【連載第21回】開発者が語るiPhone/iPadゲームの最先端

iPhone Spotlight Report

米Apple iPod担当のスタン・イング氏が再来日
iPhone/iPod touch向けの最新のゲームをアピール

 世界中でブームを起こしたiPhoneは、新たなゲームプラットフォームとしての地位を得た。続いて登場したiPadも、かつてないゲーム体験を生み出す可能性を秘めている。本連載では、iPhone/iPadゲーム開発者へのインタビューから、最新のトレンドや魅力を探っていく。



2月3日 収録


 米Apple ワールドワイドプロダクト マーケティング iPod担当シニア・ディレクターのスタン・イング氏と、同iPod担当のショーン・エリス氏の来日に合わせ、両氏にインタビューを行なった。弊誌でイング氏らに話を聞くのは、2009年12月以来、約1年振りとなる。(当時の記事はこちら

 イング氏からは、iOSプラットフォーム向けのゲームに関しての現状について話が聞けた。さらにエリス氏からは、配信前のタイトルを含む新作の注目タイトルを紹介していただいたので、その内容も合わせてお届けする。




■ App Storeのゲームは8万種以上、iOSが動くデバイスは全世界1億6,000万台

2010年9月に発売された第4世代iPod touch。重さは101gで、他社の携帯型ゲーム機と比較するとかなり軽い

 まずイング氏は、昨年秋に登場した新型iPod touchのテクノロジーについて説明。「iPod touch本体の前面と裏面にカメラが搭載され、『FaceTime』でビデオ通話が可能になったのはもちろんのこと、ゲームではAR(拡張現実)ゲームに活用され、その種類も増えてきています。さらにRetinaディスプレイが搭載されたことで、モバイルデバイスの中では最も解像度の高いものになっています。これは、任天堂やソニーが後から投入する携帯型ゲーム機より遙かに優れており、シャープで鮮明なグラフィックスでゲームが楽しめます」と、他のゲーム機に対するiPod touchのハードウェアにおける優位性を示した。

 続けてイング氏は、「ほかにもゲームのためのソーシャルネットワーク『GameCenter』がiPod touchでも利用できます。一昔前は、iPod touchと言えば音楽や映画を楽しむデバイスでしたが、最近では携帯ゲーム機として愛されています」と、ゲーム機としての魅力を強調した。また、「iPod touchは、ニンテンドーDSの約1/4のサイズでポケットにも収まって持ち運びやすい」と携帯性についてもアピールしていた。

 さらに、App Storeに幅広く豊富なゲームが揃っていることについても述べた。「App Storeには8万本以上のゲームがあり、カジュアルなものから本格的なものまで、あらゆるジャンルが揃っています。App Storeにはゲームを含めて全部で35万本ものアプリがあり、しかもこの1年の間に、App Storeには20万本ものアプリが新たに登場しました。これまでの全アプリダウンロード数は100億本以上にもなり、そのうちの70億本がこの1年間でダウンロードされました」と説明し、現在もApp Store市場が拡大を続けていることを示した。

 iPhone/iPod touch/iPadのプラットフォームになっているiOSについては、「iOSが動くデバイスは全世界で1億6,000万台になっています。この数は、プレイステーション 2やニンテンドーDSシリーズのデバイスを上回り、どのゲーム機と比較してもiOSが動くデバイスの方が多くなっています。デベロッパーがゲームという視点で考えた時には、プラットフォームとしては最も大きく、素晴らしいゲームを作ればチャンスがあります」と語った。

 今回のインタビューでは、他社の携帯型ゲーム機に対抗した発言が多く、AppleがiOS搭載機をゲーム機として強く押し出そうとしている意識を感じられるものだった。




■ Retinaディスプレイやカメラなど、新機能を使った多彩なラインナップを披露

 次にエリス氏から、iPhone/iPod touch用で注目のゲームタイトルを紹介して頂いた。昨年末に配信されたばかりのものから近日配信中のタイトルを含めて、計9タイトルを見せていただいた。順を追って紹介していこう。

● 「New Puzzle Bobble」(タイトー/600円)

 エリス氏は、「iPhone/iPod touchにはカジュアルなゲームが豊富に揃っていて、気軽にゲームを楽しめるのが魅力」という。そこで最初に紹介されたのは、家庭用ゲームでお馴染みのパズルゲーム「パズルボブル」シリーズのiPhone/iPod touch用オリジナルの新作「New Puzzle Bobble」だ。

 画面下からバブルを発射して、同色のバブルを3個以上くっつけて消していき、すべてのバブルを消去するとステージクリアとなる。本作では、オリジナルのゲームシステムはそのままに、同色のバブルをすべて消せる「ボムショット」や、発射するバブルをキープできる「ホールド」などの新要素が追加されている。

 本作はタッチパネルならではの操作方法を採用しており、バブルを発射する場所を直接タップして狙う方法と、砲台の向きを調整してバブルを発射する2種類が用意されている。さらに今作では、障害物を飛び越えてバブルを発射できる「ジャンプショット」が追加され、天井からまとめて障害物を消すなど、これまでにはない爽快なプレイが楽しめるようになっている。


