【連載第15回】オンラインゲームの楽しさを再認識しよう!


てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム


「エミル・クロニクル・オンライン」の憑依システムの協力プレイ
相棒は女子中学生!? 服に宿り、力を合わせて大冒険!


 MMORPGはふとした偶然から友達ができる。毎日のように友達と一緒に冒険し、いつしか大事な「相棒」になる。MMORPGは“冒険”を通じて、絆を深くしていくのが楽しい。今回取り上げたいのは、「エミル・クロニクル・オンライン」ならではの“出会い”と、相棒の話だ。

 「エミル・クロニクル・オンライン」には様々なゲームシステムがあるが、今回取り上げる“憑依”は特にユニークなシステムだ。プレーヤーは相手や自分のアイテムに宿ることで、色々な能力を発揮する。1人のプレーヤーの装備に複数のプレーヤーが憑依して、1人でパーティープレイが楽しめる。何よりも、「しゃべる武器や防具」というイメージは、ファンタジーっぽくて楽しい。

 今回は、僕が相棒の“服”となって冒険を楽しんだ話だ。冒険を通じて出会い、色々な場所へ行って共通の時間を重ねていく。相棒のログインが楽しみになるというのは、オンラインゲームだからこそ味わえる経験だと思う。


■ 「攻撃はまかせろ!」、「頼むぜ相棒!」。しゃべる服になることで得た仲間

アイテムに憑依して使用者を待つ。憑依は「ECO」の一般的なプレイスタイルだ

 「エミル・クロニクル・オンライン(以下、「ECO」)」には、“憑依”というシステムがある。アイテムに宿ることができるシステムで、プレーヤーが宿ったアイテムは耐久度が減らなくなる。さらに宿ったキャラクターがスキルやアイテムを使って、そのアイテムを身につけている人を援助することが可能だ。

 憑依は「ECO」の初期からある基本コンセプトの1つで、プレーヤーは自分のアイテムに憑依すると、そのアイテムが床に置かれた状態になる。そのアイテムは他のプレーヤーが使うことができ、プレーヤーが憑依したアイテムを持って戦闘を行なうと、憑依しているプレーヤーにも経験値が入るのだ。この効果は憑依したままログアウトしても続く。使ってもらった場合、次にログインすると経験値が増えているのである。

 一方、プレーヤーに憑依されたアイテムは、通常のアイテムとは違い耐久力が減らない。このため憑依アイテムは、ダンジョンの深部などを目指す時などの局面で魅力的だ。また、アイテムによっては高価なアイテムや、レアなアイテムを“借りる”感じで使える、という場合もある。現在も多くのプレーヤーが使っているシステムである。

 実は、この憑依は憑依してすぐにログアウトするのではなく、「誰かが拾ってくれるかな」と期待してしばらく見守っているのも楽しいのだ。特にこのシステムを知らない初心者が拾ったとき、話しかけたり、手助けをしたときの反応が楽しい。アイテムを拾って使ってみる、という行動が、プレーヤーとプレーヤーを繋ぐ行動になるのだ。

 何度か、憑依アイテムによるコミュニケーションを経験してみた僕は、その日もアイテムとなって、道ばたに落ちてみようと考えた。マンガの「ど根性ガエル」のように、服がしゃべったら面白いかなと考え、「レザーワンピース♀」に憑依してみた。拾ったのは駆け出しの冒険者の女の子キャラクターで、どうやら「何だか知らないけど装備アイテムが落ちてるし、使ってみよう」と、僕が憑依しているレザーワンピース♀を身につけてみたようだ。

 僕はしばらく、その冒険者の行動を見守っていた。僕より少し後輩のその女の子は、ちょっときつめの狩場で敵と戦っていた。体力が少なくなったとき、僕はアイテムを使って体力を回復してあげた。画面からは、彼女が驚いているのが伝わってくる。僕は彼女に話しかけてみることにした。「こんにちは!」周りを見回す彼女。「だ、誰ですか? どこにいるんですか?」。僕は、拾ったアイテムは憑依アイテムだと言うこと、僕はレザーワンピース♀に憑依していることを説明した。

 「僕は槍を使うフェンサーだから戦闘で支援ができるよ。あっちの敵はちょっと強いけど、戦ってみよう!」。僕の提案に、彼女は敵に向かっていく。そこに合わせて、僕はスキルを発動させた。今まで彼女がかなわなかった敵が一撃で倒れた。「すごいですね!」女の子の喜びと驚きが伝わってきて、こっちも楽しくなった。僕は彼女のピンチにスキルやアイテムを使ってフォローするという戦い方で狩りを続けた。彼女は次第になれてきて、僕らはノリノリで狩りを続けていった。


イラスト:ミズノ マサト

「ライトニングスピア!」、「ナイスだ! 相棒!!」

 しばらく狩りを続けて、すっかり仲良くなった僕たちは、フレンド登録をして、明日も会うことを約束してその日はゲームを終えた。

 「ECO」ではまだ親しい友達がいなかった時期、こうやって友達ができたのは幸運だった。ログインしたときフレンドリストを見て、彼女がいる事を確認したら連絡して、一緒に狩りをした。「じゃあ、憑依するよ」、「はい!」。一緒に肩を並べて冒険するのも楽しかったが、1人で2人の力を発揮するこのプレイスタイルが面白かった。ゲームルール的には憑依すると経験値は少ないのだが、この独得のプレイスタイルが面白くて、僕は服に宿ったまま、彼女と色んな冒険をした。

