【連載第259回】ゲームライフに役立つグッズをレポート


最高峰のレーシング体験が味わえる「T500 RS GT RACING WHEEL」
PSPのゲーム画面をフルサイズ出力するHDMI出力グッズ2製品を試してみた


 当連載は、ゲームライフに役立つグッズを発掘し、実際に使用してみようという試みをレポートするものである。ネタに困ったときはお休みしてしまうかもしれないので不定期連載である。ちょっとした投資や工夫で、よりよいゲームライフを送っていただけるよう、鋭意努力していく所存である。


 「グランツーリスモ5」を最高に楽しむならぜひとも欲しいステアリングコントローラー。この最高峰とも言えるのが、今回試してみたTHRUSTMASTERの「T500 RS」だ。主要パーツのほとんどに金属素材を使い、総重量は約12kg前後、価格は62,790円という、こだわる人をも悩ませる高みにいる一品。こちらを実際に試してみた。

 もうひとつは、PSPのゲーム画面をHDMIケーブルでTV画面いっぱいに出力してくれるグッズを2製品試してみた。PSPをTVに接続して大画面で楽しみたい。でも、PSPに対応していないTVではゲーム画面は小さく表示されてしまう。そんな悩みを解消してくれるのが今回のグッズだ。

 試してみたのは、ゲームテックの「ワイドdeポータブルHD」と、アンサーの「フル画面プレイHDMI」の2製品。同じコンセプトの製品だが、扱いやすさや画質など、異なる点は多い。PSPをTVやモニターに出力して楽しんでいる人は、ぜひチェックして頂きたい。

【今週のおしながき】
PS3 Thrustmaster/MSY 「T500 RS GT RACING WHEEL」
PSP ゲームテック 「ワイドdeポータブルHD」
PSP アンサー 「フル画面プレイHDMI」

 




● “究極のドライビング体験”を! 圧倒的なクオリティの高さを誇るステアリングコントローラー

「T500 RS GT RACING WHEEL」

    メーカー:Thrustmaster(Guillemot)
    国内販売:MSY
    価格:62,790円
    「グランツーリスモ」オフィシャルライセンス商品
    プレイステーション公式ライセンス商品


メインのパーツは「ステアリングホイール」と「ペダルユニット」の2つ

 ゲームの進化は止まらない。では、それをコントロールするデバイスは? レーシングゲームを体験するためのデバイスで、今最も高みにいるのがこの「T500 RS GT RACING WHEEL」だろう。素材、作り、ともに高みを目指した設計で、それだけに価格も62,790円と超ヘビー級。それに見合ったパフォーマンスを秘めたステアリングコントローラーの最高峰となっている。

 「T500 RS GT RACING WHEEL」はステアリングホイール部分とペダルセット部分の2つで構成されている。主要パーツの大部分に金属素材が使われており、ステアリングホイール部分が4.6kg、ペダルセット部分は7.3kgという圧倒的な重量となっている。

 現在はステアリングとペダルの2ユニットのセットになっていて、フォーミュラーカーだけでなく、いわゆる“箱車”の操作感を実現したいユーザーにとっては、ギアボックスがないのが寂しいところだが、販売を行なっているMSY Shoppingのサイトによると、近い将来には、クラッチペダルに対応したギアスティック(単体)のリリースも予定されているということだ。また、ステアリングも交換できる作りで、交換用のステアリングもリリースされる予定だという。とことんまでこだわれる。

 各部をチェックしていく前に、まずパッケージについて触れよう。これがまた約、57.5×38.5×37.5cm(横×縦×奥行き)というかなりのサイズになっている。総重量は約12kg前後と、こちらも凄まじい。ゲームグッズ研究所史上では、スティックコントローラー「リアルアーケードPro」シリーズの最高峰「リアルアーケードPro.3/Pro.EX Premium VLX」と同等かそれ以上のサイズや重量になっている。

 パッケージ内には、ステアリングホイールとペダルセットのほかに、ステアリングホイールを固定するためのクランプとクランプ固定用のネジ、「Realistic Brake MOD」というブレーキの抵抗を変化させる着脱式のパーツ、ACアダプタとケーブル、ブレーキペダル固定用等の予備のネジ各種や、2種類の六角レンチが入っている。また、マニュアルは日本語化されていて、細かな調整方法なども丁寧に記載されている。

 ACアダプターはけっこう大きく、約17×7×3.5cm(横×縦×厚み)ある。PSPを一回り大きくしたぐらいのサイズで平べったい形状だ。ケーブルも太さがある。


付属品には、ステアリングホイールを固定するためのクランプやブレーキの抵抗を調節できる「Realistic Brake MOD」、その他、調整用のネジや六角レンチなどがある。ACアダプターはけっこうサイズが大きい

