【号外】
Reported by:ジョン・カミナリ
logo design:フランチェスコ・アッカッターティス

 電遊。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。道。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。

 「Nintendo Conference」は、ほぼ毎年行なわれる海外でも注目度の高い発表会。任天堂は毎回、プレス関係者を驚かせるような新商品を公開してきた。今年の目玉は、もちろん、ニンテンドー3DS(3DS)。メガネをかけずに裸眼で立体視が体験できる革新的とも言える新携帯ゲーム機。DSが6年間で培った技術を活かしながら、現代のスタンダードにマッチする高性能のグラフィックスも実現した。

 アイディアやユニークさで定評のある任天堂だが、3DSはグラフィックスにおいても大きな進化を遂げた。最高のゲームは、アイディアとグラフィックスの両方ともハイクオリティーであるべきだと思う。3DSはその理想的な候補者と言えるのかもしれない。

 前回の「東京ゲームショウ2010」レポートに続き、今回も「電遊道」は、号外としてお届けする。「Nintendo Conference」での岩田社長の言葉を聞いて印象に残ったこと、そして3DSを試して実感したことをお届けしたいと思う。立体視の画期的な点は活字と平面的な画像では表現しにくいかもしれないが、すごいものを遊んできたという僕のプレーヤーとしての熱い気持ちが伝わればと願っている。来月からは、従来通りのフォーマットで「電遊道」を続けていくのでお楽しみに。

「Nintendo Conference 2010」は、「東京ゲームショウ」の会場としてお馴染みの幕張メッセ(第8ホール)で開催された。巨大な広告板には、世代や性別を問わず3DSで遊ぶ人々の姿が写っていた。メインの女性が、3DSのコンセプトにぴったりと合う、明るくポップな服装で写っていた

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:イタリア 年齢:35歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜~金曜 18時30分~19時放送中)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること



■ 裸眼立体視の良さを理解するためには……

 まずは、3DSの普及率を大きく左右すると思われる課題について考えてみたい。3DSの課題とは、最大の特徴である「裸眼立体視」の価値をどのような形でユーザーに伝えるかということだ。

 これについては、岩田社長が述べたように自分の目で実感するのが最良だ。つまり、ユーザーに「裸眼立体視」を体験してもらう。いくら社長やゲームジャーナリストたちが、3DSの良さをアピールしても、購入を検討中のユーザーが実際に「裸眼立体視」というものを体験してみないことには、3DSの本当の魅力を理解しにくく、普及も難しいと考えられる。

 これまで通りの画面写真では、裸眼立体視の良さを伝えることは不可能なので、3DSの発売前に新機能を体験させることが非常に重要だと思う。任天堂は既に予定していると思うが、主要都市での体験会を実施して欲しい。ゲーマーたちの認知度が高まれば、その後の口コミで3DSの評判が自然に広がっていくだろう。

開発中の3DS用ソフトの美しい映像が流れたが、やはり自分の目で確かめてみないと立体視の本当の価値が実感できない

■ 1つのゲーム機で環境がすべて揃うという有利さ

任天堂のマニフェストとも言える基本戦略“ゲーム人口の拡大”。年齢、性別、ゲーム経験の有無を問わず、誰にでもゲームが楽しめる未来が本当にやってきて欲しい!

 岩田社長が3DSについて強調したのは、据え置きゲーム機と違い携帯ゲーム機は、ゲームシステムと表示デバイス(スクリーン)が一体化しているため、同じ環境をすべてのプレーヤーに提供できること。DSと比較すると価格は高くなった3DSだが、25,000円ですべての環境が揃うと思えば、誰もが納得するだろう。

 一方で、「東京ゲームショウ2010」に出展された据え置きゲーム機用の3Dゲームにも良い印象を受けたが、環境を整えるのに必要な金額を考えると、据え置きゲーム機における3Dゲームは本当に普及するのだろうかという不安を感じた。これを払しょくするには、従来のゲームと差を付けることが大切だ。

