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【特別企画】MSI「OPTIX MPG27CQ」は作品世界を最大限に楽しめる27型曲面モニター

~高解像度と高速表示を両立した「いいとこ取り」モデル

 一般的な液晶モニターと「ゲーミングモニター」の決定的な違いは「プレーヤーの目にゲーム内の情報を正確かつ素早く届ける」ところに重点が置かれている点だろう。

 現在「ゲーミングモニター」というくくりで市場に出ている製品の特徴は、「高速なリフレッシュレート」、「短い応答時間」、「FreeSync/G-Sync対応」など表示に関わる性能を持っていることが多い。これらの性能からプレーヤーが得られる効用は、例えば「ハードウェアに起因する画面表示の乱れが起きにくい」「キャラクターの動きが正確に目で追える」「ゲーム内で起きている事象が把握しやすいので次の操作に移りやすい」といったところで、主に対戦ゲームタイトルで活きる性能だ。

 その一方で、曲面ディスプレイを用いたゲーミングモニターも見かけるようになった。曲面ディスプレイを採用することのメリットは、画面の湾曲によって、画面の端から端までに視線を移動する際の負荷が軽く済むのと、適切な角度と距離をおいて画面を見ている限りは平面モニターよりも歪みが少ないことによって、映像世界に対する深い没入感が得られるという2点にある。

 MSIの「OPTIX MPG27CQ」は、WQHD(2,560×1,440ドット)の27型曲面ディスプレイを採用しながら、144HzのリフレッシュレートやFreeSync対応などのスペックを備えたゲーミングモニターだ。高速なリフレッシュレートと応答時間、WQHDの高解像度に曲面ディスプレイを組み合わせた「いいとこ取り」の基本性能に加えて、独自のPCユーティリティによるOSD表示機能を備えるなど、ゲームとの連動機能にも力を入れている製品となる。

広めのワークスペースと広色域表示、薄型ベゼル採用で普段使いの実用性も○

MSI「OPTIX MPG27CQ」
MSI「OPTIX MPG27CQ」スペック
画面サイズ27型
最大解像度2,560×1,440(16:9)
応答時間1ms
最高リフレッシュレート144Hz
コントラスト比3,000:1
輝度400cd/平方m
パネルタイプVA
入力端子DisplayPort 1.2×1、HDMI 2.0×2
ディスプレイ同期FreeSync
HDR-
VESAマウント
スピーカー-
発売時期2018年4月19日
実勢価格(税別)6万3,000円前後

 WQHD解像度の広さと27型ディスプレイの画面サイズはバランスがよく、同等のサイズで4K解像度のモニターにありがちな「デフォルト設定ではUIが小さすぎて操作しにくい」、「ボタンが遠過ぎて使いにくい」といった問題を感じにくく、ブラウザやPDFビューワなどのウィンドウを複数立ち上げながら別の作業をする場合でも、重なり合う面積が少ないので、資料の参照性も優れている。

 画面の曲率は1800R。曲面ディスプレイの特徴のひとつである「没入感の高さ」は、細部まで作り込まれた世界や美しい景観の中を旅するようなタイトルと相性が良い。本機の場合はNTSC比100%、sRGB比115%をカバーしており、一般的な液晶モニターよりも表示色域が広く、応答時間も短いことから、画面が激しく動いても像がブレて見えることも少ないので、シンプルに映像作品を楽しむ用途にも堪える。ただ144Hzというリフレッシュレートを考えれば、「Far Cry 5」や「Fallout 4」のようなオープンワールドの世界に没頭するタイトルを遊ぶのに向いているだろう。

画面のアールは1800R
薄型ベゼルを採用

 ベゼルは薄型で、上面と側面においては、枠部分と非表示領域を合わせておよそ5mm程度に収まっている。映像入力はDisplayPort 1.2×1とHDMI 2.0×2。USB 3.1ポートを2つ内蔵する。設置時のフットスタンプは実測で約61.5×40cm。

 OSDメニューの操作は画面向かって背面右下の赤いボタンから行なえるほか、OS上からOSDの設定を変更できるアプリ「GAMING OSD APP」も利用可能だ。このアプリを使うにはPCとモニターをUSBで接続する必要がある。筆者としては、物理ボタンでOSDメニューを操作するよりは、アプリ上の項目を選んで操作した方が快適に感じた。