こちらはステアリングホイール。大きさを比較するために横にDUALSHOCK3を置いてみた。金属パーツが多く使われているため、見た目以上に重量もある

 構成パーツについて、まずはステアリングホイールからチェックしていこう。ステアリングホイールのユニット全体のサイズは、測りにくい形状ではあるがざっくりとだと、32×35×28cm(横×奥行き×高さ)というところ。だいたい設置スペースには40cm四方ぐらいの空間が必要だ。重量は前述のように4.6kgとかなりのものがある。

 ステアリングは直径約30cmと大きく、グリップの太さも約33mmある。エンボス加工が施されたラバーで覆われている。手にピタッと吸い付いてしっかりとグリップできるが、手触り自体はサラサラとしていてべたつかない。触ってすぐに品質の高さを実感できる。

 ステアリングの回転角、ロックトゥロックは1080度まで。モーター駆動によるストッパーも内蔵されているので、ゲーム側の対応があれば回転も制御できるという。

 ステアリングのフレームは金属パーツで、中心部の表面にはヘアライン加工が施されている。左側に円形の方向キー、右側には○/△/□/×ボタンが配置されている。それぞれの斜め上にR2ボタン、L2ボタンがあり、中央部には「GT」のロゴプレートが装着されている。下側にはセレクトボタン、スタートボタン、PSボタンが配置されている(PSボタンはPS3本体の電源オンには対応していない)。各ボタンは全体のサイズからすると小さめになっているが、クリック感がしっかりとしていて、安っぽさは感じられない。

 ユニットの土台側、下側には、右にL3/R3ボタンが、左にはMODEボタンが搭載されている。このMODEボタンというのは、ペダルセットのアクセルとクラッチを入れ替えるためのボタンで、ペダルセットは上下を逆さまにして2つのポジションで使えるようになっている。それに対応させるときのボタンというわけだ。

ステアリングの背面にあるのがパドル型のデジタルギアシフトレバー。ステアリング側ではなく、ユニットのベース側に装着されている

 ステアリングホイールの背面にはパドル型のデジタルギアシフトレバーがあり、レバーは長さ17cmの大型サイズになっている。シーケンシャルギアも完全な金属製で、引くと「ガチッ」とした、しっかりとした手応えがある。だが感触が重すぎるところはなくほどよい。なお、このシーケンシャルギアレバーはホイール側ではなくユニットの土台側に搭載されている。そのため、ステアリングと一緒に回転することはない。ここはちょっと作りが気になったところだ。

 ステアリングユニットのベース内には、フォースフィードバック機構として3000RPM/65Wの産業用モーターが内蔵されているという。150mNmトルクの強力なフィードバックを生んでくれる。また、排気ファンも内蔵されていて、ベースの背面側にスリットもある。

 ユニットの背面左側には、電源の接続端子、ペダルユニットからのモジュラーケーブル接続端子があり、そしてPS3に接続させるUSBケーブルが伸びている。USBケーブルのケーブル長は約2mあって、だいたいの利用には十分と思えるものの、レーシングシートなどと組み合わせるなどいろいろなシチュエーションを考慮すると、もう少し余裕が欲しいところもあるだろうか。

 また、ステアリングの角度を変えるチルト機構、前後の位置調節を行なうテレスコピック機構は用意されていない。剛性を確保するためか、モーターなどの大きさのせいか、機構上の問題かと思われるが、調節はシート位置やステアリングの取り付けなど、セッティングでカバーするしかないだろう。


フォースフィードバックに、トルクの強力な産業用のモーターを内蔵していて、その排気用のファンも内蔵している。そのためステアリングに負けないぐらいユニット部分も大きく、重心のバランスがとれている

ほぼ全てが金属パーツでできているペダルユニット。置き方を変えられるのが特徴で、こちらはフロアポジションの「F1タイプ」
こちらはサスペンデッドポジションの「GT&ラリータイプ」。金属板のフットレストを付け替えることで重心のバランスを取っている

 続いてはペダルユニット。こちらのインパクトはステアリングよりも強烈だ。全体が金属製で重量は7.3kg、サイズも約35×40×31cm(横×奥行き×高さ)となっており、設置面積はステアリングと同等かそれ以上に必要となる。

 がっしりとしたフレームには、金属板のフットレスト、アクセル、ブレーキ、クラッチの3本のペダルが突き出ている。ペダルアームも金属製で太く、剛性や質感は家庭用レベルをとうに超えている。ペダルヘッドももちろん、厚みのある金属素材だ。