 今後、立体視対応ゲームが従来のゲームと映像的にだけでなく、遊び的にも大きく進化すれば、プレーヤーは確実に興味を惹かれるだろう。多額の出費を伴う購入に決断するための大きなモチベーションがない限り、据え置きゲーム機における3Dゲームの現状は大きく変わらないと思われる。

 それに対して、3DSは最初から完成した環境を揃えている。立体視を可能にするスクリーンが一体化しているため、ゲーム機以外の表示デバイスを購入するという手間が一切ない。

 やはり、ゲーマーの人口を増やす為には、手軽さが1番だと思う。誰もが1週間のバイトで買えるような価格であるべきだ。ハードルが高すぎると現状に“失望”して、ゲームを諦める人も多く現われるのではないだろうか。任天堂のポリシーは本当に尊いものだと思った。ゲーマー人口を増加させることが、3DSだけでなく、これからのゲーム機の普及を促進させる鍵を握っていると思う。

■ 持ち歩くほどに拡大するポケットエンターテイメント

 岩田社長の言葉と共に、3DSのキャッチコピーがスクリーンに映し出された。

 「持ち歩く、響き合う、毎日が新しい」。

 立体視がもっとも注目されている3DSだが、通信機能の面においても大きな進化を遂げている。その最たる要素が、DSでもお馴染みの「すれちがい通信」だ。ソフトを起動させずにスリープモードにすれば、すれちがった3DSから複数のゲームのデータを受信することが可能になった。

 現在“やり込み派向け”というイメージが拭えない「すれちがい通信」だが、3DSではソフトを入れ替えて起動するという面倒がなくなるので、その認知度と普及率は飛躍的に上昇するはずだ。ゲームは1人で遊ぶだけでなく、コミュニケーションのきっかけにもなれるということをアピールする。これもまた、ゲーマー人口の増加というミッションの実現に大きく貢献する機能だと言えるだろう。

スクリーンに映し出された動画では、サラリーマン、学生、主婦など、多種多様な人々が、車内や歩道などのあらゆる場所ですれちがい通信を楽しんでいる様子が紹介された。利用しやすく、バリアフリーのすれちがい通信が実現すれば、その普及率が上昇すること間違いない

 スローガンに含まれたもう1つのキーワード「毎日が新しい」。3DSは、持ち歩いているだけでランキングデータや無料ソフトなどを自動的にダウンロードしてくれる。しかし、どこにいてもデータを受信できるようにするためには、これからも任天堂はWi-Fi環境の強化に力を入れなければならないと思う。

 現在もファーストフード店や電車の中でDSのWi-Fi通信を一部利用できるが、理想は全国のファミレス、カフェ、電車などで利用できるようになること。おそらく、通勤中の電車はコンテンツダウンロードの絶好の場と考えられる。これで通学中の学生、通勤中のサラリーマンたちが、3DSの通信コンテンツを楽しめるようになって欲しい。

ニンテンドーゾーンの拡大が、ダウンロードコンテンツをもっと快適に楽しめるようにするための重要なカギを握っていると思う。携帯電話と同じように、どこでもコンテンツが利用できる未来になって欲しい。なお、今回のカンファレンスで任天堂は、「NTT BP」と提携している鉄道やカフェ、ファーストフードなどで3DSのWi-Fi通信が可能になることを明らかにした

 電車の座席に座ってじっくり楽しみたいサービスはもう1つある。それは、Wiiユーザーにお馴染みのバーチャルコンソール。おそらく、Wiiよりも携帯ゲーム機のほうがこのサービスに向いているのではないかと思う。

 今回は、「スーパーマリオランド」などのゲームボーイとゲームボーイカラーのタイトルのみが公開されたが、サービスが本格化する頃には新たなゲーム機が追加されるのではないかと予想している。理想としては、Wiiと同じぐらいバラエティ豊かであって欲しい。例えば、Wiiでダウンロードしたスーパーファミコンやメガドライブのゲームを3DSで遊べたら、最高の充実感が得られるに違いない。

