【号外】
Reported by:ジョン・カミナリ
logo design:フランチェスコ・アッカッターティス

 電遊。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。道。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。

 日本最大のゲームイベント「東京ゲームショウ」。今年もお決まりの幕張メッセで行なわれた。目玉となるゲームは確かにあったが、今年のキーワードは特定のタイトルよりも、ゲームの遊び方を進化させる新型インターフェイスだった。操作方法が直感的になるSCEJの「PlayStation Move」とマイクロソフトの「Kinect」。そして、同じく話題になったのは3Dゲーム。3Dメガネをかけることにより映像がテレビから飛び出しているように見え、ゲームの世界に参加している感覚がさらに増す。新型インターフェイスとの併用でこれからのゲームがさらに深い体験になることは間違いない。

 今回、僕は初めて、日本のメディアの一員として東京ゲームショウの記事を書くことになった。1人でブースを回ってすべてのタイトルを試すことはほぼ不可能なので、僕が注目したゲームを中心に紹介したいと思う。話題になって当然のゲームだけでなく、是非話題になって欲しいマイナーなゲームも紹介したいと思う。売れるゲームは売れ続ける、売れないゲームはずっと売れないではなく、知名度に関係なく“面白いゲームは売れる”という未来になって欲しいといつも願っている。そして、この記事を通じて、「TGS2010」の何がすごかったのか、あるいは、国際的なイベントとして何が不足していたのか、それについても考えたい。まずは、このブースからだ!

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:イタリア 年齢:35歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜~金曜 18時30分~19時放送中)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること



ゾンビが登場したお陰か、今年の「龍が如く」コーナーは去年に比べてさらに注目を集めたようだ

■ セガ ~ゾンビが徘徊する神室町の意外な顔~

 入場して真っ先に向かったのが、セガのブースだった。「龍が如くOF THE END」がとても気になって……“OF THE END”とは、シリーズの終わりを意味するのかと少し心配しながら、「龍が如く」のコーナーの前で足を止めた。相変わらず、派手なキャバ嬢が2人いる。あれ?機関銃を持っている?あれ?その真ん中には、血でスーツが汚れた謎の人物がいる。顔をよく見ると、この世の者とは思えない人物だ。これはゾンビだ!ゾンビ?「龍が如く」にゾンビなのか?口をポカンと開けたまま、見ているものを整理する。

 体験版はないが、動画を上映するクローズドシアターはある。もっと理解する為にシアターに入る。15分があっという間に過ぎていく。口はずっと開いたままだ。「龍が如く」最新作の“OF THE END”は、あの神室町が壊滅的な状況に陥ったことを意味していた。住人たちが1人、また1人、ゾンビへと化していく。人類の絶滅を食い止めるために立ち上がったのが、桐生一馬を含めた4人のヒーローだった。拳とナイフにさよならして、皆がすごい破壊力を持った機関銃やショットガンでゾンビと戦う。

 スピンオフ的な作品である「龍が如く OF THE END」は、“ゾンビ”と“シューティング”という2つの大きな新要素を取り入れた。伝統からかけ離れすぎて大げさだと思った瞬間もあったが、よく考えるとこういう“やりすぎ”な部分こそが、前に進む為の正解だったのではないだろうか?「龍が如く」シリーズがマンネリ化する中で、セガは、ときには邪魔にもなる常識や伝統を打ち破ることに賭けたのではないだろうか。とはいえ、本作にも従来の要素(神室町のプレイスポットやキャバ嬢など)が盛り込まれているので、シリーズのファンも楽しめる内容になっている。

こういう演出に投資するのも大切だ。ゲームはまさしく映画に匹敵するほどのエンタテイメントになった試遊台は用意されていなかったが、クローズドシアターで流れた予告動画は納得するのに充分なインパクトを持っていた名越稔洋氏が登場するステージイベントも行なわれた。「龍が如く」最新作の秘話が満載のイベントになった

