【連載第15回】開発者が語るiPhoneゲームの最先端

iPhone Spotlight Report

iPhone/iPod touch「ストリートファイターIV」の開発秘話
ビジュアルパッドで波動拳や昇龍拳が快適に出せる秘密に迫る!!

 世界中でブームを起こし、携帯電話市場を一変させたiPhoneは、新たなゲームプラットフォームとしても注目を集めている。本連載では、iPhoneゲーム開発者へのインタビューから、最新のトレンドや魅力を探っていく。



3月31日 収録


 株式会社カプコンの看板タイトルとも言われる「ストリートファイター」シリーズがiPhone/iPod touch用に配信された。既にプレイした読者の方は、そのグラフィックスと操作性の完成度の高さに驚かされたことと思う。そこで今回は、本作のプロデューサーを務める手塚武氏にインタビューを行ない、快適に波動拳や昇龍拳などの必殺技が出せてスムーズに遊べる秘密に迫った。加えて、今後のキャラクター追加などの構想についても語っていただいた。




■ 「ストリートファイター」シリーズは、いずれ出すタイトルだった

カプコン開発統括本部 MC開発部長兼プロジェクト企画室長の手塚武氏。本連載では昨年秋に「バイオハザード」シリーズのインタビューも受けていただいた

――まずは、iPhone/iPod touch用「ストリートファイターIV」を開発することになった経緯を教えてください。

手塚武氏: iPhone発売当初から「ストリートファイター」シリーズは、いずれ出さなくてはいけないと思っていました。iPhone/iPod touchのアプリの場合、全世界で購入できますので、コンシューマーゲーム機がない地域でもゲームを買えます。ですのでアーケードゲームで有名な「ストリートファイター」を作ることは、ずいぶん前から決まっていました。しかしiPhone/iPod touchはタッチパネルでの操作なので、操作が重要な格闘ゲームをビジュアルパッドで、どこまでできるのかわからないということもあり、発売日や開発時期を決めないままでいました。

――いつ頃から開発できる状況になったのですか?

手塚氏: iPhone/iPod touch用「バイオハザード」シリーズを作っている際、バーチャルパッドに対して懐疑的だったのですが、これをキチンと作れたので、「ストリートファイター」シリーズでも操作できるなと自信が出てきました。そのタイミングで本格的に「ストリートファイターIV」を作ろうということになりました。

――「ストリートファイター」シリーズの中で、最新作の「ストリートファイターIV」を選んだのは何か理由があるのでしょうか?

手塚氏: 操作の革新性や、iPhone/iPod touchでもちゃんと遊べるというところをわかってもらうためです。仮に「ストリートファイターII」が出たら、たぶんクラシックなタイトルがiPhone/iPod touchに移植されました、という程度の感触にしかならないと思います。それが「ストリートファイターIV」だと、iPhone/iPod touchユーザーからどうやって作っているのかと興味を持っていただけますし、キチンと操作ができるということが素直に伝わると思ったからです。ハードルは高かったのですが、挑戦しました。

――発売されることを聞いた時には、かなりセンセーショナルでした。

手塚氏: 当初は「ストリートファイター」シリーズを開発するにあたって、「IV」は念頭にありませんでした。実はIT業界の超大物が弊社にいらっしゃった時、たまたま「ストリートファイターIV」が展示されているのを見かけて、「これ、iPhoneでできないんですか?」と仰ったのです。その時は、どの「ストリートファイター」にしようかと議論をしている最中の頃で、その一言も多少影響して、最終的には1番インパクトの高いものを選んだというわけです。


春麗のスピニングバードキックがダルシムに炸裂。アーケード版やコンシューマー版と遜色がないほどスムーズな動きで対戦が楽しめるオープニングムービーとして、リュウとケンが激しく闘いあう水墨画風のムービーシーンも収録されている1人用では、通常の対戦でエンディングを目指す総当たり戦のほか、練習モードや技の出し方やゲームの基礎を学べる「道場」などが用意されている。Bluetoothによる2人対戦も可能
練習部屋では、対戦相手を自由に選んで技を練習できる。コンボゲージが常に満タンなので必殺技の練習もできるウルトラコンボを出すときのムービーもキチンと再現されていて、アーケード版や家庭用版さながらの興奮が味わえるコンボを決めてフィニッシュしたときのエフェクトもこのとおり。iPhone/iPod touchとは思えない完成度



■ 昇龍拳など技が快適に出せる操作の仕組み

――開発はいつごろから進めていたのですか?