 体験コーナーでは、ナムコの名作「XEVIOUS」を立体視バージョンで遊ぶことができた。ゲームの流れやルールはオリジナル版とまったく同じだったが、立体感が強調されたお陰で、敵機との位置関係や背景の高低差などがよりわかりやすくなり、ブラスターの着地点もより簡単に予測できると感じた。これも3DSだけが提供する遊びの可能性の1つ。

 裸眼立体視の“マジック”で、過去の作品も新感覚で遊べることは証明された。カンファレンス中に岩田氏が主張したように、立体視が実現することで昔のゲームが、現代にマッチする新鮮さを帯びるようになる。そして、バーチャルコンソールというサービスが、国内・海外のメーカーにとってのビジネスチャンスになると確信している。

■ 3D映像を遊びにする携帯ゲーム機

本体内蔵ソフトの体験エリアの入り口。会場が開いたと同時に、ほとんどのプレス関係者がこのコーナーに流れ込んだ

 岩田社長の「裸眼立体視は体験しなければ、その価値を実感できない」という言葉に誘われて、3DSの体験スペースへと足を向けた。親切なコンパニオンが、3DSの主な機能を説明してくれた。

 まずは、上画面の立体視についての感想から。メガネをかけていなくても、本当に立体的な映像が見える。画面から映像が飛び出るというよりも、奥行きが強調された3Dというほうが適切かもしれない。

 専用のメガネをかけずに3Dに見えるという3DSだが、最初は目に若干の違和感を感じた。それも、5分ほどで慣れてきたが、目を休ませる為に十分な休憩をとることが現在のゲーム機よりも大事な気がした。人によって差はあると思うが、目が疲れてきたら3Dボリュームを減らして、通常の映像へ切り替えるのもいいかもしれない。

 3DSだけに、カメラの数も3つへと増えた。外側に設置された2つのカメラは3D写真を撮るために使われるが、内側のカメラはプレーヤーの顔を撮影する為に使用される。そして、岩田社長がカンファレンス中にアピールした通り、今回は、相手と自分の写真を合体させるという遊び心満載な機能も追加された。

 僕はコンパニオンとの合体写真を試みたが、僕の髭が生えたコンパニオンの顔を見た瞬間に、お互い爆笑した。現段階ではおまけ的な機能だが、ゲームに応用できるようになれば、遊びの可能性がさらに高まるのではないかと予感した。

 Miiスタジオの充実度にも驚かされた。撮影した写真は、好きなように編集できるだけでなく、Miiを作成するためにも利用できるのだ。3DSは自分の写真を自動的にMiiに変換してくれるという、非常に便利な機能を持っている。これで、「Miiをゼロから作るのは面倒くさい」と思っていたユーザーは救われるのだ。僕も試してみたところ、あっという間に写真から自分のMiiが作成された。髭などのディテールは後から調節できるので、自分にそっくりの分身を目指す人はじっくりと編集を楽しめる。

カンファレンスでは、岩田社長が宮本氏との面白い合体写真を披露した。合成写真とは思えないほどのリアルさだった作成した自分のMiiをQRコードに変換し、ブログや名刺の裏に貼りつけるという例も挙げられた

 「ARゲームズ」の遊び方はいたって簡単。パッケージに同梱される「ARカード」をテーブルに置いて、内臓カメラでそれをターゲットする。そうすると、カードから魔法のように立体的な建築物が出現し、プレーヤーは所々に設置された的を矢で撃つという遊びができる。これは今までになかった、正真正銘の画期的な遊びだ。

 ゲームの舞台となるのは、机などの好きな場所。そして、自分がゲームの主人公になる。「ARカード」から生み出された建築物をターゲットしながら、自分が自由自在に動く。建築物に隠された的を見つける為には、角度を変えたり、または近付いたりすることも重要になる。この遊びの醍醐味をより満喫するために、自分がカメラマンだと思ってプレイするといいかもしれない。3DSのカメラのファインダーを通して、現実世界に混じったゲームの世界と干渉することができる。

