★ iPhone/iPod touch/iPadゲームレビュー★
オンラインRPGが新時代へ突入!
iPhoneで持ち歩くMMORPGがトレンド!?
「オーダー&カオス オンライン」
ジャンル:
MMORPG
開発元・発売元:
ゲームロフト
プラットフォーム:
iPhone 3GS以降、第3世代iPod touch以降、iPad
価格:
800円(利用権3カ月付き)、115円/1カ月、230円/3カ月、350円/6カ月
配信日:
4月28日(配信中)

 「オーダー&カオス オンライン」がリリースされて早2カ月。iPhone(iPod touch、iPad)で楽しめる本格的MMORPGということで既にプレイしている人も多いだろう。実際、筆者がプレイしているAsiaサーバーの「グリマームーア」では多くの日本人の姿が見かけられる。

 しかしながら一方では、iPhoneという携帯端末でMMORPGがどこまで快適にプレイできるものなのか、と疑問を持っている人も多いことだろう。チャットを含めた操作性やクオリティーに不安を抱き、いまだ購入に踏み切れないユーザーが多いのも現実のようだ。そこで今回はiPhoneとMMORPGの相性にフォーカスをあて、操作感やプレイ感を中心にインプレッションをお届けしていこう。



■ 本格的MMORPGがポケットサイズに! 携帯ゲームとは思えないクオリティーに注目!!

 プレーヤーキャラクターは、秩序(オーダー)のために戦う「人間」と「エルフ」、無秩序(カオス)のために戦う「オーク」と「アンデッド」の4種族。プレーヤーは好みの種族と1つの職業(ウォーリア、メイジ、モンク、レンジャー)を選択し「オーダー&カオス オンライン」の世界へと降り立つ。

 冒険の舞台となるのはジャングル、砂漠、遺跡、山地などロケーションも様々。各エリアには起点となる街などがいくつもあり、プレーヤーはクエストを受注するもよし、素材を集め生産に没頭するもよし、仲間とともに冒険に出かけるもよし。ときにはフィールドの一部に用意されたPKエリアで他のプレーヤーの命を狙うことだってできる……。楽しみ方は全てプレーヤーの意識次第、そんな自由度溢れるMMORPGなのだ。

 Asiaサーバーを選択しゲームスタートをすると、最初に目に飛び込んでくるのが、中国語やハングルで埋め尽くされるチャットだろう。本作は他国のプレーヤーと同じ世界を共有するグローバル(世界)サーバーを採用している。ケースバイケースだが、Asiaサーバーでは母国語一本でコミュニケーションを求めてくる人もいるし、他国のプレーヤーだとわかった瞬間に英語でコミュニケーションをしてきてくれる人もいる。日本語を中国語やハングル、英語などにしてくれる翻訳機能なんかはもちろんないので、海外のオンラインゲームに慣れた人は英語がベースのAmericaサーバーを選択するほうが親しみやすいかもしれない。

 しかしながら、筆者のプレイするAsiaサーバーでは日本人の姿も多く見られるし、日本人のギルド(コミュニティー)もかなりの数ができているようだ。中国語やハングルが生理的にうけつけないという理由がないならば過剰な警戒などせず、わからない言語で話しかけられたらスル―する。そんな意識でAsiaサーバーを選択してみればいいと思う。


【スクリーンショット】
クラス(職業)はウォーリア、メイジ、モンク、レンジャーの4つ。もちろんキャラクター作成時に、性別やヘアスタイルや肌の色などカスタマイズが可能6月30日に行なわれたアップデート第1弾で実装された言語別チャットフィルター。グローバル&ローカルチャンネルに表示する言語を任意でブロックできるようになったチャット画面をタップするとチャット画面が拡大されて入力画面へと切り替わる


■ 世界観から操作感までPCのMMORPGと比較しても遜色なし!

 ゲームシステムを見ると、ギルドにグループプレイ(最大4人)はもちろん、チャット、エモーション、オートランまで実装と、PC向けのMMORPGと遜色ない完成度には驚かされる。

 クエストについてもお使い系がメインではあるが、500以上と数は豊富(6月30日のアップデート第1弾でさらに新クエストが追加された)だし、キャラクターの足元に表示される矢印の示す方に進んで行けば次の目的地へと辿り着けるサポート機能を備えるなど、昨今のMMORPGで主流となっている要素もしっかりカバーされている。

 クエストの難易度は様々で、基本的にはソロでクリアできるものがほとんどだが、中には他のプレーヤーとの協力なしでは乗り切れないクエストも存在する。しかしながらそこは“洋ゲー”。同じ目的でその場にいる他のプレーヤーと即席のグループを組んでクリアしていこう。プレイしていればきっと無言でグループに誘われる機会が訪れるはず。そんなときは躊躇せず積極的に参加してみてほしい。仮に参加した後で目的が違っていることがわかったら、速やかに抜ければいいだけのことだ。