 大きな特徴として、このペダルユニットは上下を逆さまにしてポジションを変えることができる。出荷時の状態はフロアポジションの「F1タイプ」で、逆にするとサスペンデッドポジションの「GT&ラリータイプ」になる。「F1タイプ」ではペダルが下から伸び、「GT&ラリータイプ」では上から伸びている向きだ。低い姿勢で奥へと踏むなら「F1タイプ」、椅子等に座って下へ踏むようにするなら「GT&ラリータイプ」という使い分けになるだろうか。

 ポジション変更に対応するため、フットレストの金属板やペダルヘッドは、付属の六角レンチを使ってネジを外して付け替えられるようになっている。同時に、ペダルヘッドには9カ所のネジ穴があって、固定する位置を調整できる。ペダルヘッドとペダルアームの間にはプラスチック製のヘッドサポートというパーツを挟み込むようになっていて、これの向きや位置で角度の調整も可能だ。

 付属の金具を使えば可動域の調節もできるほか、さらに、ブレーキに付属の「Realistic Brake MOD」というパーツを組み合わせることでペダルの抵抗力も調節することができる。「Realistic Brake MODはバネとスポンジが付いたパーツで、これをペダルアームの間に付ければ抵抗が増す。

 このようにペダル側に調整ができるステアリングコントローラーというのは今までになかった。ペダルの向きから、ペダルアームの可動域、ペダルヘッドの位置や角度、さらにはブレーキの抵抗までも自分好みに調整できるのは、こだわりのポイントとして相当の魅力がある。


金属製で、どこを見てもがっしりとしているペダルユニット。重量も7.3kgあり、ちょっとぐらい操作する足に力が入っても動かない。ペダルヘッドの位置や角度、ペダルアームの可動域を固定するネジ穴を変えるなどして調整できるのがポイントで、「Realistic Brake MOD」を付けることでブレーキの抵抗も調整できる

折りたたみテーブルを使って設置してみた。ペダルユニットは下に潜らせている

 実際に「GT5」で試してみた。まずセッティングだが、ステアリングユニットは付属のクランプを使ってテーブルの端等に挟み込むのが基本になる。V字型のクランプには先端に滑り止めが付いていて、滑り止めの向きが動くようになっている。完全に平らでない場所でも多少は対応してくれるのがうれしいところだ。

 ステアリングユニットは前面の1.5割ほどが空中に浮かぶようなポジションになる。今回は簡易で小型な折りたたみ式テーブルに設置してみたのだが、当初は「こんなテーブルで大丈夫だろうか?」と心配になったものの、いざ固定してみると重心はそれほど悪くはなく、思っていたよりも設置場所には苦労しないように思えた。もちろん、ある程度の安定感は必須だし、プレイ中に強いフォースフィードバックがかかることも考えると、設置場所にも重量があったほうがいい。

 ペダルユニットは折りたたみテーブルの下にフロアポジションの「F1タイプ」で置いてみた。なにしろ重量があるのでプレイのたびに出し入れするというのには向かない。だが、この重量のおかげでペダルユニットはちょっとやそっとでは動かず安定感のある踏み込みができる。また、サスペンデッドポジションの「GT&ラリータイプ」にしてもそれは変わらず、倒れたり動いたりすることはほとんどない。重心がきちんと下に集中している。


見るからに心細いテーブルだが、重心のバランスが良く、これでも安定したプレイができた。固定用のクランプはある程度上下に動くようになっていて、さらに先端の滑り止めも角度が動くようになっている。幅広く対応してくれる

 PS3に接続して電源を入れると、センターポジションの調整が行なわれる。左右にそれぞれ3回ずつ回転してセンターポジションで制止する。ステアリングホイールの上側中央には赤い凹みのラインがあり、これがセンターを示しているのでわかりやすい。

 さっそく走行してみると、まずステアリングの手応えに驚かされる。他のステアリングコントローラーだと、ステアリングがある程度動くようなガタつきがあったものなのだが、この「T500 RS GT RACING WHEEL」にはそれが一切ない。ぴったりとセンターで止まり、自然な重さとともにグイーッと回転する。ブレやガタつき等が混じらない、シームレスな手応えだ。

 この手応えのシームレスさに同調して、ステアリング操作もゲーム内にシームレスに反映される。「H.E.A.R.T(HallEffect AccuRate Technology)という新技術により、16ビット解像度(65536値)のコントロール精度を誇るということだが、その精度の高さが実感できる。

 ステアリングを回す手応え、滑らかさな重さ、そして操作の反映と、全部が一体となって、余計な手触りがないシームレスな体験になっている。この体験は他のステアリングコントローラーとは一線を画すものがある。