映像入力はDisplayPort 1.2×1、HDMI 2.0×2
USB 3.1ポートも2つ備えた
OSD操作用の物理ボタンはひとつ。上下左右に傾けて操作する

 OSDで設定できる項目は、ゲームジャンルごとに最適な設定のプリセットを選べる画面モードのほか、画面上の黒色を持ち上げる「ブラックチューナー」、モーションブラー軽減、応答時間設定、ブルーライトやフリッカーの軽減など多岐にわたる。

 その中のひとつ、5種各2色でクロスヘアを表示できる「スクリーンアシスタンス」は、選んだクロスヘアが常時画面の中心に表示される機能。FPSやTPSをプレイしていると、移動時などにクロスヘアが拡大し、画面の中央に狙いをつけるのが難しくなることがある。しかしスクリーンアシスタンスを用いることで、画面の中央を常に正確に狙えるようになる。これはゲームにおけるいわゆるMODに近い機能で、ゲームによっては競技シーンでは使用が禁止されることもありそうだが、使い勝手のいいユニークな機能だ。

物理ボタンから立ち上げられるOSDメニュー
OSDメニューから設定できる「スクリーンアシスタンス」
Windows上からOSDメニューを操作できる「GAMING OSD APP」
クロスヘアが常時画面上に表示される
スクリーンアシスタンスOFF
スクリーンアシスタンスON

 また、いかにも「ゲーミングデバイスらしい」機能としては、ゲーミングデバイスメーカー「SteelSeries」のユーティリティ「SteelSeries Engine」と連動して、内蔵LEDの光り方をやたら細かく設定できる点が挙げられる。前面と背面の発光パターンを細かく設定できるので、PC周りを光らせたいプレーヤーは積極的に設定してみてほしい。

「SteelSeries Engine」連動機材として「OPTIX MPG27CQ」が選択できる
発光パターンを変更できる
前面下部のLEDを発光させているところ
背面LEDの発光設定画面
背面の発光部はサイバーな感じの模様が斜めに2つ配置されている
「SteelSeries Engine」で連動可能なタイトルはまだ数が少ない

 SteelSeries Engineとの連動機能としてはこのほか、一部対応タイトル内でプレーヤーの状態と連動して、LEDの光り方を変える機能がある。下図は「CS:GO」と連動させた例。体力が満タンのときはモニター下部のLEDが緑色でフル点灯しているが、瀕死のときには右寄りのLEDが数点赤く光っているのみとなる。

 ユニークで面白い機能だが、一応画面内でも残り体力は表示されているので、自分向けのインフォメーションというよりは、イベントなどで後ろにギャラリーがいるような状況で周囲を盛り上げるための演出と捉えるべきだろう。

 このほか、ピクチャー・イン・ピクチャー(PiP)やピクチャー・バイ・ピクチャー(PbP)といった便利機能も利用できる。

「SteelSeries Engine」と「CS:GO」の連動機能。体力が満タンのときはすべてのLEDが緑色に発光している
体力が減るとLEDが消灯し、残り体力の分だけ色が変わって表示される
PiPの画面サイズは3段階で調整可能。位置も変更できる。画像は最も小さくしたところ
PiPの画面サイズを1段階大きくしたところ
PiPの画面サイズを最も大きくしたところ
PbPでSteamとPlayStation Storeを開いて同じセールタイトルの価格を比較するといったこともできる
今回、モニターを試用するにあたってお借りしたMSIのゲーミングPC「Trident 3 Arctic」
第3世代PS4(CUH-1200)と並べたところ

高解像度と湾曲画面は好相性。ユーティリティ連動機能も楽しい

 本機はリフレッシュレート144Hz、応答時間1ms、WQHD解像度、曲面ディスプレイ採用と最近のトレンドを一通り抑えた、バランスの良い性能が特徴的だ。幅広いジャンルで平均以上の上質なゲーム体験が楽しめると思うが、ここでは「曲面ディスプレイでのプレイ感覚」および「リフレッシュレートと応答時間」に注目して本機を評価したい。

「Far Cry 5」(Ubisoft)

 ゲーミング用途で曲面ディスプレイを用いることによって得られる恩恵は、視線の移動が少ないことによって長時間プレイしても疲れにくい点、そして作品世界に集中しやすい点だ。

 プレーヤーとモニターの間に適切な角度と距離が維持されていれば、平面のディスプレイより画面の歪みが少なく感じられる。「そんなのごく微妙な差では?」と思うかもしれない。しかし数値上は小さな違いであっても、長時間画面を見ているほどに、その差は大きくなってくる。