 彼女との冒険は、「MMORPGは“相棒”ができると楽しい」ということを改めて気づかせてくれた。一緒にレベルアップして、行動範囲が広がっていくのが楽しかった。彼女がログインするのが楽しみだったし、彼女もまた僕がログインするとすぐに声をかけてくれた。ちょっと危険な場所へ遠出してみたり、ダンジョンにこもったり、色んな場所を2人で進んでいった。ピンチの時には僕が服から分離して、敵を引き付けたりもした。突然“救い手”が現われたかのような、ちょっとロールプレイっぽい活躍もできて、面白かった。

 彼女とは一緒に楽しい時間を過ごせたのだが、結局、その時間はそれほど長いものではなかった。ある日、明日からログインできなくなるといわれた。テストが近く、さらに受験を前に、オンラインゲームは控えるという。これまでも彼女との会話からなんとなく、学生さんぽいなあと思うところはあった。学生にとって、テストはとても大事だし、プレッシャーだというのは僕にも経験がある。彼女と会えなくなるのは寂しいが、せめて応援しようと思った。「そうかー大変だねぇ。受験は大学なのかな? がんばってね」。

 僕の言葉に彼女の答えは「私中学生なんですよー」。この答えにはさすがにびっくりした。僕の年齢って、彼女の倍どころか、2.5倍だ。そんな年下の子が“相棒”だったんだ。この実感は、なかなか衝撃だった。オンラインゲームは中学生や小学生もプレイするんだよなあと、改めて思った。その後彼女とは会えなかったが、かなり驚かされた経験だった。



■  てっちゃんの割とどうでもいい話 「プラグスーツを着て歩ける、ごった煮のような作品世界」

コラボレーションパッケージに付いていた特別アイテム「プラグスーツ(アスカ)♀:」。こういったアイテムも飲み込んでしまう懐の深さが「ECO」の魅力だ

 最近は、現実のファッションブランドとコラボレーションして、ゲーム内をイメージした服を現実に作り出すような展開もしている「ECO」だが、ゲーム内でのコラボレーションの多彩さも面白い部分だ。

 なにしろ「ECO」は初期からSFにファンタジー、ファンシー風に、ロック風といった様々な要素が取り入れられた、パッチワークのような世界観が魅力だ。プレーヤーキャラクターからして天使族と悪魔族がいるし、街にはブリキ人形のマリオネットが歩いている、謎の機械があったり、仲間はロボットに乗る、次元を越えるエレベーターはあるしで、SFとファンタジーが混じり合っている。

 ここにコラボレーションが加わると、さらにカオスになる。「新世紀エヴァンゲリオン」のプラグスーツ型アバターが出たときは、「これを実現させるのか」と衝撃を受けた。さらに「ECO」は、「ヤッターマン」のドロンジョの衣装や、「ひぐらしのなく頃に」の“鉈”なども登場し、同社の「ラグナロクオンライン」まで登場しているのだ。

 他のオンラインゲームでもコラボレーションは魅力だが、「ECO」なら何でもオッケーじゃないか? という世界観は本作の大きな強みだと思っている。この“ごった煮”感はこれからも進めていって欲しいところだ。



~今回ぐだってしまったオンラインゲーム~

「エミル・クロニクル・オンライン」

ゲーム内イベントの一場面。「ECO」のイベントでは、巨大化したキャラクターが出てくることも

 「ECO」はヘッドロック、ブロッコリー、ガンホーの3社が共同で開発したMMORPGで、現在はガンホーが運営、ヘッドロックが開発を担当している。2005年12月からサービスがスタートし、2009年5月からは基本プレイ無料のアイテム課金制に移行している。「ハートフルオンラインRPG」をコンセプトとして、あたたかく、かわいらしい雰囲気を持っている。

 世界観としては、人間が住むエミル、天使族が住むタイタニア、そして悪魔族のドミニオンという3つの世界、さらにこれらの世界を侵略しようとするDEMの世界が存在する。ドミニオンの世界はDEMにより侵攻されており、住人達はレジスタンスとして戦い続けているという。プレーヤーはエミルの世界からスタートし冒険の地域を広げていく。「SAGA」という区切りでストーリーが進行し、「エミル」という少年を中心に、3つの世界を巡る物語が展開する。

 プレーヤーキャラクターはエミル、タイタニア、ドミニオンの3種族から選べる。ノービスからスタートし、12の職業に転職する。職業はさらにエキスパートジョブと、テクニカルジョブにわかれる。さらに3次職のクロニクルジョブが用意されており、たっぷりキャラクター育成が楽しめる。2009年12月から第4の種族DEMが追加された。DEMはこれまでのキャラクターとは違い、チップやパーツで成長していく。

 2009年4月14日からは、「SAGA13」がスタート、メインストーリーでは失われた都「ECOタウン」という街がクローズアップされている。このほかにも、初~中級者向けのマップや、新しいチュートリアルが追加され、新人冒険者とベテランを繋ぐ「師弟システム」や、プレーヤーだけの「開拓村」といった新システムも追加された。

【スクリーンショット】
アップデートを重ねた「ECO」の冒険フィールドは広大で、驚くべき景色が待っている。右は第4の種族DEM。体を機械化し手いる種族で、ミサイルなども装備できる
左から、メインストーリーの一場面、クロニクルジョブのスキル、そしてみんなで協力して作る「飛空城」だ。現在も積極的に新しい要素が盛りこまれている
イベント風景。ファンタジー風、現代風、SF風と、洋風に和風と、キャラクターの服装は本当に様々だ。あらゆる要素が混じり合う「ECO」の面白さはファンを魅了し続けている

(C) BROCCOLI/GungHo Online Entertainment,Inc./HEADLOCK Inc.

(2011年 4月 19日)

[Reported by 勝田哲也]