【連載第1回】オンラインゲームの楽しさを再認識しよう!


てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム


物理的な距離を超え、「冒険」を重ねて繋がる仲間達
「ウルティマオンライン」での衝撃体験、「僕は福岡からです。あなたは?」


 今回から始まる「てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム」。筆者“てっちゃん”ことオンラインゲームライター勝田哲也が、これまでオンゲーで体験したこと、感じたことを毎回様々なテーマで紹介していこうと思う。僕の“オンゲー初体験”は「ウルティマオンライン」。1997年からサービスされているこの作品を皮切りに、様々なオンラインゲームをプレイしてきた。

 その後、2000年から編集・そしてライターとしてゲーム関係の仕事を始めるが、僕の仕事の中心には、常にオンラインゲームがあった。様々な作品のレビューや体験レポート、発表会の取材から、海外の取材……。オンラインゲームという新たなジャンルの発展をライターとして、そしてプレーヤーとして見つめてきた。開発者や広報などメーカーの人々とも関わってきたが、やはり“プレーヤー”の人達との関わりが大きかった。様々な“仲間”が得られたからこそ、オンラインゲームの仕事を続けられたのだと思っている。

 オンラインゲームは、1つのゲームジャンルとして確立し、プレーヤー人口は世界中で増え続けている。しかし一方で“晒し”や“廃人”といった言葉で、オンラインゲーマー自身さえネガティブな部分を大きく捉え、ギスギスしてしまう部分がある。オンラインゲームというものが何かわからない人には、いよいよ不可解なものに映っていることと思う。僕はこのコラムで、「オンラインゲーム」の魅力を様々なテーマで語っていきたいと思う。このコラムを読んでオンラインゲームプレーヤーの皆さんに「俺、面白い体験しているよな」と思ってもらえれば幸いだ。


■ オンラインゲーム初体験。距離を超えて集まっている事を痛感させられた衝撃的な一言

最初期のMMORPG「ウルティマオンライン」。このゲームでオンラインゲームに初めて触れた、という人も多いだろう

 今回は僕がはじめてプレイしたオンラインゲームであり、MMORPGの元祖でもある「ウルティマオンライン」から、「物理的な距離を超えて集まる仲間達」をテーマにオンラインゲームの魅力を語ってみたい。オンラインゲームは自分以外の多くの人は“中の人”のいるプレーヤーキャラクターだ。自分と同じどこか別な場所から世界に繋がり、様々な体験を通じて、友達や仲間になる。最も基本的なオンラインゲームの楽しさについて語ってみたい。

 あれは、ゲームを初めて数日だったと思う、友人の誘いでプレイの中心を南の港町「トリンシック」に定めたころ。とにかく「周りの人間がみんなプレーヤー」というのが新鮮で、他の人がチャットしている輪にも入れず、ドキドキしていたころだ。街中央の公園の通りを向こうから歩いてきた人が、突然僕に話しかけてきたのだ……。


イラスト:ミズノ マサト

 「僕は福岡からです。あなたは?」

 反射的に浮かんだのは「何いってんのこの人?」という想いだった。ここは魔法の国ブリタニアの、トリンシックだ。それなのに福岡ってなんだよ、不粋だなあ。MMORPG初心者だった僕が最初に感じたのは強い反発だった。しかし次の瞬間「色んな人がいるんだな、これがオンラインゲームなんだ」と改めて気付かされた。僕以外の“キャラクター”が、予想もつかない行動をする。色んな人と同じ場にいることこそがオンラインゲームの特徴なんだと、その時思ったのだ。

 アマチュア無線をする人は、自分が住んでいるところとは全く違う人と会話をして、距離を離れた偶然の出会いを楽しむところがある。あの福岡の人にとって、「ウルティマオンライン」はそのアマチュア無線での繋がりのような、「日本中の人がゲームに繋がっている」ということが最も驚きだったんだと思う。対する僕は、その時は、多くの人と一緒になって剣と魔法の異世界を「共有していること」こそが大事だった。当時の僕は、「色んな人がいるというのは面白いけど、せっかくの異世界で現実の話をする、というのはちょっと楽しむベクトルが違うなあ」と思ったのだ。

 その後僕は「ウルティマオンライン」にどっぷりハマり、友達を増やしていく。ギルドの仲間から友達ができて、偶然知り合った人とも親しくなった。そうなると、「魔法使いの○○さんの“中の人”」に対してもどんどん詳しくなってくるのだ。この経験は新鮮だった。あの“福岡の人”が1番興味を持っていた「日本中の人が1つの場所を共有している」ことが、改めて面白く感じられたのだ。

 暗闇にたいまつを灯し、闇に怯えながら洞窟を一緒にくぐった○○さん、ドラゴンのブレスに一瞬で焼かれ幽霊のまま村まで一緒に走った△△さん、船に乗って世界一周を目指した□□くん……体験を重ねることに“絆”が強くなる。ゲームに繋げば彼等がいる、「友達に会いたい」と、僕は毎日ゲームにログインするようになった。そしてふとしたきっかけから、住んでいる場所や、仕事、家庭の話など、ゲーム以外の話もするようになっていった。“中の人”に対しての知識も、どんどん深まっていったのだ。

