3Dゲームファンのためのグラフィックス講座
西川善司の3Dゲームファンのための「プレイステーション 4」グラフィックス」講座(前編) ~1シーンあたり数千万ポリゴン時代へ)
(2013/3/7 00:00)
PS4世代のゲームグラフィックスはこうなる(1)~1シーンあたり数千万ポリゴン時代へ
SCEのPS4のグラフィックスを語る上で、MicrosoftのマルチメディアコンポーネントAPIであるDirectXを引き合いに出すのは気が引けるが、とりあえず「世代」を語る上での共通言語としては便利なので、本稿でも「DirectX」と「プログラマブルシェーダ仕様」(ShaderModel:SM)というキーワードを便宜上用いることにする。
前述したようにPS4は、GPUとしてRADEON HD7800系GPUを採用した。これはDirectX 11.1世代のGPUであり、プログラマブルシェーダ仕様5.0(SM5.0)対応のグラフィックスアーキテクチャとなっている。
ちなみにPS3は、NVIDIA GeForce 7800 GTXベースだったので、同じ基準でいうとDirectX 9.0世代SM3.0対応のグラフィックスアーキテクチャを採用していた。
PS3(DirectX 9世代)とPS4(DirectX 11.1世代)の間にはDirectX 10.0/SM4.0、DirectX 10.1/SM4.1、DirectX 11.0/SM5.0があったので、PS3が発売された2006年から数えて約7年分のグラフィックスアーキテクチャのジャンプアップがPS4に訪れることになる。PS4世代のゲームグラフィックスは、PS3世代のものと比べて何がどう変わるのか。ここからは、この部分について考察していきたいと思う。
前述したように、まず、単純にGPUパフォーマンスが8倍(筆者推測)に引き上がることから、ベースの表現が一気に引き上げられる。最も一般ユーザーに響きやすいポリゴン数でいうと、PS4世代のハイエンドゲーム(大作ゲーム)はシーンあたり数千万ポリゴン超になると予想されている。
シーンあたり数千万ポリゴンとなると、もはや映画向けCGやプリレンダームービーのジオメトリ密度と同等ということになる。ただ、これは、ハイエンドPC向けGPUではすでに当たり前のパフォーマンスとなっていて驚くべきことではなかったりする。
実際、スクウェア・エニックスの新世代ゲームエンジン「Luminous Studio」上で動作する技術デモ「Agni's Philosophy」が、PS4開発機上でリアルタイム実行動作する様子が公開されていたが、このAgni's Philosophyがまさにシーンあたり数千万ポリゴン超で出来ており、1フレームあたり約1,000万ポリゴンのレンダリングが行なわれていた。
「Agni's Philosophy」はもともと、スクウェア・エニックスのプリレンダームービーチームヴィジュアルワークスが骨子となるプリレンダームービーを作り、これをリアルタイム環境に移植する形で開発が行なわれたものだ。
同開発スタッフによれば、実際、リアルタイム版(≒PS4版)のAgni's Philosophyでは、登場するほぼ全ての3Dモデルをプリレンダー版からそのままのジオメトリ密度で持ってきて流用したことを明らかにしている。
ちなみに、筆者が把握しているおよその情報にはなるが、初代PS世代はシーンあたり数万ポリゴン、PS2世代で数十万ポリゴン、PS3世代で数百万ポリゴンくらいだったので、ポリゴン数は今回も一桁上がることになるのだ。
「そんな多ポリゴンの3Dモデルのデザインは大変そう」という意見も出てきそうだが、PS4世代のグラフィックスパイプイランでは後編で触れるテッセレーションステージを活かすことで、うまく“いなす"”ことができる。そうすることで開発/デザイン段階ではPS3相当でも、ランタイムで多ポリゴンにするということがPS4世代では技術的に可能になるのだ。このテクニックについては詳しくは後編で解説する。