 ちなみにすべての的を撃った後、「ARカード」からドラゴンの姿をした巨大なボスが現われた。ボスの攻撃を自分の体の動きで直感的にかわしながら、ドラゴンの欠点、首を撃たなければならないという流れだった。「ARゲームズ」をプレイ中の僕は、まるで子供のように興奮していた。「ARゲームズ」は、現在の市場にはない独特な新鮮さを味わわせてくれる、すごいソフトだと思う。パッケージに同梱される残りのカードには、どのような遊びが隠されているのか興味津々だ。

「ARゲームズ」は“Augmented Reality Games”の略だ。聞き慣れない“Augmented”は“増加された”という意味。バーチャルリアリティーがさらにリアルになったということだろう「ARカード」は、置かれた表面の模様をクローンして“迷彩”する。つまり、上画面を通じて見える「ARカード」が現実世界の背景と一体になる。そして、テーブルに穴が空いたり、表面が歪んだりといったSF映画ならではの特殊効果がリアルタイムで展開する

 今回公開された「ARゲームズ」は、この新テクノロジーの一例にすぎなかったと思う。そのポテンシャルを考えるだけで、「ARゲームズ」の輝かしい未来がうかがえる。開発者のアイディアで遊びの可能性は無限大に広がるはずだ。例えば、複数のカードを机に並べて、自分だけのゲームフィールドを作成するという遊びも実現できるだろう。もしかすると、自分の部屋の机が、未来の“スーパーマリオ”のワンステージになることもありうるのだ。

 個人的には、カードから出たプラットフォームから、別のカードから出たプラットフォームへとジャンプしていくゲームも作れるのではないかと思っている。確実に言えるのは、3つのカメラ、3Dジャイロセンサー、そして、立体視を併用することで、今までに考えられなかったゲームが作れるということだ。3DSはまさにゲームクリエーターの想像力をくすぐる、夢の携帯ゲーム機なのではないだろうか?

■ ゲーム産業の紳士、岩田社長

 任天堂。世界中のプレーヤーたちに親しまれている日本の確固たるブランド。その信念の強さは、他に類を見ないと、僕は思っている。これまでは、成功例と失敗例の両方があったが、任天堂はいつも未来に向かって、斬新な商品を提供してきた。

 世の中の流行に従うのではなく、自らが流行を作る。任天堂は、その偉大なミッションを追求してきたメーカーだと思う。3DSの場合も、“新しさ”が追求された。今までにない商品を作るというのは、リスクも伴う賭けのようなものだが、ゲーマー人口に貢献し続ける岩田社長の勇気溢れた姿に感動すら覚えた。

 岩田社長の口から発せられたのは、自分の商品の成功例だけではなかった。カンファレンスは「ポケットモンスターブラック・ホワイト」の成功例で始まったが、その後は冷静な自己分析の話が続いた。DSが成功したからといって、3DSも成功するとはかぎらないという不安もプレス関係者と共有した。「ハードウェアとソフトウェアのニワトリと卵の関係を解かなければならない」という、比喩的な言葉もあった。

 やはり、ゲーム機の成功を決定するのは、1つの要因だけではないということは確かだ。岩田社長がアピールしたように、サードパーティーとの連結が何より大切なのではないだろうか。優れたハードウェアができあがったのは喜ばしいことだが、メーカーが十分に興味を示さないと、普及率は増加しないだろう。

 自信と懸念の両方を窺わせる岩田社長のフランクな姿勢に心を打たれた。「Nintendo Conference」は、海外でよく見られる、大げさに聞こえてしまうデータや、CMのような“決まり文句”が連発するカンファレンスではなかった。日本のゲーム産業のリーダーが普通の人になり、観客たちと自分の心境を共有したいという想いが伝わってくるカンファレンスだった。岩田社長の言葉には、プレーヤーたちへの尊敬心がたっぷりと込められていたし、プレーヤーたちを喜ばせるような環境作りに一生懸命に力を入れていきたいという気持ちが強く伝わってきた。

