電気棍棒片手に坊主頭ヒーローが帰ってきた!!
- ジャンル:
- サンドボックス型アクション
- 発売元:
- 開発元:
- Sucker Punch
- プラットフォーム:
- PS3
- 価格:
- 5,980円
- 発売日:
- 2011年7月7日
- プレイ人数:
- 1人
- レーティング:
- CERO:Z(18才以上のみ対象)
電気の超能力を使うコールの戦いを描く「inFAMOUS 2」の日本語版が発売となった。本作は日本語吹き替えで、コール役の藤原啓治さんを始めとした声優達の熱演が楽しめ、住人達の声や、街頭テレビのニュースなども全て吹き替えられている。英語音声も収録されているので英語音声好きな方にもアピールできる。
強大な力を持つ超能力ヒーローの活躍を描く本作は、他のサンドボックス型アクションゲームとはひと味違う楽しさを持っている。どんな高いところからも飛び降りることができ、電線に乗って高速移動して街を駆け抜ける。そしてひとたび攻撃を行なえば周りの人達も吹き飛ばす大破壊さえも可能だ。強大な力を振るう“怖さと悦び”を感じられる作品である。
ゲームの舞台となるのは、歴史的建物があり、地形も多彩なニューマレイ。敵は怪獣映画から出てきたような怪物も多数登場する。立ち向かうコールの能力はより多彩となり、2人の美女が彼の運命を握る。全てがパワーアップした超能力バトルが幕を開けるのだ!
■ 新たな街ニューマレイで、さらなる力を求めコールの戦いが始まる
主人公コール・マグラス。電気を操る特殊な能力を持つ |
前作でも活躍したコールの相棒ジーク |
最強の敵ビースト。どう立ち向かえばいいのか |
本作の主人公は前作から引き続きコール・マグラスだ。コールはある陰謀に巻き込まれ、自分の街であるエンパイアシティーを破壊した災厄の運び屋に仕立て上げられ、しかも超能力者「コンジット」となってしまい、電気を操る特殊な能力を身につけてしまった。エンパイアシティーはその災厄をきっかけに特殊能力に目覚めたコンジット達によって支配されてしまった。コールは自らの力に悩みながらも、黒幕のコンジット「ケスラー」を倒し、街を開放する。
「inFAMOUS 2」は前作のラストから幕を開ける。ケスラーは、コールに倒されるときに、ある“ビジョン”を見せた。それは「ビースト」という彼を上回る力を持った敵が、世界を破壊しつくすというものだった。ビースト出現に備え力を欲するコールに、NSA(国家安全保障局)のクオ捜査官という女性が接触を求めてくる。そしていよいよビーストが現われた。ビーストは赤い体を持つ巨人であり、コールは力及ばず倒されてしまう。その後はエンパイアシティーはビーストによって無惨に破壊し尽くされてしまったのだ。
クオ捜査官は、ビーストに勝つためにはコール達をコンジットに変えた装置「レイ・スフィア」の開発者ウルフ博士の協力が必要だと語る。ウルフ博士は南部の街「ニューマレイ」にいるという。しかし現在ニューマレイは、コンジットを排斥しようとする街の支配者ジョセフ・バートランドIII世により武装民兵組織「ミリシア」が組織され、市民は抑圧されていた。さらに謎の異形の怪物達が街を襲っていたのだ。ビーストはコール達を追うようにゆっくりとニューマレイへ迫ってくる。コールはそれまでに更なる力を手に入れられるだろうか?
「inFAMOUS 2」は電気の能力を持ったコールとなってニューマレイの街で暴れ回るサンドボックス型のアクションゲームだ。今回の舞台はニューマレイ。前作のエンパイアシティーは災厄で崩壊した廃墟のような街だったが、ニューマレイは路面電車が走っていたり、ネオンの輝く場所があったりと生活感がある。歴史的な建造物もあり、繁華街や、沼地、スラム街など地形も多彩だ。
コールはフリーランニングに長けており、手が掛けられる場所があればどんな建物もよじ登ってしまう。さらに特殊能力によってどんな高いところから落ちてもダメージを受けず、建物の間に渡されたワイヤーを滑ったり、電撃を放射して滑空したりできる。ニューマレイの街を縦横無尽に走り、飛ぶだけでも楽しい。
コールが訪れた直後のニューマレイの街は、ミリシアに支配されている。コールはさまざまなミッションに挑戦し街を開放していく。ストーリーは大別して“善”と“悪”の2つのルートが用意されており、ミッションの中にはどちらかを選ぶものもある。善のルートは多くの人を助ける方向で、悪の場合は周りの被害を考えないような大破壊を楽しむような選択だ。
コールには「カルマ」というパラメーターがあり、行動によって善悪どちらかに傾いていく。善悪でコールは外見が異なってきて、習得できる技も変わっていく。周りの反応も変わり、善ならば住人達が敵に立ち向かうなど助けてくれるが、悪ならば攻撃されてしまう。今回は“ヒーロー”を目指す善ルートを進んだが、街の住人や敵の命を抜き出すことで体力を回復するというモンスターそのままの戦い方ができる、悪のルートも魅力的だ。
コールの善悪の道に深く関わってくるのがクオとニックスという2人の女性だ。捜査官のクオはあるきっかけにより氷を操る超能力に目覚める。彼女はその能力を恐れるが、“先輩”であるコールに導かれ、力の使い方を学んでいく。ニックスはバートランドIII世に激しく恨みを持つ炎を操る女性だ。ニックスは不幸な生い立ちの女性で社会にも憎しみを抱いているところがある。彼女は自分の力を楽しみ混乱を大きくしようという意識がある。
前作でも活躍したコールの相棒ジークも登場する。彼は特殊能力は持っていないがあいかわらず陽気で人脈を広げるのもうまく。コールを様々な面でフォローしてくれる。ジーク、クオ、ニックスがコールにどう関わりニューマレイでどんな物語を展開していくか注目である。
左から、クオ、ニックス、ジョセフ・バートランドIII世 | ||
ウルフ博士から渡された装置を使うためにコールは「ブラストコア」を探すことに。クオとニックスは犬猿の仲だ | ||
細部まで作り込まれたニューマレイ。夕焼け時は特に美しい |
■ 前作を超える様々な能力。これがコールの電気パワーだ!