【スクリーンショット】
(C)TAITO CORP. 1994 ,2011


● 「Bop It!」(Electronic Arts/350円)

 米国の玩具メーカーHasbroから、昔発売された人気玩具をiPhone/iPod touchでゲーム化したもの。玩具から流れてくる音楽と音声の指示に合わせて玩具を叩いたり、ねじったり、引っ張ったりしてリズムを刻んでいく。これをiPhone/iPod touchのマルチタッチディスプレイと加速度センサーなどを利用して再現した。

 ディスプレイに次々と表示されていく全12種類のオブジェクトを、直接タップして叩いたり、スライドさせて引っ張ったり、2本指でねじったりしながらリズムに合わせて操作してゲームを進めていく。ひとりで黙々と進めて行くソロプレイのほかに、ある程度演奏したら次の人にiPhone/iPod touchを回して遊ぶ複数人向けのモードも用意されている。エリス氏は、「マルチタッチディスプレイと加速度センサーを内蔵したiPhone/iPod touchだからこそ再現できたゲームだ」と語った。


【スクリーンショット】
(C)KID Group LLC 2011. All rights reserved.


● 「Infinity Blade」(Chair Entertainment Group/700円)

 続いてRetinaディスプレイならではの高解像度のグラフィックスが楽しめるゲームとしてエリス氏が紹介してくれたのは、美麗なグラフィックスが話題の「Infinity Blade」。米Epic Gamesの最新ゲームエンジン「Unreal Engine 3」を採用したゲームだけあって、コンシューマーゲームに引けを取らないほどハイクオリティなグラフィックスになっている。

 ゲーム内容は、鎧を身にまとった騎士となって、ゴッドキングが支配する暗黒の城に乗り込み、しもべたちを1人ずつ倒していくアクションゲーム。剣と盾を駆使して、騎士やモンスターたちとタイマン勝負を繰り広げる。敵との戦闘では、敵の攻撃や動きに合わせて画面をフリックして剣で斬りつけたり、タップして盾を構えて攻撃を防いだり、時には必殺技や呪文を決めて倒していく。攻撃したい箇所をフリックすると、その場所を剣で斬りつけるといった直感的な操作で、敵を斬りつける感覚を味わいながら戦闘を楽しめる。また、城の中を探索して宝物や剣などのアイテムなどを集めたり、敵と戦って騎士のスキルを成長させたり、武具を購入して強くしていくといったRPG的な要素も盛り込まれている。


【スクリーンショット】
(C)2010 Chair Entertainment Group, LLC


● 「Resident Evil vs. Mercenaries」(カプコン/配信日・価格未定)

 マルチプレイの対戦が楽しめるゲームとしてエリス氏が紹介してくれたのは、現在開発中の「バイオハザード」シリーズのサバイバルアクションが楽しめる「Resident Evil vs. Mercenaries」。iPhone/iPod touch用「バイオハザード4」を踏襲した画面構成とステージで、チェーンソーなどを手に徘徊し、プレーヤーに襲いかかってくるゾンビどもを倒していきながら、ほかのプレーヤーとのスコアを競い合う。プレーヤー同士の対戦は試せなかったが、CPUキャラクターから撃たれて逃げたりと、ゾンビを倒していく「バイオハザード4」とはひと味違った銃撃戦が楽しめた。

 オンラインやローカルネットワークによる最大4人までのマルチプレイが可能。ゾンビを倒したスコアを競うだけでなく、直接プレーヤー同士が撃ち合う対戦も楽しめる。実際にプレイした感じでは、「バイオハザード4」では比較的ゆっくりした印象のプレーヤーが、本作ではキビキビと動いてゾンビを倒していく爽快感あふれるものになっていた。




● 「アスファルト6:Adrenaline」(ゲームロフト/600円)

 エリス氏が紹介してくれたもう1つのマルチプレイゲームは、iPhone/iPod touch用レースゲームとして人気の高い「アスファルト」シリーズの最新作。オンラインおよびローカルのマルチプレイでは最大6人によるバトルが可能で、取材時はBluetooth接続で2人対戦を行なった。

 本作では、前作よりもグラフィックスが美麗になり、演出面もパワーアップしていて、これまでにないスリルと疾走感が味わえる。登場車種はランボルギーニやフェラーリをはじめとした有名スポーツカーなど42台が勢ぞろい。その中には電気自動車の「Tesla Roadster」やコンセプトカーの「Citroen Survolt」、ドゥカティのバイクまでもが登場する。またコースもロサンゼルスや東京、ケープタウンやバハマといった世界の有名都市をイメージした12種類に増えている。

 レースモードも8種類用意されており、規定順位や制限時間内にゴールするもの、ライバルカーに体当たりしてクラッシュさせていくもの、クルマをドリフトさせて規定のポイントを達成させていくものなど、いろいろな条件でレースが楽しめる。さらにメインとなるキャリアモードでは、世界を舞台に各種レースに挑戦していき、獲得したお金で新車を購入したり、マシンをチューニングしていきながらレース制覇を目指す。


【スクリーンショット】
(C)2010 Gameloft. All Rights Reserved. Gameloft, the Gameloft logo and Asphalt are trademarks of Gameloft in the US and/or other countries. All manufacturers, cars, motorbikes, names, brands and associated imagery featured in Asphalt 6: Adrenaline mobile game are trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners.