インパクトがすごい「VANQUISH」だったが、PlayStation Moveなどの新型インターフェイスに対応しないというのはもったいない

 セガのブースには、ほかにも見所があった。例えば、初公開の「戦場のヴァルキュリア3」。しかも、試遊台も設けられていた。プレイしてみたが前作にとてもよく似ているので、難なくミッションをクリアすることができた(目標は敵の巨大な戦車の破壊だった)。本シリーズはPS3で生まれたが、この3作目をプレイしてさらに強く感じたのは、PSPのほうがこのシリーズに向いているということだ。グラフィックスも、PS3の1作目と遜色がないぐらい豪華なものになっていて本当にすごいと思った。

 最後は、「VANQUISH」について。欧米で大人気を誇る「ベヨネッタ」のプラチナゲームズが開発した最新作。ジャンルは3人称視点で展開するシューティングゲーム。FPSと違って、キャラクターが全身で画面に表示されているので、比較的簡単にアクションを繰り出せる。アクションゲームとしては最高の出来栄えだと思ったが、疑問もいくつかあった。

 まず、「TGS2010」バージョンの体験版が難しすぎた。チュートリアル的な前置きがなかったし、最初の瞬間からプレーヤーが本格的な戦場に投入されていたので、ハードルが非常に高かったのではないだろうか。僕はポーズをかけて、スタッフに説明を何度も求めたぐらい操作が複雑に思えた。正直に言うと、10分という限られた時間の中で本作の魅力を理解するのは難しかった。

 スタッフの説明によると、あえてFPSの好きなアメリカ人プレーヤー向けのゲームだという答えが返ってきた。はたして、ユーザーを制限する必要があるのか?皆が、面白いと思えるアクションゲームの制作に集中したほうがいいのではないかと思った。しかも、アメリカ人向けだというのに、3Dシューティングの成功を左右するオンラインモードが用意されていないという。矛盾の多いゲームだが、操作に慣れてくるとその独特なプレイスタイルに酔いしれるかもしれないとも感じた。

「戦場のヴァルキュリア3」はこのTGSの大きなサプライズだった。しかも、映像のみではなくて、体験版が用意されていたので嬉しさも倍増9月22日発売の「クロヒョウ 龍が如く新章」の体験コーナーもあった。海外から来た多くのプレス関係者が本作に興味を持ったようだPSP用の「シャイニングハーツ」は注目の的だったが、キュートな衣装のコンパニオンもゲームと同じぐらい、来場者の関心を引いていた


■ レベルファイブ ~スタジオジブリの魔法がRPGになった!~

 「レイトン教授」シリーズで全世界での知名度が飛躍的にアップしたレベルファイブの今年のブースは、豪華なお城だった。城内には、DS用「ニノ国 漆黒の魔導士」と今回が初出展となるPS3用「ニノ国 白き聖灰の女王」の試遊台が多数置いてあった。

 DSのゲームは去年もプレイしたが、今年はさらに内容が良くなって帰ってきたという印象を受けた。まず注目したのが、DSの隣に置いてあった魔法指南書「マジックマスター」という本。何百ページもの本で、その中には魔法やモンスターなど、ゲームをスムーズに進めるためのさまざまな情報が載っている。

 例えば、今年の体験版では、ストーリーを進める為にある者を召喚する必要があったが、召喚するには呪文が必要でその呪文を「マジックマスター」を使って調べる。「マジックマスター」とDSを併用することでゲームが進むという、全く新感覚のRPGになっている。

 初出展の「ニノ国 白き聖灰の女王」は、アニメと3Dグラフィックスとの境界線がさらに薄くなったような感じを受けた。もちろん、すごいのは見た目だけではない。戦闘システムも、オーソドックスでありながらほかでは体験できない遊びやすさを持ち合わせていた。

 主人公はバトルフィールドを自由に動いたり、魔法を唱えたりできるし、さらにパーティメンバーには「たたかう」や「まもる」といった指示を与えることができる。確かに革新的とは言えないが、オーソドックスなバトルシステムとしては完成度が高いと感じた。

 そして、一目惚れしたのがこのゲームのワールドマップ。夢のようなワールドマップ。昔の名作RPGを連想させるようなデフォルメの世界に、PS3ならではのグラフィックスを加えた感じだった。本作の発売日は2011年予定となっているが、僕は今日から貯金を始めようと思う。