新兵器アンプ。格闘要素がパワーアップ |
ゲームを進めていくことで、様々な能力を獲得していく |
大技のプラズマトルネード。敵が落とすプラズマチャージを消費する |
超能力を駆使するコールの戦いは、他のアクションゲームとはひと味もふた味も違う。「inFAMOUS 2」では早い段階から様々な能力が使える。前作をクリアしたプレーヤーはすんなりとプレイできるだろうが、初心者は能力が多彩なため最初は戸惑うかもしれない。ただ、最初で必負するビースト戦がチュートリアルになっており、派手な戦いを楽しみながら、うまい戦い方を編み出していけるだろう。
攻撃の基本は「ボルト」だ。L1ボタンで構え、R1ボタンで球状の電撃を発射する。連射が可能で、感覚的にTPSに近い。パワーアップすることで、3つの弾を発射する「バーストボルト」や威力が高い「マグナムボルト」といった技も使える。
「ショックウェーブ」は範囲内の敵を吹き飛ばす。目の前の車を吹き飛ばしたり、敵の姿勢を崩したりできる。また敵のロケットランチャーをはじき返すことも可能だ。「グレネード」は電撃を一定時間の後に爆発させる技。範囲攻撃ができるので、攻撃の要となる技だ。この他、車などを持ち上げる技などもある。
これらの技はゲームを進めていくことで、例えばグレネードは壁や敵に付着する「ステッキーグレネード」など、特性を持った技を習得できる。ゲーム中いつでも入れ替えが可能で、TPOの合わせた技の組み合わせをすることでより優位に戦える。車の電力を利用して高くジャンプするなど、ユニークな能力も習得できる。「プラズマパワー」という必殺技もあり、思う存分超能力者気分に浸れる。
「inFAMOUS 2」で追加されたユニークな武器が「アンプ」だ。ジークが作ってくれた新兵器で、電気をまとわせ強力な格闘攻撃ができる。コンボは爽快で、パワーアップすることで派手な演出も入る。アンプの攻撃はかっこよく積極的に使いたくなるが、敵に囲まれるところで使っているとあっという間に蜂の巣にされてしまうので注意が必要だ。
この他、コールはゲーム中盤から更なるパワーを発揮する。その力はカルマと、クオとニックスが関わってくる。善のカルマならば氷の能力が、悪のカルマなら炎の能力が使えるようになる。これらの能力は前作にはなかった新たな力で、これらの能力は前作以上に善と悪のプレイ感覚を異なるものにしていく。
より強力な力を使うためには「ブラストシャード」が必要となる。ブラストシャードは街中のいたる所にあり、これを一定量集めるとコールのパワーゲージが増える。アナログスティックを押し込むとコールの周りの電源とブラストシャードの位置が表示される。ブラストシャードの探索は、宝探しのようで楽しい。また「伝書鳩」がマップ上を飛んでいて、鳩にはウルフ博士の通信記録が残っている。集めることで物語の背後で何が起きていたかを知ることができる。こちらも集めて楽しい要素だ。
3発の電撃を発射する「バーストボルト」、敵や物に付着する「ステッキーグレネード」、物を吹き飛ばす基本の技「アルファウェーブ」 | ||
電気の力でワイヤーを滑走。善のパワー「集団回復」、車の上でジャンプする「カージャンプ」 | ||
氷の能力「アイスジャンプ」、炎の能力「ダブルグレネード」と「プラズマ吸命」 | ||
ブラストシャードは様々なところに落ちている。ハトを捕まえることで、通信記録を読める |
■ 3つ巴、4つ巴の戦いも。善と悪、コールはどちらへ進むのか!?