● 「デビル メイ クライ 4 リフレイン」(カプコン/600円、10日までは350円)

 スタイリッシュアクションがキメられることで人気のシリーズ「デビル メイ クライ」のiPhone/iPod touch版「デビル メイ クライ 4 リフレイン」が登場。エリス氏は「人気のコンシューマーゲームがiPhone/iPod touch用に移植されている実例」として披露してくれた。

 プレーヤーは悪魔の右腕を持つ魔剣士の息子「ネロ」になって、迫り来る敵を剣や銃でスタイリッシュに倒しながら進み、ステージの終盤に登場する巨大なボスと対決する。iPhone/iPod touch用では、アクションゲームが苦手な人も遊べるように、操作方法が「通常」と「簡単」の2種類用意されていて、誰でも爽快感溢れるアクションが楽しめる。その点についてエリス氏は、「普段ゲームをあまりやらないユーザーが多いiPhone/iPod touchならではの配慮」と語った。


【スクリーンショット】
(C)2011 CAPCOM


● 「Star Wars Falcon Gunner」(THQ Wireless/350円)

 カメラを使ったARゲームのひとつとしてエリス氏が紹介してくれたのが、映画「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」の宇宙船ファルコン号が帝国軍戦闘機を迎撃するシーンを追体験できる「Star Wars Falcon Gunner」だ。

 本作は3Dシューティングゲームで、宇宙空間を舞台にファルコン号の機銃を操作して帝国軍の戦闘機などを撃破していく。本作の見どころはARモードで、ゲーム中の背景の宇宙空間を、カメラで写したリアルタイムの映像に変えてプレイすることが可能。ゲームをプレイしている場所が背景となり、これまでとは違った雰囲気で遊べる。「このような、これまでにないゲームが楽しめるのも、カメラが搭載されているiPhone/iPod touchならでは」とエリス氏が説明してくれた。

 ちなみにエピソードは3種用意されていて、デススターから逃げるシーンのほかに、隕石を撃破していくシーンや巨大宇宙戦艦スター・デストロイヤーとの銃撃戦などが用意さている。


【スクリーンショット】
(C)2010 Lucasfilm LTD & TM & (C)2010 THQ Wireless, Inc.


● 「ARSoccer - Augmented Reality Soccer Game」(Laan Labs/無料)

 さらに、ARゲームの一風変わったものとしてエリス氏が披露してくれたのが「ARSoccer」だ。これはiPhone/iPod touchのカメラで足元を映し、画面内を落下してくるサッカーボールを足で蹴り上げてリフティングするというものだ。単純な内容だが、カメラを利用して体を使って操作する、いままでにないタイプのゲームになっている。


【スクリーンショット】
(C)2010 Augmented Reality Sports


● 「NBA Jam」(Electronic Arts/2月配信予定)

 最後にエリス氏が見せてくれたのが、スポーツゲームのバスケットボールがカジュアルに楽しめる「NBA Jam」。本作では、2on2形式で試合が行なわれ、バスケットボールの醍醐味であるシュートが存分に味わえるようになっている。特にシュートの演出に凝ったゲームになっていて、アクロバティックな動きとともに、漫画のように豪快で迫力あるシュートシーンを楽しめる。「ゲームならではの演出でバスケットボールをカジュアルに楽しめるのも、iPhone/iPod touch用ゲームの魅力のひとつ」とエリス氏は語った。





 今回のデモは、昨年、iPhone/iPod touchにRetinaディスプレイが搭載されたことによるグラフィックスの向上によって、家庭用ゲームに引けを取らないほどのクオリティでゲームを楽しめることを強調した印象だった。さらにカメラを使ったARゲームや、従来からあるマルチタッチディスプレイや加速度センサー、BluetoothやWi-Fiなどの通信環境が、ほかのゲーム機よりも優れている点をアピールするなど、これから発売される新型携帯ゲーム機である「ニンテンドー3DS」や「NGP」を牽制しているようにも感じられた。

 残念ながらiOSやGameCenterなど、ゲームに関するアップデートに関しては明かしてくれなかったが、インタビュー中の笑みからは、今後もゲーム機能に関するアップデートが予定されている雰囲気も感じた。それが何かはわからないが、これまでにないゲームの登場や、画期的な機能が追加されたものが登場することを、今年も期待せずにはいられない。


(2011年 2月 8日)

[Reported by 川村和弘]