岩田社長の講演は「ポケットモンスターブラック・ホワイト」の販売新記録の話題から始まった。そして、冷静な口調で任天堂のゲーム機の抱える課題に言及した。特に克服するべき課題は、「任天堂のハードで売れるのは任天堂のソフトばかり」だった。これからの3DSの普及に大きく関わる課題だから、是非解決して欲しい

■ プレーヤーとクリエーターが愛するゲーム機

3DSの発売日が発表された瞬間、少し残念な空気が流れたように感じた。やはり、自分も含め多くの人が2010年内に遊びたかったのだろう

 3DS。裸眼立体視が体験できる、革新的とも言える携帯ゲーム機だ。僕も実際に試してみるまでは、半信半疑だった。メガネをかけずに3D映像が体験できるというのは、信じがたいことだった。

 しかし、任天堂の約束には嘘がなかった。やはり、裸眼立体視の本当の魅力を知るためには、自分の目で体験するしかないと思った。これからは、国民の為の体験会が開催されることに期待している。

 2010年内の発売は、残念ながら実現しなかった。生産が追い付かないという理由かもしれないし、さらなる向上を目指すための延期とも考えられる。自分も、クリスマスシーズンに発売して欲しいと願っていた。もし、年内の発売が実現していたら、最高のクリスマスプレゼントになっただろう。

 発売日が2011年2月26日に決まったとはいえ、状況はそれほど変わらないと思う。3DSは本当にユニークな携帯ゲーム機だから、発売日までの期間を、ユーザーに裸眼立体視の良さを体験させるために活用して欲しい。

 3DSの持つ裸眼立体視を始めとした新機能に興味を持ち、参加を決めたメーカーの数がだんだん増加している。今回のカンファレンスでは、日本の誇るゲームクリエーターからの熱いメッセージも聴くことができた。

 特に印象に残ったのは、レベルファイブの代表取締役社長、日野氏の情熱溢れるコメントだった。3DSを見た瞬間から、一目惚れのような気持ちを味わったという。このゲーム機で本当にすごいものが作れるのではないかという予感もしたという。

 カプコンやバンダイナムコゲームスの代表者たちも、立体視がもたらす恩恵について意気込みを語った。多くのゲームクリエーターが開発するのを楽しみにしている3DSだからこそ、ユーザーも大いに満足できるものが完成するだろう。2011年2月26日は、ゲームのレボリューションが始まる日だ!


■ 3DS用ゲームのファーストインプレッション

● 「BIOHAZARD REVELETIONS」
ジャンル:サバイバルホラー
発売日:未定
価格:未定

 体験コーナーの開場からずっと長い行列が続いた「BIOHAZARD REVELETIONS」の試遊台。立体視とグラフィックスの向上で、臨場感が圧倒的に増した。ホラー映画の中にいるような恐怖感が味わえた。立体視は主に演出や特殊効果を強調させるために用いられていたが、これからはもっと工夫して、遊びに繋がるような“立体視”に進化して欲しい。

【スクリーンショット】
(C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

● 「METAL GEAR SOLID SNAKE EATER」
ジャンル:タクティカル エスピオナージ アクション
発売日:2011年
価格:未定

 小島秀夫氏のあの名作が、3DS専用ソフトになって生まれ変わった。残念ながら、今回はリアルタイムグラフィックスを使ったデモ映像の上映のみだったが、その迫力は抜群だった。グラフィックスはオリジナル版と遜色のないレベルに達していた。裸眼立体視は、本シリーズのコンセプトにぴったり合うのではないだろうか?

