PS3/Xbox 360ゲームレビュー

ああ、楽しきかなシム人生!
ゲーム専用機初の「シムズ」が満を持して登場

「ザ・シムズ3」

  • ジャンル:人生シミュレーション
  • 発売元:エレクトロニック・アーツ
  • 開発元:Electronic Arts
  • プラットフォーム:PS3/Xbox 360
  • 価格:7,665円
  • 発売日:11月18日(発売中)
  • CEROレーティング:C(15歳以上対象)
  • プレイ人数:1人


 エレクトロニック・アーツが「世界で一番売れたPCゲーム」と豪語するほど世界中で大ヒットを飛ばした「シムズ」シリーズ最新作「ザ・シムズ3」が満を持してゲーム専用機向けにデビューする。11月18日にPS3/Xbox 360向けに発売された本作は、「シムシティ」などの作者として知られるウィル・ライト氏が手がけた人生シミュレーションゲームシリーズの最新作だ。

 PC向けには2009年6月に発売された本作だが、PS3/Xbox 360向けのゲーム専用機版を発売するにあたり、1年かけて改めて様々な点がリファインされた。膨大な情報量を持つゲームながら親しみやすく、遊びやすく、そして時間を忘れてプレイしてしまう魅力がたっぷり詰まっている。開発は米Electronic ArtsのThe Sims Studioで、本家本元による信頼のクオリティ。楽しく可笑しい、時折しんみりとした感動もある「シム人生」のすべてをこの1本で楽しめる。



■ ゲーム専用機ではじめての「ザ・シムズ」! その醍醐味とは?

人生で起こりうるあれこれを楽しむゲーム、それが「シムズ」
カルマパワー発動!
新たなシム人は顔立ちから服装まで細かくカスタマイズできる
シム人が生活する街。職場に娯楽施設、住宅街まで全てがある
楽しき(?)家庭生活をスタート

 シリーズにはこれまでPC向けにリリースされてきており、ゲーム専用機向けとしてWii「ぼくとシムのまち」、DS「ザ・シムズ2 はちゃめちゃホテルライフ」といったスピンオフ作品はあったが、オリジナルシリーズ作が移植発売されるのは意外にも今回がはじめて。実は本作は、海外ではWii、DS版も発売されているが、国内ではPS3/Xbox 360版のみ。映像表現やゲーム内でできることの多さという点で、PC版に最も近いバージョンと言える。

 

 本家PC版の「ザ・シムズ」シリーズは、PCの高解像度画面、大容量、マウスによる効率的なポインティング操作などを前提にデザインされてきたゲームなので、まず気になるのはそのゲーム内容がしっかり再現されているか、操作方法は手に負える範囲に収まっているかという点。実際の内容については膨大な操作項目をきちんと再現しつつ、操作については全てのボタンを駆使するためやや慣れるのに時間がかかるものの、全体的にストレスなく遊べる操作スキームを確立している。

 基本的な移植度については文句のつけようがない内容に仕上がった上で、ゲーム専用機版で強化されたのがゲーム的な要素。「カルマパワー」という摩訶不思議な力がゲーム中に存在し、ゲーム内の「シム人」を魅力的にしたり、天才にしたり、はたまた死者を生き返らせたりといったことが可能になっているのだ。天災を呼び込んで「シム人」たちを慌てふためかせることも可能なこの「カルマパワー」、使い方ひとつでシム人生をよくも悪くも、ダイナミックに転がすことができる。

 初のゲーム専用機版ということで、本作ではじめて「ザ・シムズ」シリーズに触れるユーザーの方も多くおられると思われるので、ここでまず本作の基本的なゲーム内容についておさらいしておきたい。

・「ザ・シムズ3」ってどんなゲーム?