手塚氏: 「バイオハザード」シリーズの頃から、同時に基礎研究などを進めていました。

――「バイオハザード」シリーズではタッチパッド上でゲームパッドに似た快適な操作性を再現したビジュアルパッドを採用していましたが、「ストリートファイター」でも同様の仕組みを搭載してあるのでしょうか?

手塚氏: 「バイオハザード」のビジュアルパッドの仕組みを活かしてありますが、トータルで10カ月もかけて操作周りのチューニングをしていきました。ボタンの数をどうするのか、レバーの操作をどう読み取るのかなど、長期間に渡って研究しながら開発をしています。

――「バイオハザード」の何倍もの期間をかけて開発しているのですね。

手塚氏: 「バイオハザード」の時の操作周りはまだ単純で、人間の思った通りの操作をどう読むのかといった感じです。「ストリートファイターIV」では、3つくらいのメソットを組み合わせて、プレーヤーの操作したイメージを解釈し、イメージしたとおりに動くようにしています。この座標をタッチしたからこのように操作した、という簡単なレベルのものではなく、キャラクターがこうなったあとに、こうなっているから、こう操作したかったんだろうなと、プレーヤーの心理を読み取るようなレベルでチューニングしています。

――ものすごく複雑なシステムになっているのですね。

手塚氏: 別のことに例えて説明すると、カメラの世界にある記録色と記憶色がわかりやすいと思います。記録色とは撮影した時のものを忠実に再現した色で、記憶色とは人間が感じたイメージとして記憶されている色のことです。カメラで綺麗だと思って夕日の写真を撮ったのに、できあがった写真を後で見たら意外と大したことはないと感じたりします。これは頭の中でイメージしている夕日の色に、その時の感動も含まれているからです。最近のデジカメでは、記憶色を再現するために、夕日のオレンジの色を強めにする機能もあります。本当の色とは違うけれど、撮影した人にとっては「こんな夕日だった!」という感じになるのです。

――なるほど。人間のイメージを再現する仕組みをキャラクターの操作に活かしているのですね。

手塚氏: コントローラーの操作に記憶色的な発想の仕組みを搭載し、キャラクターの状態と操作した指の動きを分析し、プレーヤーが動かそうとしていた操作を解釈してキャラクターを動かしています。そういった心理学的な側面も取り入れてあります。

――かなりインテリジェンスな仕組みになっているのですね。

手塚氏: ほかにも操作に関しては工夫をしています。アーケードゲームやコンシューマーゲーム機のコントローラーは8方向に溝が分かれていたり、スイッチがあるので、どの方向に入れたのか明確にわかりますし、それを読み取るだけで十分でした。ところがビジュアルパッドは溝がないため、どの方向に指を動かして何をしたいのかが明確にはわかりにくいのです。

――そうですね。どのように対策したのですか?

手塚氏: まず「ストリートファイター」シリーズでの操作を分析したところ、ゲーム中は横の操作が多く、ジャンプやしゃがみなどの上下方向に動かす操作は少ないことがわかりました。そこで縦方向への操作は、角度を浅くして、間違ってジャンプやしゃがんだりしないようにしました。具体的に言うと、8方向レバーでは斜め上45度の方向に入れればジャンプしますが、ビジュアルパッドではもう少し上の入力でジャンプするようにしてあります。またこれとは別に、どのように操作したかったのかを分析するという味付けもしています。

――なるほど、操作しやすいのには、こんな秘密があったのですね。

手塚氏: 実際に上級者から初心者まで、いろんな方に操作してもらってデータを取っています。それぞれの方に何をしようと思ってできなかったのかをヒアリングして、意図した通りに動いて技が出せるようにチューニングを施して作ってあります。

――技が出せなくて苦労していた初心者でも出しやすくなっているんですね。

手塚氏: SPボタンを押すだけで、技が出せるようになっているのですが、コマンドの部分でも出しやすい上に、技が暴発しないようにいろんな仕組みを入れています。今回のビジュアルパッドの作り込みで、操作面については、かなり追求できたと思っています。このおかげで、今後はあらゆるゲームをiPhone/iPod touchに向けて作っていけるという確信を得ました。

――最初、「ストリートファイターIV」が出ると聞いた時に、本当に技が出せるのかと思いましたが、実際に遊んで見ると快適に技が出せて、遊んでいてもとても楽しいです。コンシューマー版で技が出せない人でも簡単に出せるのもいいですね。

手塚氏: 「ストリートファイターII」では、コマンドで技を出せるか、という部分が面白さとなって大ブレイクしました。しかしiPhone/iPod touch版「ストリートファイターIV」では、必殺技を出せるのは当たり前で、技の使いどころやタイミング、技の攻防で楽しんでもらえるようなゲームに仕上げてあります。技は出しやすさを重視して作りましたし、簡単操作の人と遊んでもちゃんと楽しめるようになっています。

――カプコンはiPhone/iPod touch用ゲームの操作部分で特に力を入れて開発していますが、やはり従来のゲーム機と比べて違いを感じますか?