【スクリーンショット】
(C)2010 Konami Digital Entertainment

● 「nintendogs + cats」
ジャンル:コミュニケーション
発売日:2011年春
価格:未定

 DS用の前作よりずっと進化したタイトルがこれだ。子犬と子猫のリアルなグラフィックスとアニメーションにびっくりした。立体視のおかげで、動物たちとの位置関係が把握しやすくなったし、画面に近寄ってくる時は本当に飛び出しているように見える。内側にあるカメラの活用で、動物たちがプレーヤーの顔を認識できるという機能にも好印象を持った。

【スクリーンショット】
(C)2010 Nintendo

● 「新・光神話 パルテナの鏡」
ジャンル:シューティング
発売日:2011年
価格:未定

 不朽の名作「パルテナの鏡」が本格的なシューティングゲームになった。このタイトルが、立体視がもたらす恩恵というものを最も把握しやすいと思う。接近中の敵の位置が非常にわかりやすくなったので、このジャンルが苦手な人でも十分楽しめる内容になっていると思う。徒歩でのアクションパートの爽快感も絶妙だった。グラフィックスも豪華。

【スクリーンショット】
(C) 2010 Nintendo
(C) 2010 Sora Ltd.

● 「RIDGE RACER 3D」
ジャンル:レース
発売日:2011年
価格:未定

 シューティングゲームと同じように、レースゲームも3DSにぴったりのジャンルだと言える。バンダイナムコゲームズの「RIDGE RACER」シリーズも、立体視の導入でより遊びやすくなった。正面の車との距離がわかりやすくなり、ドリフトする時の爽快感が増した印象を受けた。ただ、グラフィックス面をもう少し強化して欲しい。

【スクリーンショット】
(C)NBGI

● 「レイトン教授と奇跡の仮面」
ジャンル:ナゾトキ・ファンタジーアドベンチャー
発売日:2011年春
価格:未定

 残念ながら、大人気の「レイトン教授」最新作をプレイすることはできなかった。試遊台の長い行列が、本作の期待度を物語っていた。日野氏のメッセージによると、本作はまったく異なるアプローチで制作されたという。立体視を生かしたパズルが登場するし、動画パートもさらなる豪華さを誇っているという。来春がさらに待ち遠しくなった!

【スクリーンショット】
(C)LEVEL-5 Inc.

● 「Project ラブプラス for Nintendo 3DS」
ジャンル:コミュニケーション
発売日:2011年
価格:未定

 試遊台は用意されていなかったが、カンファレンスで流れた予告動画から本作の魅力を十分に感じることができた。立体的に見えるヒロインたちのグラフィックスがDSと比較できないほどの解像度を誇っており、アニメーションも前作以上にリアル。内側カメラがプレーヤーの顔を認識することによって、ヒロインたちがリアルタイムで反応してくれるようだ。

【スクリーンショット】
(C)2010 Konami Digital Entertainment

● 「STARFOX64 3D」
ジャンル:シューティング
発売日:未定
価格:未定

 ニンテンドー64のあの名作が、さらに立体的になって帰ってきた!グラフィックスはオリジナル版とそれほど変わっていないという印象だったが、立体視によって、敵機の接近が把握しやすくなり、宙返りや反転などのコマンドを実行するタイミングも掴みやすくなった。やはり、シューティングゲームとの相性は非常に良いと感じた。

【スクリーンショット】
(C)1997-2010 Nintendo

● 「マリオカート(仮称)」
ジャンル:アクションレースゲーム
発売日:未定
価格:未定

 シリーズのファンだけに、是非この最新作を遊びたかったが、今回用意されたのはカメラアングルを変えられるデモだけだった。しかし、このデモから「マリオカート」シリーズの未来が垣間見られたと思う。本作でのサーキットは奥行きがあるので、障害物やアイテムがさらに見やすくなり、プレイがもっと快適になるのではないかと感じた。

【スクリーンショット】
(C)2010 Nintendo

● 「Pilotwings Resort(仮)」
ジャンル:フライトアクション
発売日:2011年春
価格:未定

 「Wii Sports Resort」でもミニゲームという形で遊べたが、今回は本格的な続編として3DSに登場することになった。スーパーファミコン版からの大ファンなのでもちろんプレイした。操作体系はシリーズの伝統を守っているが、これからは内側カメラや3Dジャイロセンサーを活かす操作やモードが追加されることに期待している。