 本作では、とある街に生活する「シム人」の一世帯をプレイする。世帯は独り身でもいいし、最大6人までの大家族でもいい。シム人たちは街の様々な施設で職について仕事をしたり、娯楽施設で遊んだり、近隣の住人と交友したり、家の中でごろごろしたりと日常生活を送っている。放っておいても自分の欲求を満たすために勝手に生きていき、その行動や他のシム人との関係から様々な事件、イベントが起こっていく。

 そのシム人の人生に手を加えて、意味を与え、方向を定めて楽しむのがプレーヤーの役割だ。プレーヤーはシム人のほとんどあらゆる行動をコントロールすることができる。どこかへ行く、食事をする、他のシム人と会話する、壊れたテレビを修理させる、勉強やトレーニングをする。意地悪をして便意を我慢させてお漏らしさせることも可能だ。やがては職業で最高のキャリアを目指してもよいし、異性との恋愛に励ませてみるのもいい。世帯全員でお金を稼ぎまくって資産家を目指すのもおもしろい。

 シム人は日を重ねるうちに幼年、少年、10代、若年、成年、老年と6つの年齢的段階を経ていく。そして、やがてはシム人にも寿命による死が訪れる。それでも、結婚して子供を作り、きちんと育てておけば、世帯はその子供の代となってまた続いていく。こうして流れていくシム人生の各局面を眺め、時に手を出し、望むと望まざるにかかわらず訪れる新たな展開に直面して楽しむ。このような人生シミュレーションゲームなのだ。


シム人たちの生活は実に多彩。プレーヤーはシム人を通して様々なオブジェクトにアクセスしたり、他のシム人と交流しながらゲームを進めていく。ゲームシステム的に目標は設定されていないので、自分だけの人生設計をしていこう



■ ここが面白い、シム人たちの生活のすべて

シム人たちを放置すると自分の「欲求」を満たすために行動し始める。眺めているだけでも楽しい
シム人の抱く「願望」が人生の指針のひとつ
「願望」を叶えさせて気分よく過ごさせるのもよし、無視して辛い人生を送らせるのもよし

 さて、放っておいても勝手に生きていくシム人たち。基本的にそれぞれのシム人は各々の「特質」や「欲求」に従って生きている。「特質」というのはシム人が先天的、後天的に得た能力や性格のことで、物覚えがよかったり、運がよかったりとポジティブなものから、ドジ、すぐ怒る、ずぼらといった困った物まで様々。「コンピューターの天才」や「スポーツ好き」といった職業適正に関連したものもあって、シム人が長期的に目指す道はここで決まる部分が大きい。

 

 対して「欲求」というのは短期的で、生理的な状態のこと。「空腹」、「社交」、「便意」、「衛生」、「体力」、「楽しさ」の6種類があって、それぞれが極端に満たされていないと、シム人は不機嫌になったり、行動に制限が生まれる。ずっと不機嫌なまま生活していると残り物のの食事やゴミが掃除されずに放置され、くさい匂いを発して益々シム人を不機嫌にさせていくという悪循環がなんともリアルだ。またシム人は「便意」や「体力」は特に優先的に満たそうとし、時に指定した行動がキャンセルされたりするので、プレーヤーが望む行動をシム人に取らせるためには、タイミングよく食事させたりトイレに行かせたり、眠らせたりして、理想的な状態を維持する必要があるのだ。

 こういった動物的なカンのようなものに従って勝手に行きているシム人を眺めているのも興味深いが、やはりプレーヤーがしっかりと導くことでシムズはもっと面白くなる。そのシム人の生活を導く上で短期・長期の目標となるのが、シム人が時折ハッと思いつく「願望」だ。「願望」はシム人の職業や適性、日々の行動に応じて発生する仕組みで、たとえば仕事に熱中しているなら「出世する」、「職場の同僚と仲良くなる」といった願望、スポーツに関心があるシム人なら「トレーニング用具を手に入れる」、「ジョギングする」といった形で様々な願望が現われてくる。

 プレーヤーは現れた「願望」の達成を約束し(無視することもできる)、達成を目指してシムをコントロールしたり、家のインテリアを調達したりする。願望が達成されると、その願望に対応する量の「生涯の幸福」ポイントが付与されるという仕組みだ。願望がかなったシム人はしばらく機嫌が良くなるという効果もあり、これは他の行動にも好影響を及ぼす。