ミリシアと怪物の戦い。どちらも倒せ! |
善悪どちらかのミッションを選ぶ |
信じられないくらい巨大な怪物! どう戦うか |
「inFAMOUS 2」では様々なポイントが前作からパワーアップしているが、特に“敵”の迫力が強化されている。「inFAMOUS 2」ではミリシアだけでなく、謎の怪物、さらに中盤からは氷の超能力を使う「アイスギャング」といった存在が出現する。
これらの敵はお互いを敵視しており、付近のことを一切考えず戦いを繰り広げていたりする。コールはその戦いに割って入り両方を殲滅する。特に怪物は巨大なものがいて、ミリシアはヘリまで出して戦っている場面は怪獣映画のようだ。本作の怪獣映画へのオマージュ的な感覚は最初のビーストから濃厚だが、中盤以降は怪物同士の対決などもあり、特撮映画好きにもオススメしたい要素である。
敵同士が戦うというところは、世界観にリアリティーをもたらしている。さらにミリシアに抵抗するレジスタンスも登場し、戦場はさらに混乱を増してくる。またコールが善ならば歩いている市民が敵を攻撃してくれたりもする。「inFAMOUS 2」での戦闘空間は様々な勢力が絡み合う複雑な場所なのである。この感覚は新しく面白かった。
ミッションはストーリーを進めるメインミッションと地域を開放するサブミッションがあるが、どちらも様々なギミックがあって楽しい。放送用のアンテナを破壊しバートランドIII世のプロパガンダを止めたり、ミリシアの船を破壊したりと圧政を布くバートランドIII世に抵抗するものが多いが、怪物と戦ったり、写真を元に隠してある物を探し出したりもする。車の上に乗り敵が待ち受ける場所を駆け抜けたり、決められた時間までに目的地に向かったり、敵を追跡したりと本当に多彩だ。
コールは電気人間なため水に落ちると電気が放出され死んでしまう。このため水辺の戦いは足場に気をつけなくてはならない。また屋根の上など限定されたところで戦ったり、ミリシアの占拠するところで戦うこともある。要塞と化した場所にレジスタンスと共に襲撃するといったシチュエーションもある。前作は比較的似たようなミッションが多かったが、今作はバラエティーに富んでおり、次はどんなものがあるか楽しみになってしまう。
ミッションにはカルマに影響を与える善と悪のものもあり、メインミッションでは主に善はクオが悪はニックスが提案する。ミッションを開始する場所に行こうとすると、善の場合はニックスから悪の場合はクオから思いとどまるように引き留めの通信が入るのだ。「inFAMOUS 2」は日本語吹き替え音声が収録されているところがセールスポイントの1つだが、特にこのときのニックスを演じる高乃麗さんの演技が楽しい。破壊と混乱を求め、ゾクゾクするような声色でコールを悪のミッションに誘うのだ。妖艶な彼女ではあるが、言葉の端々に幼さや寂しさも感じられ、高乃麗さんの声にぴったりだと感じた。
高乃麗さんの他にも、コール役の藤原啓治さん、クオ役に三石琴乃さん、ジーク役に島田敏さん、バートランドIII世役に西村知道さんとキャラクターと声の感じが良くあっていて、声優の熱演は聞き所である。一方で、本作はオリジナルの英語音声も収録されているので「やはりオリジナルでないと」という人のニーズにも対応している。
メインミッション、サブミッション以外にも街を歩いてると突発イベントが起こる。突発イベントは善悪いずれかの性格を持っており、善は強盗の阻止や倒れている人の救命なのだが、悪の方はブラストシャードを持っている人から奪い取ったり、警官隊への襲撃となる。ユニークなのが「ストリートパフォーマーの妨害」で、サックスを吹いていたり、ドラムを叩いてる人を「気にくわないから」襲うのである。かなり小悪党的なイベントだ。
「inFAMOUS 2」は前作の基本要素を受け継ぎながら、大きくパワーアップした作品だ。このため序盤は少し難易度が高く感じるかもしれないが、本作ならではのリズムに慣れコールの超能力を満喫すれば、他のゲームにはない“強大な力”の感覚に酔える。今回は発売前の体験なため、ユーザーが作るミッションを体験できなかったが、こちらも楽しみだ。
ミリシアは銃火器で武装している。怪物は大きさも様々だ | ||
爆発する怪物に、ストリートパフォーマーに化けたミリシア。右はアイスギャング | ||
ヘリと戦ったり、船の積み荷を破壊したり、写真の場所を探したりとミッションは様々 | ||
「テスラミサイル」を打ち込んで発電機を動かす。レジスタンスと協力することも。バートランドIII世の演説会場を燃やす | ||
爆弾解除や、ストリートパフォーマーの邪魔も。右はミッション中に誘惑するニックス |
(2011年 7月 7日)