去年と違ってオープンシアターの座席はなくなったが、大きなスクリーンが設置されており出展作品の予告動画を上映していた「二ノ国」の体験コーナーでは、スタジオジブリのアニメの世界に入ったような感覚を味わった写真は「マジックマスター」の最初のページだ。魔法使い(プレーヤー)が契約書に署名すると、正式に使えるという設定になっている
「マジックマスター」の表紙もインパクト抜群だった体験コーナーの壁には、「二ノ国」の設定資料やイラストが飾られていた「二ノ国」を試遊した人には、ゲームのマスコットキャラクターがあしらわれたバッグがプレゼントされた。まさに一石二鳥!


■ カプコン ~四六時中、大混雑!あの「モンハン」が帰ってきた!~

 レベルファイブと同じぐらい、豪華な造りで来場者の目を奪っていたのは、カプコンのブースだった。僕も、もちろんその“被害者”の1人だった。来場者の目当ては、紛れもなく待望の「モンスターハンターポータブル 3rd」(MHP3rd)の試遊台だった。開場からたった15分で、長蛇の列ができていた。僕ももちろん体験することができた。

 本シリーズの初心者であることは言っておくが、難易度の低いクエストも選択可能だったので、モンスターのハンティングを大いに楽しめた。グラフィックスは、前作に比べてさらに綺麗になった印象を受けた。処理落ちのない、そのスムーズさには圧倒された。エリアとエリアの間のロード時間の早さにも驚いた。さらなるミリオンセラー作品の誕生か?

「YUKUMO MURA」という看板を背景に、幸せそうに足湯でくつろぐコンパニオンたち。その隣には個性的なハンターがコンパニオンを見守っていた。これも、「MHP3rd」ブースの演出の1つだった正面入口ののれんをくぐると、インパクト抜群の大きなだるまが来場者を迎えてくれた
今にもモンスターの赤ちゃんが出てきそうな巨大な卵もあった。あっ!ひび割れている!本作でのハンターの拠点となる「ユクモ村」を再現した「MHP3rd」の試遊スペース。原始的な雰囲気をたっぷりと醸し出していた「MHP3rd」のグッズが揃ったショーケースもあった。ちなみにキュートなアイルーダルマは、イベント限定だったらしい

 「MHP3rd」のすぐそばには、嬉しいサプライズがあった。世界初公開の「逆転検事2」の体験コーナーだ。「逆転裁判」のスピンオフであるこの作品では、検察側の御剣検事になって、さまざまな殺害現場を調査し犯人を見つける為のヒントや証拠を集めるという内容になっている。試遊したところ、ゲームの流れも、ルックスも前作とほとんど変わらないように思えた。1つだけ気になったのは、本作の新キャラクターと、前作から受け継がれたキャラクターとのギャップ。デザインやアニメーションが微妙に違うので、少し不思議な感じを受けた。

 体験版をプレイしたが、新しいシステムの「ロジックチェス」に辿りつくのに少し時間がかかった。冒頭の文章を減らして、最初から新要素を試す内容になっていれば、もっとテンポよく遊べたのではないだろうか。ちなみに「ロジックチェス」は、検事と被疑者との駆け引きをチェスの試合に見立てた内容になっていた。駒を崩すことで、相手の心理に少しずつ迫るという流れだ。「ロジックチェス」は新要素の1つではあるが、シリーズのファンとしてはもう少し革新的な要素を用意して欲しいとも思った。これからは、常識を破るような、インパクトのあるモードを追加して欲しいとおもう。

御剣検事とコンパニオンとの記念写真。コンパニオンが手に持っているのは、もちろん、来場者への嬉しいプレゼントだ「逆転裁判」シリーズから絶大な人気を誇るキャラクター、“とのさまん”をモチーフにしたプレゼント「とのさまんじゅ」をゲット!ストラップだから、食べられないぞ!「MEGAMAN UNIVERSE」も初出展。特に海外プレス関係者に注目されていたようだ。外国人の長い行列が、本作のアメリカでの人気ぶりを物語っていた
「Dead Rising 2」のブースも注目を集めていた。牢屋に入れられたゾンビも発見。暴れ過ぎて、ピントの合った写真を撮るのが難しかった「Dead Rising」シリーズで大絶賛されている、稲船敬二氏の第1回監督作品「屍病汚染」のポスターが公開されていた。ゲームよりも怖いのか?「Marvel VS. Capcom 3」の体験スペースは外国人に“占拠”されていた。インタビューしてみると、このゲームを体験する為だけに会場を訪れたアメリカ人もいた