 願望を叶えることで得た「生涯の幸福」ポイントは、「生涯の報酬」という名の様々な追加能力を得るために使うことができ、たくさんの願望を叶えれば非常に優秀にシム人を成長させることができる。お風呂に入らなくてもあまり汚れず、めったにお腹が減らず、鉄のぼうこうを持ち、1日18時間も働き続けるワーカホリックな鉄人シム人も可能だし、人に会えば必ず惚れさせてしまう魅力たっぷりなシム人だって可能だ。

シム人の人生設計上、とても重要な要素となるのが「特質」と「スキル」。「特質」は誕生と成長の段階で成人までに決まってくる要素で、「スキル」は様々な行動を通して常に成長していくものだ



仕事中は「どんなふうに仕事をするか」という方針を調整できる
異性を招いて口説いてみる
子供の世話のために在宅ワーク派になってみたり
お迎えが来てみたり、人生はいろいろあるものだ

・お金稼ぎと交際、結婚、そして育児

 シム人の願望を叶えていく上で必ず必要なってくるのはやはり「お金」。家賃はないが、ピザの宅配を呼ぶのにもお金が必要だし、散らかった部屋を片付けるメイドサービスにもお金が居る。新しい家具を買うことだって必要だし、やがて結婚して子供を作り次世代を育てたいと思うなら、狭い家を抜けだして大きな家に引っ越したいと思うかもしれない。先立つものを得るには就職するのが1番手っ取り早い。

 この街には沢山の職業がある。商社マン、ジャーナリスト、研究者、医師、軍人、スポーツマン、音楽家、はたまた秘密結社の悪党まで。どの道を選ぶかはもちろん自由。とはいえたいていはシム人が自らの「特質」に応じた職業への就職を「願望」として持つので、プレーヤーが望む方向を優先するか、シム人のやりたいようにやらせるか、大いに悩み楽しむ部分だ。

 各職業は10レベルの出世段階があって、例えば商社に就職するならはじめは「お茶くみ」からスタート。出勤時間にちゃんと会社に行き、定時まで仕事をすれば評価が上がっていき、数日で「雑用」くらいにはなれるのでとってもインスタントだ。しかし、ある程度以上の出世を目指すなら、職業に適した「スキル」をきちんと磨いておくことも大事になってくる。

 「スキル」は論理的思考力から手先の器用さ、対人コミュニケーション能力、芸術関係、園芸、釣りに至るまで多種多様で、これまた10段階の成長レベルがある。基本的にはそのスキルに対応した行動を繰り返していくうちに成長する仕組みで、例えばスポーツ選手なら家の中にトレーニング器具を置いて、オフの日は鍛錬に励むという感じが理想だ。

 スキルを高めて出世街道が軌道に乗り、シム人として成熟してくるころには異性の存在が気になるかもしれない。シム人同士の交際は仕事関係はもちろん、近所を歩きまわってひとこと挨拶をかわすことでも始まる。知人になったシム人をいっせいにホームパーティに呼んで、お目当ての異性にアプローチするのもいいだろう。

 会話を交わしたり、一緒にゲームを遊ぶ、デートに出かけるといった行動を通して、やがては恋愛関係に。最後の人押しで結婚にこぎつければ、ベッドで「ウフフなことをする」コマンドで子供を作ることができる。

 子どもが生まれたらもう大変だ。特に赤ちゃん、幼児の世話をしながら仕事も続けるというのは実に戦争状態に近い。赤ちゃんも成人のシム人と同じく生理的な「欲求」があるが、自分自身でそれを満たすことができないので食事からおむつの世話まで全部親が面倒を見なくちゃならないのだ。真夜中に「社交」の欲求が満たされず泣き出せば、親は疲れていても起こされる始末で、育児の大変さを思い知らされる。睡眠不足でヘトヘトになりながら出社する苦しみと、子供の幸福な成長と、忙しすぎてなにがなにやらよくわからなくなってくる。