 1番魅力に感じたのは、フォースフィードバックの表現力の高さだ。これは圧倒的で、強弱のメリハリがはっきりとしているのはもちろん、路面にちょっとした凸凹があったのか伝えてくるかのような揺れ、段差に乗り上げたときのガツンとくる衝撃、コーナリング時にインに切り込みすぎてリアの駆動力が抜け、フロントがイン側に引っ張られるような感触。そうしたフォースフィードバックのひとつひとつが「GT5」としっかりリンクしていて、説得力がある。

ガタつきのないステアリングの手応え、高精度で一体感の高いコントロール、表現の豊かなフォースフィードバックと、1ランク上の圧倒されるようなプレイが楽しめた

 プレイ中の動作音は静かとは言えないまでも、かなり抑えられた音になっている。たとえば、他のステアリングコントローラーの動作音を「ギュウウン」と表現すると、こちらは「ジュウウン」というくぐもった表現になるだろうか。ギアで回転しているところが、ベルトで回っている音だ。また、内部に排気ファンを内蔵しているということだが、この音はあまり感じられない。排気もそれほど熱を感じさせるところはなかった。

 続いてペダルの感触。アクセルとクラッチはスコンッと金属の重量感とほどよい抵抗を残しての軽めな感触だが、ブレーキはグウウッと踏み込む重さのある感触になっている。この感触も、これまで試してきたどのステアリングコントローラー製品でも体験できなかったレベルのものだ。

 なにより、素材感や剛性感からしてレベルが違う。ペダルヘッドの広さであり金属の質感であり安定感。リアルな抵抗により、ブレーキングも微妙な調整が自然にできる。クイックな激しい操作でも重量のおかげで動くこともなく、抜群の安定感がある。ペダルの感度もシームレスで、細かな操作をきちんと反映する。

 少し気になったのは、パドル型のデジタルギアシフトレバーで、これはステアリングと一緒に回転せず定位置から動かない。そのため、コーナーリングしつつギアを落としたり上げたりといった時に、レバーの上なり下なりの端を引く感じになる。ギアはかなり大きさがあり、感度もいいので操作は十分に可能だが、扱いにクセがあるとは感じる。

 ちなみに、本製品はPCに接続しても動作する。OSはWindowsXP、Windows Vista、Windows7の32-bit/64-bitに対応している。使用するためのドライバーはThrustmasterのサポートページからダウンロードできる。今回は「DRIVERS FORCE FEEDBACK (Package 2011_TTRS_5) + Firmware V37」のドライバーをWindows7 64-bitのPCに導入して試してみた。

 プロパティ画面では「GT5」での設定よりも、より詳細な調整が可能だ。まず、ステアリングホイールのロックトゥロックを最大の1,080度から最小の40度まで制御できる。また、フォースフィードバックの強さの調整や、オートセンタリング機能をホイール側で行なうかゲーム側の設定にあわせるかの切り替えなど、詳細設定が可能だ。PC用のレーシングタイトルを楽しむのにも、機能を存分に活用できる。今のところ「GT5」では設定できない、ロックトゥロックの制御、フォースフィードバックの調整も、今後「GT5」でもぜひできるようになってもらいたいところだ。

 全体的な感想として、見た目や存在感から想像するよりも扱いやすいと感じられた。もちろん十分な設置スペースが必要だったりかなり重量があるなど、物理的な制約はあるが、それらはプレイ体験に関わるものなので問題とはならない。そういうところではなく、重心のバランスであったり作りの細かい部分でクオリティーの高さをしっかり感じられ、それが扱いやすさにつながっているのだろう。

 ガタつきやブレがなく、1個の塊のようにがっしりとした剛性感のあるステアリングホイールユニットは、本格的な重さのある抵抗感を感じながら、表現豊かなフォースフィードバックを感じつつ、シームレスな一体感が感じられる。プレイしていると没入感が非常に高まる。重量による安定感のおかげで、デバイスへの気遣いが必要ないのもまた、没入感を高める大きな理由だろう。

 “究極のドライビング体験を提供する”という言葉はまさにその通りで、ステアリング、ペダルともに、これ以上を望んだらもうどこまでいけばわからなくなってしまうという感想だ。単に贅沢な素材を使っているのではなく、ニッチな製品にありがちな無骨さがなく、ちゃんと洗練されているのもオフィシャルの理由と思える。こだわる人に、ぜひ1度触れてみてもらいたい。