 考えてみれば、とても奇妙な体験だ。○○さんは大坂、△△さんは長野、□□さんは北海道……。現実では出会う可能性がないような距離に住んでいる人達が、ふとしたきっかけで仮想世界の中で出会い、様々な共通経験を繰り返して「仲間」になっていく。ゲームの中だって関係の深い人、浅い人もいる。その中で「冒険の仲間」というのはそれほど多くは作れない。現実の距離、身分、年齢、様々なものを飛び越えて、ゲームが“縁”を繋ぐというのはやはりとても奇妙で、面白い感覚だと、ゲームを進めていきながら、つくづく思うようになった。

 あの後福岡の人は、僕のように仲間を得て、楽しい体験ができただろうか。今の僕は、最初のアプローチは様々でも、最終的にプレーヤーの繋がりが、オンラインゲームの魅力だと思うようになった。今でも僕は、毎日のようにオンラインゲームにログインし、友人と会っている。10年でプレイするゲーム、集まる仲間は変わっていったが、この繋がりが僕を魅了し続けている。10年前の「ウルティマオンライン」での友人とは、何人かとは今でも連絡を取っている。彼等との冒険は今でも大事な思い出だ。繋がる仲間が増え続ける、面白い時代を生きているなと、改めて実感する。


■  てっちゃんの割とどうでもいい話 「レアアイテム独り占めしちゃった!」

 「UO」で僕にはいくつか「ダメなことをしちゃったなあ」という記憶がある。パーティーでの分配で揉める、という話は良くあるが、それに近い話でレアアイテム欲しさに人間の浅ましさをむき出しにしてしまった苦い思い出である。

 「テラザンキープ」という蜘蛛人間が群れているちょー怖いダンジョンで、まだまだ駆け出しだった僕は何度も何度も死んでは生き返らせてもらうだけ。活躍しているのは先輩達のみで、僕は弱い敵を援護してもらいながら倒すのが精一杯、という状況だった。

 狩りの後、分配の時点で、自分がそこそこ強いマジックアイテムを持っているのに気付き、「僕このアイテムだけでいいや! お金の取り分いらないから!」と、力一杯叫んでそのアイテムを自分のものにした。明らかに分配金額よりもいい武器を両手に抱え込んで所有権を主張する自分の姿は、後になってその浅ましさに気がつき、猛烈に恥ずかしくなった。

 あの時僕はとにかく自分の「船」が欲しくて、このマジックアイテムを売れば船購入に近づける! それだけで頭がいっぱいだった。欲に目がくらむってのはあるんだなあ、しかもその欲望のまま思いっきり友達のまえで主張するなんて……。オンラインゲームって人と人の繋がりだよなあ、これからはもっと気を使おう、と反省したのである。



~今回ぐだってしまったオンラインゲーム~

「ウルティマオンライン」

開発:Origin Systems(後にEA傘下に)、運営:エレクトロニック・アーツ。北米では1997年よりスタート、1998年には日本サーバーでの運営がスタートした。画像は2010年10月13日に発売される最新拡張パック「未踏の航路」より

 1997年より北米でスタートし、1998年には日本サーバーでの運営がスタートしたMMORPGの元祖といえる作品である。多くのプレーヤーが1つのワールドを共有し、プレーヤーはスキルを伸ばすことで魔法使いや剣士、武器職人など自分の目指すキャラクター像に育て上げることができた。プレーヤーを襲うPK(プレーヤーキラー)等も可能で、PKの是非など、現在までも続く「プレイスタイル」への議論も盛んだった。最初期ならではの自由度は大きな魅力で、その後時代と共にPK不可能な地域が作られるなどユーザーの声で世界やルールが大きく変化していった。このため“昔のウルティマオンライン”を懐かしむ人も多い。

 12年の間、「ウルティマオンライン」は変化を繰り返している。ルール上での変化だけでなく、キャラクターやモンスターを3Dグラフィックスにしたり「忍者」、「侍」といった和風テイストを取り入れたり、新種族の追加なども行なわれた。クライアントそのものも何度か刷新されていて、たとえば、下の画像の1段目は2003年の「ウルティマ オンライン 正邪の大陸」で、2段目、3段目は「ウルティマオンライン:甦りし王国」時のもの。それぞれ雰囲気が異なることがわかってもらえると思う。2009年には「ウルティマ オンライン:ステイジアン アビス」がリリースされている。2010年10月13日には最新拡張パック「未踏の航路」を発売。大砲を積んで強化された船で、海の冒険ができるようになるという。今なお進化し続ける作品だ。


【スクリーンショット】
画像は左が新地域解放直後のもの。家を建てられる地域が開放され、自分の家を建てようと必死になるユーザーでひしめいているところだ。右は友人の家。「ウルティマオンライン」では自分の家の設計そのものもできる
右は首都ブリテインの銀行前。ユーザー達の集まる場所だ。中央は自分の船に乗り、海に出たところ。左は「王立動物園」檻の中に様々なモンスターがいて、プレーヤーは安全な環境でこれらを見ることができる。初心者を連れてくるのにぴったりの「名所」だ
中央は「和」の要素。「ウルティマオンライン」には中世の日本をモチーフとした「徳之諸島」といった地域もある。右は橋の下に広がる星の世界。SF的な雰囲気を感じさせる場所もある

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(2010年 10月 5日)

[Reported by 勝田哲也]