 次に気になる操作性についてだが、基本的にはこれまでPCのキーボード&マウスでやってきたことを、スクリーンのタッチ&タップ、そして2本指を広げるピンチ操作で全て行なえる。キャラクターの移動はバーチャルパッドで行ない、視点移動は画面にタッチして上下左右見たい方向へ指をスライドさせればOK。敵やNPCなどをターゲットしたい場合はターゲットしたい相手を指でタッチするだけ。使いやすいショットカットキーも用意されていて、UIの細かいところまで丁寧に作り込まれている。中でもキャラクターを移動するバーチャルパッドの位置が固定されておらず(画面の左側ならどこを触ってもバーチャルパッドが表示され、キャラクターを動かせる)、自分が持ちやすいポジションで操作できるのは好感が持てる。

 キャラクターの移動や敵との戦闘などの操作性は、個人差はあると思うが、筆者の感覚ではすこぶる良好。数あるiPhoneゲームの中でも操作性は優れているほうだと思うし、動作環境ギリギリのPCでMMORPGをプレイするよりも快適だ。正直、iPhone 3GSと第4世代iPod touchで、ここまで快適にプレイできるなんてビックリしたというのが正直な感想だ。

 チャットについては、購入後2~3日は「これでチャットするのはさすがに無理があるかも……iPad2ならもっとチャットしやすいのかな?」などと考えたこともあったが、今となっては、単に慣れの問題であったことに気づかされる。iPhone 3GSを最初に所有したときのフリック操作に戸惑いを感じたのと同様、慣れればなんてことはない。PCのキーボード並とは言わないまでも、今では長文を素早く入力できるようになった。端末の性質上、戦闘中にチャットするのはかなり厳しいが、それはPCにおいても同じことだ。

 動作については、第4世代iPod touchでプレイすると、砂嵐が吹く「サンドランド」など一部のエリアで若干のもたつきはあるものの(6月30日に行なわれたアップデートで砂嵐の場所が減るなど、かなり改善された)、それ以外の場所ではストレスなくプレイできる。逆にiPhone 3GSでは解像度が若干落ちるものの、その分だけ処理が軽い印象で、サンドランドの砂嵐でも処理落ちが見られない。

 他にはサーバーが混雑していたりPvPエリアに大人数が集合したりすると、処理が重くなることはある。しかしながら、何時間もログインできないなどの大トラブルは、筆者が知る限りでは今のところ起こっていない。オープンβテストを行なわずに提供されたことを考えると、ゲームロフトの技術力の高さを感じられる。ただ以前、115円のセールが行なわれた直後から、サーバーが頻繁に落ちるなどのトラブルが発生しているので、サーバー増強などの対応は切に願う。


【スクリーンショット】
クエスト現場にいる時点で目的をさっしてくれる海外プレーヤーも多いので、共有できるクエストでは積極的にグループに誘ってみよう仮に英語のスペルが間違っていても、その場の雰囲気や状況でこちらの意図は意外に伝わるものだクエストが完了したら無言でグループを抜けても基本的には問題ない。が、礼儀を気にするのであれば挨拶などのエモーション機能を活用してみるといいだろう


■ ソファーに寝そべってMMORPGをプレイできるのが最高にイイ感じ!

 本作について特筆すべきは、そのお手軽さ。リリース初日からプレイし続けて1番印象的なのは、“iPhoneとMMORPGの相性のよさ”に尽きる。ソファーに寝そべってMMORPGをプレイできることの素晴らしさ。Wi-Fiの範囲内という制約はあるが、グループプレイ中、冷蔵庫へ飲み物を取りに行くのも余裕だし、それこそトイレで用を足しながらだってプレイできる……。MMORPGをプレイする=机(PCを置いてある場所)から離れられない――この呪縛から解き放たれた時の自由さに、きっと多くのMMORPGユーザーが衝撃を受けるはずだ。

 レベル上げについても、クエストをこなしていくことでスマートにレベルアップしていく(Mobを倒して経験値を稼ぐよりも、クエストの報酬で経験値を得たほうが効率的)ので、基本的にどの職業を選んでもソロでレベルキャップの60まで上げられる。MMORPGとしては比較的レベル上げがヌルイ部類に入るので、レベル上げが苦手なプレーヤーにとっては一安心といったところだろうか?