■ スクウェア・エニックス ~RPGの雄が多数の新作を発信!~

 正直に言うと、今年のスクエ二ブースには、絶対的な目玉ゲームはなかったと思った。良作は何本もあったが、去年の「Final Fantasy XIII」に当たる大作はなかったように思えた。

 真っ先にプレイしたのは、久しぶりの「Parasite Eve」シリーズ最新作「The 3rd Birthday」だった。アヤ・ブレアの大ファンである僕は、この続編をとても楽しみにしていた。試遊した感想としては、アヤが周囲の兵士に移ってその武器を使えるという要素は新鮮味に溢れていた。しかし、システムが完全にシューティングに傾いていることには賛成できなかった。従来の、アドベンチャー、RPG、シューティングの絶妙なバランスは消え去ったように感じた。

 また、別の人間に乗り移ってもグラフィックスが変わらないため、誰になっているのか少しわかりにくいとも感じた。バトルが単調気味だったということも、少し気になった。グラフィックスに関しては、文句なし。特に素敵だと思ったのは、体験版の最初に流れたCG動画。アヤ・ブレアのセクシーなルックスと、女性らしい表情に酔いしれまくった。バトルにも豊かさが加われば、さらに良いゲームになるのではないかと思う。

 PS3/Xbox 360用の「MIND JACK」は、比較的オーソドックスなシューティングゲームだが、誰にでも“マインドジャック”(体を乗っ取ってコントロール)できるという、ライバルゲームにない新鮮さも持ち合わせている。民間人、兵士だけでなく、ロボットを含めたあらゆるキャラクターにマインドジャックできるので、そのバラエティーに圧倒された。主にオンラインゲームとしてプロモーションされている本作だが、シングル用の立派なストーリーモードも用意されている。1人でゲームをじっくり楽しみたいユーザーもいるので、これは朗報だろう。

DS用の「サガ3 時空の覇者」も出展されていた。体験コーナーの入り口では、巨大なポスターが来場者をお出迎えシミュレーションRPGが好きな人は、「タクティクスオウガ 運命の輪」の出展に喜びを感じたのではないだろうか
ショーケースには、「タクティクスオウガ 運命の輪」の予約特典が展示されていた「ロード・オブ・アルカナ」の体験コーナーでは、オンラインモードとシングルモードの両方を遊べる体験版が用意されていた20分ぐらいの動画をクローズドシアターで見てから「The 3rd Birthday」の試遊台へ
「MIND JACK」。最初はオンラインゲームとしてアピールされていたが、立派なストーリーモードも制作中だ。発売日がさらに待ち遠しくなった!DS用の「Kingdom Hearts Re:Coded」も体験できた。新しく追加されたシューティングパートが特に魅力的だった遊びやすくなった「Dissidia 012」では、「Final Fantasy XIII」の主人公・ライトニングも操作できるようになった。もちろん、「オプティマチェンジ」も使用可能。さらに、アクションが苦手な人向けに、コマンド選択式のRPGモードも用意されている


■ SCEJ ~PlayStation Moveで未来がやってきた!~

 おそらく、今年のSCEJブースは最大のスケールを誇っていたのではないだろうか。多種多様なジャンルのゲームが出展されていたが、特定のタイトルよりも注目を集めたのは、PS3用の新型インターフェイス「PlayStation Move」(PSM)だった。

 プレス関係者とはいえ、「PSM」の感触を試すには行列に並ぶしかなかった。チケットカウンターという受付があり、そこでPSMの試遊時間を予約するシステムになっていた。僕が体験できたのは、格闘ゲームの「肉弾」、動物育成シミュレーションの「Me & My Pet」、テニスゲームの「パワースマッシュ4」の3本だった。

 「肉弾」は、グラフィックスが非常にリアルな格闘ゲーム。「PSM モーションコントローラ」を両手に持ち、正面の相手に向かってパンチを繰り出していく。「PSM」の機能を紹介するミニゲームとして考えれば納得できる内容だが、ゲームとしての作りこみが不足していると思った。あと、体験版だったとはいえ、女性格闘家が選べないという点も不思議だった。女性ユーザーが視野に入っていないということだろうか?