手塚氏: コンシューマーゲームの場合は、コントローラーからの入力信号をどのように読むかというだけでした。入力がどうなったかよりも、出力をどうするかを考えてゲームを作っていきます。iPhone/iPod touch用ゲームの場合は、入力の段階でノイズが多いと言うか、いろんな情報が入ってきますので、それを綺麗に修正する必要があります。この考え方は、「バイオハザード ディジェネレーション」から「逆転裁判」、「魔界村騎士列伝」と作りながら、徐々に新しい考え方を入れていきながら作っています。ゲームプレイ中に操作ミスしたら、なぜミスしたのかを各々分析していき、それを次作にフィードバックしています。

――だから「ストリートファイターIV」は、操作が格段にいいのですね。

手塚氏: タイトルごとに担当者がバラバラだと、ここまで熟成できないと思います。情報を共有しながら開発してきたことで、「バイオハザード」から培ってきたビジュアルパッドが、ようやく格闘ゲームに使っても違和感がないものが作れるレベルまで到達しました。


初心者にとっては出しにくかった昇龍拳も簡単に出せるように作られているゲーム中に技のコマンドを確認できる。初心者でも遊びやすい作りになっているバーチャルパッドのボタンのパターンが選べる上に、位置の調整までもできるようになっている



■ キャラクターの選抜理由と追加について

登場キャラクターは、いまのところ8人。「ストリートファイターII」でおなじみのキャラクターが中心に登場している。今後、バージョンアップで増える予定だ

――「ストリートファイターIV」を開発するにあたって気をつけた点はありますか?

手塚氏: 今回はスーパーファミコン版「ストリートファイターII」の頃にゲームをプレイしていたユーザーを意識して作ってあります。この方々は30代中盤から後半だと思うのですが、その方々が1番熱く遊んでいた頃の「ストリートファイターII」を、今のiPhone/iPod touchに持ってきたという感じです。

――その層を狙った理由は?

手塚氏: iPhone/iPod touchのユーザー層は、30代後半の男性が1番多いので、そこにマッチするように作ってあります。

――キャラクターもその点を意識した選び方なのですか?

手塚氏: そうです。「ストリートファイターII」のキャラクターが多いのは、それが1番の理由です。もちろんそれ以外にも、遊び方の違うキャラクターが多い方がゲームをより楽しめるというのもあります。バラエティーを広げていこうとすると、特徴に大きな差があるものになりますので、この8人になったという訳です。

――今後、キャラクターは増える予定はありますか?

手塚氏: 追加キャラクターは配信します。今回追加するキャラクターは「ストリートファイター」シリーズの中でもユーザーさんの希望が高かった「キャミィ」です。その他にもユーザーさんが驚く企画や仕掛けを用意していますので、ぜひ楽しみにしていてください。

――どのような形でキャラクターを追加するのでしょうか?

手塚氏: 本作のレビューに、「In App Purchase(アプリ内課金)でもいいのでキャラクターを追加して欲しい」という声が相当ありました。我々も当初はそう考えていたのですが、少なくとも初回は無償バージョンアップという形にします。私としては対戦で楽しんでもらいたいという思いが強くありまして、In App Purchaseだと、買った人もいれば買わない人もいて、使えるキャラクターが違ってしまいます。今回のバージョンアップは我々を信じてご購入いただいたお客様への「大入り袋」と考えていますので、誰でも同じ状態で対戦が楽しめる無償バージョンアップとさせていただきました。もちろん開発費の問題もありますので、次回以降のバージョンアップを行なう際にも無償にできるかどうかはわかりません。これをキッカケに対戦が盛り上がってもらえればいいなと思いつつ、鋭意開発中です。

――バージョンアップで追加というのは嬉しいですね!