 無事子供が成長し、学校に行き、やがて成人して社会の仲間入りを果たせば肩の荷も降りる。たっぷりの愛情を注いで優秀に成長させた子供なら、すぐに一家の稼ぎ頭になっていくはずだ。そして、そうした世代交代の風景を温かい目で見守っていると、寿命を迎えた親シム人のもとに「お迎え」がやってくる。最愛の者を亡くした配偶者の嘆き、親を亡くした子の悲しみ。しばらく家庭は陰鬱なムードに包まれるが、これも人生。また新たな1日がやってくる。


仕事に関連したスキルを伸ばしたり、新たな職能を得るためには勉強やトレーニングも大事。コンピューターゲームはほどほどに!

パーティを開催したり、趣味に没頭してみたり、シム人たちの人生は本当に多彩で楽しい

インテリアの変更や家屋の拡張、間取り変更まで、生活空間はなんでもエディットできる



■ 時が過ぎるのも忘れて「新しい1日」を繰り返す、良質のゲーム

表情豊かなシム人たちのふるまいを見るのも面白さのひとつ
蓄財すれば大きな家に住めるかも?
発生する様々なトラブルも、シム人にかかればお手の物

 というゲームの流れで、本作はシム人の人生をまるごと楽しめるようになっている。シム人の1日は本当に短く、数日のプレイで1世代交代するくらいの勢い。次なる「新しい1日」に何が起きるだろうかと常にワクワクしながら時間を忘れて遊んでしまう力強さがある。

 

 ゲームの中でシム人が行える行動は非常に多岐にわたっており、ひとりのシム人の人生を全うしたところでまだまだやり残したことが膨大に残る、というのも本作のすごいところだ。シム人が極めることのできる「趣味」だけでも、小説の執筆、絵画、音楽の演奏、料理、園芸、スポーツなど多彩。職業にもそれ以上のバリエーションがあり、それによってまた異なるライフスタイルを満喫できる。

 マイホームの移転や拡張、インテリアの変更といった部分も本作で大いにハマれる部分だ。ゲーム中ならいつでもエディットモードに移行することができ、そのなかで新しい家具類を買って設置したり、模様替えをすることができる。また建築物を直接いじることも可能で、壁を動かし、部屋を作り、階段をつけて2階建てにしてみたり、庭を作ってプールを設置したりとなんでもあり。理想のマイホームを突き詰めるだけで何時間も楽しい時間を過ごせるはずだ。

 本作がゲームとして本当に優れているのは、これだけの膨大なプレイ上の選択肢、機能を詰め込んでおきながら、あくまでもプレイ可能な範囲の複雑性に収まっていることだ。6人家族の世帯をすべて細かくコントロールしようと思えばたしかに操作が忙しすぎて楽しさが破綻しかねないが、ある程度はシム人のAIに任せて自由に生活させておき、重要な局面・選択だけをプレーヤーが制御するという形で、柔軟にプレイできることがその秘密である。

 また秀逸な点として、シム人の成長や様々なイベントを通して「人生何が起こるかわからない」という醍醐味をしっかりとゲーム化している部分も挙げておきたい。仕事に打ち込んでいるつもりがいつのまにやら趣味に没頭していた。パーティを開いてみたら不評で、インテリアを改善していくうちにライフスタイルも変わった。子育てを通じて新たな人生の目標に目覚めた……。はじめは計算づくでシム人の人生設計をしているつもりでも、さまざなきっかけで、新たな生き方に目覚めさせてくれることもあるのだ。

 素晴らしい人生も、悲惨な人生も、全部ひっくるめて楽しめる。時間を忘れてプレイしてしまう面白さ。シム人の人生から何かを学べる気がする奥深さ。人生シミュレーションを題材とした作品として、本作のPC版が「世界で一番売れたPCゲーム」となったことも納得の良作だ。たっぷりプレイ時間の取れる全てのゲーマーにおすすめである。


【スクリーンショット】

(c) 2010 Electronic Arts Inc. All Rights Reserved.

(2010年11月18日)

[Reported by 佐藤カフジ ]