インタビュー
「Quake Champions」クリエイターTim Willits氏インタビュー
e-Sportsの元祖がついに復活! 120Hz、PC Only、5対5にこだわる理由とは?
2016年6月18日 09:52
id Softwareが生み出した2つのビッグフランチャイズ「DOOM」、「Quake」。「DOOM」がFPSの元祖なら、「Quake」はオンラインマルチプレイの元祖として、往年のPCゲーマーの間では知らぬものはいない伝説的な作品だ。
その「DOOM」は、ついに今年、復活を遂げ、ゲーム界を賑わせている。そしてもう1つの伝説である「Quake」は、長らく復活の噂はあったものの、なかなか世に出てくることはなかったが、今年のE3でようやく正式発表された。「Quake Champions」とは何なのか、その魅力はどこにあるのか、初代「Quake」のリードデザイナーのひとりであり、現スタジオディレクターのTim Willits氏に話を伺ってみた。
5対5のe-Sportsにフォーカスした新世代の「Quake」
――「Quake Champions」の基本的なゲームデザインを教えて欲しい。
Willits氏:「Quake Champions」はFFA(Free for All)やデスマッチなど、一般的なマルチプレイも楽しめるが、今回我々がフォーカスしているのは5人1組のプロチームによるチーム戦だ。この5人対5人というのはチーム戦では完璧な数字だと思っていて、チームを作るにも、運営するにもこの5人という数字が最良で、この5対5のチーム戦で、e-Sportsマーケットに本格的に挑みたいと考えている。
――5対5にこだわる理由についてもう少し詳しく教えて欲しい。
Willits氏:それはチームのマネジメントの観点からベストというのが1つ。それ以上多くなるとマネジメントが難しくなり、参戦機会そのものが減ってしまう。一方ゲームにおいても5対5はマップデザインがし易く、プレーヤーの立場からも戦術を練りやすい。繰り返すが5対5はベストな数字だと思う。
――「Quake Champions」はe-Sportsを明確に意識したゲームということだが、観戦モードにはどのような機能を用意しているのか?
Willits氏:もちろん観戦機能も用意している。我々が2007年にリリースした「Quake Live」をイメージして貰えるとわかりやすいが、新たにライブストリーミングと、シャウトキャスター向けの機能2種類をサポートしている。我々は、「Quake Champions」のプレーヤーのみならず、「Quake Champions」を観戦する人も重要だと考えていて、観戦者が簡単にトーナメントを検索可能にする仕組みや、シーズン毎に行なわれるランクマッチや、トップチーム同士のトーナメントなどを手軽に観戦できるようにする予定だ。
――「Quake Chanpions」のリリース時期は2017年と告知したが、正式サービス開始までのスケジュールについて教えて欲しい。
Willits氏:リリース時期については2017年としか話せないが、もちろんその前にβテストを実施する。しかも長期間。無数のテストを繰り返して、ゲームを良い形に仕上げていくためには重要な事だと考えている。
「Quake Chanpions」はオンラインライブサービスゲームだ。我々にとってはリリースを急ぐ理由はどこにもないので、出来る長くβテストを実施し、ベストなゲームを完成させたいと考えている。
――そのβテストの実施時期は?
Willits氏:βテストの開始はおそらく2017年に入ってからになると思う。
――急ぐ必要はないということは、βテストの内容によっては発売が2018年になるかもしれない?
Willits氏:それはないと考えているが、βテストはできるだけ長くやりたいと考えている。
――マルチプレイの対戦モードについてもう少し詳しく教えて欲しい。
Willits氏:「Quake」で慣れ親しんだゲームモードはひととおり用意するつもりだ。FFA、デスマッチ、チームデスマッチ、そして今回新たに実装するチームモード。チームモードは文字通り、チームプレイに特化したゲームモードで、CTF(Capture The Flag)のように特定のオブジェクトを巡ってチーム道士が争うゲームモードがいくつか追加される。
――発表会では、マルチプレイにおける120Hz動作をアピールしていたが、120Hzにこだわる理由は?
Willits氏:なぜなら我々が開発しているのはPCゲームだからだ。PC向けに特化して開発しており、世界中のプロ「Quake」プレーヤーに集まってもらって、最高のプレイをしてもらうためには、できるだけ快速かつ快適な環境が必要不可欠だ。その1つとして導入するのが120Hz動作だ。トッププレーヤーは120Hzと60Hzでパフォーマンスが大きく変わると言われている。
――初代「Quake」の生みの親として今回の「Quake Champions」のアピールポイントはどこだと考えているか?