手塚氏: 実はキャラクターを追加したいと思っていたスタッフが私に黙ってこっそり作っていたのです。プログラムを作る余裕はさすがになかったようですが、グラフィックスだけはかなり進んでいました。そこで急遽プログラムを追加で開発しています。開発費があまりかからないこともあって、大ヒット御礼記念ということで無償バージョンアップとさせていただきました。

――追加要素としてネットワーク対戦の予定はあるのでしょうか?

手塚氏: 通信速度や回線の都合は我々がどうにかできるレベルではないので、現実的には難しいです。遠隔時の友だちと遊ぶ方法がないかというのは、ずっと検討課題として挙げています。ネットワーク対戦ではないのですが、他のユーザーさんと対戦できるきっかけを作ろうと色々企画中です。




■ 開発では技術面よりもiPhone/iPod touchユーザーを見据えて作る

――開発スタッフはどれくらいの規模だったのですか?

手塚氏: 多い時と少ない時がありますが、コンシューマーのゲーム開発から比べたら、はるかに少ないです。iPhoneの場合、あまり高い値段はつけられないので、それで回収できないとビジネスとして成立しません。開発予算はそれを見越して設定する必要があります。

――開発者の中にはコンシューマー版「ストリートファイターIV」を掛け持ちで開発されていた方はいるのですか?

手塚氏: 掛け持ちしていた者はいません。餅は餅屋ですから。

――リソース類は共有して開発していたのですか?

手塚氏: もちろんです。

――iPhone 3GSとiPhone 3Gの違いによって開発で苦労した点はありましたか?

手塚氏: iPhone 3Gはメモリが足りなかったり、処理速度が遅かったりというのがありましたが、どちらのユーザーにも遊んでいただきたいので、かなりギリギリまでチューニングしました。そのおかげで快適に遊べるようになっています。iPhone 3Gでちゃんと遊べるというのも評価していただいているので、頑張って開発した甲斐がありました。

――「ストリートファイターIV」のグラフィックスは印象的ですが、水墨画風の描画の面で苦労したのではないですか?

手塚氏: 描画はそれほどでもないです。やはり1番苦労したのはコントローラーの部分です。

――では、コントローラーまわりの以外で苦労した点は?

手塚氏: 技術的な部分で苦労したことはありませんでした。それよりもユーザーには「iPhone/iPod touchのゲームはこうあって欲しい」と思っている部分がありますので、そのニーズに合わせて作る方が大変でした。その市場の人々が何を求めているか、そこにマッチさせる方が重要で優先度が高くなります。例えば、Xbox 360のクオリティで、iPhone/iPod touch版を遊びたいと思う人は少ないと思います。ですから目指すのはそこではなく、iPhone/iPod touchで遊ぶならこうあって欲しいと思っているイメージを具現化することを考えて作っています。

――なるほど、その端末やゲーム機のユーザーに合わせたゲーム作りをされているのですね。

手塚氏: iPhone/iPod touchのユーザーは、ゲーム業界の常識が通じないユーザーが多いので、その方々がどういうシチュエーションで遊んで、どういう時に喜んでもらえるかを考えて作らなければいけません。そこが1番難易度が高かったです。

――例えばどんなところを配慮して作りましたか?


ゲーム中に格闘ゲーム専門用語「キャンセル」は出てこない。「スキップ」という言葉に置き換えられ、初心者でもわかるように配慮されている

手塚氏: 格闘ゲームファンには当たり前の用語で「キャンセル」という言葉があるのですが、道場の中では一切使っていません。一般の方に、技を出している最中に次の技が入ることを「キャンセル」という一言で説明するのは非常に難しいので、「スキップ」という表現に置き換えて説明しています。

――iPhone/iPod touchのユーザーは、ゲーム業界のユーザーとは違いますか?

手塚氏: ゲーム業界とモバイルゲーム業界は同じだと思われがちなのですが、全然違います。表現されているものがゲームなので同じだと思っている人も多いのですが、実際は戦っている相手も違えば、ユーザー層や価格帯、流通の仕組みもまったく違います。

――iPhone/iPod touch業界を見据えて戦略を立て、ゲームを開発していく必要があるということですね。

手塚氏: そうです。家庭用ゲームで500万本売れているタイトルがあるからといって、それをiPhone/iPod touch用に作って500万本も売れるわけではありません。実際、iPhone/iPod touchのゲームのランキングを見ると、ゲーム業界では聞いたことがないタイトルが多いのですが、あれはキチンとユーザーのニーズをつかんで作られているからだと思います。




■ 日本と米国で値段を変える戦略と仕組み

――価格の戦略についてお聞きします。「ストリートファイターIV」の日本版を900円にした理由は?