 「Me & My Pet」は「PSM」のポテンシャルをフルに発揮する目玉ソフトだったと思う。架空のペットを育てるというコンセプトのゲームで、「PSM」の棒の先端が、シャワーの噴き出し口やドライヤーになり、ペットに水をかけたり、乾かしたりすることができる。実際の生き物の面倒を見ている感覚に陥るほど、ペットの動きやプレーヤーに対しての反応はリアルだ。しかも3Dテレビにも対応しているので、3Dメガネをかけて遊ぶとリアルさや没入感がさらに増す感じだった。

 「PSM」に対応している「パワースマッシュ4」も出展されていた。「PSM」をラケットに見立て、腕の動きを使って直感的にテニスで遊んでいる感覚を楽しめる。グラフィックスは文句なしのできだったが、1つだけ気になったことがある。プレイする時のカメラアングルが微妙なので、ボールがこちらのラケットに到着する瞬間を見極めるのが難しいと感じた。

 知名度の高い大作が多いSCEJブースだったが、面白いマイナーなタイトルも幾つかあった。特に興味を持ったのは、人類が滅びた未来の東京を舞台とした「東京ジャングル」。体験版の主人公は飼い主のいなくなったわんこで、生き延びる為には鳥や野良猫など、他の動物を食べざるを得ない。

 体験版では、わんこを操作し、茂みに隠れながらほかの動物を仕留めていくという流れでゲームを進めていった。自然のルールと残酷さ、そして命の大切さを教えてくれる、尊いゲームだと思った。3Dグラフィックスは確かに荒削りな部分もあったが、コンセプトは非常に個性的で面白いので是非売れて欲しい。

「Gran Turismo 5」。3Dメガネをかけて遊ぶことができた。迫力はあるものの、開発開始から何年も経ったせいか、グラフィックスはPS3にとって当たり前になったような気もした「フリフリ!サルゲッチュ」も展示されていた。今回は、「PSM モーションコントローラ」を虫捕り網のように振って、サルを捕まえていく
海外発のゲームも用意されていた。特に「Killzone 3」と「Heavy Rain」が注目を集めたようだ「肉弾」のグラフィックスは少し個性に欠けていた。グレー系の色が多いので、もう少しカラフルなフィールドのほうが楽しめたのかもしれないとても楽しみにしていた「人喰いの大鷲トリコ」の体験版が出展されていなかったのは、正直ショックだった


■ マイクロソフト ~Kinectはすごい!体がコントローラーになる爽快感は?~

 マイクロソフトの巨大なブースでは、Xbox 360用の新型インターフェイス「Kinect」が来場者を待っていた。Kinectは手にコントローラーを握る必要がなく、自分の体を丸ごと使ってゲームのキャラクターを動かすことができるのだ。進化の度合という点だけで見ると、Kinectはライバルよりもさらに先に行っているのではないかと感じた。

 四六時中行列が絶えなかったKinect体験コーナーだったが、僕は「Kinect Sports」を試遊する機会に恵まれた。あの“名作”にインスピレーションを受けた作品だが、プレーヤーの自由度は増したので、さらにスポーツの楽しさを手軽に体験できるようになった。

 特に面白かったのは「ビーチバレー」。プレーヤーの動きに対する画面の選手のレスポンスが非常に早く、右手を上げると(ほぼ)同時にポリゴンの選手も右手を上げる。レスポンスの良さをもう少し向上させることができれば、Kinectのすごさがさらに増すのではないだろうか。これからはKinectの価値が100%発揮されるように、本格的なゲームの開発に取り組んで欲しい。