Willits氏:真の意味でアリーナスタイルのFPSだということだ。アリーナスタイルとは、「Quake III Arena」のようなクラシックでコアなスタイルのバトルのことで、「Quake Champions」はこれにさらなる個性を追加し、e-Sportsとして楽しめるようになっている。
――マップの数はどれぐらい用意しようと考えているのか?
Willits氏:まずはノーマルなマルチプレイ用マップから始めるつもりで、その数はまだ言えない。
――それは「Quake」シリーズで使われたマップのリメイクか?
Willits氏:すべて新規デザインのマップだ。ああ、ただ、過去の「Quake」マップにインスパイアされたマップはあるかもしれない(笑)。
――武器はどういうものが登場するのか?
Willits氏:たくさんだ。「Quake」シリーズで人気だったガンはすべて出そうと思っている。レイルガン、ロケットガン、ライトニングガン、マシンガン、ショットガン、ネイルガンなど。たくさんの銃が登場する。
――「Quake Champions」には、シールドやアーマーで身を守るようなアーマーシステムはあるのか?
Willits氏:自分のチャンピオンキャラクターは、プレーヤーが自由にカスタマイズできる。アーマーセットや見た目を変化させる装備など自由に組み合わせて装備することができる。装備できるものはチャンピオンによって異なり、スケイルベアならビッグへビーガンやボーンアーマーセット、タンクアーマーセットなど、見た目を大きく変える装備が用意されている。
――その装備によって、キャラクターの性能に変化があるのか?
Willits氏:それはない。あくまで見た目だけだ。なぜなら「Quake Champions」はe-Sportsゲームなので、性能を変えたら競技における公平性が担保できなくなる。
――なぜ「DOOM」マルチプラットフォーム展開したのに、「Quake Champions」はPS4/Xbox One版をリリースしないのか?
Willits氏:それは競技を前提とした最高のFPSは120Hzで動作させるべきであり、キーボードとマウスでプレイすべきだと考えているからだ。結論として選択肢がPCしかなかった。未来永劫出さないとは言わないが、現時点ではPCのみとなる。
――その120Hzで動作させるためのPCスペックはどの程度になると想定しているのか?
Willits氏:それについては現在調整しているところなのでなんとも言えない。ただ、当然大きなユーザーベースを獲得したいと考えているのでできるだけ低いスペックでも120Hz動作を実現するつもりだし、60Hzでも遊べるように設計するつもりだ。
――GeForce GTX 1080や1070といったハイエンドGPUでなくても、ある程度のスペックで120Hz出せると考えて良いのか?
Willits氏:その点については大丈夫だと信じている(笑)。
なんとシングルプレイは非搭載。その理由とは?
――シングルプレイについても聞きたい。キャンペーンモードはどのような内容になるのか?
Willits氏:ない。キャンペーンはないんだ。
――なぜ? 「Quake」のキャンペーンを好きなFPSファンは私も含めて多いと思うが。
Willits氏:わかっている。わかってる。この点について失望させてしまってすまない(笑)。しかし、我々は今回特定の分野にフォーカスしたゲームを提供したいと考えている。それは「Quake Champions」を最高のe-Sportsタイトルにすることだ。だから、シングルプレイはすべてカットした。
――それは割り切った考えだが、その決断に到った理由についてもう少し聞かせて欲しい。
Willits氏:いいだろう。多くの「Quake」ファンにとってベストな「Quake」の記憶は、マルチプレーヤーゲームだ。そして多くのゲームファンが「Quake」というゲームについてイメージするのもマルチプレイだ。だからこそ、「Quake Chanpions」を、最高のe-Sportsタイトルと言われるようにしたいと考えたんだ。
――つまり、「Quake Champions」にストーリーは存在しない?
Willits氏:その通り、ストーリーはない。
――ヒーローもいない?
Willits氏:いない。モンスターと戦うこともない。ボス戦もない。しかし、その意見はとてもユニークだ(笑)。
――「Quake Champions」のマルチプレイの最大人数は?
Willits氏:5対5。だから最大10だ。それがe-Sportsにとってベストな数字だからだ。5対5でマッチングされてチーム戦を楽しむことができる。あるいは5人のチーム同士でのチームプレイとなる。
――日本のFPSファンにメッセージを。
Willits氏:日本に多くのFPSファンがいることを理解している。そして巨大なゲーミングPCマーケットが存在していることも知っている。ぜひ「Quake Champions」のβテストがスタートしたらチームで参加していただいて、「Quake」ライフを楽しんで欲しい。