● PSPのゲーム画面をHDMIケーブルでTV画面いっぱいに出力! 「ワイドdeポータブルHD」

「ワイドdeポータブルHD」

    メーカー:ゲームテック
    価格:9,800円


中央の「ワイドdeポータブルHD」本体のほか、「PSP接続ケーブル」、「HDMIケーブル」、「オーディオケーブル」、「ACアダプター」、さらに「PSP go変換コネクタ」が付属する
 まず、周知の話だとは思うが、改めてPSPのTV出力の話を先にしておきたい。PSPのTV出力はD端子による接続では、出力解像度は480P(16:9の場合、720×480)。HOMEメニューや動画などを表示する際は、480Pできっちり出力されているが、PSPのゲーム画面の出力解像度は480Pのうち480×272までしか表示されず、残りは黒枠で表示されている。この黒枠が気になる、という人も多いだろう。

 そして、この黒枠を解消するべく、東芝の「REGZA」やNANAOの「FORIS」をはじめ、いくつかのTVやモニター、もしくは今回取り上げている「ワイドdeポータブルHD」や「フル画面プレイHDMI」といったアダプターでは、拡大処理(スケーリング)してこの黒枠の解消が実現されている。

 さて、「ワイドdeポータブルHD」は、PSPの映像と音声をHDMIケーブルでTVやモニターへと出力できるグッズで、メーカーのHPなどを見ると、「映像を約1.4倍に拡大する」としている。これは、PSPの映像出力(480P)を720P(1,280×720)で表示すれば、確かに1.4倍に拡大していることになる。メーカーのいう「拡大率1.4倍」という数値は、この製品の場合、あくまで出力解像度を指していると思われる。

 対応するのはPSP-3000/2000(ハンターズモデル含む)のほか、付属の変換コネクタを使うことでPSP goにも利用できる。

 先に書いておくと、この製品は海外メーカーで発売されている「HDMI UpScaler LKV8000」という製品と基本的に同じものと思われる。付属のケーブル類やPSP go変換コネクタも共通している。製品の仕様や性能も同等と考えていいだろう。

 「ワイドdeポータブルHD」の本体は黒いボックス型をした金属製の機器で、左側面に「PSP接続ケーブル(ケーブル長:2.2m)」を接続する端子、右側面には「HDMIケーブル(1.3m)」、「オーディオケーブル(1.5m)」、「ACアダプタ(1.5m)」を接続する端子がある。

 音声はHDMIケーブルに出力されるが、別のスピーカー等へ出力したい場合はステレオピン(白と赤のL/R)のオーディオケーブルを使う。TVではなくHDMI端子を持つPC用モニター等で使う時に便利だ。

 使用するには、「PSP接続ケーブル」でPSPと本体をつなぎ、本体とTVを付属の「HDMIケーブル」でつなぐ。同梱物にはこのほかに「PSP go変換コネクタ」が付属しており、このコネクタとPSP接続ケーブルを組み合わせてPSPのマルチユース端子に接続することで、PSP goでも利用できる。

 「PSP接続ケーブル」のコネクタ部分には小さな丸いボタンがついていて、これを押して画面拡大機能のオンオフを切り替えるという作りだ。拡大オン時は画面のサイズが約1.4倍に、オフだと純正の出力ケーブルを使っているのと同じ通常のサイズになる。


PSPを接続した状態。画面拡大の切り替えはPSPのイヤフォン端子につなげたコネクタ部分にあるボタンで行なうので、手元で切り替えられるが便利

上は拡大していない状態で、いわば従来のPSPの画面をTVに出力した状態。これが、拡大させると下のようにTV画面いっぱいに表示してくれる

 実際に使ってみた。まずはセッティングだが、「ワイドdeポータブルHD」本体を中心に、PSP側のケーブル、HDMIケーブル、そしてACアダプターと接続するので、ちょっとケーブルがごちゃごちゃとする。HDMI以外に音声出力したい場合はオーディオケーブルも加わるので、なおさらというところだ。各コネクタの感触などはしっかりとしていて、ケーブルの長さも全体で3m以上あるので扱いやすい。

 PSPから画面出力がされていない状態だとTV画面はブルーバックになる。PSPから画面出力をすると、TV画面にPSPの画面が出力される。拡大なしの状態では、SCEから発売されている純正のD端子出力ケーブルで出力しているのと、ほとんど同じように見え、ゲーム画面では黒枠が表示されている。

 「PSP接続ケーブル」のコネクタ部にあるボタンを押して画面を拡大させてみると、一瞬入力信号が切り替わって、TV画面いっぱいにゲーム画面が出力された。それまで黒枠の中心部に表示されていたゲーム画面がTV画面いっぱいに表示されるのはなかなかにインパクトがあって、ちょっとした驚きと感動がある。