Kinectの体験コーナーは常に100分待ちだった。マイクロソフトにとっては、記念すべき大成功だったと思うバンダイナムコゲームスが開発したKinect用の「体で答える新しい脳トレ」も注目を集めていた。腕を使って算数を解く気分は格別だ
Kinectパックに同梱されるゲームソフト「Kinectアドベンチャー」も非常に面白かった。2人でゴムボートをコントロールするのは爽快感満点陽気なコンパニオンの姿が、マイクロソフトブースの明るさをさらに増していた「Halo Reach」やほかのメーカーの自信作も揃ったマイクロソフトのブースは大盛況だった


■ KONAMI ~「悪魔城」が本格的な3Dゲームに生まれ変わった!~

 今年のコナミブースには本当に驚かされた。特に興味をひかれたのは、日本で初出展の「Castlevania Lords of Shadow」だった。その体験版をプレイして思った。これこそが、従来の2D作品に匹敵する3Dの“悪魔城”だ。「メタルギアソリッド」で絶大な人気を誇るコジプロの監修があったお陰で、この素晴らしい結果になったのではないかと思った。

 まず、体験版の丁寧な作りに好印象を持った。ステップバイステップでプレーヤーに操作方法を教えるチュートリアルのおかげで、3D化によるハードルを一切感じない。プレイ感覚も従来の2D作品とほとんど変わらない。

 「悪魔城」の魂はしっかりと守られているし、さらに特殊効果を使った豪華なグラフィックスが全体を盛り上げている感じだ。キャラクターの動きを追う自動カメラは時々揺れたりするなどダイナミックな演出も見せていた。ザコ敵を倒した後、巨大な狼が現われた際も、雨が強まって雷が鳴るといったホラー映画のような演出も迫力満点だった。

 このほかにも話題作が多数あったKONAMIブースだが、特に来場者の注目を集めていたのは、「Dance Evolution」の体験コーナーだった。KONAMIのリズムゲームが大好きな僕も、その新作を体験せずにはいられなかった。

 Xbox 360用の「Dance Evolution」は、話題のKinectを使っている。コントローラーは自分の体だ。画面の指示に従って手や脚をリズミカルに動かせば、ほかのキャラクターと一緒にさまざまなダンスを楽しめる。マットやコントローラーをまったく気にせずに自由に踊れるという点では、本作は革新的だと思った。これからのKinect技術の進化に期待大。

 残念ながら試遊台はなかったが、大きな画面に流れていた映像には心を奪われた。KONAMIのパートナーであるアトラスの最新作「キャサリン」の予告動画だった。「キャサリン」は、「ペルソナ」シリーズを手掛けたスタッフによる、(自称)一風変わったアクションアドベンチャーだ。まず、流れていた映像の強さに感激した。少し、ではなくて、非常にセクシーな内容だった。具体的な遊び方はまだ謎に包まれているが、僕の直感が間違っていなければ、これは(超)名作になるに違いない。

タイトル数は決して多くなかったが、自信作は確かにあった。量よりは質か?どんなゲームよりも関心を引いていたのは「Dance Evolution」の体験コーナーだった。Kinect技術の導入でダンスゲームの常識が変わったような感じがした「Dance Evolution」の面白さを体験する為に、外国人も数多く行列に並んでいた
キュートなコンパニオンから「Castlevania Lords of Shadow」のパンフレットをもらった。スタッフへのインタビューや「悪魔城」シリーズの貴重な情報が満載だった強烈な内容と関係があるかもしれないが、「キャサリン」の体験版は用意されていなかった。残念!おそらく、キャサリンはゲーム史上最もセクシーな女性キャラクターだろう。予告動画はまさに傑作だった


■ そのほかのメーカー

【バンダイナムコゲームス】
「God Eater Burst」の体験コーナーは凝りに凝った演出を見せていた。見た目にもゲーム内の雰囲気を再現していたので、非常に魅力的だった。さらに、壁にはゲームの素敵なイラストが展示されていた。派手な衣装を着たイメージキャラクターも来場者の目を引いていた
「Tales of」シリーズ最新作の大きな体験スペースが設けられた。PSPの「Radiant Mythology 3」に加え、PS3で生まれ変わった「Tales of Graces f」の試遊台も用意されていた
アニメを題材にしたゲームの最新作も多数用意されていた。日本人来場者が特に注目したのは「ガンダム無双3」だった。PS3用の「ナルティメットストーム2」や「Dragon Ball Raging Blast 2」は、外国人の間でも人気を集めたようだ