手塚氏: いろんな価格を分析した結果この価格になりました。価格でマジックナンバーと言われているものがありまして、日本だと1,000円、米国だと10ドルを超えるゲームは、割高感がして購入をためらわれる方が多くなってしまうためです。

――ところで米国版は9.99ドルで販売しているのに対して、日本では900円になっていますが、これはどうしているのでしょうか? 通常、同じアプリの場合、米国が9.99ドルだと、日本は自動的にレートが決まって1,200円になるはずです。

手塚氏: 米国では9.99ドルで売りたかったのですが、仰るとおり、iPhone/iPod touchのアプリの価格は、米国で設定した価格で日本の価格も自動的に決まってしまいます。そこでアプリのバイナリを分けて、日本版と米国版を別のアプリとして配信しています。そのため自動レートではない価格設定ができています。

――なるほど、そういう仕組みでしたか!

手塚氏: 実はこれまで出したゲームも、日本や米国など、地域によって価格を変えられるようにしています。だから日本だけでセールしていて、米国は通常価格のままということがありました。このおかげで各地域のイベントや記念日などに合わせてセールができます。

――昨年の東京ゲームショウに合わせて「バイオハザード」を値下げした時も日本だけだったのですか?

手塚氏: はい。日本で値段を下げるために、米国や他の地域などの価格が全部下がるのは、日本以外のユーザーにとっては意味がわからず、混乱を招いてしまいます。そこで地域別に価格をコントロールができるように、いくつかの地域に分けて配信しています。それと、Appleが設定したレートは数年前の為替レートに合わせて決められたものなので、適正なレートにするという意味も含めて分けています。




■ 「魔界村騎士列伝」でIn App Purchaseを導入した結果は?

――先ほどキャラクターの追加でIn App Purchaseの話題が出ましたが、「魔界村騎士列伝」でIn App Purchaseを取り入れてみてどうでしたか?

手塚氏: In App Purchaseは、売るアイテムや販売タイミング、価格によって、全然効果が違うというのが見えてきました。「魔界村騎士列伝」は非常に好調です。In App Purchaseを使ってユーザーが購入するかは、ゲームシステムが大きく影響してくると思います。

――「魔界村騎士列伝」は、どのくらい好調だったのですか?

手塚氏: 具体的な数字は明かせないのですが、一般的にアプリなどでは、無料から有料へのコンバージョンレートが数%と言われています。それに比べると数倍という数字で、非常に効果はありました。買ったものを存分に楽しみたいユーザーの場合、時間をかけて腕を磨く人もいますが、In App Purchaseでパワーアップアイテムなどを購入して、時間をかけずに合理的に楽しむ人も多くいるようです。

――カプコンでは今後、iPhone/iPod touch向けのオリジナルタイトルを開発する予定はありますか?

手塚氏: もちろん我々もiPhone/iPod touch用オリジナルゲームを作りたいという思いがあります。ただカプコンには「ストリートファイター」など豊富な人気タイトルがありますので、まずはこれらを活かしてiPhone/iPod touchユーザーに楽しんでもらえるものを開発していくのが最初の戦略だと考えています。ただし、それらの人気タイトルを何も考えずに普通に作ってしまうと、おそらくiPhone/iPod touchユーザーからは受け入れられないものになってしまうと思いますので、市場やユーザーの動向を身長に見極めて作っていきたいですね。そこの意識の保ち方が、どんな技術的なことよりも難しいです。

――最後に、この記事を読んでいる方に一言、お願いします。

手塚氏: 家ではコンシューマー版「スーパーストリートファイターIV」、外ではiPhone/iPod touch用「ストリートファイターIV」を遊んで、両方楽しんでもらえると嬉しいです。iPhone/iPod touch版は本当に違和感なく遊べるように作れました。「タッチパネルで本当に遊べるの?」と思っている人は、ぜひ1度触ってみてください。

――本当に他の人に見せて遊ばせると、完成度の高さに驚きますからね。

手塚氏: iPhone/iPod touchのポテンシャルをここまで引き出せているのは、ほかにはないと思います。iPhone/iPod touchを説明する際のデモンストレーションに最適なゲームになると思います。

――本日はありがとうございました。今後のバージョンアップを楽しみにしております。


(C)CAPCOM U.S.A., INC.2010 ALL RIGHTS RESERVED.

(2010年 4月 30日)

[Reported by 川村和弘]