 ゲーム画面の画質はというと、アップスケーリングしてからHDMIで出力しているからなのか、ぼやけたような感じはなく、くっきりと精細さのある画面だ。だがさすがに、“拡大されている”のを感じるところはあって、全体にジャギーっぽいというか粗さを感じる。フォントの丸みなどははっきりとドットが見える感じだ。明るさや色味はほど良く、この点はPSPの画面での印象と大きくは変わらない。PSPのゲーム画面を720Pの解像度まで画面いっぱいに拡大すると、約2.64倍ほど拡大していることになる。1ドットが2倍以上にそのまま拡大されれば、当然粗く見えても仕方がないだろう。

 また、単純にPSPのゲーム画面を拡大すると、解像度の比率の問題で、縦の解像度に合わせた場合、左右の端の表示が少し切れてしまう(TVでは16:9だが、PSPのゲーム画面は16:9より上下1ドット多い)。つまり、縦の解像度にあわせて横も拡大されるので、「ワイドdeポータブルHD」では、PSPの画面で言えば約2~3mmほどの部分が切れて表示される。たとえば「モンスターハンターポータブル3rd」のクエスト中の画面で言うと、左端に表示される自分の名前の1文字目が、1割ぐらい切れる感じだ。一応それでも1文字目を判別できるし、だいたいのゲームでも問題ないとは思えるのだが、ふとした時に気になるところではある。横の解像度にあわせて拡大するモードもあれば、上下に少し黒枠が残るが、画面全体が収まるようにもできるので、こちらも実現してほしかった。


画面出力したTV画面を同じ位置、同じ設定でカメラで撮影している。上は通常表示、下が拡大表示だ。隙間なくフルに表示されているが、左右端の表示は外に切れてしまう。発色は鮮やかで明るさ等もバランスがいい

付属の「PSP go変換コネクタ」を使えば、写真のように接続してPSP goにも利用できる

 HDMIから音声も一緒に出力されるのだが、ボリュームゲインが高く、プレイ前にはTVの音量を下げておかないといけない。音質もほんの少し音割れしているようなところがあったが、基本的には不満は感じない。PSP内蔵のスピーカーよりも数段迫力があり、細かな音も聞こえる。

 映像変換による入力遅延については、タイミング良くボタンを押すいわゆる“音ゲー”が調べやすいということで、PSP用ソフト「太鼓の達人ポータブル2」などで調べてみた。30分程度プレイしてみたが、PSPの画面でプレイするときと比べ目立った遅延は感じられない。仕組み的には、画面をアップスケーリングしてHDMIで出力しているし、TV側の遅延も加わっているので、遅延がまったくないとは言えないのだが、それを考慮しても目立った遅延は感じない程度。十分プレイできた。

 「PSP go変換コネクタ」を使ってPSP goでも試してみたが、コネクタが加わるだけで主な使い勝手や出力具合には違いはない。PSP同様に、拡大された画面出力でのプレイを楽しめる。この「PSP go変換コネクタ」はなかなか便利なもので、これを使えばPSP用のD端子出力ケーブルを使っても画面出力ができたし、充電クレードルのマルチユース端子につなげて使うこともできた。PSP goならPS3用のコントローラーも使えるので、大きな画面でコントローラーを使っての、さながら据え置き機種なプレイが楽しめる。


こちらはPSP goの画面を出力させたところ。基本的に、PSP-3000/2000となんら変わりなく使える。上は通常表示、下は拡大表示したところを撮影した写真だ

 使い勝手で気になったのは、電源のオン/オフがACアダプターを抜くことでしかできないこと。なにかしら電源スイッチが欲しかったところだ。また、「ワイドdeポータブルHD」本体は通電しているとほんのり暖かい程度に熱を持つので、プレイ後にACアダプターをつなげっぱなしにしておくのは、ちょっと気になるところでもある。

 なお、この製品でプレイ中に画面が乱れるときがあるという感想をネット上で見かけたので、そこにも注意深くチェックをしてみたのだが、こちらで試した限りそうした現象は見られなかった。

 PSPのゲーム画面をTVやモニターの画面いっぱいに表示してくれる「ワイドdeポータブルHD」。表示は想像していたよりもキレイで大きな画面はやはり迫力がある。表示がほんの少し切れるところや、電源のオンオフスイッチがないところがちょっと気になるが、大きい画面でじっくりとプレイしたい人は1度チェックしてみてもらいたいグッズだ。