【アイレムソフトウェアエンジニアリング】
今年のTGSでは、残念ながら「絶体絶命都市4」をプレイすることはできなかったようだ。欧米のプレス関係者が理解できないような、日本語だけの注意書きの看板が貼られていた。「試遊体験は一般ディのみとさせていただきます」。どういうトラブルが生じたかは定かではないが、非常に残念な結果になってしまった。とはいえ、インパクト抜群の3D映像が楽しめるようになっていたので、話題性は確かにあった


■ 最後に……

 今年の東京ゲームショウを語るにあたって外せないのは「PSM」対「Kinect」だ。現段階では、どのシステムが良いか結論を出すのは不可能だが、これから制作される新型インターフェイス対応ゲームが勝敗のカギを握りそうだ。

 今回は、SCEJもマイクロソフトもミニゲーム的なゲームが多かったが、本格的なゲームとなると新インターフェイスをどのように活用するかがこれからのメインの課題になるだろう。

 もう1つのキーワードは、3Dゲームだ。映像が画面から飛び出すというのは魅力的だが、目が疲れてしまうので長時間遊ぶのは少々つらい。3Dは過去にも人気だった時期があったが、ブームが終わったら、また忘れられる恐れもある。映像美で終わる3Dではなくて、本当にゲームの遊び方が変わる3Dであれば、ずっと活用して欲しい。

 円高と不況の真っ只中行なわれた今年の東京ゲームショウ。日本のゲームが欧米でも売れ続けるだろうかという、日本のメーカーの懸念には、僕はポジティブに答えたいと思う。

 日本のゲーム産業は、欧米のメーカーが真似できないような独自の価値を持っているので、市場の減少を恐れる心配は全くないと確信している。ただ、日本のゲームを紹介する為に行なわれる東京ゲームショウというイベントには、まだ改善の余地があると思う。

 今年のスローガン「GAMEは、新章へ」は、中国語や韓国語にも翻訳されていた。国際化への大事な第1歩だったと思う。しかし、会場内のあらゆるポスター、看板、広告が日本語だけだったというのには、不満を感じた。

 TGSというイベントが海外のゲーム関係者とのビジネスの場となりうるだけに、英語の少なさは打撃的な欠点になるのかもしれない。ゲームの試遊台に関しても、言語の選択機能を付けるのが得策だろう。せめて海外への進出が視野に入っているタイトルには追加するべきだと思う。

 例えば、僕の大好きな「龍が如くOF THE END」も、ボイス、字幕、キャッチコピーのすべてが日本語だけだった。僕は日本語がわかるので問題ないが、アメリカから来たビジネスマンたちは何も理解できないだろう。もったいないと思うのは僕だけだろうか?

 公開された入場者数データを見て驚いた。なぜなら、ビジネスディの会場内は心配するほど閑散としていたから、最悪の状態を懸念していた。しかし、今年のTGSは過去最高入場者数を記録したという。とても喜ぶべきデータだが、それと同時に数字に甘えてはならないとも思う。

 来年以降のTGSの来場者数をもっと増やす方法は何だろう。そのカギは、景気ではなく国際化にあると確信している。何の“差別”もなく、どの国の人も平等に楽しめるイベントになって欲しい。ビジネスに使う共通語、英語の増加がまず国際化へのファーストステップと言えるだろう。

 あとは、行列の短縮に繋がる工夫をして欲しい。例えば、携帯ゲーム機用の新作の場合は、バーのような広いスペースを設け、そこでゆっくりとブースからダウンロードした体験版を遊ぶという具合に少しずつ変わっていって欲しい。

 いくら辛抱強いとはいえ、日本人の中にも長い行列に並ぶかどうか迷っている人たちもいた。行列の短い、あるいは行列のないTGSが実現したら、どれほど嬉しいだろう。ゲームを体験することがストレスにならないようなイベントになって欲しい。これこそが、TGSの最大の課題だろう。




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(2010年9月22日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]