 Far Cry 5では米国モンタナ州にある片田舎を舞台としており、豊かな自然やのどかな田園風景、様々な野生動物も見どころのひとつ。景観を楽しむという観点ではWQHDの高い解像度も寄与するが、それ以上に画面の歪みが少ないというのが、没入感を高める意味で想像以上に効いてくる。曲面ディスプレイを使った後に平面ディスプレイで同じゲームをプレイすると、画面が横向きの樽型に歪んで感じてしまうくらいで、これは実際に使ってみないと実感しにくいのがもどかしい。素晴らしい効果だ。

Far Cry 5はミッション単位で区切りがあるが、ついついやろうと思っていた以上にミッションをこなしてしまう中毒性がある

Fortnite(Epic Games)

 シューター系のタイトルは言うまでもなくエイミングが重要だ。バトルロイヤルモードが人気の「Fortnite」では、素早く壁を作る、上方向に移動して高所を取るなどの立ち回りももちろん大事なのだが、最終的には撃ち合いに勝てなければ1位を取ることは難しい(不可能ではない)。曲面ディスプレイのモニターで対戦型のシューターを遊ぶにあたって、画面端への視線移動距離がわずかでも短いことは、敵に照準を合わせる点でメリットがある。

 また144Hzのリフレッシュレートと1msの応答時間という性能は、素早く動く敵の動きを滑らかに描写し、エイムを追従させやすくする効果がある。敵の動きを把握しやすいというのは、すべての間合いで勝負を有利にするポイントだ。

 筆者の場合は、近距離戦で拳銃、あるいはショットガンの撃ち合いをしているときに、高速なリフレッシュレートの恩恵を感じた。具体的には、敵が左右に動いたりジャンプをしたりして回避行動を行なっているときに、敵の姿をはっきりと視認・追随できたので、適宜遮蔽を取りながら、敵の次の動きを予測し、エイムをする動きに繋げることができた。

 「Fortnite」はバトルロイヤル系としてはキャラクターが素早く動く部類のゲームなので、きちんと動きが見える、追えることは、駆け引きを行なう上での重要な要素のひとつとなる。

瞬間的なエイム力は近距離戦の方が重要

「Counter-Strike: Global Offensive」(CS:GO)

 わずかに開いた扉の隙間や曲がり角の端、壁の向こうにちらりと見えた敵の頭を瞬間的に撃ち抜くエイム力が求められる「CS:GO」では、敵の居場所をしっかりと把握し、確実に照準を合わせる必要がある。これには別に表示性能だけでなく、敵の足音を聞く、しっかりストッピングする(撃つときだけ瞬間的に停止する)などのテクニックも必要になるが、少なくとも映像の表示負荷が軽めの本作については、PC側に144fps張り付きのフレームレートを出せるだけのマシンパワーがあった方がモニター性能の恩恵は受けやすい。

 また「CS:GO」の場合はSteelSeries Engineとの連動機能で、画面下部のLED表示を自キャラクターの体力と連動して表示させることもできる。これは先にも述べた通り画面内にも残り体力の数値が出ているのだが、光の色で自分に残された数値が直感的にわかるソフトとハードの連動性はアーケードゲーム的で、なかなか新鮮な体験だった。とはいえ、「CS:GO」は死ぬときは瞬間的に死ぬゲームなので、実用性よりは単純に視覚的な楽しさの方が先に立つ。日頃のゲームプレイに一味加えたい人には良いかもしれない。

モニターやPCの性能は高いにこしたことはないが、人間の方の性能が追いついてないのがつらい

WQHD解像度の曲面ディスプレイを使ったバランスの良いモデル

 現状、WQHD解像度で曲面ディスプレイを採用するモニターの選択肢は少ない。ことゲーミングモニターというカテゴリーでは、リフレッシュレートと応答時間も重要なスペックになることもあって、10万円を超える高価な製品も存在する。

 「OPTIX MPG27CQ」は、まだまだフルHDが主流のゲーミングモニターの中にあって、WQHD解像度と曲面ディスプレイ採用という比較的高価な付加価値をミックスさせた意欲的な製品だ。SteelSeries Engineとの連動機能も、使ってみるとこれはこれでなかなか面白い。筆者はこれまで、このような「光る系」のゲーミングデバイスが正直苦手だったのだが、光ることにきちんと意味がある本機の連動性には好感が持てた。

 6万円半ばという実売価格は、モニターとしてはやや高価な部類だが、プレイを通じて十分な納得感が得られた。現行のゲーミングモニターとしてしっかりとした性能と、曲面ディスプレイにコストを払えるかという点が比較検討時の焦点になるだろう。