● PSP用のACアダプターを使い、画面をフルサイズ出力しつつ充電もできる! 「フル画面プレイHDMI」

「フル画面プレイHDMI」

    メーカー:アンサー
    価格:9,800円


「フル画面プレイHDMI」本体のほか、HDMIケーブルが付属している。動作にはACアダプターが必要だが、PSP用のACアダプターが使用できる

 PSPのゲーム画面をTVやモニターの画面いっぱいに表示してくれる「フル画面プレイHDMI」。対応するのはPSP-3000/2000(ハンターズモデル含む)となる。

 パッケージには「フル画面プレイHDMI」の本体と、HDMIケーブルが入っている。「フル画面プレイHDMI」本体の動作にはACアダプターが必要になるが、これはPSP用のACアダプターが利用できるので、別に用意する必要はない。

 「フル画面プレイHDMI」本体は、黒いボックス型の機器で、画面の拡大をオン/オフするスイッチ、本体の電源をオン/オフするスイッチ、HDMIケーブルを接続する端子があり、さらにPSPに接続するケーブルが伸びている。

 PSPに接続させるケーブルは先端が二股にわかれていて、片方はイヤフォン端子へ、もう片方はPSPの電源端子に接続する。「フル画面プレイHDMI」本体を動作させながらPSPの充電も一緒に行なえる作りだ。ACアダプターがひとつで済むのは嬉しい。


PSPやケーブル類をすべてつないだところ。本体にPSP用のACアダプターをつなげ、PSPのイヤフォン端子と充電端子に二股のケーブルをつなげれば、画面出力をさせながら充電も行なえる。使い勝手を考慮したスマートな作りは好印象

上は拡大していない状態で、いわば従来のPSPの画面をTVに出力した状態。これが、拡大させると下のようにTV画面いっぱいに表示してくれる

 実際に試してみた。まずはセッティングだが、HDMIケーブルをつなぎ、「フル画面プレイHDMI」本体にはPSP用のACアダプターをつなぎ、そしてPSPのイヤフォン端子と電源端子にケーブルをつないで準備完了。付属のHDMIケーブルは約2m、「フル画面プレイHDMI」本体から伸びているケーブルも約1mあるので、合計3mの余裕があり、TVから十分な距離が取れる。

 ゲームテックの「ワイドdeポータブルHD」と比べるとケーブル類が少なめでスマートに扱えるのだが、PSP側はイヤフォン端子と電源端子につなぐ二股のケーブルが少し気になるところ。二股の長さのバランスが悪く、Y字型にPSPの下側で広がってしまう。もう少しスマートに、右にまっすぐ逃がせるような作りだとうれしかった。

 接続を終えてTVをつける。PSPの画面を出力していない状態だとブルーバックの画面になる。「フル画面プレイHDMI」の電源を入れてPSPの画面出力を変更すると、拡大なしの状態では純正のD端子出力ケーブルで映しているのと同じサイズに映る。拡大のスイッチを入れると、画面いっぱいに表示された。

 画質についてはゲームテックの「ワイドdeポータブルHD」とだいぶ印象が異なる。こちらはかなり「明るさ」が強く、白っぽく映る。このため、色味も薄くみえる。TVやモニターによるところがあるが、明るさを調節したほうが引き締まった発色になるので良さそうだ。

 明るさ以外にも、このアンサーの「フル画面プレイHDMI」では少し画質がマイルドなところがある。ゲームテックの「ワイドdeポータブルHD」はシャープで見栄えがするが、そのぶんジャギーや“拡大されている”という印象も強く感じられた。一方で、アンサーの「フル画面プレイHDMI」はそのあたりの印象が柔らかい。アンサーの方は明るさをTV側の設定で調節するという前提が加わるが、どちらも一長一短という印象だ。ただし、やはり2.64倍以上に拡大しているので、それははっきり感じられるのは変わりない。

 また、画面の左右の端が画面に入りきらず切れてしまうところは共通していた。やはり、PSPの画面でいうと左右端の約2~3mmが切れてしまう。このあたりも「ワイドdeポータブルHD」同様に、横の解像度に合わせて拡大するモードが欲しかったところだ。

 遅延についても同様に、PSP用ソフト「太鼓の達人ポータブル2」などの、いわゆる音ゲーをプレイして調べてみた。30分程度プレイしてみたが、目立った遅延は感じられない。


画面出力をしたTV画面を同じ位置、同じ設定でカメラで撮影している。上は通常表示、下が拡大表示だ。隙間なくフルに表示されているが、左右端の表示は外に切れてしまう。画質の特徴としては、かなり明るさが強めで白っぽく、色も薄くなっている。この写真はTV側の調節をしていないが、明るさを落とすといいだろう