 また、ログイン、ログアウト、キャラクターチェンジなど、全てが手軽&迅速にできるのも魅力の1つ。PCでMMORPGをプレイする場合、PCの電源を立ち上げて起動するのを待ち、次にソフトを起動して……とゲームサーバーにログインするだけでもかなりの時間をロスしていた。しかしiPhoneならば常に電源は入れっぱなしだし、ゲームを起動させるのもあっという間。ゲームをやめる時も同様で、メニュー画面からワンタッチで終了できる。とにかく全てがお手軽なのである。

 ちなみに、ゲームプレイ中に誤ってホームボタンを押してしまっても、ゲームが落ちることはないのでご安心を。本タイトルはマルチタスクに対応しているので、慌てずに「オーダー&カオス オンライン」のアイコンをタップすれば続きからプレイできる(第4世代iPod touch、iOS 4.3で確認)。これはプレイ中に着信があった場合も同様で、ゲームが強制終了されるようなことはない。プレイ中も普通に電話を受けられるし、電話を切ればプレイを再開できる(iPhone 3GS、iOS4.2.1で確認)。ただしオンラインゲームという性質上、ゲームはリアルタイムで動いているので、敵との戦闘中などは注意が必要だ。

 日本語版がリリースされないことの方が多い欧米産オンラインゲームの中で、本作は携帯機ながらきっちり日本語ローカライズされている。母国語でプレイできるか否かは、コミュニケーションが重要視されるMMORPGでは重要なポイントだ。またプレイ料金も、ソフト800円(3カ月の無料プレイ含む)+6カ月350円で、9カ月プレイしてもたった1,150円(もちろんWi-Fiなどの通信費は別途かかるが)と、PCのMMORPGと比較すれば破格の安さといっていいだろう。

 さらに筆者を含めた多くのプレーヤーが実装されるか不安視していたアップデート第1弾(新クエストの追加、言語別チャットフィルター、アーマーセットの追加、テレポート料金の値下げ、死亡時のペナルティーの値下げ、グリーンモントにテレポーターの追加、サーバー変更機能の追加、PvPエリアで復活直後のPCへの攻撃が不可、その他バグ修正など)も、6月中に実装すると公約していた期日を守り、6月30日に行なわれたことは素直に評価したい。

 もちろん、本作の全てが完璧なわけではない。エンドコンテンツがMMORPGの1つの生命線であるにもかかわらず、今現在、エンドコンテンツと呼べるものが全く用意されていないのはネガティブ要素の1つ。アップデート第1弾では残念ながらエンドコンテンツの追加はなかった。生産も充実しているとは言えないため、Lv60のカンスト組は新たなキャラクターを育てるか、他のプレーヤーと対戦(1対1の対決モードが用意されている)するか、遺跡(ベガ・スクエア)などフィールドの一部に用意されたPK可能エリアでPvP(実際には高LVのプレーヤーが低LVのプレーヤーを一方的にPKすることが多い)をすることぐらいしかやることがないのが現実だ。ユーザー自身が盛り上げようとPvPイベントなどを積極的に行なうようにはなってはきたものの、システム的に限界があるのは否めない。近い時期にダンジョンなどの新コンテンツ追加を含むアップデート第2弾があることはアナウンスされているが、せっかく良作と思えるMMORPGと出会えただけに、筆者としてもいち早くコンテンツの充実を図ってもらい、息の長いサービスになることを切に願うところである。

 基本的なゲーム内容は「World of Warcraft」を限りなくリスペクトした本タイトルだけに、独創性に欠ける点は否めない。がしかし、PCのMMORPGと比較しても遜色ない世界観、そして完成度。MMORPGをポケットに入れて持ち運べるニュートレンドを実現し、今現在iPhoneで楽しめるMMORPGの中で最高峰のタイトルであることは間違いない。

 最後に「オーダー&カオス オンライン」というタイトル、そしてオーダー側とカオス側のスタート地点が異なることから、この2つの勢力は敵対するのかと思いきや、実は今現在、種族による勢力分けはされていない。PvPありのMMORPGの多くは勢力間の対決を意識したタイトルが多いだけに、全員が味方にもなるし、敵にもなる今のシステムがゲームにどう影響してくるのか? 筆者も今後の動向を注目していきたい。


【スクリーンショット】
各チャンネル(話す、叫ぶ、チーム、ローカル、グローバル)はボタンを長押しすることで、/マークがつく。これでこのチャンネルのチャットは自分のチャット画面には表示されなくなる自動脱出ボタンをタップすれば最寄りの墓場へテレポート。MAPにはまって脱出不可能になったときなどに使おうフレンド登録も可能なのだが、一方的(フレンド登録される側の認証の必要なし)に登録できてしまうことでトラブルも……アップデートでの改善を要求したい
MMORPGの広大な世界があり、充実したクエストもあり、巨大なドラゴンとの戦いもある。そんなゲームが寝転がりながら遊べるのは衝撃的だ



(2011年 7月 6日)

[Reported by 平井信幸 ]