【スクリーンショット】
(C)2010 Nintendo

● 「STEEL DIVER」
ジャンル:アクション
発売日:2011年春
価格:未定

 出展されたタイトルの中で特に注目を集めていた作品。潜水艦のスコープを操り、さまざまな速度で動く敵機を魚雷で撃破していくというシンプルなコンセプトのシューティングゲーム。本体内蔵の3Dジャイロセンサーを活用することによって、スコープの視界をゲーム機の左右の動きで直感的に変えられる。立体視による臨場感は言葉を失うほどのものだ。

【スクリーンショット】
(C)2010 Nintendo


■ Wii用ゲームのファーストインプレッション

● 「THE LAST STORY(ラストストーリー)」
ジャンル:RPG
発売日:2011年1月27日
価格:未定

 招待客の90%が3DSに注目を向けていたが、実は世界初公開となる「THE LAST STORY」の試遊台も出展されていた。

 体験版はダンジョンを舞台にしており、ゲームのバトルシステムをステップバイステップで丁寧に紹介してくれた。驚いたのが、バトルのバラエティの豊かさ。ステルスゲームのように壁に隠れながら敵側のヒーラー(味方のHPを回復する役)を先に倒すというシチュエーションから、敵の群れが1発で全滅するように橋を魔法で破壊するというシチュエーションまで、バトルのタイプが豊富で、どれもプレーヤーの遊び心をくすぐる戦略性の高いものだった。

 今回、ヌンチャクとWiiリモコンで遊んだが、非常に快適な操作システムが開発されたと思った。ちなみにクラシックコントローラーでの操作にも対応しているので、オールドゲーマーも問題なくゲームを楽しめるだろう。

【スクリーンショット】
(C)2010 Nintendo / MISTWALKER

● 「毛糸のカービィ」
ジャンル:アクション
発売日:10月14日
価格:5,800円

 正直に言うと、最近「星のカービィ」シリーズから少し距離を置いていた。シリーズがマンネリ化していたせいか、僕の興味は少しずつ薄れていた。しかし、完全にリニューアルしたこの「毛糸のカービィ」からはとてつもない魅力を感じた。

 ステージ内のジッパーを引っ張ると、絵本のように隠れたエリアが現われるというアイディアに心を打たれた。また、楽器をテーマにしたステージで、ピアノやハープを弾きながらプレイするのは画期的だった。2人協力プレイのほかにも、クエストで獲得した家具で好きなようにカービィの部屋をエディットできる要素もたっぷりと入っているようだ。

【スクリーンショット】
(C)2010 Nintendo / Good-Feel
(C)2010 HAL Laboratory, Inc. / Nintendo

● 「The Legend of Zelda: Skyward Sword (仮称)」
ジャンル:アクションRPG
発売日:2011年
価格:未定

 今回出展されたのは、E3と同じ内容の体験版。Wiiモーションプラスを利用した剣での攻撃は、プレーヤーの動きを忠実に再現している。縦攻撃で倒せるモンスターもいれば、横攻撃に弱い敵もいる。プレーヤーは臨機応変に剣の動きを使い分ける必要があるので、今までになかった臨場感と緊張感が味わえる。

 グラフィックスに関しては、少し違和感を感じた。印象派の絵画を連想させるフィールドに対して、主人公はリアルな姿をしていた。やはり、リンクのベストな“3D版”は「風のタクト」のモデルなのではないかと思う。

【スクリーンショット】
(C)2010 Nintendo

● 「リズム天国 (仮称)」
ジャンル:ノリ感ゲーム♪
発売日:2011年
価格:未定

 DSの「リズム天国GOLD」が大好きな僕は、Wii用のこの続編の存在を知った時、試遊台の前に“瞬間移動”した。用意されていたミニゲームは3つ。もっとも印象に残ったのは、はじかれてくる豆をフォークで仕留めるという前代未聞のゲームだった。

 前作通り、画面の映像を見るよりも、目を閉じてリズムを感じたほうが高得点を獲得しやすくなる。今回試せたミニゲームは前菜にすぎなかった。製品版のお決まりの“へんてこりん”に期待大。

【スクリーンショット】
(C)2010 Nintendo
(C)2010 つんく♂
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(2010年10月8日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]