 音声はHDMIケーブルで出力されるが、イヤフォン端子から聴ける迫力のある音を楽しめる。ノイズなどの気になる点も特にない。ただ、ゲームテックの「ワイドdeポータブルHD」同様にボリュームゲインは大きめなので、使用前にTVのボリュームはある程度下げておいたほうがいい。

 なお音声出力に関しては、ゲームテックの「ワイドdeポータブルHD」にはHDMIケーブルとは別にオーディオケーブルでも出力が可能だったが、こちらはHDMIケーブルのみとなる。HDMI入力はあるがスピーカーがないPC用モニターに繋ぐときは、別に音声出力ができないのは辛い。このあたりの利用シーンを想像して選択するのが良さそうだ。

 全体的な扱いやすさについては、アンサーの「フル画面プレイHDMI」には電源オン/オフのスイッチが本体にあるのが嬉しい。ただし、拡大の切り替えスイッチも本体にあるので、電源や拡大切り替えを触るときには手を伸ばして本体を触ることになる。

 一方、ゲームテックの「ワイドdeポータブルHD」は電源オン/オフのスイッチがないのが残念なところではあったが、拡大の切り替えスイッチはPSPのイヤフォン端子につなぐコネクタ部分にボタンがあったので、手元ですぐに切り替えられるのは魅力だった。

 「フル画面プレイHDMI」は画質が少し明るさが強く、TV側の調節が必須なのは気になるところだが、電源スイッチがあるところなど扱いやすさは魅力。画面いっぱいにPSPのゲーム画面が映るのは迫力があるので、普段からPSPの画面出力機能を使ってゲームをプレイしているという人には、ぜひ体験してみてもらいたい。

【4月22日追記】追加検証 -- 左右が切れてしまう表示をキレイに表示させることはできないのか?

 読者の方より、「TVの表示設定を使えば、左右の表示が切れてしまうのを回避できるのでは?」というお便りを頂いた。そこで、ゲームテック「ワイドdeポータブルHD」 と、アンサー「フル画面プレイHDMI」の追加検証を行なってみた。

 まず、TV。16:9に対応したTVであれば、まず画面モードという表示設定があるだろう。ここには、「フル」、「ワイドズーム」、「字幕」など、様々な映像ソースに対応させるモードがあるのだが、「Dot by Dot」(TVによってはないものもある)以外は基本的に元の映像を拡大表示するものがほとんどで、もっとも大きい映像領域を表示するモードは「フル」が一般的だろう。今回検証に使ったTVではどちらの製品であっても「フル」以外は映像が大きくはみ出してしまう。

 画面モードを「フル」の状態で、表示のオプションを変更してみた。ここで調整したのは「表示領域」であったり「オーバースキャン」といった画面範囲の設定なのだが、これもTVによって機能が異なる。今回の場合だと、PSPからのゲーム画面が縦はぴったりで横は少しはみ出てしまっているので、2台のTVで調整してみたが、どちらも表示領域を拡大する方向にしか設定ができなかった。

 このため、TV側の設定で調整するのは、“TV次第”という結論になる。ゲームテック「ワイドdeポータブルHD」 や、アンサー「フル画面プレイHDMI」をお使いの方は、ぜひ1度テレビの表示設定をチェックしてみてもらいたい。もしかするとベストセッティングが可能、かもしれない。

 続いて、HDMI端子のあるPCモニターで試してみた。使ったモニターはLG電子の「FLATRON W2363V」。表示最大解像度は1,920×1,080。PCモニターであれば、これもモニターによって異なるものの、表示設定をより詳細に調整できることが多い点も魅力だ。

 さっそく繋いでみると、2製品ともに画面の左右が切れることも無く、きっちり表示された。これはこのモニターがもともと外部入力の表示は外周に黒枠が出るような余裕のある作りのため。そのため、「画面全体への表示」という点では損なわれてはいるが、表示領域が欠けることなく表示される。ただし、こちらもPCモニターならどれでもこういう仕様というわけではなく、製品次第というところがあると思うので、お使いのモニターをチェック頂きたい。


【「ワイドdeポータブルHD」】
【「フル画面プレイHDMI」】
上の2枚はゲームテック「ワイドdeポータブルHD」の拡大時と通常時、下の2枚は「フル画面プレイHDMI」の拡大時と通常時の映像を、LG電子の「FLATRON W2363V」に出力しているところ。もともと外部入力の映像表示は外周に余裕のある作りになっていることがあり、ゲーム画面全体が切れることなく表示された。画面をみると、ゲーム画面が左に寄っているのがわかる





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(2011年 4月20日)

[Reported by ゲーム環境向上委員会]