楽しんで貰った上で、またさらにフィードバックをいただけると、新しいコンテンツを開発する際の参考になりますのでぜひよろしくお願いいたします。
――ありがとうございました。
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